ドクオは正義のヒーローになれないようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:04:03.90 ID:2G0ud2Dy0
〜 お詫び
   『夏だ! 触手だ! 中出しだ!
   ドキッ☆ 人外だらけの水泳大会!! 〜(内臓)ポロリもあるよ〜』
   作成ということで、今まであらすじと提供をお休みしていましたが、
   出来上がった番外編の出来があまりに酷く、とても人様に見せることができる代物ではないため、
   番外編の投下は無しということにさせて下さい。
   楽しみにしてくれていた皆様、大変申し訳ございません。 〜



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:05:39.29 ID:2G0ud2Dy0
第四十六話『血戦 その2 〜ロマネスクVSハインリッヒ 前編〜』


「UFO!? あれはUFOなのか!?」
「怯むな! 総員戦闘準備!
 相手が何であろうと、叩き落せ!!」
戦艦に乗る戦闘員達が、ロマネスクの『漢祭り』を見て慌てふためく。

それも当然と言えば当然だった。

果たしてこの世の何処に、
戦争の最中に敵としてUFOがやって来るなどといったことを想定する者がいるだろうか?

「対空ミサイル発射用意! 目標、未確認飛行物体!!
 撃てえぇぇぇッッ!!」
号令と共に、戦艦の砲門から次々とミサイルが発射されていった。
が――



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:06:47.69 ID:2G0ud2Dy0
「なあッ!?」
UFOは、そのミサイル群を易々とかわし、戦艦に接近してきた。

馬鹿な。
戦闘員達は狼狽する。

あのミサイルの雨をくぐり抜けた、だと?
そんなことが――あるわけがない……!

「!!?」
直後、『漢祭り』の機体のハッチが開き、
そこから一発のミサイルが発射された。

「あれは――!?」
戦闘員達がそれを目撃した次の瞬間には、
戦艦の一つが木っ端微塵に爆散していた。

吹き荒れる爆炎。
立ち昇る火柱。
さっきまで戦艦があった場所は紅蓮の焔に包まれ、あるのは最早消し炭ぐらいのものだった。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:07:21.62 ID:2G0ud2Dy0
「なッ!? あァ――!?」
戦闘員達の顔が驚愕に凍りつく。

馬鹿な。
一体、何が起こった!?
いくら直撃を受けたとはいえ――
戦艦が、あんなミサイルのただの一発で消し飛んだだと!?

戦闘員達は知る由も無かっただろう。
先程『漢祭り』から発射されたのは、ロマネスク特性対宇宙船艦ミサイル。

いくら戦闘員達の乗る戦艦が優れたものとはいえ、
それは所詮地球上での話。
宇宙での戦闘を念頭に置いた兵器に、耐え切れる筈など有りはしないのだ。

「う、うわあああああああああああ!!」
戦闘員達は、一斉に絶望の叫び声を上げた。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:08:51.37 ID:2G0ud2Dy0


            *            *            *


( ФωФ)「…………」
『漢祭り』操縦席。
ロマネスクは憮然とした顔で、スクリーンに映る火柱に包まれた戦艦の一つを眺めていた。

ロマネスクは、兵器というものが好きにはなれなかった。

大量に殺戮を行う為の武器。
効率のみを重視した、非人道的な武器。
それが、兵器の本質である。

戦闘において人が死ぬ。
これは、仕方が無い。

己の意に副わぬものを、邪魔者として殺して排除する。
これも、この世界では至極当然のことだ。

だが――
それにも、最低限の礼儀はある筈だ。
そう、ロマネスクは考えていた。

殺すべき相手と相対し、その者の顔、心、全てを眼に焼き付け、
敵として認識したうえで、殺すという明確な意思を持って殺す。
殺す際は、素手で、殺したときの感触を自分の手に残し、忘れない。
それが、死者に対するせめてもの礼儀であると、ロマネスクは考えていた。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:09:54.05 ID:2G0ud2Dy0
しかし、兵器は違う。

己を鍛える努力も必要無く、
相手と相対する必要も無く、
相手の断末魔の悲鳴を聞く必要も無く、
殺した感触を味わう必要も無く、
明確な殺意も必要なく、
ボタン一つで、大量に殺戮を行う。

何と言う無粋。
何と言う下種。

恐らく先程戦闘員達は、
ミサイルで東京を攻撃した際、
どれだけの者が死に、もがき苦しんだかなど気にも留めはしなかったのだろう。

自分達がどんな人々を殺したか、
知りもしないのだろう。

そして――
渡辺は、そんな下種な暴力によって、傷つけられたのだ……!



