( ^ω^)ブーンは錬金術師なようです
- 5: ◆ZGuRy.Pfdg : 2007/01/04(木) 22:07:52.96 ID:iNQjs/KpO
- 『死んだ人間は甦らない。これは真理だ』
これはどっかの錬金術師が言った言葉だ。
今僕はそれを打ち破ろうとしている。
( ^ω^)「いってくるお」
ドアの向こうには夜が広がっていた。
- 7: ◆ZGuRy.Pfdg : 2007/01/04(木) 22:08:39.62 ID:iNQjs/KpO
- 『今月五人目の変死体。警察は無能か!?』
非常に不愉快な新聞だ。せっかくのコーヒーも不味くなる。
川゚−゚)「フーッ…」
マスコミの警察叩きは異常だ。何かあると、いや何も無くても執拗に叩いてくる。
いや、そんなことよりも証拠どころか手掛かり一つ見つかっていない現状を嘆くべきか。
- 8: ◆ZGuRy.Pfdg : 2007/01/04(木) 22:09:11.72 ID:iNQjs/KpO
- わかっていることと言えば、発見された死体には共通点があると言うことだけ。
死体からは心臓が抜き取られているのだが外傷はほぼ見られるず、被害者には血痕さえも付いていない。
ほぼと言うのは、被害者の胸の辺りに縫合したかの様な跡が見られるためである。
ただ、縫合と言うには難があり、むしろ溶接と言ったような跡である。
川゚−゚)「凶器すらわからないな…」
凶器がわかればそこから犯人がある程度特定出来ることもある。
だが、今回の事件はそれすらもわかっていない。
捜査は一向に進展を見せなかった。
- 10: ◆ZGuRy.Pfdg : 2007/01/04(木) 22:09:33.43 ID:iNQjs/KpO
- ( ・∀・)「本日付で捜査班に配属になったモララーです。よろしくお願いします。」
川゚−゚)「あぁ、よろしく。捜査本部長を務めるクーだ。クーと呼んでくれて結構だ」
まだあどけなさを残す若者。頭は短髪だがまさに『今風』。そんな印象を見る者に与える。
上の方からはなかなか優秀な新人だと聞かされてはいるが今回の事件ではどの程度役に立つだろうか。
- 11: ◆ZGuRy.Pfdg : 2007/01/04(木) 22:09:54.41 ID:iNQjs/KpO
- ( ・∀・)「クーさん、僕のスネを見てくれませんか?」
この若者、顔合わせをしたばかりの上司に向かって「スネを見ろ」とは一体何を考えているのか。
川;゚−゚)「何の真似だ?」
( ・∀・)「まぁ見てください。話はそれからです」
生真面目な顔付きでズボンの裾を上げる若者。そしてその様をまじまじと見つめる上司。
実に滑稽だ。
だが私はその若者のスネにある傷跡には見覚えがあった。
川;゚−゚)「これは…」
( ・∀・)「被害者にあった傷跡と同じものです。恐らく、僕は以前に犯人に会ったことがあります。そして僕は犯人に心当たりがあります」
- 12: ◆ZGuRy.Pfdg : 2007/01/04(木) 22:13:59.95 ID:iNQjs/KpO
- 僕が中学生の頃、両親は事故で死んだ。その当時は悲しかったし、もちろん涙だって流した。
遺品整理の際に父の書斎から一冊の本を見つけた。
『ALCHEMY』
直訳すると『錬金術』。
そう題された本の中身は英語と、見たことも無い文字が羅列されていた。
父の、他の遺品を全て処分した後もその本だけは残しておいた。
- 13: ◆ZGuRy.Pfdg : 2007/01/04(木) 22:14:32.49 ID:iNQjs/KpO
- 僕はその本の不思議な魅力に取り憑かれ、貪る様に読みふけった。
放課後になると、友人達とは一切関わらずに図書館へ行き、資料になりそうな本を探して家で錬金術の研究をする毎日。
当時は両親の死による保険金がかなりあったからアパートを借りて一人暮らしをしていた。研究を邪魔する者が誰もいなかったため、一晩を研究に費やすこともあった。
- 14: ◆ZGuRy.Pfdg : 2007/01/04(木) 22:15:07.01 ID:iNQjs/KpO
- 研究の結果、わかったことは四つある。
『火・地・空気・水の四元素と、硫黄・水銀・塩の三原質を基本錬成物とする』
『物理的な物は錬成可』
『実体無き物は錬成不可』
『錬金術とは空想化学である』
最後の一つの理解に苦しみ、研究は煮詰まっていた。
その頃には僕はすでに高校生になっていた。
- 15: ◆ZGuRy.Pfdg : 2007/01/04(木) 22:15:32.69 ID:iNQjs/KpO
- 研究は煮詰まっていたものの、それでもいつもの様に僕は図書館へ通っていた。
ある日、図書館からの帰り道で事故を目撃した。
