ドクオは正義のヒーローになれないようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:26:26.55 ID:N3G0rUCN0
第五十話『『魔弾』VS『銀獣』、真冬の夜の夢』

〜ネタ切れ〜

( ´∀`)「何だ。 手前、まだ生きてたのかよ」

(’e’)「……辛うじて、ではあるがね……」

( ´∀`)「ふーん。 ま、いいや。 手前には借りがあるからな、ここで死ね」

(’e’)「……待て」

( ´∀`)「んだァ? 今更命乞いか?」

(’e’)「いや、違う。 取引だ。
   君――モナー君、といったか。
   どうだろう? 私を助けてはくれないか?」



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:27:54.76 ID:N3G0rUCN0
( ´∀`)「はァ? 何言ってんだコラ。
     何で俺がそんなことしなくちゃなんねえんだよ」」

(’e’)「まあ話を聞きたまえ。 取引、と言ったろう。
   私を助けてくれれば、君に素晴らしいプレゼントを約束しよう」

( ´∀`)「…………?」

(’e’)「……人外の肉体、欲しくはないかね?」

( ´∀`)「はッ! 何を言い出すかと思えば、下らねェ。
     悪いが、化物になる趣味なんざねェんだよ」

(’e’)「果たして、本当にそうかな?」

( ´∀`)「あァ?」



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:28:45.78 ID:N3G0rUCN0
(’e’)「君は、『銀獣』を愛しているのだろう? 殺したい程に」

( ´∀`)「それがどうした。 俺を怒らせて、寿命を更に縮めるつもりだってんなら協力するぜ?」

(’e’)「だが、その想いは実らない。 何故なら、君は人間だからだ。
   『銀獣』とは違う。 君はいずれ、老い、朽ち果て、死ぬ。
   君は、『銀獣』と共に歩むことは出来ない。
   人間は、人外と同じ時を過ごすことなど出来はしない」

( ´∀`)「…………」

(’e’)「だが――同じ人外の肉体になることが出来れば?
   私には、それを実現出切る自信がある」

( ´∀`)「…………」

(’e’)「さて、もう一度訊こう。
   私を助けてはくれないかね?」



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:29:35.18 ID:N3G0rUCN0


                *              *              *


イ从゚ ー゚ノi、「モナー……! お主、その姿は一体……!」
銀が信じられないといった表情でモナーに問う。

普通なら、有り得ない。
モナーの年齢は80歳近く。
その筈なのに、今のこの姿は、まるで少年そのものである。

――銀には、その答えが分かっている筈だった。
しかし、その答えを信じたくなかったのだ。
モナーが、あの男が、こんな――

( ´∀`)「一体どうして?
     お前がそれを訊くのか?
     もう分かってんだろ。
     怪人改造施術――セントジョーンズの生んだ、狂気の産物の力さ」
ヒュンッ、とモナーが手に持っていた弓を一回転させ、再び握り直した。

矢張り――!
銀は唇を噛んだ。
セントジョーンズ、あの男が――!



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:29:54.16 ID:N3G0rUCN0
イ从゚ ー゚ノi、「お前は、あいつに無理矢理改造されて――」
銀が呻くように言葉を搾り出した。

許さん、セントジョーンズ。
こいつを――モナーを、こんな風に弄ぶなんて――

( ´∀`)「無理矢理改造されて? クッ、ククク……」
イ从゚ ー゚ノi、「!?」
しかし、モナーからは銀の予期した答えは返ってこなかった。
変わりに、モナーの押し殺したような笑い声が低く響く。

( ´∀`)「クアーーーッハッハッハッハッハッハァ!!
     お目出度い思考回路だなァ!
     無理矢理!? これは俺が望んだことさ!!
     俺が60年前のセントジョーンズへの貸しと引き換えに、奴からこの体を貰ったんだよ!!」
狂ったようにモナーが笑い出した。
その笑いを聞き、銀は、ある一つの結論に辿り着く。

イ从゚ ー゚ノi、「まさか――じゃあ、まさか、セントジョーンズが生きているのは……!」
( ´∀`)「その通り! 俺の仕業さ!
     お前と闘った後――俺はもう一度闘った場所に戻ってみたのさ!
     そしたら、そこに死にかけのセントジョーンズがいた!
     そこで俺達は取引を交わしたのさ!
     セントジョーンズの命を助ける代わりに、人外の体を貰うってなァ!!」
銀は愕然とした。

じゃあ――じゃあモナーは、あの後――
自分と闘った後から既に、道を踏み外していたというのか……!