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:10:46.21 ID:2G0ud2Dy0
( ФωФ)「…………!」
ロマネスクは唇を噛んだ。

上等だ。

そういったやり方が好きだと言うのなら、
そういったやり方で殺してやる。

兵器を使用しての戦闘は確かに好みではないが、
外道相手に礼を尽くしてやる必要も無い。

下種は下種の方法で死ね。
それが、せめてもの償いだ。

( ФωФ)「貴様らなど、我輩の拳を使うまでも無い!
       我輩が直々に相手をする価値も無い!
       取るに足らぬ有象無象として、造作も無く死ね!!」
直後、横一面に並んだ戦艦からミサイルやガトリングの砲撃が雨霰と飛んでくる。
しかしロマネスクは『漢祭り』を巧みに操縦しその弾雨をかいくぐると、
連続で対宇宙戦艦ミサイルを発射した。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:11:59.07 ID:2G0ud2Dy0
「!!!!!!」
叫び声を上げる暇も無く、
次々と戦闘員達が戦艦ごと海の藻屑へと化していった。

海の上でミサイルの焔が大火の如く燃え上がり、
地獄の底の様な風景を作り出す。

これはもう戦闘ですらなかった。
ただただ一方的な虐殺。

皮肉にもそれは、
先程まで戦闘員達が行っていたことと全く同じだった。

( ФωФ)「終わりだ」
最後に残った一際大きい戦艦に対し、ロマネスクが対宇宙戦艦ミサイルを発射した。
だが――

( ФωФ)「なッ!?」
命中の直前、ミサイルがまるで意志を持ったかのように軌道を捻じ曲げ、
あらぬ方向へと飛んでいった。

今のは!?
外したのか!?

もう一度、ミサイルを発射する。
しかし――



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:13:42.13 ID:2G0ud2Dy0
( ФωФ)「!?」
またしてもミサイルは軌道を変え、戦艦に命中することなく海の中へと落ちていった。

これで、はっきりと分かった。
外したのではない。
何らかの方法で、ミサイルの軌道を変えられたのだ。

( ФωФ)「――面白い」
どういった手品かは知らないが、飛び道具は通用しないということか。

いいだろう。
武器を使用して闘うのは、自分の本来のやり方ではない。

外道如きに自分の拳を使いたくなかったが――
そう来るならば、やってやる。

( ФωФ)「…………」
操縦をオートパイロットモードに移行させ、『漢祭り』を戦艦の上につけた。
そして、『漢祭り』の下部ハッチを開き、そこから戦艦の甲板を見下ろす。

( ФωФ)「とうッ!!」
何の躊躇も無く、ロマネスクは遥か上空から甲板向かって飛び降りた。
風にマントをはためかせながら、一直線に甲板目掛けて落下していく。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:14:58.62 ID:2G0ud2Dy0
( ФωФ)「!!!!!」
轟音を立てて、ロマネスクは甲板に降り立った。
着地した部分の地面が陥没し、その破片が風圧に巻き上げられて宙に舞ってぱらぱらと落ちる。

「何だ貴様は!!」
「よくも仲間を!!」
間を置かず、数十人の戦闘員達が瞬く間にロマネスクを取り囲んだ。
それぞれが銃器で武装し、その銃口をロマネスクに向けて突きつけている。

