ドクオは正義のヒーローになれないようです
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:16:22.21 ID:oV7iDHJZ0
- 第五十二話『正義のヒーローはやって来る』
〜前回までのあらすじ〜
ヒット数が1件になるまでやってみよう!の巻
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- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:17:35.99 ID:oV7iDHJZ0
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- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:19:08.00 ID:oV7iDHJZ0
* 以下、何事も無かったかのように再開 *
「正義のヒーロー」と聞いて、あなた達は何を想像するだろうか。
それは仮面ライダーであったり、ゴレンジャーであったり、ウルトラマンであったり、
お巡りさんであったり、レスキュー隊であったり、近所のお兄さんであったり、
それぞれ人によって違うだろう。
テレビの中では、誰かがピンチの時、
正義のヒーローが颯爽と現れて、困っている人を助けてくれる。
悪は斃れ、人々は喜び、正義のヒーローは何処かへと去り、
ハッピーエンドで物語は終結する。
そう、正義のヒーローは助けを呼べば必ずやってくる。
だからこそ、人々はそんな彼らを「正義のヒーロー」と呼び、
それ故に正義のヒーローは正義のヒーローとして定義される。
……しかし、それはテレビの中だけの話だ。
現実には、正義のヒーローは困っている人の前には現れたりなんかしない。
正義のヒーローなんか世界の何時何処にも存在しない。
正義のヒーローは、誰も救ったりなんかしない。
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:19:40.21 ID:oV7iDHJZ0
- ――それでも、
それでも正義のヒーローを信じ続けた一人の少年がいた。
傷ついて、傷ついて、傷ついて、
それでも、いつか、いつの日か、
正義のヒーローが助けに来てくれると、
心の底から信じ続けた。
……当然のように、正義のヒーローはやって来なかった。
そもそも、居もしないものが現れるなんて、有り得ないことだった。
それでも、少年は信じて、待ち続けた。
いつか、いつか、いつか、いつか、いつか、正義のヒーローが――
――時間だけが過ぎ、少年は青年になり、希望はは歪に捻れ、
それでも少年は裏切られた事に気付かず、気付こうとせず、
ただ、純粋な想いだけが、風化しないまま積もっていった。
正義のヒーローは、誰も救ったりなんかしない。
だから、少年は――
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:20:46.29 ID:oV7iDHJZ0
* * *
自分は正義のヒーローだ。
ブーンは、ずっとそう思い続けてきた。
では、正義のヒーローであり続ける為には、何が必要なのだろうか?
こうも、ブーンは考え続けてきた。
強いこと?
格好良いこと?
頼りになること?
みんなの為に闘うこと?
違う。
どれも、違う。
そんなものでは、誰もが正義のヒーローとは認めなどしないだろう。
正義のヒーローである為に必要なもの。
考えに考え続け、ブーンが到達した一つの答え。
それは――
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:21:19.35 ID:oV7iDHJZ0
川 ゚ -゚)「各員、体勢を立て直せ! 弾丸を再分配しろ!!」
JOW日本支部入り口。
うず高く積まれたバリケードの裏に、クーの声が響く。
「駄目です! 弾丸が底を突きました!!」
「こちらA班! もう限界です……うわあああああああああああああああ!!!」
川 ゚ -゚)「おい! 応答しろ!! おい!!」
しかし、クーの声は悲鳴と銃声と爆発音の中に、空しくかき消されていった。
バリケードのあちこちにはいくつもの穴が穿たれ、
最早隔壁としての役割を果たさなくなってきている。
加えて、怪我人もねずみ算式に増えていき、
残弾数も残り幾ばくもない。
(´・ω・`)「……ここまでか」
ショボンが観念したように呟いた。
川 ゚ -゚)「…………!」
クーはショボンを咎めるように睨み付けたが、
それ以上の反論は出来なかった。
クーもまた、心の底で諦めかけていたのだ。
もうおしまいだ。