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:31:04.53 ID:N3G0rUCN0
イ从゚ ー゚ノi、「モナー! お主は、お主は――!」
形容し難い怒りが、銀の頭の中で渦巻いていた。

イ从゚ ー゚ノi、「お主は、そんな体を手に入れる為に、セントジョーンズに加担していたというのか!!」
( ´∀`)「そうだよ」
事も無げに、モナーは答えた。

イ从゚ ー゚ノi、「ふざけるな!
      お主は、自分が何をしたのか分かっているのか!?
      セントジョーンズの所為で、何人の罪無き人々が死んだと思っておるのじゃ!!」
銀は叫んだ。

今現在、東京を襲っているこの惨劇。
これは間接的にとはいえ、セントジョーンズがもたらしたものだ。

いや、それだけじゃない。
今までの怪人騒動だって、セントジョーンズの仕業だ。
その中で――一体、どれ程の命が失われたことか……!



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:31:36.30 ID:N3G0rUCN0
( ´∀`)「どうでもいいなァ」
つまらなそうに、モナーは言った。

( ´∀`)「他人の命だの、人としての道だの、正義だの、悪だの、俺には全く興味がねェ。
     俺が望むことはただ一つ、お前と、60年前の続きをすること、それだけだ」
モナーが弓を銀に向かって構える。
その目には、一切の罪悪感も呵責も無かった。

イ从゚ ー゚ノi、「お主は――」
そこまで言いかけて、銀は止めた。

目の前にいる男は、最早モナーであってモナーではない。
人間でいることを止めた、恐ろしく醜悪な『何か』だ。
モナーではない。
断じて――モナーなんかでは、ない……!

ミ,,゚(叉)「よかろう! ならば望み通り、続きをやってやる!
    ただし、お主の死という幕切れでな!!」
銀がその姿を銀色の狼へと変貌させ、モナーに飛び掛った。

( ´∀`)「…………」
モナーは静かにそれを見つめ――



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:32:54.10 ID:N3G0rUCN0
ミ,,゚(叉)「!!?」
次の瞬間、銀の左腕が二の腕の部分から弾け飛んだ。

ミ,,゚(叉)「――――!?」
何が起こったのか、銀は一瞬理解出来ないでいた。

見ると、モナーが矢を放ち終えた体勢でこちらを見据えている。
馬鹿な。
既に、撃っていたというのか。
この自分に、知覚出来ない程の速さで――

ミ,,゚(叉)「!!!!!!!!」
次は、右の腕だった。

今のは!?
いや、モナーが更にもう一発、矢を放った様子は無い。

最初の一撃こそ見ることは出来なかったが、
警戒した状態で次の一発を見逃すなどある筈がない。
ならば、どうして――



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:33:55.48 ID:N3G0rUCN0
ミ,,゚(叉)「なッ!?」
銀は、見た。
モナーの放った矢が、弧を描きながら銀の周囲を旋回しているのを。

銀の知るモナーの『魔弾』は、千里眼による未来予測で相手の次の動きを読み、
それに合わせて射撃することで、まるで矢が標的に吸い込まれるように命中する技術だった。

しかし、今のこれは違う。
比喩でなく、矢が意思を持っているかのように、自在に軌道を変化させている!

いや、軌道が変わるだけじゃない。
その威力も、ただの矢とは段違い……!



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:34:48.36 ID:N3G0rUCN0
ミ,,゚(叉)「!!!!!」
突如、矢が銀へとその軌道を変えた。
さながらモナーの意識が乗り移っているかのように、真っ直ぐに銀へと襲い掛かる。

ミ,,゚(叉)「チィッ!!」
横っ飛びで、その矢を交わした。

腕が再生するまでには、まだ時間がかかる。
それまでに、何とかしてこの『魔弾』を避け続けて――

ミ,,゚(叉)「!!!!!!!!」
銀の左脚を鋭い痛みが襲う。
驚き、視線をと移した時には、既に左脚は胴体から切り離されていた。

ミ,,゚(叉)「ぐああぁッ!!」
片足になり、バランスを崩して銀が倒れた。

馬鹿な――
強過ぎる!
これが、モナーの新たな力だというのか……!



