ドクオは正義のヒーローになれないようです

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/08(日) 18:02:40.44 ID:pnlv+yE80
第四十四話『冬の嵐 その4』


陸上自衛隊朝霞駐屯地――
海上自衛隊横須賀基地――
航空自衛隊府中基地――
etc――

日本国の有する唯一の戦力、陸・海・空自衛隊の基地の悉くが、
混乱に陥っていた。

いきなりの首都に対するミサイル攻撃、
国会の制圧による、自衛隊を出動させる権限を持つ官僚の抹殺――
それらの出来事が、自衛隊の急速な出動を妨げていたのだ。

自衛隊はその所有戦力だけならば、
他の国にも決して引けを取ることのない『軍隊』である。

しかし、自衛隊には『軍隊』として最も必要な物が欠けていた。
それは、実線を経験していないということ。

そもそも日本は憲法により戦争を禁止していることから、
自衛隊もまた戦争を想定して創られた組織ではない。

誰も、今回のような非常時に、どう対応するべきなのか分かってはいないのだ。

そして――
戦争において、そのタイムロスはあまりに致命的だった。



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/08(日) 18:04:04.64 ID:pnlv+yE80
「何が起こっているんだ!」
「各員、報告しろ!!」
「何故出動してはならないのですか! これは宣戦布告――いや、戦争ですよ!?」
「総理の許可が下りるまで動くわけにはいかん!!」
「何を言ってるんですか! 総理大臣なんて、とっくに殺されてますよ!!」

自衛隊がまごまごしているうちにも、
神威師団は着々と進攻を進めていた。

そして――
その対象は、自衛隊とて勿論例外ではなかった。

「!? 何物かの軍団が、基地に向かってきています!!」
「な、何だ、あいつらは!?」
「ば、化物! 化物だ!!!」

隊員達が混乱に陥る。

どこから現れたのか、
山のような武装した戦闘員達と――
それを率いる怪人達。

それらが、自衛隊の基地に向かってまっしぐらに進軍してきていた。

「総員、戦闘態勢を取れ!!
 基地の中に一人も入れるな!!」
「了か……うわああああああああああああああ!!!」
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!」
次々と、基地の内外で悲鳴が響き渡った。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/08(日) 18:06:55.60 ID:pnlv+yE80


             *              *                *


川 ゚ -゚)「殲滅しろ!! 奴らをJOWの中に入れるな!!」
クーがJOW戦闘員に叫びながら、自らもサブマシンガンを構えて応戦した。

JOW日本支部正面出入り口――
そこにも、神威師団率いる戦闘員と怪人達は大挙してきていた。

JOWが、今回の騒動に対して出動しようとした時、
ここにも、大量の敵が押し寄せて来た。

出入り口にバリケードを固め、
ありったけの火力で応戦しているが、
いかんせん、あまりに数が多すぎる。

これでは事態を鎮圧するどころか――
目の前の敵を倒しきれるかどうかも定かではない。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/08(日) 18:07:53.99 ID:pnlv+yE80
(´・ω・`)「万事休す、ってやつかな……」
ショボンが珍しく弱音を吐いた。

ツンの能力では、敵と一緒に生命線であるバリケードまで破壊してしまう為、今は使えない。
アメリカ本部のクックルも、つい先日急用とやらで本部に戻ってしまった為、日本支部にはいない。
ブーンも、未だ強化改造施術室から出てきていない。
初代モナーにあっては、ここ数日行方不明になっているときている。

つまり――
自分達だけで、この場を何とかいなければいけないのだ。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/08(日) 18:08:40.34 ID:pnlv+yE80
「糞ッ! 糞ッ! 命中してる筈なのに、何で死なないんだ!!」
「当たれ! 当たれ! 当た――ぐわあああ!!」

