ドクオは正義のヒーローになれないようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/02(火) 22:43:17.77 ID:3eCkuHzI0
第二部 第四話『殴り込み』

〜 仕事忙しすぎてネタ考える暇ありませんでした 〜

('A`)「…………」
素直クールの体から、一気に力が抜けていった。

目の前で、一つの命が散っていく瞬間。
今までに、何度も味わってきた感覚。

('A`)「…………」
……こいつのことが、好きだったわけではない。
というより寧ろ、好ましく思っていなかった。

こいつがJOWの下、
俺にしたことを考えれば、到底自分には受け入れられるものではない。

――だけど。



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/02(火) 22:45:40.74 ID:3eCkuHzI0
('A`)「……何なんだよ」

だけど

('A`)「何なんだよ、糞ッ!!」
俺は叫んだ。

気に入らない奴だった。
だが、それでも、こいつはこんな死に方をしなければならない程の奴だったのか!?

これが――
この最期が、こいつの報いだとでもいうのか!?



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/02(火) 22:46:15.30 ID:3eCkuHzI0
イ从゚ ー゚ノi、「……行くぞ。 マスク仮面」
ドス女が、俺の肩を掴んだ。

('A`)「……行く? 行くって、どこに」
俺は訊ねた。

イ从゚ ー゚ノi、「JOWじゃ。 今すぐそこに急行して、首魁を叩く」
短く、ドス女は答えた。

JOW――
そうか。
素直クールは、最後に言っていた。

JOWが、怪人騒動の元凶だったと。
そして自分は、JOWにやられたと。
ショボンもツンも、殺されたと。

ならば――
素直クール達は、何らかのきっかけでJOWの秘密を知ってしまい、
口封じに殺されたということか。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/02(火) 22:46:47.36 ID:3eCkuHzI0
JOWが何の為に怪人騒動を起こしたか。
何故素直クール達が殺されたか。

いくら頭の悪い俺でも、
ここまでのことがあれば、容易に想像がつく。

JOW、許すわけにはいかない。
自作自演の為に、自分達が正義となる為に、
どれだけの人が犠牲になったと思っている。
どれだけの血が、涙が、流されたと思っている。

そんなことをして手に入れた正義など――
決して、認めるわけにはいかない……!



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/02(火) 22:47:39.42 ID:3eCkuHzI0
イ从゚ ー゚ノi、「どうした、行くぞ」
('A`)「あ、ああ。 それじゃあ、こいつを弔ってやってから……」
俺はそう言って素直クールの亡骸に目をやった。

気に入らない奴ではあったけど、
土の中で静かに眠らせてやるくらやっても罰はあたらないだろう。

イ从゚ ー゚ノi、「駄目じゃ。 そんな時間はない」
しかし、ドス女は俺の申し出を即座に断った。

('A`)「ど――どうしてだよ!
   こいつを、このまま放っていけってのか!?」
獣みたいに、野ざらしに死体を転がしていくなんて――
そんなの、良いわけが無い。
例えそれが、つまらない感傷なのだとしても。

イ从゚ ー゚ノi、「そうじゃ。
       そしてその女も、きっとそれを望んでおる」
眉一つ動かさず、ドス女は答えた。

('A`)「何言ってんだ!
   そんな冷たいこと――」
ドス女に掴みかかろうとした俺の頬を、ドス女の平手が打った。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/02(火) 22:48:04.68 ID:3eCkuHzI0
イ从゚ ー゚ノi、「聞き分けの無いことを言うな!
       あの女が、何の為にここまで命を懸けたかわからんのか!
       儂らに自分の屍を弔わせる為か!?
       違うじゃろう!
       JOWを、儂らに斃させる為――そうじゃろうが!!」
俺の胸ぐらを掴み、顔を引き寄せて、ドス女は厳しい口調で言った。