自分と同じ学校の制服を着た少年が足の下から半分を赤く染め、叫んでいた。
「いてーよぉー!!!」
まさに阿鼻叫喚だった。
轢き逃げだったらしく加害者である車の運転手は現場に居ない様だった。
少年のまわりには人だかりができているものの皆、気が動転している様子だった。
気付いた時には僕は少年のすぐ目の前にいた。
体が勝手に動いていたのだ。
「たすけてくれー!!」
( ^ω^)「わかったお…ちょっと待つお」
- 16: ◆ZGuRy.Pfdg : 2007/01/04(木) 22:16:11.15 ID:iNQjs/KpO
- 間近で見ると少年のスネはパックリ割れ、肉が裂け、骨が剥き出していることがわかった。
骨の構造式と肉の構造式を古代ギリシア化学による理論で思考して、傷口に触れてみる。
すると、折れていた骨と骨、裂けていた肉と肉がくっつき合い、もとの肉体を精錬した。
「えっ…いたく…ない?」
( ^ω^)「よかったお…それじゃあ僕はこれで」
「き、君!何をしたんだ!?」
( ^ω^)「…」
少年の質問に答えられなかった。自分自身まだよく信じられなかったから。
- 18: ◆ZGuRy.Pfdg : 2007/01/04(木) 22:16:31.74 ID:iNQjs/KpO
- 質問には答えず結局そのまま走り去ってしまった。
- 19: ◆ZGuRy.Pfdg : 2007/01/04(木) 22:16:59.69 ID:iNQjs/KpO
- あいつはいつもママと私を殴った。理由なんか無かった。あるとしたら『殴りたい』ただそれだけ。
だからママは私を連れて家を出た。
もちろんお金なんて無かったからママは必死に働いた。それでもおんボロなアパートに住むのが精一杯だった。
それでも私はママが大好きだった。
あいつから私を守ってくれたママ。
私に何不自由ない生活をさせようと必死に働いてくれたママ。
そんなママが死んだ。
部屋で首を吊って自殺した。
残された遺書には『ごめんなさい』とだけ書かれていた。
私の支えがなくなった。
- 21: ◆ZGuRy.Pfdg : 2007/01/04(木) 22:18:00.08 ID:iNQjs/KpO
- とっさにあの少年のことが脳裏に浮かび、部屋を出た。
彼ならママを生き返らせてくれる。そう思って。
事故で怪我をしていた少年を魔法の様な力で治したもう一人の少年。彼ならきっと。
彼の家がどこかはわかっていた。怪我を治した後すぐに逃げてしまった少年の後をつけていたから。なぜだか気になって。
それに彼、私と同じ高校の制服を着ていたし。
- 29: ◆ZGuRy.Pfdg : 2007/01/04(木) 22:25:11.04 ID:iNQjs/KpO
- ピンポーン
僕のところに来客なんて珍しい。と言うよりも一人暮らしを始めてから初の出来事かもしれない。
ドアを開けるとそこには大きな瞳を赤く腫らした、金の巻き髪が美しい少女が息を切らして立っていた。
( ^ω^)「どちらさまだお?」
ξ;;)ξ「ママを…た…助けて」
- 30: ◆ZGuRy.Pfdg : 2007/01/04(木) 22:25:37.97 ID:iNQjs/KpO
- (;^ω^)「あの…どうゆうことだお?ちょっと落ち着くお」
こうも取り乱しているのでは話にならない。
ξ;;)ξ「ごめん…なさい…私はツン…ママが…ママが死んじゃったの。
あなた魔法使いなんでしょ?ママを生き返らせて…」
僕の錬金術を魔法だと勘違いしている様子の少女。
恐らくは事故で怪我をしていた少年を治した時に見られたのだろう。
あの時ばかりはうかつだった。あれだけの人込みの中で錬金術を使ってしまっただなんて。不用心だった自分を呪った。
ただあの事がきっかけで、錬金術の発動方法は理解出来た。
『空想化学』の意味と共に。
- 31: ◆ZGuRy.Pfdg : 2007/01/04(木) 22:26:06.62 ID:iNQjs/KpO
- (;^ω^)「でも僕は魔法使いじゃ…」
そこまで言って言葉の続きを飲み込んだ。
ξ;;)ξ「お願い…お願い…お願い…お願い…」
繰り返し懇願する少女。
そんな彼女をあしえるほど気丈な精神をあいにく僕は持ち合わせていなかった。
( ^ω^)「わかったお。ツンのお母さんはどこにいるんだお?」
ξ;;)ξ「ありがとう…私の家よ…付いて来てくれる?」
( ^ω^)「行くお。一応自己紹介しとくお。僕の名前はブーンだお…それから僕は魔法使いじゃなくて―――」
ξ;;)ξ「えっ?」
( ^ω^)「錬金術師だお」
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