俺は( ^ω^)ブーンなようです

  
6: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/01/01(月) 19:41:19.10 ID:NJLfodZgO
  
チュンチュン―――

教室の窓から見える鳥達はいつも自由に空を飛んでいてうらやましい。あいつらはいつも楽しそうだ。

俺もあんなふうに飛べたらな…

「おい!授業に集中しろ〜。外なんか眺めてるんじゃないぞ!」

うん。そうだね。ちょっと厨二病気味だったね。
だけどこんなつまらない授業を真面目に聞くよりは有意義だと思うんだ。そこのところ答えてくれないかな先生。



  
8: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/01/01(月) 19:42:05.37 ID:NJLfodZgO
  
「お前なにしてんだよwwwwwwwwwwww」
「うっさいよwww」

友達はいるよ。今流行のいじめの被害者でもなければ、加害者でもないし。
まぁ楽しい…と言えば楽しい様な…そんな曖昧で退屈な毎日。
正直言ってどうでもいいわ。
それが俺の悲しい日常。



  
9: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/01/01(月) 19:42:59.27 ID:NJLfodZgO
  
夜、寝る前にVIPを覗いてクソスレを煽る。
それが唯一の俺の趣味。このときばかりはちょっと楽しい。でも現実に帰ったときとのギャップはなかなか…

『ひろゆきだけど夢叶えたい奴ちょっと語ってけ』

なんというスレタイ…このスレは間違いなくクソスレ!
もちろん開くに決まってる。



  
11: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/01/01(月) 19:44:14.75 ID:NJLfodZgO
  
『童貞卒業』
『就職する』
『小野寺死ね。氏ねじゃなくて死ね』

おい!お前らスレタイ見たのかよ?…小一時間問い詰めたくなるレス。
これは夢なのかよ?
てか、実名をだすなよ!
まぁVIPPERだしなんでもありか。
ついでに俺も書き込んでおこう。ちょっとマジレスで。

『本当に楽しい毎日』

これじゃあ俺もあいつらと変わらんな…


そのあと俺は煽り疲れてか、いつの間にかPCデスクで寝てしまった。



  
12: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/01/01(月) 19:45:11.86 ID:NJLfodZgO
  
目が覚めた俺は電子の海にいた。
例えて言うなら某近未来SF映画の、真っ黒な背景に緑の文字がズラーッと流れてるやつ。そんな感じ。うん。我ながらいい例え。鬼才あらわる。

そこがどこなのかはすぐにわかった。信じらんないけどね。

『暇ならアド晒し』
『16才♀だけどおっぱいうp』
『彼氏に安価メールする』
『巨乳ちょっとこい』
『腐女子と付き合いたい』
『ゆとり(笑)』

緑の文字にはそんなのがずらずら書かれてる。
どう見てもVIPです。本当にありがとうございました。
えっこれどーゆーこと?



  
14: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/01/01(月) 19:49:20.63 ID:NJLfodZgO
  
それになんだこれ体が真っ白になって…ピザってる。人生オワタ\(^o^)/
って、これは…

『VIPへようこそ』

どこからか男の声が聞こえて来る。なにもんだ!?

『君が望んだから、僕は君をここに招待した。それからこれはプレゼントだ。受け取って欲しい』

いつの間にか俺の手はうまい棒を握っていた。
うまい棒…?まさかこいつは―――

『ちなみに僕はここの管理人のひろゆき。今日から君は―――』

やっぱりな!それに俺のこの格好、言われなくてもわかってるよ。

『ブーンだ』



  
16: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/01/01(月) 19:50:15.58 ID:NJLfodZgO
  
『それじゃあ僕はこれで』

えっ!?もういなくなっちゃうの?

(;^ω^)「ちょっと待って!!」

さすがに今の状況はまずい。どうすればいいのか聞かないとな…

『なんだい?』

(;^ω^)「俺はどうしたらいいんだ?」

『すまない。それには答えられないんだ。それから―――』

えぇー!ノーヒント!?それからなんだよ?

『語尾には“お”をつけるんだ。君はブーンなんだからね』

そりゃそうだけど…ナンテコッタイ/(^o^)\



  
17: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/01/01(月) 19:51:22.91 ID:NJLfodZgO
  
(#^ω^)「…」

俺はなにも教えてくれないひろゆきにイラだっていた。
当たり前だ意味わからんこと言ってこんなとこ連れてきやがって!
しかもあのあとすぐに声は聞こえなくなってるし。マジでどうすりゃいいんだ?
まぁこのままここに立っているわけにもいかない…よな。

( ^ω^)「なんもわからんし情報収集するか…」

早いとこ現実に戻らないと学校にも行けないしな。遅刻しちゃうんです><



  
18: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/01/01(月) 19:51:43.85 ID:NJLfodZgO
  
ひろゆきからもらったうまい棒を食ったあと、とりあえず適当なスレで聞いてみることにした。
めんたい味は味が濃いな。
今や厨房ばかりのVIPPERだけど、中には古参の博識なやつもいる…と思う。意外と頼りになるかもしれんね。



  
20: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/01/01(月) 19:52:18.33 ID:NJLfodZgO
  
とりあえずスレ立てをしてみた。

( ^ω^)「現実に戻りたいんだけどどーしたらいいんだ?」

もちろんあっという間ににdatの海に沈んでいった。
でもたったひとつのレスがついていた。

『偽者乙』

あぁ、今の俺はブーンだったな。妙になっとくしたぜ。
ってことは、ひろゆきが言っていたのはこういうことか…



  
21: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/01/01(月) 19:52:57.54 ID:NJLfodZgO
  
俺はもう一度スレを立ててみた。今度は…

( ^ω^)「現実に戻りたいんだけどどーしたらいいんだお?」

語尾に“お”を付けてみた。これで俺はVIPのアイドル、ブーンだぜ!