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:35:26.46 ID:N3G0rUCN0
( ´∀`)「ハァ、ハハハァ、ハァハハハハハハハァ!」
右手で顔を掴み、モナーが歪んだ笑い声を上げた。

( ´∀`)「凄い! これが、人外の力か! これが俺の力か!!
     体の奥から、どんどん力が湧き出してくる!!
     これが――『銀獣』のいた領域なのか!!!」
モナーの股間ははち切れんばかりに膨張していた。

ついに手に入れた人外の体――
その素晴らしさに、彼は完全に酔いしれていた。

( ´∀`)「ああ―― そういやこんなことをしてる場合じゃねえな。
     仕上げを、しとかねえと」
モナーが笑うのを止め、銀へと向き直った。

イ从゚ ー゚ノi、「くッ――!」
銀には既に人狼の姿を留める力は無くなっていた。
両腕と片脚をもがれ、立ち上がることもままならない。
彼女に出来ることは、最早モナーを睨むことだけであった。

( ´∀`)「そう怖い顔をするなよ。
     折角の美人が台無しだぜ」
モナーは銀の下まで歩み寄り、顎先に手を当てて顔を引き起こした。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:36:29.43 ID:N3G0rUCN0
( ´∀`)「どうやらつーとの闘いで、相当消耗してたみてえだな。
     動きにキレが無かったのは、その所為か。
     ま、そんなことで泣き言なんか言わねえよな。
     殺し合いってのは、そういうもんだからな」
イ从゚ ー゚ノi、「…………!」
銀は何も言わずにモナーを見据える。

( ´∀`)「いいねえ、その目。 あの時と、同じだ。
     その目が、忘れられなかったんだ」
モナーは銀の目を見つめ――
おもむろに、その唇を銀の唇に合わせた。

イ从゚ ー゚ノi、「――――!」
銀が首を動かして唇を離す。

( ´∀`)「ククッ。 接吻の一つや二つで慌ててんなよ。
     処女ってわけでもねえだろが」
イ从゚ ー゚ノi、「貴様……!」
銀がより一層鋭い目つきでモナーをねめつけた。

( ´∀`)「安心しな。 動けないお前を犯すとか、そういう下種な真似はしねえよ。
     本来なら、俺と共に夜を生きてくれるのが最善だが――お前にそのつもりはねえだろ?
     ――だから、ここで死んで、俺の中で永遠になってもらう」
モナーが背中の矢筒から矢を引き抜き、
その切っ先を銀の心臓へと向ける。

( ´∀`)「じゃあな、『銀獣』」
イ从゚ ー゚ノi、「――――!!」
モナーの手に握られた矢が振り下ろされ――



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:37:33.91 ID:N3G0rUCN0
( ▼A`)「や……めろ……!」
ドクオの声が、モナーの動きを中断させた。

イ从゚ ー゚ノi、「来るな! マスク仮面!!」
銀が叫ぶ。

ドクオの体には無数の傷口が開き、
そこから黒いへどろのようなものと血が混ざったものが、
とめどなく流れ続けている。
どこから見ても、生きているだけでやっとな状態だった。

( ▼A`)「汚い手でドス女に触るんじゃねえ……
     殺すぞ……!」
しかし――そんな状態にも関わらず、なおもドクオは立っていた。
歯を食いしばり、必死に意識を体に繋ぎ止めて、何とか闘おうとする。

( ´∀`)「……んだよ。 手前かよ。
     いい所で、邪魔しやがって。
     しぃの野朗、きっちり止めを刺しとけってんだ」
モナーが鬱陶しそうにドクオへと視線を移した。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:38:31.05 ID:N3G0rUCN0
イ从゚ ー゚ノi、「逃げろ、マスク仮面! この男と、闘ってはならん!!」
銀が必死にドクオにそう告げた。
しかし、ドクオはその場から一歩も動かず、黙ってモナーと対峙する。