( ФωФ)「…………」
冷ややかな目で、ロマネスクはその光景を見つめていた。

圧倒的な数の敵に周囲を囲まれているというのに、
その顔からは微塵の不安や恐怖も感じさせない。
どころか、余裕すら見て取ることが出来る。

「馬鹿な奴だ。 ミサイルが通用しないからといって、わざわざ一人で乗り込んで来るとは」
戦闘員達が、ロマネスクの愚行を嘲るように顔を歪めた。
だが――



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:16:25.17 ID:2G0ud2Dy0
( ФωФ)「フハハッ」
ロマネスクは、不遜に笑うのみであった。

「何が可笑しい!」
「この人数を前に、無事でいられるとでも!?」
戦闘員達が怒りの声を上げる。

しかしロマネスクはそんなものを一切意に介さずに、
( ФωФ)「人数が多いだとか――
       強い武器を持っているからだとか――
       そんなもので我輩に勝てるとでも思っているのか」
ただ一言、そう言った。

「なあ!?」
「貴様、舐めるのもいい加減にしろ!」
戦闘員達は、知らなかった。

目の前にいるのは――
ミサイルなんかより、もっと恐ろしい存在なのだということを。

( ФωФ)「よかろう。 ならば身をもって知るがいい。
       我輩と闘うことが、どういうことかということを!!」
ロマネスクが叫んだ。
次の瞬間――



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:18:40.42 ID:2G0ud2Dy0
「――え?」
最前列にいた戦闘員の数名の上半身が、消失していた。

いや、正確に言えば消失したのではない。
消失したように見えたのだ。

「ええ?」
後ろに居た戦闘員達は、その光景をぽかんと見ているだけだった。
何が起こったのか、理解が現実に追いついていなかった。

ボチャン、ボチャン。

何かが海に落ちる音がして、
ようやく戦闘員達は何が起こったのかを知ることが出来た。

ロマネスクの右腕でのバックブロー。
その一発で、5名もの戦闘員の上半身だけが吹き飛ばされ、海に落ちたのだ。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:20:44.00 ID:2G0ud2Dy0
( ФωФ)「はァァァァッ!!」
そして、戦闘員達が呆気に取られている隙を見逃すようなロマネスクではなかった。
前蹴りで、手近にいた戦闘員の一人を蹴り飛ばす。

「ぎゃあああああああああああああああ!!!」
どてっ腹に大穴を開けられ、
内臓を周囲に撒き散らしながら哀れな戦闘員が後ろに飛ぶ。

「ぎゃばあッ!!」
その人間弾丸が後ろにいた戦闘員に激突し、
激突を受けた戦闘員の体は衝撃で風船のように破裂した。

「な……! うわああああああああああああああああああ!!!」
そこで、ようやく危険を感じ取った残りの戦闘員達が、
悲鳴を上げながらロマネスクに向かって銃を乱射する。

( ФωФ)「そんな玩具が効くか、愚か者が!!
       魂の込められた拳以外、この我輩には通用せん!!!」
銃弾をものともせず、ロマネスクは戦闘員達に突っ込んだ。

「ひあああああああああああああ!!」
「ぎゃああああああああああああ!!」
ロマネスクが腕を振るう毎に、脚を振るう毎に、
戦闘員達がまるでチリ紙の様にその命を散らしていく。



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:22:21.86 ID:2G0ud2Dy0
何なんだ、これは!?
幸運にもまだ生き残っていた戦闘員は、目の前にいる化物の存在を必死で否定しようとしていた。

こんなことがある筈がない。
こんな出鱈目なものが、存在していていいわけがない。

この男が乗っていたUFOから発射されたミサイル。
あれも、確かに恐るべきものだった。

しかし――
この男は、そんなミサイルをもってしてさえ、
なお比べ物にならぬ圧倒的暴力。
核兵器ですら、この男の前ではちっぽけな物のように感じられた。

この男は、まるで生きている兵器――

――いや、兵器どころではない。

戦略。
そう、戦術か、戦略の域だ。

この男が闘う、その行為自体が既に、戦術・戦略と同じ意味を持っている。
一個の戦士が、戦略級の戦力を有する。
それが、どれだけ常識外れなことであるか……!