その無言の圧力が、全員を押し潰そうとしていた。
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:21:59.76 ID:oV7iDHJZ0
- ξ゚听)ξ「みんな! 何弱気になってるのよ!!」
ツンが、意気消沈している者達に激を飛ばした。
しかしその言葉はただ、人々の耳の中を通り抜けるだけ。
ξ゚听)ξ「諦めちゃ駄目! もう少し頑張れば、きっと――
きゃああああッ!!」
ツンが言いかけたところで、バリケードが轟音と共に吹き飛ばされた。
激しい弾雨の前に、ついにバリケードは耐え切れなくなったのだ。
川 ゚ -゚)「くッ……!」
バリケードに開けられた穴から、わらわらと怪人や戦闘員達がなだれ込んでくる。
圧倒的な戦力差。
絶対的な絶望。
(´・ω・`)「南無三……!」
怪人達が、JOWの面々を皆殺しにするべく襲い掛かろうとしたその時――
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:22:33.30 ID:oV7iDHJZ0
- ( 0ш0)「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
叫び声と共に、一迅の銀色の風が走り抜けた。
川 ゚ -゚)「あれは!?」
(´・ω・`)「ブーン!?」
クーとショボンが同時に声を上げる。
今の声――確かに、ブーンの声だった。
しかし、その姿は、以前のブーンの変身した姿とは違っている。
体格は一回り以上大きくなり――
何より、純白だった外装が、反射光が皮膚を貫くような銀色に変わっていた。
( 0ш0)「僕が倒すんだお! 僕が悪をやっつけるんだお!!」
ブーンが、怪人達に向かっていった。
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:23:09.39 ID:oV7iDHJZ0
ずっと考え続けた。
正義のヒーローとは何か。
正義のヒーローであるにはどうすればいいか。
その為なら、何だってやってきた。
辛いトレーニングにだって耐えたし、
体の改造というおよそ通常ならざる禁断の領域にまで踏み込んだ。
だけど、足りない。
そんなものじゃ足りない。
正義のヒーローが、正義のヒーローである為に必要な、何か。
それが何なのか、ずっと分からなかった。
ロマネスクという男はかつて言った。
お前は正義のヒーローなんかではない、と。
悔しかった。
憎かった。
自分を否定する者が、許せなかった。
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:23:54.33 ID:oV7iDHJZ0
- だけど、そこで気がついた。
ならば、自分を正義のヒーローと認めない者――
『悪』を、残らず消してしまえば。
そうだ。
そうだったのだ。
正義のヒーローである為に必要なこと。
それは、『悪』を倒すこと。
そう、そして自分は正義のヒーロー。
ならば、この世の悪を全て倒すことで、
自分が完全な『正義のヒーロー』であると証明される……!
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:24:34.36 ID:oV7iDHJZ0
( 0ш0)「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
ブーンが雄叫びを上げながら、怪人達を血祭りにしていった。
拳が薙ぐ度、蹴りが唸る度、
血飛沫を撒き散らして怪人達の命が散っていく。
( 0ш0)「悪は許せないお! 悪は、倒さなきゃいけないんだお!!」
とり憑かれたように、ブーンは怪人達を殺し続けた。
銀色の外装は返り血で真っ赤に染まり、
しかしなお不気味なまでにきらびやかに輝く。
ξ゚听)ξ「ブーン……?」
ツンが思わず彼の名を呼んだ。
目の前にいるあれは――本当にブーンなのだろうか。
何かが、違う。
彼女が知っていたブーンとは、決定的に何かが違ってしまっている……!
( 0ш0)「悪を倒すんだお!!
僕が、正義のヒーローなんだお!!!」
ブーンはそんなツンの視線に気付くことなく、殺戮を続けるのだった。
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:25:25.27 ID:oV7iDHJZ0
* * *
( ФωФ)「ゴボッ……!」
大の字に倒れたまま、ロマネスクは動かなかった。
いや、動けなかったのだ。
というより――
あれ程の攻撃を受けて、まだ生きていること自体が奇跡に近かった。
ノパ听)「ハッハアーーーーー!!
