( ^ω^)雨は知っているようです

122: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 22:59:59.67 ID:wmLQbrpF0
  
――――第十一話 三月六日 真夜中


電車からおり、自転車に乗る。
血は不幸中の幸いなのかされほどついていなかったため、さほど怪しまれずにここまでこれた。
だが、『さほど』だ。必ずこの血のついた服を誰かが見ている。
そいつが警察にリークすれば捕まるのは時間の問題だ。
だが、そうでないのを願いたい自分がいるのも事実。とりあえず僕は自分の家に戻ることにした。
警察が来ないのを信じて。


家からは光が漏れ、家族がいることを知らせてくれている。
僕はあの光に入ることはできるのだろうか。
答えは否。もうこの闇の化身が光に入ることは不可能なのだ。



124: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 23:03:05.10 ID:wmLQbrpF0
  
家の扉を開ける。
開けるとすぐにカーチャンが来た。
その顔はとても心配している。当然だ。ここら一帯は殺人鬼が出没しているのだから。
カーチャンはその殺人鬼が僕なのを、知らない。


J( 'ー`)し「遅かったじゃないホライゾン。心配してたわよ。」

(  ω )「・・・・・・」

J( 'ー`)し「ご飯できたけど・・・食べる?」

(  ω )「今日入らないお・・・」


カーチャンが何か言ってるが無視し、階段を駆け上がる。
腹は減ってる。しかし、全くといっていいほど食欲がなかった。
今はそれよりもしなくてはいけないことがある。



125: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 23:06:08.30 ID:wmLQbrpF0
  


J( 'ー`)し「どうしたのかしら・・・・・」

( ゚д゚ )「・・・・・」

J( 'ー`)し「こっちみるな」

( ;д;)「・・・・・」



126: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 23:07:35.14 ID:wmLQbrpF0
  
机の中を開ける。
そこから出てきたのはスクーターの鍵、数メートルの長さのロープ。そして双眼鏡。
ロープを部屋の柱にくくりつける。何重にも結んだ。


カーテンを開け、双眼鏡で外をみる。
暗い。暗い。暗い。暗い。それは闇。自分さえも呑み込んでしまいそうな深い闇。
似ている。僕の心に。僕の心もこんな感じなんだろう。
そりゃそうだ。四人も殺しといて明るい色の方が嫌だ。


針は刻々と進む。
八時になろうとした頃、遠くからエンジン音が聞こえる。
この地域でこんな時間に町方面からくる車は少ない。
あわてて双眼鏡を持ち、そのエンジン音が聞こえる方をみる。



127: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 23:10:31.03 ID:wmLQbrpF0
  
(  ω )「・・・きたお」

それは白黒の車。
やはり来てしまった。ここまで派手にやれば当然といえば当然だが・・・。
顔を叩く。今は過去を振り向く時ではない。未来への手綱に捕まる時なのだ。

鍵を持ち、ロープを窓の外に投げ出し、それをつたい外に出る。
あらかじめ用意しといた靴を履き、スクーターに鍵をかける。

( ゚ω゚)「くそッ!!!かかれお!!!」

鍵がねじれそうな勢いで回す。
堅い。一回鍵を抜き、また回す。

キックを蹴りクラッチを回す。
ブロロロロロ・・・という音が鳴り響く。
大丈夫。行ける。
勢いよく飛び出し、家を後にする。



129: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 23:13:32.85 ID:wmLQbrpF0
  
どこに行くかを考えたがその答えはすぐにぼくの脳みそが導き出した。

パトカーは町方面からきた。
ならば必然的に町方面には行けないだろう。
クオリティ山の細い道を過ぎれば隣町に行けたはずだ。
しかし問題はその細い山道を越えられるかだ。
道には木々が無造作に置いてあり、越えるのは難しいだろう。
しかし越えさえすれば警察を少しの間巻ける。その間に少しでも遠くへ行けばなんとかなる。
今はその案を通すしかなかった。



130: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 23:16:26.21 ID:wmLQbrpF0
  
後ろを振り向く。
自分の家からは相変わらず暖かい光が漏れている。

あの光の中に、戻りたい。
あの家から放たれる光は僕にとっての灯台であった。
だが、僕という船はあの光に向うことはできない。

船はもう出港してしまったのだ。
闇という光とはかけ離れた世界に。



131: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 23:19:17.89 ID:wmLQbrpF0
  
――――雨がふってきた。

それが自分の涙なのか雨による雫なのか、もうわからなくなってきた。
なぜ、こうなったんだろう?
この頃ifの世界を考える自分が惨めで惨めでしたかがなかった。

あと少しでクオリティ山に差し掛かろうとしたとき、後ろからエンジン音が聞こえてくる。
バックミラーをみる。それはまぎれもなく、警察であった。

スピードを上げる。
しかし所詮スクーター。パトカーに叶うわけがない。
徐々に近づいてくる。

そして肝心の山道。
来るものを拒むかのように大きな木が横たわっていた。
看板も新しくつけられたようでその内容は『バイク進入禁止』。
前来たときにはなかったくせに今頃になって誰がそんなことを・・・・ッ!?