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:24:11.69 ID:2G0ud2Dy0
「あ、う、あああああああああああ」
半狂乱のうち、戦闘員はロケットランチャーのトリガーに指をかけていた。
震える手で、照準をロマネスクに合わせる。

よし。
向こうはまだ、こちらに気付いていない。
これで、仕留めてやる。

だが――
こんなもので、本当にあの男を斃せるのか!?

いいや!
やるしかない!
殺せぬまでも、ダメージは与えることが出来る筈だ。

「死ィ――!」
戦闘員がトリガーを引こうとしたその時――



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:25:10.68 ID:2G0ud2Dy0
「バウゥゥッ!!」
空から降ってきた犬が、戦闘員の喉笛に喰らい付き、
そのまま地面に押し倒した。

「な! あ! がああああッ!!」
戦闘員が必死に抵抗するも、既に犬の牙は頚動脈にしっかり食い込んでおり、
最早脱出は不可能な状況だった。

「ごぼああああああああああああッ!」
犬がそのまま一気に戦闘員の頚動脈を食い千切った。
噴水のような血を首から放出し、戦闘員が息絶える。

「!? なあァッ!?」
他の戦闘員も、突然乱入してきたその犬に気がついた。

犬!?
こんな動物が、何故こんな所に!?



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:26:08.17 ID:2G0ud2Dy0
「ううおおおおおおお!!」
戦闘員が犬に向けて発砲する。
しかし犬は素早い身のこなしでその銃撃を避け、
空中で宙返りして地面に着地した。

「ワン! ワン! バウッ!
 (『WAN=HO=NYANS』の1、ジョナサン・ザ・ボーンイーター)」
ジョナサンが、戦闘員達に向かってそう吠えた。

「舐めるな! この畜生が!!」
戦闘員が再びジョナサンに向けて銃を撃とうとした瞬間、
更にUFOから二匹の動物が飛来してきた。

猫と鼠。
本来天敵同士の筈の二種類の動物が、手を組んで戦闘員に立ち向かう。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:27:33.47 ID:2G0ud2Dy0
「フギャー! シャーッ!」
猫が、ジョナサンに銃口を向けていた戦闘員の顔を思い切り引っ掻いた。

「ぐわあッ!!」
たまらず顔をおさえて、戦闘員がよろめく。
「チュー!」
その足元に、今度は鼠が噛み付いた。

「ぎゃッ!」
戦闘員が大きくバランスを崩す。
次の瞬間、戦闘員は足を甲板から滑らせてしまった。

「うわああああああああああ!!」
戦闘員はそのまま甲板から落下し、船の上から海へと落ちていった。

「ニャーン! ニャーン!
 (『WAN=HO=NYANS』の2、ヴィクトリア・ザ・ツナフレーク)」
「チュー! チュー!
 (『WAN=HO=NYANS』の3、トーマス・ザ・ネズミーマウス)」
ヴィクトリアとトーマスが、それぞれジョナサンに寄り添い構えを取る。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:28:57.10 ID:2G0ud2Dy0
「な、何だこいつらは!? ぐああ!!」
動物が戦闘員を翻弄する。
その有り得ない現象にたじろいでいた戦闘員の目を、
いずこかより飛来した鳥が嘴で突き刺した。

「チュン! チュン! チュン!
 (『WAN=HO=NYANS』の4、ダニエル・ザ・パラパラグラス)」
嘴を血で紅く染め、ダニエルが宙を羽ばたく。

「ワンワン!」
「ニャーニャー!」
「チューチュー!」
「チュンチュン!」
四匹の動物達が、揃ってロマネスクの前へと並ぶ。

四匹はロマネスクに向かって頭を下げると、
「ワンワンワン!
 (『WAN=HO=NYANS』、只今馳せ参じました)」
ジョナサンが、恭しくそう告げた。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:30:54.41 ID:2G0ud2Dy0
( ФωФ)「何故来た! 『漢祭り』で待っていろと言っておいただろうが!!」
ロマネスクがジョナサン達を厳しく叱責した。