どうやらこれで終わりなようだなァ!」
素直ヒートが笑みを浮かべながら、ロマネスクに止めを刺そうと歩み寄っていく。
その時――
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:26:02.94 ID:oV7iDHJZ0
- ノパ听)「――! うぐッ!!」
と、突然素直ヒートが苦しみ出した。
がくりと膝をつき、苦しげに呻くと共に、
体から黒いもやのようなものが抜け出していく。
見る見るうちに――
その姿は、もとの棺桶死オサムのものへと戻っていた。
【+ 】ゞ゚)「うッ……! ぐえ! げええ!!」
オサムが、堪えきれずに吐瀉物を撒き散らした。
顔面は蒼白、体は震え、最早立つこともままならない状態である。
(*゚ー゚)「あら、どうやらもう時間切れのようね。
ま、あれだけの力を持っている者に変身してたんだから、制限時間も相応に短くなるってことかしら。
――下がりなさい、オサム!」
【+ 】ゞ゚)「…………」
しぃの声を受け、オサムが棺桶を引きずりながら後ろに下がっていく。
(*゚ー゚)「止めまではいかなかったけれど――ま、それでも死んだも同然ね。
さて――」
しぃが銀に視線を移した。
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:26:51.99 ID:oV7iDHJZ0
- (*゚ー゚)「残るはあなただけね。 覚悟はいいかしら?」
イ从゚ ー゚ノi、「くッ……!」
しぃの言葉通り、闘える者――
いや、意識を保てている者は、もはや銀ただ一人であった。
ドクオは矢が心臓に刺さったまま動かず、
ロマネスクも倒れたままピクリともしない。
ドクオは斃れ、最後の頼みの綱のロマネスクも敗れた。
銀自身も、満身創痍。
もう、何も希望は残されていない。
絶望だけが、銀を飲み込もうとしていた。
( ´∀`)「待てよ。 こいつを殺すのは俺の役目だぜ……」
モナーが片手でしぃを制した。
( ´∀`)「邪魔者がいなくなったところで、仕上げといこうや。
60年前からの因縁の、仕上げをよ」
モナーが弓に矢を番える。
そしてその照準を真っ直ぐに、銀へと定めた。
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:27:16.97 ID:oV7iDHJZ0
- イ从゚ ー゚ノi、「おのれ……!」
銀が歯を食いしばりながら日本刀を構える。
しかし、その構えにいつもの気勢は全く感じられなかった。
( ´∀`)「無駄なことすんなよ。
自分でも分かってんだろ? 俺には勝てねえって」
イ从゚ ー゚ノi、「…………ッ!」
銀は唇を噛んだ。
モナーの言う通りだった。
自分達には、もう抗う術は残されていない。
自決するか。
モナー達に殺されるか。
選択肢は、その二つだけ。
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:28:53.54 ID:oV7iDHJZ0
- ( ´∀`)「それとも、助けでも呼んでみるか?
もしかしたら来てくれるかもしれないぜ?
『正義のヒーロー』ってやつがなあ」
モナーが嘲るように笑った。
正義のヒーロー……
何をふざけたことを。
そんなもの、いやしない。
いつだって、正義のヒーローなんてものは肝心な時に来てくれやしないのだ。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:29:32.59 ID:oV7iDHJZ0
- イ从゚ ー゚ノi、「…………!」
銀はドクオの方を見た。
そうか、お前は、こんな気持ちだったんだな。
悩んで、傷ついて、苦しんで、
どれだけ、助けを求めていたことか。
だけど、助けは来なかった。
正義のヒーローは、やって来なかった。
それがどれだけ、ドクオを苛んできたことか……!
今になって、ようやく分かった。
助けを求めても、誰も来てくれないことが、どれだけ辛いことか。
ドクオ、お前は、ずっとこんな苦しみを抱え込んできたのか。
ずっと傷ついてきていたのか。
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:30:12.87 ID:oV7iDHJZ0
- イ从゚ ー゚ノi、「…………!」
自分は、分かってやることが出来なかった。
ドクオの痛みを。
ドクオの苦しみを。
何一つ、分かってやることは出来なかった。
その結果が、この様だ。
自分なんかを助ける為に、ドクオはその命を失うことになった。
自分の所為だ。
自分が、ドクオを殺したのだ。
イ从゚ ー゚ノi、「ドクオ……!」
誰か、誰か助けに来てくれ。
自分はどうなったっていい。
ただ、この男だけは。
ドクオだけは。
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:30:50.28 ID:oV7iDHJZ0
- この男は、ずっと信じてきたのだ。
正義のヒーローを。
もし本当に正義のヒーローというものがいるのなら、
その想いに答えてやってくれ。
だって、こいつは、
最後の最後まで、正義のヒーローを信じ続けてきたんじゃないか……!