このままでは、ジリ貧だ。
今は何とか凌いでいるが、人員も弾薬も無限ではない。

相手がどれぐらい数がいるのかは分からないが――
全て斃しきる前に弾薬が尽きれば全て終わりだ。

(´・ω・`)「果たして、凌ぎきれるか……」
JOWの他の国の支部も、この惨劇は把握しているだろう。
そこからの救援が来れば、現状は打開できる。

恐らく――この国の自衛隊はあてに出来ない。
国会議事堂での事態からして、自衛隊内部にも、神威師団の息はかかっている筈だ。
少なくとも、出撃不可能なくらいの攻撃は受けているだろう。

川 ゚ -゚)「ショボン! 手が足りない! 応援に来てくれ!!」
(´・ω・`)「――了解!!」
考えるのは止そう。
今は、この現状を何とか乗り切らなくては。
今は、それしか出来ないのだから。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/08(日) 18:11:08.17 ID:pnlv+yE80


               *              *             *


( ▼w▼)「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」
国会議事堂に向け、俺は走り続けていた。

建物を焼く火があちこちで上がり、
夜空がまるで昼間のように紅く照らし出されている。

「…………」
「…………」
――と、俺の周囲を見覚えのある全身タイツに身を包んだ連中が取り囲んだ。

戦闘員――
予想してはいたが、
やっぱり現れたか……!

「ここから先には行かせん!」
「ここが貴様の墓場だ!」
戦闘員達が、一斉に俺に向かって銃口を向けた。

ただでは通さない。
そういうことか。
ならば――
無理矢理にでも、通してもらう!!

( ▼w▼)「どおおぉぉぉけえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
俺は戦闘員達に向かって飛び掛った。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/08(日) 18:12:08.81 ID:pnlv+yE80


              *               *               *


東京湾海上――

「ハインリッヒ様!」
戦闘員の一人が、司令席に座るハインリッヒに告げた。

从 ゚∀从「何だァ? 何かあったか?」
気だるそうに戦闘員に顔を向けるハインリッヒ。

「何者かが、我々の戦艦部隊に向かって接近してきています」
从 ゚∀从「ハン。 海上自衛隊か?
     思ったより早いご到着だな」
「いえ、違います。 それが――」
戦闘員が言葉を濁した。

从 ゚∀从「んだよ。 どもってねえでさっさと言えっての」
苛立たしげに、ハインリッヒが戦闘員に言った。

「はあ。 そ、それが、接近してきているのは、UFOです!!」
从 ゚∀从「ユゥフォオ?」



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/08(日) 18:13:03.88 ID:pnlv+yE80



( ФωФ)「…………」
『漢祭り』のスクリーンに映し出されるハインリッヒ率いる戦艦群を見据えながら、
ロマネスクは操縦席に腕を組んで座っていた。

( ФωФ)「あれか……」
ロマネスクの瞳に怒りの炎が灯る。

( ФωФ)「よくも好き勝手暴れてくれたな。
      我輩が支配する予定の民を無意味に殺し――
      何より、我輩の部下である渡辺を傷つけた罪、
      その命をもって贖ってもらうぞ!!!」
ロマネスクが『漢祭り』を更に加速させ、戦艦郡に突っ込んで行った。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/08(日) 18:14:41.47 ID:pnlv+yE80


              *              *              *


イ从゚ ー゚ノi、「渡辺……」
ドクオとロマネスクが渡辺を連れて行ってから数分後――
入れ違いになる形で、銀もまた渡辺の家までやってきていた。

イ从゚ ー゚ノi、「…………」
銀が家に辿り着いた時、既に渡辺の姿はそこには無かった。

ということは――
ドクオとロマネスクが基地まで連れて行ったのだろうと、
銀はすぐさま理解したが、それでも不安を拭い去ることは出来なかった。

ロマネスクの基地に行って、渡辺の安否を確かめるべきか。

……いいや、そんなことをしている場合ではない。
ここは、ドクオとロマネスクを信じよう。

自分は、この命に替えても、
あの男――セントジョーンズを殺さなければならない。

その為にも――

イ从゚ ー゚ノi、「――――!」
と、銀は背後に何者かの気配を感じ、すぐさま後ろに振り返った。

見ると、いつの間にか一人の女が立っている。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/08(日) 18:15:36.36 ID:pnlv+yE80
(*゚∀゚)「アーッヒャッヒャッヒャ! キヅカレタカ!」
両手にナイフを持った、狂気を目に宿した女――
銀は本能的に、その女から危険を感じ取っていた。