( ´∀`)「おーおー。 幸せだなあ、ドクオ。 『銀獣』に、ここまで心配してもらえて」
モナーが憎しみのこもった視線でドクオを見据えた。

( ▼A`)「…………」
ドクオはそれに対して何も答えなかった。
いや、答える体力すら残っていない、と言った方が正しかった。

( ´∀`)「人外の力―― 永遠の命――
     それを持っているというだけで、『銀獣』の傍にいるお前に、俺はどれだけ嫉妬していたことか、
     どれだけ、老いさばらえた自分の体を呪ったことか、
     手前には分かんねえだろうなァ……」
モナーが弓に矢を番え――
( ´∀`)「分かる筈もねェよなァッ!!」
ドクオに向かって、『魔弾』を放った。

イ从゚ ー゚ノi、「マスク仮面!!!」
銀の絶叫は、しかし、何の意味も為さなかった。
『魔弾』は一直線に、ドクオの心臓目掛けて飛んでいく。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:39:02.15 ID:N3G0rUCN0
( ▼A`)「!!!!!!」
『魔弾』が正確にドクオの心臓を撃ち抜いた。

( ▼A`)「ガハッ……!」
胸に大穴を開けられて、ドクオがうつ伏せに倒れる。
辛うじて、即死することだけは免れてはいるが、ただそれだけ。
最早、ただ生きているだけだった。

( ´∀`)「止めだ」
モナーがもう一発『魔弾』を放つ。

イ从゚ ー゚ノi、「ドクオオオオオォォォォォォォッ!!」
銀の声も空しく、『魔弾』はドクオの脳天に――



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:39:44.85 ID:N3G0rUCN0
( ´∀`)「!!!!!!!!」
イ从゚ ー゚ノi、「!!!!!!!!」
モナーと銀が、同時に息を呑んだ。

『魔弾』は、ドクオに命中しなかった。
必殺必中である筈の『魔弾』。
それを防いだのは――

( ФωФ)「これ以上、この男に手を出すことは許さん」
宇宙大魔王――杉浦ロマネスクだった。
彼が、ドクオに命中する直前で魔弾を掴み、ドクオの命を救ったのだ。

( ФωФ)「フンッ」
ロマネスクが矢を掴んだ手に力を込め、
手の内で矢を粉々に握り潰す。

( ´∀`)「……ったく、次から次へと邪魔ばかり入ってくんじゃねェよ。
     殺すぞ、おっさん?」
モナーが苛立たしげに舌打ちをした。

( ФωФ)「やってみるがいい。
      飛び道具如きで、我輩を斃せるのならな」
ロマネスクが手を開き、矢の破片を地面に落としながら言った。

( ´∀`)「ヘッ、上等――」
モナーが弓を構え、臨戦態勢に入る。
二人の間の空間が、互いの闘気が張り詰め――



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:40:20.67 ID:N3G0rUCN0
(*゚ー゚)「やめておきなさい」
いつの間にかこの場に来ていたしぃの声が、モナーを動きを制した。

( ´∀`)「いきなり横槍入れてきてんじゃねえよ。
     大体お前、標的くらいきっちり殺しておけよ。
     生きてんじゃねえか、こいつ」
モナーが悪態をつきながらドクオを指し示した。

(*゚ー゚)「どの道もう助からないわ。
    そんなことより――その男と闘うのはやめておきなさい」
しぃが静かにそう告げる。

( ´∀`)「あァ? 手前、まさか俺が負けるとでも?」
(*゚ー゚)「そうよ」
一秒の間も置かず、しぃは即答した。

( ´∀`)「てめ――」
(*゚ー゚)「勘違いしないで。 別に、あなたが弱いと言ってるわけじゃないわ。
    その男――ロマネスクが別格過ぎるだけ」
しぃはモナーを諌めるように言った。



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:40:54.96 ID:N3G0rUCN0
(*゚ー゚)「この男の心の中を覗いてみて分かったわ。
    杉浦ロマネスク――この男に、弱点や死角は無い。
    超人的な身体能力、
    鋼のような精神力、
    天才的な戦闘センス、
    何より、圧倒的な暴力。
    この男に勝てる者は、地球上――いいえ、宇宙全部を探してみたって、
    『この世』には存在しないでしょうね」
しぃが淡々とそう続ける。
それは事実上敗北を認めているようなものであったが、
しぃの表情には、不気味な程の余裕が漂っていた。