( ´∀`)「どうやら、誰も助けには来てくれねえみたいだな」
モナーが死刑宣告のように冷たい声で告げた。
駄目か。
全て、終わりか。
矢張り、正義のヒーローなんてものは、いないのか――
( ´∀`)「死ね」
モナーが弓の弦を引き絞った。
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:31:29.90 ID:oV7iDHJZ0
* * *
俺は倒れたまま動けなかった。
('A`)「…………」
矢の刺さった胸が酷く痛む。
だけど、確かに痛い筈なのに、ほとんど気にならない。
いや、痛いと感じる力すら無くなっているのか。
体中の熱が、血と共に流れ出ていく。
これが、死。
死ぬのか、俺は。
このまま、死ぬのか。
渡辺のおばあちゃんの敵も討てず。
街の人も救えず。
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:31:55.11 ID:oV7iDHJZ0
- ('A`)「…………」
目だけ動かしてロマネスクの方を見る。
ロマネスク……まさか、あいつがああも一方的にやられるなんて。
――と、視界の端に、ドス女の姿が飛び込んできた。
今にも、モナーの矢で射抜かれそうになっている。
糞ッ。
動け。
その為に、ここまで来たんだろう。
目の前なのに、手を伸ばせば届くのに、
どうしてその手が動かせない……!
やっぱり、駄目なのか。
俺では、無理なのか。
護れないのか。
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:32:45.70 ID:oV7iDHJZ0
- 畜生。
誰か、誰か助けに来てくれ。
俺はどうなったっていい。
だから、ロマネスクを、ドス女を、助けてくれ。
正義のヒーローがいるのなら、ここに、助けに来てくれ……!
駄目か。
来ないのか、助けは。
やっぱり、正義のヒーローなんて――
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:33:08.85 ID:oV7iDHJZ0
- 「諦めてんじゃねえ!」
突然、どこからか声が聞こえた。
('A`)「…………?」
声のした方向を探す。
だけど、そこには誰もいない。
「お前は、そこでやめるつもりか!?
そこで、諦めるつもりか!?
そんなんで、本当にいいのかよ!?」
うるさい声だ。
良く響く。
もう、放っておいてくれ。
全部、手遅れなんだ。
何もかも、終わり――
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:33:55.70 ID:oV7iDHJZ0
- ノパ听)「終わりじゃねえッ!!」
('A`)「――――!?」
目の前に、真紅の装束に身を包んだ女が現れた。
馬鹿な。
こいつは、さっきロマネスクを倒した――
ノパ听)「あんな偽者と一緒にすんな。
アタシが、正真正銘本物だ」
不満そうに女は言った。
ノパ听)「――っと、こんなこと言ってる場合じゃねえ。
おい、手前、いつまでそこで寝てるつもりだ。
さっさと起きろ」
女が急かすように告げた。
起きろって、この体でどうやって起き上がれるっていうんだ。
よしんば起き上がったとして、何が出来る。
俺に力を与えていた、怪人達の出来損ないは俺の体を離れようとしている。
俺にはもう、闘うだけの力は残されていない。
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:34:39.35 ID:oV7iDHJZ0
- ノパ听)「ざけんな!!
歯ァ食いしばってでも立ち上がれ!
お前は、正義のヒーローだろ!?」
違う。
俺は、正義のヒーローなんかじゃない。
悪と闘うことも、大切なものを護ることも、出来なかった。
俺は――正義のヒーローには、なれなかった。
俺は、正義のヒーローなんかじゃ――
ノパ听)「いいや、お前は、誰が何と言おうが正義のヒーローだ。
正義のヒーローってのは何だ?
みんなの為に闘う奴のことか?
強い奴のことか?
誰からも頼られる、格好良い奴のことか?
悪党をぶっ倒す奴のことか?
違うだろう!?
そうじゃねえだろう!?
正義のヒーローってのは、
苦しみ、傷つき、助けを求める奴のところに、やって来てくれる奴のことだろ!?
それは、お前が一番良く分かってる筈だろうが!!」
――助けを呼べば、正義のヒーローはやって来る。
だから人は、そんな者を正義のヒーローと呼ぶ。
――だけど、そんな奴はいやしない。
苦しい時、傷ついた時、
本当に助けに来て欲しかった時、正義のヒーローは、やって来なかった。
正義のヒーローは、やって来なかった。
- 49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:35:25.53 ID:oV7iDHJZ0
- ノパ听)「そうだ! お前は、誰よりも助けが来ないことの苦しみをしっている!