イ从゚ ー゚ノi、「何者じゃ……」
銀が注意深く女を見据えながら、日本刀を抜く。

(*゚∀゚)「アタシハツー! セントジョーンズノナカマッテイヤア、それイジョウノセツメイハイラナイダロ!」
セントジョーンズ……!
矢張り、あいつの手合いか。

ということは――
こうなった以上、ただで済ますつもりは無いということか。
そしてそれは、銀にしても同じだった。

(*゚∀゚)「セントジョーンズノヤロウガ、ココニイリャオマエニアエルッテイッテタケド、ドンピシャダッタナ!
    ハナシニハキイテタガ、ナカナカタノシマセテクレソウジャネエカ!」
つーが嬉しそうにナイフを舌で舐めた。

イ从゚ ー゚ノi、「それ以上勝手に喋るな。
      貴様は、儂の質問にだけ答えればよい。
      話してもらうぞ。 セントジョーンズの居場所と、目的を」
(*゚∀゚)「イヤダッツッタラ?」
挑発するように、つーが笑いながら答えた。

イ从゚ ー゚ノi、「ならば、力ずくでも口を割らせるまでよ!!」
銀が日本刀を閃かせ、一気につーとの間合いを詰めた。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/08(日) 18:16:48.01 ID:pnlv+yE80


               *              *              *


( ▼w▼)「ハアッ…… ハアッ…… ハアッ……」
俺の周りに、戦闘員達の死体が転がっていた。

――人を、殺した。
この感覚だけは、いつまで経っても慣れるとは思えない。

( ▼w▼)「…………!」
感傷に浸ってる場合じゃない。
今は、一刻も早く国会議事堂まで辿り着かないと……!

(=゚д゚)「久し振りラギね」
――と、聞き覚えのある声が、どこからか響いてきた。

( ▼w▼)「――――!」
声のした方に体を向ける。

あいつは――トラギコ!
よりによって、こんな時にこいつと出くわすなんて……!



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/08(日) 18:18:10.18 ID:pnlv+yE80
(=゚д゚)「あの宇宙大魔王とかいう変態は一緒じゃないラギか。
    それなら都合が良いラギ。
    あいつの相手をするのは、骨が折れるラギからね」
トラギコが、一歩一歩こちらに近付いてくる。

( ▼w▼)「……そこをどけ」
無駄と知りつつ、俺はトラギコにそう告げた。

(=゚д゚)「そういう訳にはいかんラギ。
    邪魔者は全て消せって言われてるラギからね。
    お前を通すことは出来ないラギ」
……矢張り、そう来るか。
闘う――
それしか、無いのか……!

(=゚д゚)「今回はお前を生け捕りにしろとは命令されてないラギからねえ!
    最初ッから殺すつもりで行かせてもらうラギ!!!」
トラギコの姿が、虎の半獣人のそれへと変貌する。
直後、俺の視界を紅蓮の炎が覆い尽くした。



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/08(日) 18:19:54.62 ID:pnlv+yE80

                *              *             *

役者は揃った。
闘いの舞台は整った。
闘いの理由は定義された。

( ФωФ)「――――」
从 ゚∀从「――――」
悪であることを自分に課した男が、

イ从゚ ー゚ノi、「――――」
(*゚∀゚)「――――」
永劫の命という縛鎖に苦悩する女が、

( ▼w▼)「――――」
(=゚д゚)「――――」
正義のヒーローになれない男が、
今それぞれの想いを胸に闘う。

最後に立っている者は誰か。
それは、闘いが終わった後にしか分からない。
だがしかし、そんな個人の想いなどお構い無しに、
戦況は加速度的に暴走していく。

今ここに、血戦の火蓋は切って落とされた!


〜第四十四話『冬の嵐 その4』 終
 次回『血戦 その1 〜ドス女VSつー〜』 乞うご期待!〜



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