『現実逃避wwwwwwwwwwww』
『ちょwwwwブーンwwwwwwww』
『^^;』

(#^ω^)「…」

こいつら…
有力な情報はなにも得られなかった。まぁ現実的に考えたら無理だろうけどね…
とりあえずレスが付きだしたのは大きな一歩だ。
レスが付くっていいことだ。レスが付くよろこびをあらためて実感した。



  
25: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/01/01(月) 19:57:26.61 ID:NJLfodZgO
  
そのあと俺は、スレを立てるだけじゃなくていろんなスレを走り回って聞き込みをした。

『最近ブーンよく見るな』
『ブーンwwwwwwwwwwww』
『ブーンおもすれーwwwwwwwwwwww』

徐々に俺のことが噂になっていった。ブーン冥利に尽きるぜ。
行く先行く先での馴れ合いも徐々に楽しくなっていった。馴れ合い厨?うっさいよ。



  
26: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/01/01(月) 19:57:51.22 ID:NJLfodZgO
  
『はぁ?VIPPERなんてクズだろ』
『VIPPER死ね!!2chのガンが!』
『VIPPER(失笑)』

(#^ω^)「このサイトでVIPPERが馬鹿にされてるお!突撃するお!」

VIPPERが馬鹿にされるたびに、そのサイトのURLを片手にスレを走り回って突撃を繰り返した。
もうね、フルボッコにしてやんよ!
俺は、一緒にバカやってくれるそんなVIPのみんなが大好きだった。
現実に戻ることを忘れて楽しんだよ。



  
27: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/01/01(月) 19:58:12.46 ID:NJLfodZgO
  
だけどそれは急に来た。信じられなかったよ。

『最近ブーンうぜえ』
『ブーン必死杉』
『ブーンイラネ(゚听)』

あきられた。

スレを立てても即dat。
レスをしてもスルーされる。

俺の人気は地に落ちた。人生オワタ\(^o^)/ いや、マジで。



  
28: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/01/01(月) 19:58:41.33 ID:NJLfodZgO
  
もうなんもする気にならんかったね。しばらくは電子の海を漂い続けたよ。
もう結構長いこと漂ってる。
倦怠感だけが俺を支配してる。なにもやる気にならない。

( ^ω^)「はぁ…だりぃ…」

『そんなんでいいの?』

あのときの声。俺をここに連れて来た張本人の声。
そう、ひろゆきの声だ。

『これあげるから。もう一回走り回って見なよ』

俺の手はいつかと同じ様にうまい棒を握っていた。
味くらい変えてよ。
めんたい味ばっかじゃ飽きるっつーの。

『今度は本気で走ってみればいいよ。そうすれば変わると思うんだ』

俺はまた走りだした。



  
29: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/01/01(月) 19:59:02.22 ID:NJLfodZgO
  
『あっ!ブーンだ久しぶりだな』
『ブーンさびしかったぜwwwwwうぇっwwwwwww』
『⊂ニニニ( ^ω^)ニニニ⊃ブーン』

VIPPER達はまた俺を必要としてくれて、受け入れてくれた。
俺は全力で走り回って、突撃や馴れ合いを楽しんだ。

そこには俺の望んだ『本当に楽しい毎日』があった。



  
30: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/01/01(月) 19:59:24.71 ID:NJLfodZgO
  
『そろそろ現実に戻ろうか』

またあの声。
ひろゆきの声がする。

(;^ω^)「マジかお!?帰れるのかお?」

うれしい様な…さびしい様な…VIPPERみんなとの別れがちょっとね…

『本当だよ。急だけどそれじゃあね。それから―――』

急すぎるだろ…常識的に考えて…

『これは手土産だ。持っていってくれ』

俺の意識はそこでとぎれた。



  
31: ◆ZGuRy.Pfdg :2007/01/01(月) 19:59:44.96 ID:NJLfodZgO
  
電源が付きっ放しのPC。
PCデスクにうつぶして寝ていた自分。

夢だったのか?

いや、夢じゃない。それはすぐにわかった。

いつもより時間が進んでいる時計―――

「やばっ!遅刻だ」

急いで家を出て、学校へ走る。

両腕を広げて、手にはうまい棒を持って。

「まためんたい味かよ」

がむしゃらにでも、本気になって走り回れば『本当に楽しい毎日』になる。

学校までは全速力だ。



おしまい



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