だから、そんな奴を見捨てたくないんだろ!?
助けに駆けつけてやりたいんだろ!?
今、目の前にいるぞ!
助けを呼んでる奴が!
お前には、聞こえないのか、あの声が!?
お前は、助けを求めてる奴を、見捨てるつもりなのか!?」
助けを呼ぶ声――
そんなもの、一体どこから――
イ从゚ ー゚ノi、「ドクオ……!」
――――!
聞こえた。
はっきりと。
ドス女が、呼んでいる。
助けを。
正義のヒーローを。
こんなに近くに、
俺と同じ、正義のヒーローを待ってる奴がいたんじゃないか……!
- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:36:01.31 ID:oV7iDHJZ0
- ノパ听)「立て! そして、闘うんだ!
もう、闘えるのはお前だけだ!
最後の希望はお前だけだ!
だから、お前は闘わなければならない!!」
――だけど。
だけどもう、俺には何の力も無いんだ。
俺には、闘うことは出来ないんだ……!
ノパ听)「力なら、ある!
アタシが、力を貸してやる!
だけど――」
言って、女は手を差し出し、
ノパ听)「差し出したこの手を取るのは、立ち上がるのはお前の意思だ!
アタシは闘う力を貸すことは出来ても、立ち上がる手助けは出来ない。
お前が、自分の力で、自分の意思でこの手を取るんだ!
お前が、闘う力を掴むんだ!!」
女の声に促され、必死に腕を持ち上げようとする。
しかし、腕はおろか、
指先一つ動かせない。
やっぱり、駄目だ。
こんな傷を負って、動けるわけがない。
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:36:34.63 ID:oV7iDHJZ0
- ノパ听)「傷なんか関係ねえ!
お前の体を縛り付けているのは、お前の心だ!
お前の恐怖が、絶望が、その体を押さえつけてるんだ!!
お前の弱い心が、お前を殺そうとしているんだ!!」
――だけど、本当に動かないんだ。
助けたいと、護りたいという気持ちは本当なのに、
動いてくれないんだ……!
ノパ听)「痛いか? 苦しいか?
だけど、それよりもっと辛いことを、お前は知ってる筈だ。
誰も助けに来てくれない苦しみ――
それに比べりゃ、今の痛みや苦しみなんか、屁でもねえ!
お前は、それでいいのか!?
お前と同じ苦しみを、あの女にも味わわせるつもりなのか!?」
――――!
ドス女……!
――そうだ。
こうしている間にも、ドス女は助けを呼び続けているんじゃないか。
苦しみ続けているんじゃないか。
ノパ听)「立て! ドクオ!!
いや――正義のヒーロー、マスク仮面!!!」
正義のヒーローが来てくれない――
そんな苦しみを、これ以上、あいつに受けさせるわけにはいかない――!
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:37:15.29 ID:oV7iDHJZ0
- ('A`)「……う…………」
全身の力を振り絞って、腕を動かそうと力を入れた。
見えない何かが重しとなって、
俺の体を押さえつけようとしてくる。
負けるか。
こんな痛み、どうってことない。
あの時の、
今までの苦しみに比べたら、
こんなものどうってことはない……!