135: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 23:22:30.07 ID:wmLQbrpF0
  
引きかえすしかない。
そうしなくては丸太に激突してしまう。
無理に曲がり、Uターンをする。


( ゚ω゚)「・・・・」

ミ,,゚Д゚彡「・・・・」

目が合った。
あの警察はこの前僕に取り調べに来た警察であった。

( ゚ω゚)「くそッ!!!!!くそッ!!!!!あの野朗ッ!!!!!」

怒りを身に任し、山道を後にする。
声は雨によって掻き消されていた。



136: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 23:25:40.51 ID:wmLQbrpF0
  
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


(;^Д^)「フサギコさん!!!」

プギャーがあわてて俺をみる。
前方は車ではとても通れない山道。そして丸太。このまま行けばぶつかるのは一目瞭然。
その眼は俺に助けを求めている。ならば俺はその助けに応えるだけだ。

ミ,,゚Д゚彡「あわてるな!!落ち着いてUターンし奴を追え!!あいつはスクーターだからすぐに追いつく!!」

(;^Д^)「了解しやっした!!!」

減速し、ゆっくりと曲がる。
奴はもう闇の彼方に行ってしまった。
だが大丈夫。スクーターなんかに走り負けするほどパトカーはやわじゃない。

しかし、俺は一種の不安を覚えた。
あの闇に溶け込もうとするあいつの姿に。

ミ,,゚Д゚彡「・・・・あいつは一体・・・どこに向っているんだ・・・・?」

答えてくれる者はいない。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



137: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 23:29:26.04 ID:wmLQbrpF0
  
( ゚ω゚)「・・・・・・」

何分経ったのだろうか。
凍えるくらい冷たい雨が容赦なく身体を襲う。
手がかじかんでいて、気を抜けばハンドルから手を離しそうだった。

一体僕はどこへ向っているのだろうか。
最初の目的地であったクオリティ山道は通れなく、ただがむしゃらに進んでいた。
ここがどこさえもわからない。闇が周りを覆い隠していた。
この鬼ごっこにゴールはあるのだろうか。

せっかく振り切ったパトカーももう後ろにいた。



139: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 23:32:26.36 ID:wmLQbrpF0
  
ミ,,゚Д゚彡『あ・・・・あぁ〜〜〜〜聞こえるか?』

後ろから拡声器による声が聞こえてくる。

ミ,,゚Д゚彡『おとなしくスクーターから降りすみやかに投降しろ』

後ろから聞こえてくる降参しろの意の言葉。
僕はそれがしたくないからこうして逃げてるんじゃないか。
一瞬、後ろを振り向き大柄の男を睨む。
それが失敗だったのを理解したのは数秒後のこと。


( ゚ω゚)「―――――――――――――ッ!?」


目の前に迫り来る電信柱。
あわててハンドルをきろうとするが間に合わなかった。
轟音と共に身を投げ出される。



140: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 23:35:14.79 ID:wmLQbrpF0
  
(メ゚ω゚)「ぐううううぅぅぅぅぅぅ・・・・・ぎぃいいいいぃぃぃぃ・・・・・」

投げ出されたところは田んぼの中だった。
泥水が容赦なく口の中に入る。まずい。
そして足。右足をくじいたのかわからないが激しい痛みが僕を襲う。

(;^Д^)「あ〜ぁ・・・・やっちゃいましたねぇ・・・」

ミ,,゚Д゚彡「大丈夫か?」

パトカーから降りた警官が話しかけてくる。

(メ゚ω゚)「・・・・くそっ」

ミ,,゚Д゚彡「動くんじゃねぇ・・・・」

大柄の警官の方が拳銃をとりだす。
その銃口の先は僕。



143: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 23:38:08.06 ID:wmLQbrpF0
  
(;^Д^)「ふっフサギコさん!?」

若い方の警官が慌てて制止する。

(;^Д^)「相手は高校生なんですよッ!?」

ミ,,゚Д゚彡「だからどうした?相手は人を殺したんだぞ?それも友人を・・・」

(;^Д^)「だ、だからって・・・・・」

ミ,,゚Д゚彡「馬鹿野朗!!!だからお前は甘いんだよ!!!」

二人の馬鹿な警官がいざこざを起こしているうちに立ち上がる。
右足から伝わる鋭い痛み。捻挫かもしくはそれ以上・・・。



145: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 23:40:25.64 ID:wmLQbrpF0
  
ミ,,゚Д゚彡「動くんじゃねぇ・・・」

警官が銃を構える。
僕が手を上げたのを見てから大柄の警官は若い方の警官に指示を出す。
金と飛車が僕の前にいる。いわゆる詰みと投了であった。

ミ,,゚Д゚彡「プギャー・・・。捕まえにいけ・・・・」

( ^Д^)「・・・・わかりました」

プギャーと呼ばれる警官が田んぼの中に足を踏み入れたとき、自然に口が動いた。

(メ ω )「・・・・ちょっと待ってくれお・・・・」

警官の動きが止まる。



147: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 23:43:21.59 ID:wmLQbrpF0
  