('A`)「…………!」
俺は、何も言い返せなかった。

ドス女の言う通りだ。
もしかしたら、素直クールが俺達と接触したことは筒抜けになっているかもしれない。

そしてもし、フォックスがそれに気付いて逃げ出すようなことがあればかなりまずい。
その為にも、今は一刻でも早くJOWに突入する必要がある。
そんな事は――分かりきっている筈なのに。

イ从゚ ー゚ノi、「…………」
ドス女が俺の胸ぐらから手を離した。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/02(火) 22:48:25.69 ID:3eCkuHzI0
('A`)「……ごめん。
   俺、熱くなり過ぎてた。
   今何をしなけりゃいけないか、ちょっと考えればわかるのに……」
そう、今は一時の感傷に流されている場合ではない。
一秒でも早く、為すべきことを為さなければ。

イ从゚ ー゚ノi、「……いや、いい」
ドス女が俺から視線を外して、
イ从゚ ー゚ノi、「戻ってきたら、丁重に葬ってやろう。
       それでいいな?」
静かに、そう言った。

('A`)「……ああ!」
返事をして、改めて前を向く。

ごめんなさい、素直クール。
放っておいて行くことになってしまって。

だけど――
必ず、敵は取る……!



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/02(火) 22:50:43.00 ID:3eCkuHzI0
从 ゚∀从「そいつは困るなあ」
――と、闇の中から一人の女が姿を現した。

( ФωФ)「貴様は……!」
ロマネスクは、見覚えがあるみたいだった。

だとすれば――
こいつが、東京が攻撃を受けた時に、
戦艦の上で闘ったとロマネスクが言っていたハインリッヒとかいう女か?

从 ゚∀从「よう。 久し振りだなぁ、宇宙大魔王」
からかうように、女はロマネスクに言った。

( ФωФ)「性懲りも無く、我輩に叩き潰されに来たか」
拳を固め、ロマネスクが問う。

从 ゚∀从「いいや。 今日は、お前らを殺しに来たんじゃねえよ。
      時間稼ぎの為ってやつさ」
背中に背負っていた金属バットを右手に握り、女は俺達を見渡した。

从 ゚∀从「そこでくたばってる女――素直クールからあらかたの事は聞いてんだろ?
      ったく、しぶとい女だぜ。
      体に発信機を埋め込んどいて、正解だったな」
女が忌々しげに舌打ちする。

発信機――
そうか。
だからこの女は、ここまでやって来たのか……!



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/02(火) 22:51:44.61 ID:3eCkuHzI0
从 ゚∀从「つーわけで、まあ、ちいっと遊んでもらうぜ。
      フォックスの旦那に、もしものことがあったらやべえからな」
ブンブンと、女が金属バットを振り回す。

( ФωФ)「随分と余裕だな――
       戦艦で、我輩の前から無様に逃げ出したこと、忘れた訳ではあるまい?」
ロマネスクが女を見据える。

从 ゚∀从「そっちこそ忘れてねえか?
      オレの能力なら、お前ら3人を相手にしても充分時間を引き伸ばせるってことに。
      さっきも言ったろう?
      オレの目的は、時間稼ぎってな」
女が勝ち誇った様に言う。

ロマネスクから聞かされたこいつの能力――
斥力による運動ベクトル操作。

負けこそしなかったものの、
あのロマネスクですら、その能力を打倒するのには時間がかかった。
一分一秒が惜しいこの時に、こいつのその能力は厄介過ぎる……!



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/02(火) 22:52:14.29 ID:3eCkuHzI0
从 ゚∀从「それとも、オレを無視してUFOに乗って逃げるかい?
      それでもこっちは構わないぜェ。
      尤も、その時は基地に残った動物達は皆殺しになるけどな」
クククと、女が邪悪な笑い声を漏らす。

( ФωФ)「この外道が――!」
ロマネスクの拳がわなわなと震えた。

そういえば、ロマネスクは前も人質を取られて、
こいつを逃がすことになったのだった。

こいつは、目的を達成する為ならどんな汚いことでも躊躇しない。
それが、こいつの恐ろしさだった。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/02(火) 22:52:42.60 ID:3eCkuHzI0
イ从゚ ー゚ノi、「――マスク仮面、ロマネスク。
       お主らは、『漢祭り』に乗ってJOWへ向かえ。
       こいつは、儂が引き受ける」
ドス女が、俺達の前に出てそう言った。

