ブーン系情報誌
Boon Novel Magazine
天国連載企画 Made in Heaven



第四回となります今回は、前回の続きです。
プロットについて、今回は『承』と『転』についてを書きます。

まず、『承』です。これは、『起』が一定以上の成功を収めていれば、比較的楽に書くことが出来ます。
僕は、ブーン系で必要なのは、漫才同様「ツカミ」であると信じてやみません。
現実、小説そういうものばかりではありません。つまり、最初のうちは読者に辛抱して読んでもらい、
後半になるにつれて徐々に溜めていたエネルギーを発散し、爆発する。
そういう小説が数多存在しますし、私もこれまでに幾つか出会ってきました。
しかし、それを成すためには、読者の辛抱強さ、或いは作者のネームバリューがどうしても必要です。

思うに、辛抱強くブーン系を読んでいる人はあまりいないのではないでしょうか。
いやな言い方ですが、「途中で切る」というような行為を躊躇無くやる人がほとんどだと思います。

これはなぜかと言いますと、まずブーン系は作品数が多い。
現行長編だけでも数十あり、大概の人はこの中から一つあるいは複数を選び抜いて読みます。
その際、盛り上がりに欠け、ツマラナイものよりは、最初から面白く、盛り上がっている小説を選びます。
これは仕方のないことです。誰だって、どうせなら面白い小説が読みたいですから。
今面白い小説には、面白いという保証がすでに出来上がっていると言うことになります。

加えて、ブーン系を読むのにお金は一切かかりません。まあ通信料ぐらいのもんです。
「面白くないけど、せっかく買ったんだから最後まで読もう」とはならず、
「もしかしたら、最後まで読み続ければ、面白いところが見いだせるかも」ともなりにくい。
躊躇無く切るということが容易に出来るのです。この二点で、ツカミは大事といえます。

もしも書き手が、著名或いは読者の好む書き手であった場合、この二点はある程度払拭されます。
「この作者なら……」というような、ある種の信頼が後の「面白さ」を代わりに保証するのです。
しかし、この信頼や保証をブーン系で得ようというのも、なかなか面倒なことですよね。

そんなわけで、前回も言いましたが、『起』は力を入れて書きましょう。
ちょっとぐらい誇張気味になってしまってでも、センセーショナルな出だしが好まれます。
そうすることで、『承』では、ちょっと楽が出来るのです。

ツカミがうまくいけば、読者は自然と寄ってきます。彼らは、そう簡単には離れないので大丈夫です。
なので『承』では、面倒な世界観の説明や、ありきたりな描写などをやっておきましょう。
ついでに、思いつくならば伏線も張っておきましょう。
伏線を張るのは地味な作業です。しかし、それを回収する際、読者に多大な感動を喚起させられます。

なお、ここで一つ大事なのは、登場人物の個性を強調することです。
『転』や『結』ではどうしても展開優先になってしまい、キャラが置き去りになってしまいます。
それを軽減し、キャラが立っていないと言われないためにも、ここでキャラを確立させておく。
ブーン系では特に大切なことです。

前回も引き合いに出した『漂流』では、『承』でオムニバス形式のショートストーリーを挿入しました。
これには、個々のキャラを引き立てるという意図と、多角的に世界観を描写し、
SF的な、独特の世界をより立体的にするという意図の二つが隠れています。

まとめますと、承のポイントは、世界観説明と、キャラの確立です。
まあ、感覚ですけど、そこそこ自由にやれるパートでは無いかと思います。

では最後に、『転』です。此処が重要なのはもはや言うまでもないでしょう。
ミステリーなどではここでもっとも気を遣わなければ成りません。
トリックが平凡以下だったら、これはもう大恐慌ですから。金返せって言われます。払ってないけど。

しかし、それはたぶん、私が弁舌ふるうまでもなく、皆さん分かっているのではないでしょうか。
『転』を衝撃的に、感動的にするネタは、たぶん割と最初の方に思いつくはずです。
なので、あえて言うまでもないかと。ここが書きたいがために小説を書くってなこともよくありますし。

一つ注意点を申し上げるとしますと、最初に思い描いていた物語をそのまま書けることは多くないです。
なので、『起承』の展開如何では、やむを得ず『転』を違う方に転がさないといけないかもしれません。
これは、よく言われる『キャラの一人歩き』でも起こりえます。

そういう場合に直面したとき、これはもう仕方ないので、流れに任せましょう。
流れに任せた上で、インパクトのある『転』を書きます。ちょっと難しそうかもしれませんが、
そうでもありません。或いは、ここまでで書いた世界観の説明や人物描写が、
思わぬ手助けをしてくれるかもしれません。

まあ、そうなりたくない場合は、単純に最初から全部計算して書けばいいんですけども、
これだってなかなか簡単じゃないです。先走って書いちゃった、えへってなことが、往々にしてあるし。
『承』で張った伏線と相談しつつ、最良の道を選択しましょう。貴方の実力次第でどうにでもなります。

『漂流』で言えば、怪物の登場や下の世界の出現ですね。
これはまあ、そこそこ意図通りにはなりましたが、当初は怪物の登場しか考えてなかったです。
というか、最初は殻世界からの脱出を考えてたような気もします。まあ、これも流れの仕業ですわな。

……というような具合です。ちょうど文字数も良い感じになりました。
最後の方、プロットに関する説明では無いような気がしますけど、まあこれも流れです。

では、プロット生成法を終わります。
次回のネタ、ちょっと前に考えついたけどきれいさっぱり忘れたので、もう一度考え直します。


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