ミ,,゚Д゚彡「・・・なんだ?」

(メ ω )「僕が・・・僕が罪人になる前に・・・一つだけ質問させてくれお・・・」

プギャーがフサギコをみる。
その顔は険しい。

ミ,,゚Д゚彡「いいだろう。この状況じゃ逃げられないだろうしな」

(メ ω )「ありがとうだお・・・」

ミ,,゚Д゚彡「礼はいい。はやく話せ」

(メ ω )「なぜ・・・・」

ミ,,゚Д゚彡「・・・・」

( ^Д^)「・・・・」

(メ ω )「なぜ・・・・人間は戦争や死刑をするのだお・・・?」



148: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 23:45:59.15 ID:wmLQbrpF0
  
ミ,,゚Д゚彡「・・・・・」

(メ ω )「人を殺すことはどこの国も重罪なのに・・・なぜこの二つは人を殺すのが許されるんだお?」

しばらくの沈黙の後、静かにフサギコが喋る。

ミ,,゚Д゚彡「俺は・・・難しいことはわからない。だが、戦争はいけないことなのはわかっている。絶対にやってはいけない」

ポツ、ポツと雨が降り注いでいる。
髪と服はもうびちゃびちゃだ。
着ていて気持ちが悪い。

(メ ω )「・・・死刑は?」

ミ,,゚Д゚彡「・・・それは・・・・・」

やはり答えられない。
それは自分の職業と認識がそうさせたのであろう。
喋ろうとするが声の出ていない警官を無視し、僕は呟く。
独り言のように。



149: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 23:48:05.04 ID:wmLQbrpF0
  
(メ ω )「・・・わかってるお。僕も数日前まではそうだったお」

数日前・・・。数日前に戻れば・・・。どれほど輝かしいことか。
雨は、まだ降っている。自分が涙を流しているのかもわからなかった。

(メ ω )「善人からみたら悪人は邪魔なだけだお。自分に危害を加えるかもしれないただのカスだお」

フサギコは静かに聞いている。

(メ ω )「・・・そんな悪人が死んでもいいと言うのは決して間違っていないお・・・」

雨は、また一層強くなる。

(メ ω )「僕が警察に捕まったらきっと死刑だお。・・・当然だお。たくさん人を殺したんだから・・・」

数秒の沈黙。
それを壊したのはフサギコであった。



151: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 23:51:04.78 ID:wmLQbrpF0
  
ミ,,゚Д゚彡「・・・もういいか?内藤ホライゾン、殺人の容疑で逮捕する」

プギャーが田んぼに足をつける。
手には手錠。

(メ ω )「――――――――――ならば」

( ^Д^)「・・・・・・・?」

プギャーの足が止まる。

( ゚ω゚)「あと一人くらい、殺していいおね?」

ポケットからナイフを取り出す。
こびりついていたモララーとクーの血が雨によって流され、ナイフからは異様な輝きが放たれる。

ミ,,゚Д゚彡「プギャー!!!!逃げろッ!!!!」

( ^Д^)「・・・・・・・・・・・・・ッ!!!!!」



153: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 23:54:06.62 ID:wmLQbrpF0
  
そのナイフを、自分の胸・・・心の臓に持っていく。
大丈夫。理科の授業でならった。ここに心臓があるってことを。

(メ ω )「・・・みんな、今行くお・・・」

( ^Д^)「まさかあいつッ!!」

ミ,,゚Д゚彡「やめろぉッ!!!馬鹿な真似はよせ!!!」

少しずつ、少しずつナイフの刃が僕の肉体に喰いこむ。
服からは血が滲んでいる。

痛い。痛いよ。みんなこんな痛さを耐えたんだね。
ごめんね。僕のした事はどうやら間違っていたみたいだ。



155: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 23:57:01.97 ID:wmLQbrpF0
  
――――いつから

いつから間違ってしまったんだろうか?

ドクオを殺したとき?ギコと会ったとき?ツンが死んだとき?

それとももっともっと前に戻って彼等と出会ったときから間違えたのだろうか?

いや、違う。間違っていたのは彼等じゃない。

まぎれもなく僕。僕の心。僕が全てを狂わせたんだ。

仲間だったみんな。優しい家族。みんな、みんなごめん。

僕は、みんなに逢えるだろうか?

もし、逢えたら。もし、逢えたらあやまろう。素直にごめんって。

きっと、みんななら許してくれる。そしていつもの日常に戻るんだ。

楽しい日常。飽きない日常。素晴らしい日常。



157: 番組の途中ですが名無しです(岩手県) :2007/03/17(土) 23:59:18.87 ID:wmLQbrpF0
  
ジョルジュ。僕らみんなの幸せを君に届けるよ。

君は、絶対に幸せになってくれ。僕のぶんも、みんなのぶんも。

まだ雨が降っている。冷たい雨だったはずなのに。今はなぜだか暖かい。

僕の身体を、心を暖めてくれている。心が洗われた気がした。

この雨は、知っていた気がする。全てを。僕の心を。

あのときの雨。僕が泣けないから代わりに泣いてくれたんだよね。

ありがとう。こんな僕のために代わりに泣いてくれて。

みんな、今逝くね。この雨と共に。

・・・・・・
・・・・
・・




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