('A`)「ドス女!?」
イ从゚ ー゚ノi、「『漢祭り』は、ロマネスクでなければ動かせん。
       そしてマスク仮面、お主一人では、不測の事態があった時に冷静に対処出来ぬ。
       ここは、儂が残るのが一番確実じゃろう」
腰に下げていた日本刀を引き抜きながら、ドス女は告げた。

('A`)「だけど――!」
イ从゚ ー゚ノi、「さっさと行け! 時間が無いと、言ったばかりじゃろう!!」
戸惑う俺を、ドス女は一喝した。

('A`)「――分かった」
しばし悩んだ末、俺は短くそう答えた。

('A`)「……絶対死ぬなよ」

ドス女が、心配でない訳じゃない。
だけど、今はそんな事を言っていられるような状況では――
いいや、だからこそ、俺はドス女を信用することにした。

こいつなら、大丈夫だ。
そう、信じた。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/02(火) 22:53:20.36 ID:3eCkuHzI0
イ从゚ ー゚ノi、「ああ」
ドス女が小さく微笑む。

イ从゚ ー゚ノi、「さあ、行け! マスク仮面!!」
('A`)「!!!!!」
ドス女の声に背中を押されて、俺とロマネスクは『漢祭り』目掛けて駆け出した。

必ず、全てを終わらせて戻ってくる。
だから、どうか無事でいてくれ。

言葉にはしないけれど、
言葉には出せなかったけれど、
そう誓って、俺は走り続けた。



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/02(火) 22:53:49.07 ID:3eCkuHzI0





俺とロマネスクを乗せた『漢祭り』が、
JOWに向けて高速で飛行していた。

( ФωФ)「もう少しでJOW日本支部につくぞ」
『漢祭り』を運転しながら、ロマネスクは言った。

('A`)「……ああ」
答えながらも、俺の胸はドス女への心配で一杯だった。

――ドス女。
本当に、任せて大丈夫だったのだろうか。



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/02(火) 22:54:28.53 ID:3eCkuHzI0
( ФωФ)「気を揉むのは自由だが、戦場ではそんな甘い考えは通用せんぞ。
       自分が今何をすべきか、分からん訳ではあるまい」
俺には顔を向けず、ロマネスクはそう告げた。

( ФωФ)「それに、あの女がそう簡単にはくたばったりはしないことは、
       お前が一番良く知っている筈だろう?」
いくらか語調を和らげ、ロマネスクは言った。

('A`)「……分かってる」
そうだ。
俺は、ドス女を信じて、あの場を任せたんだ。
だったら最後まで、あいつを信じてやらなければ。

全力で、俺がすべきことをしなければ。

それが、あいつを信じるということだ。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/02(火) 22:54:52.47 ID:3eCkuHzI0
( ФωФ)「……マスク仮面、今更言うまでも無いことだが、
       かなり予断を許さぬ状況だぞ」
外の状況を映し出したモニターを見ながら、ロマネスクが言う。

( ФωФ)「他者を犠牲にしてでも、己が『正義』になろうとする、
        そんな連中が、最終的にやることは――」
そこでロマネスクは言葉を止め、
( ФωФ)「……いや、何でもない。
       ここで我輩達がJOWを止めれば、問題無いことだからな」
('A`)「…………?」
ロマネスクは一体何を言おうとしたんだろうか。

……いや、今はそんな事を考えている場合じゃないか。
余計な思考は闘いの邪魔にしかならない。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/02(火) 22:55:28.77 ID:3eCkuHzI0
( ФωФ)「見えたぞ」
モニターに、JOW日本支部の姿が映し出された。

――あそこが、フォックスの居る、敵の本拠地。

じわりと、首筋に汗が浮かぶ。

( ФωФ)「飛び道具は趣味ではないが、外道相手に礼節は無用。
       対宇宙戦艦ミサイルで、一撃の下木っ端微塵にしてくれる!」
ロマネスクがミサイル発射のスイッチを押そうとしたその時――

('A`)「――――!?」
JOWの屋上に、一つの人影が現れた。

誰だ?
あれは――?