「ニャーニャー。
 (しかし、お言葉ですがロマネスク様。
  主のみを危険に晒して己はのうのうと安全な場所で待っているなど、臣下として失格。
  主のお役に立てさせて貰えぬことは、臣下にとっては他のいかなる罰より辛うございます)」
「チューチュー!
 (僕達だってロマネスク様と一緒に闘いたいんです!!)」
縋るような目で、ヴィクトリアとトーマスが懇願した。

「チュンチュン!
 (ロマネスク様には到底及びもつかぬ我々ですが、どうか我々の力をご信頼下さい。
  我々は、ロマネスク様の為ならば千人力の力を発揮する所存です)」
ダニエルがそう強く訴えた。

( ФωФ)「馬鹿者共が……」
ロマネスクがやれやれといった風に溜息をついた。
しかし、その口の端にはどこか満足げな笑みが浮かんでいる。

( ФωФ)「良いだろう! ならば闘うがいい『WAN=HO=NYANS』!
       その力と忠義、このロマネスクに示してみせよ!!」
ロマネスクと『WAN=HO=NYANS』が、一斉に戦闘員達に向かって駆け出した。



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:33:09.11 ID:2G0ud2Dy0



( ФωФ)「フッ、他愛も無い」
しばらく後――
甲板の上には、夥しい数の戦闘員の死体が転がっていた。

ある者は上半身を砕かれ、ある者は頭部を砕かれ、
その無残な屍を晒していた。

甲板には、ロマネスクと『WAN=HO=NYANS』以外に生きている者は存在していなかった。

「ワンワン!(これで終わりみたいですね)」
「ニャーン!(随分と呆気なかったわね)」
ジョナサンとヴィクトリアがほっと胸を撫で下ろす。

( ФωФ)「――いや、どうやらそうではないようだぞ」
ロマネスクは感じていた。
戦艦に残る、大きな強者の気配を。

これで終わりである筈がない。
まだ、ミサイルの軌道を強引に捻じ曲げた奴が残っている。

あんな芸当、先程屠った戦闘員達が出来る芸当とは思えない。
ならば――



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:34:23.77 ID:2G0ud2Dy0
从 ゚∀从「よぉ……」
一人の女が、操舵室へと続くドアを開けて甲板へと姿を現した。
ぼさぼさの髪に、手には漆黒の金属バットを握っている。

( ФωФ)「下がっていろ、ジョナサン、ヴィクトリア、トーマス、ダニエル」
ロマネスクが『WAN=HO=NYANS』を後ろへと下がらせた。

( ФωФ)「貴様が将か」
女と向き合い、ロマネスクが訊ねた。

从 ゚∀从「あァ、その通りさ。
      一応自己紹介しとこうかねェ。
      俺はハインリッヒ高岡。 『神威師団海上戦艦部隊の指揮官さ。
      ――って、こんな肩書きもう意味がねえか。
      手前が、一人残らず俺の兵隊をぶっ殺してくれたからなァ」
自分の部隊が壊滅させられたというのに、
ハインリッヒは怒るどころかどこか楽しそうに、そう答えた。

( ФωФ)「部下が死んだというのに、随分な態度だな。
      それより、貴様がもっと早く出てきていれば、
      あるいは部下も死なずに済んだのではないか?」
甲板に転がっている死体を指し、ロマネスクが言った。

从 ゚∀从「ハァ? 何でこの俺が部下なんぞの為に闘わなきゃなんねんだよ。
     雑魚は雑魚なりに、僅かでも敵の体力消耗くらいの役には立って貰わねェとな。
     それに、将の為に兵が死ぬのは当然だろ?」
当たり前のように、ハインリッヒが告げる。
だが――



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:36:02.45 ID:2G0ud2Dy0
( ФωФ)「逆だ、愚か者が!
       将の為に兵が死ぬのではない! 兵の為に将が死ぬのだ!!
       兵は将の為に忠をもって己を捧げる! ならば将はそれに対し義をもって命で応えねばならぬ!
       それこそが将たるものの務め! 忠義の証!
       それを部下を見殺しにし、自分だけ生き残るなど将として言語道断!!
       貴様など、将を名乗る資格は無いわ!!!」
ロマネスクは激昂してハインリッヒに返した。