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:38:02.46 ID:oV7iDHJZ0
- ('A`)「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
俺の体の中に辛うじて残っていた怪人の出来損ないも、
俺に最後の力を与えてくれた。
そうだ。
俺は一人じゃない。
俺の中にも、ずっと、お前達が居てくれたんだ。
お前達も、待っていたんだな。
救いを。
正義のヒーローを。
('A`)「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
俺の持つありったけの全てを使って、腕を持ち上げ――
女の手を取った。
手の平から、熱い奔流が伝わってくる。
力が、流れ込んでくる。
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:38:41.82 ID:oV7iDHJZ0
- ノパ听)「……上出来だ」
満足そうに、女が微笑んだ。
ノパ听)「ならば約束通り力を貸してやる。
アタシが、お前を闘わせてやる。
後は――どうすればいいか、分かるな?」
女の言葉に、俺はゆっくりと頷いた。
大丈夫だ。
これなら、いける。
俺はまだ、闘うことが出来る。
助けを求めているあいつの所に、駆けつけることが出来る。
- 61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:39:50.74 ID:oV7iDHJZ0
- ノパ听)「上等だ。
仮にも、アタシのマントを受け継いでんだ。
無様な姿晒すんじゃねえぞ。
それと――」
女は倒れているロマネスクに視線を向け、
ノパ听)「――ロマネスクのアホを、よろしく頼む。
あいつは強いが、馬鹿だからな。
お前が、支えてやってくれ」
どこか哀しそうな顔で、女はそう言った。
……支えるなんて。
ロマネスクには、今までずっと助けてもらいっぱなしだった。
多分これからも、俺はあいつに助けてもらうことになるんだろう。
――だから。
今この時ぐらいは、俺があいつを助ける。
- 63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:40:57.30 ID:oV7iDHJZ0
- ノパ听)「よし、だったら早く行きな。
行って、闘って来い。
他の、何の為でもない。
お前の大切なものの為に、闘ってこい!!」
俺の背中を後押しするように、女が告げた。
その言葉に、俺を縛り付けていた心の鎖は完全に解き放たれる。
俺は、立ち上がることが出来る。
('A`)「そういや、あんたは一体――?」
俺は女に訊ねた。
女は少し間を置いた後――
ノパ听)「よくぞ聞いた! アタシは素直ヒート!
どこにでもいる、『正義のヒーロー』さ!!」
そう言って微笑んで、
光の粒子となって消えていった。
- 64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:41:23.52 ID:oV7iDHJZ0
* * *
( ´∀`)「死ね」
モナーが弓の弦を引き絞った時――
( ´∀`)「!!?」
(*゚ー゚)「!!?」
【+ 】ゞ゚)「!!?」
イ从゚ ー゚ノi、「!!?」
ドクオから――
いや、ドクオの羽織っていたマントから、猛烈な勢いで炎が立ち昇った。
炎はどんどん勢いを増し続け――
巨大な紅蓮の奔流となって、ドクオを中心に燃え上がる。
イ从゚ ー゚ノi、「――――!!!」
と、炎の中に、立ち上がる人影が見えた。
まさか、ドクオか!?
有り得ない。
あれだけの傷を受けて、立ち上がるなんて――
- 67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:42:26.62 ID:oV7iDHJZ0
- ( ´∀`)「!!!!!」
(*゚ー゚)「!!!!!」
【+ 】ゞ゚)「!!!!!」
イ从゚ ー゚ノi、「!!!!!」
と、炎を掻き分けて、一人の男が姿を現した。
その姿に、その場の誰もが息を飲む。
炎よりなお赤く、光よりなお眩い、
金色の外装に身を包んだ灼光の闘士。
そこに、以前までの禍々しい漆黒の魔人の面影は微塵も無かった。
イ从゚ ー゚ノi、「――――!」
無意識に、銀の頬を涙が伝った。
来てくれたのか、あいつは。
自分が助けを求めた時、
ちゃんと、やって来てくれたのか……!
- 70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:43:10.77 ID:oV7iDHJZ0
- ――正義のヒーローなんか世界の何時何処にも存在しない。
正義のヒーローは、誰も救ったりなんかしない。
だから、少年は、その正義のヒーローに憧れた。
決して有り得ないと知りつつも、その希望に縋り付こうとした。
正義のヒーローは助けを呼べば必ずやってくる。
そう、信じ続けたのだ。
長い挫折と諦念と絶望と苦痛の果て――
何度も、助けを求め続け――
それでもやって来なかった正義のヒーロー。
それでも、少年は信じ続けていたのだ。
――そして、
そして、今、ここに、ついにその瞬間は来た。
少年の祈りは、確かに届いていた。
そう、助けを呼べば、必ずやって来る。
正義のヒーローはやって来る。
〜第五十二話『正義のヒーローはやって来る』 終
次回、『烈火』乞うご期待!〜
- 73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:43:58.30 ID:oV7iDHJZ0
- この番組は、
らーじPONPON
炎の孕ませ転校生
姉☆孕みっくす
種をつける男
激しくボテ腹!〜センパイ、私のコ、認めてくださいっ!〜
の提供でお送りしました。
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