( ФωФ)「フン。 先程、我輩の心の中に何者かが入ってきた感じがしたが――貴様だったか。
      まあ良い。 そこまで分かっているなら、大人しくここで斃されるがいい」
ロマネスクが鼻で笑ってそう答えた。

(*゚ー゚)「何か思い違いをしているようね。
    確かにあなたに弱点は無いと言ったけど、
    勝つ方法が無いとは一言も言っていないわよ?」
しぃが口の端に笑みを浮かべた。
それは決して強がりなどではない。
確固たる自信がある故の、笑みだった。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:41:28.48 ID:N3G0rUCN0
( ФωФ)「ほう、面白い。 そんなものがあるならば、教えてもらおうか」
(*゚ー゚)「言われなくても、すぐに見せてあげるわ。
    ――来なさい、棺桶死オサム!!」
しぃの合図と共に、上空から何かが勢い良く落下してきた。

( ФωФ)「!?」
ロマネスクが目を凝らす。

あれは――棺桶?
黒色の、棺桶だ。

( ФωФ)「!!!」
黒色の棺桶が地表に到達し、深く地面に突き刺さった。
あれだけの高さから落下したというのに、棺桶には傷一つついていない。

【 + 】
棺桶から不気味な雰囲気が漂う。
と、棺桶の蓋が軋むような音を立ててゆっくりと開いていった。

【+  】ゞ゚)「…………」
蓋の開いた部分から、青白い顔の青年が姿を覗かせた。
まるで死人の様な、瞳と顔色。
男はゆっくりと周囲を見渡すと――

【 + 】 バタンッ
再び、棺桶の蓋を閉めた。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:42:42.24 ID:N3G0rUCN0
(*゚ー゚)「ちょっと! 何中に戻ってんのよオサム!!」
しぃが棺桶の蓋に手をかけこじ開けようとする。
しかし、棺桶の蓋は天岩戸のように固く閉ざされ、決して開かない。

【 + 】「い、嫌だ! 外に出るの怖い!! 外の世界怖い!!
     み、みんな、みんながぼ、ぼ、僕のこと馬鹿にしたような目で見てる!!」
棺桶の中から、情けない悲鳴が響き渡った。

ロマネスクも銀もモナーも、
そのあまりに予想外の状況にあっけに取られて何も言えなくなっている。

(*゚ー゚)「誰もそんな風にあなたを見てなんかいないわよ!
    ね? いい子だから、ちょっと蓋を開けなさい? ね?」
しぃの必死の説得が功を奏したのか、再びゆっくりと棺桶の蓋が開いていく。

【+  】ゞ゚)「こ、こ、怖い。 自分以外の人間、怖い。
      や、や、やっぱり皆、僕のことをい、い、苛めるつもりなんだ。
      僕なんか、か、か、外に出る資格ないんだ……!」
(*゚ー゚)「落ち着きなさい。 それでね、オサム。
    今日はあなたにお願いがあるの。
    あそこのおじさんと闘って」
しぃがそう言ってロマネスクを指差した。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:43:54.52 ID:N3G0rUCN0
【+  】ゞ゚)「ヒィィィッ! い、い、嫌だ!!
       あのおじさん、す、す、凄く怖そうだもん!!
       ぼ、ぼ、僕、嫌だ!! あんな人とた、た、闘うなんて無理だ、だよ!!!」
(*゚ー゚)「ちょッ! こら! 逃げようとするな!!」
オサムが再び蓋を閉めようとするのを、しぃは蓋に手をかけて寸前で止めた。
しかしオサムはなおも蓋を閉めようとする為、しぃとオサムとで綱引きのような形になる。

【+  】ゞ゚)「嫌だァ! 嫌だァ! 嫌だァァァァァァァ!!!」
オサムが哀れなくらい情け無い悲鳴を上げ続ける。
それはほとんど、子供同然の姿だった。

( ФωФ)「とんだ茶番だな。
      そんなすくたれ者が、我輩に勝つ手段だと?」
呆れた様にロマネスクが言った。
無理もない。
棺桶死オサムの今の姿を見る限り、
ロマネスクに勝つどころか、まともに闘えるかどうかも怪しいくらいだ。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:45:03.62 ID:N3G0rUCN0
(*゚ー゚)「ええ、そうよ。 彼がこそあなたの天敵。
   あなたは、為す術も無く彼に敗れる。
   彼――棺桶死オサムの異能、『死獣操』の前にね」
( ФωФ)「――――?」
ロマネスクは呆れて物も言えなかった。

侮辱にも、程がある。
あの男、棺桶死オサムは、戦士どころか、男としても問題外の域。
そんな男が、この自分を斃すだと!?