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/02(火) 22:55:52.91 ID:3eCkuHzI0
( ФωФ)「!?」
次の瞬間、その人影は屋上から大きく跳躍した。
馬鹿な。
地面から、何メートルの高さだと思っている!?
あんなとこから、どこ目掛けて――

('A`)( ФωФ)「!!?」
直後、大きな衝撃が『漢祭り』を襲った。

まさか――
まさか、目標の着地点は、この『漢祭り』だったと言うのか!?

ありえない。
あの距離から、一体どんな化物が――



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/02(火) 22:56:23.39 ID:3eCkuHzI0
( ゚∋゚)「…………」
モニターの画面いっぱいに、一人の男の姿が映し出された。

('A`)「クックル!!」
半狂乱の状態で、俺は叫ぶ。

矢張り、こいつだったか。
この緊迫した状況で、こいつが出てこない訳が無かった……!

( ゚∋゚)「…………!」
『漢祭り』に跨った状態で、クックルが何度もその拳を『漢祭り』に叩きつけてくる。

( ФωФ)「ぬうぅッ!?」
地球の科学力を超えた素材と技術で作られている筈の装甲が、
クックルの一撃ごとに大きく歪む。

まずい、このままでは――

('A`)「うわああああああああああああああああああ!!!」
ついに『漢祭り』は制御を失い、地面に向けて落下していった。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/02(火) 22:57:10.05 ID:3eCkuHzI0



( ФωФ)「……無事か。 マスク仮面」
墜落した『漢祭り』から這い出しながら、ロマネスクが俺に訊ねてきた。

('A`)「辛うじて、な……」
息を切らしながら、俺は答える。

本当に、危ないところだった。
もし並みの飛行機とかなら、間違いなく命は無かっただろう。

('A`)「…………」
目の前には、JOW日本支部。
大幅に計算は狂ったが、一先ず目的地には辿り着けたようだ。
だが――

( ゚∋゚)「…………」
その入り口に、人外魔境の怪物が立ちはだかっていた。

あいつを斃さなければここから先へは進めない。
そういうことか。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/02(火) 22:57:47.83 ID:3eCkuHzI0
( ФωФ)「……マスク仮面、お前は先にJOWに入れ。
       こいつは、我輩が仕留める」
促すように、ロマネスクは言った。

('A`)「だけど!!」
相手は、あのクックルなんだぞ!?
無事で済む保障なんて、どこにも――

( ФωФ)「心配など無用。
        我輩は、一度あの男に勝っている。
        それとも――我輩が、負けるとでも?」
('A`)「…………」
俺は何も答えなかった。

( ФωФ)「それに、あいつも我輩との決着を望んでいるようだからな」
ロマネスクがちらりとクックルの方を見やった。

( ゚∋゚)「…………」
相変わらず、無機質なその瞳からは感情を読むことが出来ない。

だが――
心なしか瞳の奥に、
以前には感じなかった炎の揺らぎのようなものが見えた気がした。



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/02(火) 22:58:28.26 ID:3eCkuHzI0
('A`)「……ごめん」
ロマネスクに礼を言い、俺はJOWの中へと駆け出す。

( ゚∋゚)「…………」
クックルは、俺には一切の興味が無いのか別段何をしてくることもなく、
そのまま俺を素通りさせた。

('A`)「死ぬなよ、ロマネスク!!」
走りながら、俺は叫んだ。

ドス女、ロマネスク。
二人とも、俺の為に命を懸けて闘ってくれている。

二人がいたから、俺はここまで辿り着けた。
だから――
この先に何があろうと、負ける訳にはいかない。

そう固く決意し、
俺はフォックスの下へと走り続けた。


〜第二部第四話『殴り込み』 終



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