从 ゚∀从「ハアァ?」
ハインリッヒは呆れた様に口を開けた。

これは、別にハインリッヒが特別冷酷な訳ではない。
ハインリッヒがロマネスクの言葉を理解出来ないのは、当然のことなのだ。

戦闘において、兵を指揮する将の命は何よりも重要である。
指揮者のいなくなった軍隊ほど脆いものは無い。
将を護る為なら、兵を犠牲にするのが戦術上当たり前のことなのである。

それほど、戦闘においては将の存在は大きなものなのだ。

分かり易く言うならば、将棋やチェスが良い例である。
いくら他の駒の数が相手より勝っていようが、
王将やキングを取られたらその時点で敗北が確定する。

にも関わらず――
ロマネスクは、兵の為に将が死ぬのが当然と言い放ったのだ。

それは、常識に対する真っ向からの反逆だった。



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:37:33.92 ID:2G0ud2Dy0
从 ゚∀从「とんだイカレポンチだな!
     兵の為に将が死ぬだって!?
     今時、正義のヒーローでさえそんな眠たい台詞は言わねえぞ!
     お前の考えは間違ってんだよ!!」
ハインリッヒはそう言ってロマネスクを嘲笑した。
その笑いには、どこか哀れみすら感じて取れた。

( ФωФ)「間違っている?
       フ、フフフ、フハハハハ!!」
やおら、ロマネスクは笑い出した。

从 ゚∀从「何笑ってんだァ手前?」
ハインリッヒが怪訝そうな顔をする。

( ФωФ)「その通り! 間違っている!
      誰も、我輩の考えを正しいなどとは言うまい!
      だからこその悪!!
      世に言う常識や倫理や秩序に背反することこそ悪の本質!!
      間違えることこそ、悪の証!!」
自分は間違っている。
はっきり、ロマネスクはそう言った。

( ФωФ)「将の為に兵を殺す、成る程、確かに正しい!
       文句のつけようの無い正しさだ!
       だが所詮、そんな正しさなど兵を殺すことでしか将足りえなかったものの言い訳!
       このロマネスク、そんなものに縋らねばならぬほど軟弱ではない!!
       そんな正しさなど、こちらから願い下げだ!!」
正義であるからこそ、辿り着けない境地がある。
悪だからこそ、得られるものがある。
それを、ロマネスクは誰よりも知っていた。



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:39:03.80 ID:2G0ud2Dy0
( ФωФ)「間違っている!? 最高の褒め言葉だ!!
      我輩は宇宙大魔王! 邪悪の権化! 絶対の悪!!
      ならばこそ我輩のやる事為す事、全て間違っていて当然!!
      間違えることこそ我が生き様!!
      そしてその間違いで、脆弱な正しさなど全て打ち砕いてくれる!!!」
从 ゚∀从「――――!」
ハインリッヒは思わず後ろにのけぞった。

こいつ――馬鹿だ。
嘘偽り無く、本気でこんな寝言を言ってやがる。

( ФωФ)「では行くぞ、ハインリッヒ!!
      悪の力、存分に味わうがいい!!!」
ロマネスクが黒き疾風となって、ハインリッヒに襲い掛かった。


〜第四十六話『血戦 その2 〜ロマネスクVSハインリッヒ 前編〜』 終
 次回、『血戦 その3 〜ロマネスクVSハインリッヒ 後編〜』乞うご期待!〜



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:40:39.00 ID:2G0ud2Dy0
この番組は、

ラララ無人君
やりやりくりくりやりくりくりおいしいやりくりどこにある
チワワ

の提供でお送りしました。



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/16(月) 20:43:41.15 ID:2G0ud2Dy0
あと番外編の件ですが、本当にすみませんでした。
酷いというのは下ネタが過激だからではなくて、
純粋に面白くないからです。
自分でも面白いと思えませんので、この番外編を投下することは決して無いです。
我侭言って本当にごめんなさい。



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