【+  】ゞ゚)「嫌だァァァァァァァァ!! うわああああああああああああああ!!!」
ついに、オサムは泣き叫び始めた。
最早勝負だとかそういうレベルの話ではない。
闘う前から、決着しているようなものだ。



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:45:48.10 ID:N3G0rUCN0
(*゚ー゚)「……いい加減にしなさい、オサム。
    あんまり我侭言うようだったら、『お仕置き』するわよ?」
しぃが声のトーンを変えて、低く、しかし重くオサムにそう告げた。
その声を聞いた途端、オサムが泣くのをピタリと止める。

【+  】ゞ゚)「ヒィィッ! お、お仕置き嫌! お仕置きだけは嫌ァ!
      た、た、闘う! 僕、闘うから、お仕置きだけはしないでェェェェッ!!」
(*゚ー゚)「最初から素直にそう言っていればいいのよ。
    さ、お仕置きは勘弁してあげるから、始めなさい」
しぃが不気味なくらい優しい声で言った。

【+  】ゞ゚)「ヒグッ! う、うん……」
そう言って、オサムは再び棺桶の中へと姿を隠した。
バタンと音を立てて、棺桶の蓋が閉まる。

( ФωФ)「……どうするのだ。 また引きこもってしまったぞ」
最早完全にやる気を無くした様子で、ロマネスクがしぃに問うた。

(*゚ー゚)「今度は違うわ。 引きこもってるんじゃない。
    闘う為の、準備をしているの」
しぃが勝利を確信したかのような表情でそう告げた。

( ФωФ)「ハッ! 貴様まだ、あの男が我輩を斃せると思っているのか!!
      今までいくつもの星を渡り歩いてきたが、ここまでの冗談は初めてだ!!」
ロマネスクがしぃの言葉を一笑にふす。

下らない。
奴がどんな異能を持っていようが、正面から打ち砕くだけだ。



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:46:59.75 ID:N3G0rUCN0
(*゚ー゚)「……さっき私はこう言ったわよね。
    あなたに勝てる者は、『この世』には存在しない、って」
( ФωФ)「…………?」
ロマネスクはしぃの言わんとしていることを掴めず、首を傾げる。

(*゚ー゚)「そう、確かに『この世』には存在しない。
    正面から闘おうが、奇策を用いようが、あなたを斃せる者は『この世』にはいない」
しぃがロマネスクを見据えながら続ける。

(*゚ー゚)「けど、『あの世』にはいる筈よねえ?
    あなたに勝った唯一の存在――『正義のヒーロー』が!」
( ФωФ)「貴様、何を言って――
       ――――!!?」
ロマネスクがそう言おうとした瞬間、周囲の空気が一変した。

::::::::::【 + 】::::::::::
棺桶の周りを、禍々しい黒い瘴気が覆い尽くしている。
瘴気は棺桶の周りをしばし漂った後、一気に棺桶の中へと吸い込まれていった。

【+  】゚)
ゆっくりと、漆黒の棺桶の蓋が開いていく。
そこから、一つの人影が姿を現し――



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/07(火) 00:47:44.99 ID:N3G0rUCN0
( ФωФ)「――――!!」
ロマネスクは目を疑った。
ある筈のないものを、その目で見たからだ。

こんな、こんなことがある筈がない。
こんな――

( ФωФ)「馬鹿な!! お前は、お前は――!!!」
死んだ筈だ。
自分が、その亡骸を埋め、墓を作った筈だ。
だが、目の前にいるのは、紛れも無く――

ノパ听)「――――」
烈火の外装を纏いし正義のヒーロー。
素直ヒートの、その姿だった。


〜第五十話『『魔弾』VS『銀獣』、真冬の夜の夢』 終
 次回、『赤き暴風! ロマネスクVS『死獣操』棺桶死オサム』乞うご期待!〜



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