ドクオは正義のヒーローになれないようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:31:42.02 ID:Yh/7BGbe0
第二部 第七話  『血着! 〜ロマネスクVSクックル〜』

〜前回までのあらすじ〜

レンタル商品。
これを知らない者は、この日本にはいないだろう。

購入するより遥かに安い価格で、
一時的にではあるが欲しい物を自分の所有下に置くことが出来る。

レンタルビデオ。
レンタカー。
アパートの賃貸契約。
借家。
貸店舗

例を挙げてしけば枚挙に暇が無い。

そして――
ここにそんなレンタル業を行う、
一つの組織があった。



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:32:48.05 ID:Yh/7BGbe0
( ・∀・)「ようこそ、モララーレンタルサービスへ。
      我が社では、お客様のニーズに合わせ、あらゆる物品を貸し出ししております」
全世界に名を馳せるレンタル会社、モララーレンタルサービス。

社長であるモララーが経営する、
新鋭の大手業者。

その会社は、あらゆる物をレンタルする。

金。
車。
物件。
不動産。
医療器具。
銃器。
ミサイル。
戦闘機。
果てには、人の命まで。

その手広さ故、表の社会裏の社会を問わず、
この会社は着々と勢力を伸ばしていった。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:33:41.11 ID:Yh/7BGbe0
だが、モララーレンタルサービスの地位を磐石なものにした本当の理由は、それだけではない。

客の中には、借りたものを返さず、
そのまま踏み倒そうとする不逞の輩も必ず存在する。

モララーレンタルサービスの恐ろしさは、
そんな相手からも確実に取り立てを完了してきたことだ。

(´ー`)「モララーレンタルサービス壱號取立人、初代モナーでございます。
     本日が約束の返済日故、代金を頂に参りました……」

借りたものを返さない者からは、実力行使で取り立てる。
その実行者こそが、最強の死神、取立人なのだ!



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:34:14.77 ID:Yh/7BGbe0
( ・∀・)「私共にとっては、全ての方が大切なお客様でございます。
      ――レンタル料さえ払って頂ければ、ですが」
モララーが誰かに何かをレンタルする時、
世界で必ず何かが起こる!

交差する駆け引き!
錯綜する野望!

その闇の世界の中でモララーが得ようとするものは!?

( ・∀・)「これでは約束の代金に足りませんね。
      それでは、あなたの命を以って、不足分を補填することにさせてもらいましょう」

悪党共のハードでエッジな日常を描くアウトローアクション、
『( ・∀・)モララーはレンタル業を営むようです』
近日連載開始!!(嘘)



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:36:06.02 ID:Yh/7BGbe0


           * 以下、何事も無かったかのように再開 *


( ФωФ)「…………」
( ゚∋゚)「…………」
JOW日本支部の前で、二人の男が対峙していた。

一人は、漆黒の外装に身を包んだ宇宙大魔王、杉浦ロマネスク。

もう一人は、白い体毛に覆われたJOWアメリカ本部の戦闘部隊隊長、クックル。

いずれもが、隆々とした筋肉を身に纏った闘鬼。
紛う事無き一流の戦士だった。

( ФωФ)「貴様だったか」
構えも取らずに突っ立ったまま、
ロマネスクはクックルに語りかけた。

( ゚∋゚)「…………」
クックルは、何も答えない。

いやどころか、ロマネスクはクックルの声というものを一度も聞いていない。
この男、喋ることが出来ないのではないだろうか。
ロマネスクはふと、そんなことを考える。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:37:14.31 ID:Yh/7BGbe0
( ФωФ)「何のつもりで出てきたのかは知らんが、とっととそこをどけ。
       前の闘いで、分かっているだろう。
       貴様では、我輩に勝てない。
       我輩を倒すことが出来るのは、魂の込められた拳――」
( ゚∋゚)「――――!」
ロマネスクが言い終わる前に、クックルが一気にロマネスクとの間合いを詰めた。

( ゚∋゚)「!!!!!!」
そのまま、大きく腕を振りかぶってからの右ストレートをロマネスクの顔面に叩き込む。

( ФωФ)「――――!」
ロマネスクは防御する素振りすら見せないまま、
その一撃を正面からまともに受けた。
拳の勢いで体が後方にのけぞるも、たたらを踏みながら足を踏ん張る。

( ФωФ)「無駄だ。 貴様の拳には魂が宿らぬ。
       そんなものでは何万発打ち込もうと――」
そう言いかけたところで、ガクンとロマネスクの膝が落ちた。

何だ、これは?
まさか、今の一撃が効いているとでもいうのか!?

確かに、クックルの身体能力は凄まじい。
攻撃が当たれば、肉が悲鳴を上げ、骨が軋む。
しかし、心まで砕くものではなかった筈だ。

今の一撃、物理的なダメージでいえば、前回闘った時とそう変わるものではない。

しかし――今のこの、心に響くようなこの痛み。
拳に、魂が込められている――!?



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:38:23.50 ID:Yh/7BGbe0
( ФωФ)「……面白い。 前回とは、違うという訳だな」
ロマネスクは立ち上がり、獰猛な肉食獣の笑みをクックルに向けた。

何がクックルに起こったのか。
それは、分からない。

だが更なる力を得て立ちはだかるのいうのなら、
全力を以ってそれを打ち砕くのみ……!

( ФωФ)「いいだろう! 相手をしてやる、クックル!!
       我輩に二度も挑めることを、光栄に思うがいい!!!」
( ゚∋゚)「…………!!」
白と黒の怪物が、裂帛の気合と共に激突した。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:39:50.79 ID:Yh/7BGbe0


          ・              ・              ・


その男は、何も持っていなかった。

目的も、目標も、過去も、未来も、現在も、希望も、絶望も、意思も、心も、
何もかも、何もかも。
何もかも、持ってなどいなかった。

『超異能戦闘員製造計画』被検体ナンバー4108、
コードネーム『K』、クックル――
それが、彼の名前だった。

しかしその名前も、親が子に与えるように、
愛情と希望を注がれて付けられたものではない。
ただ、個体を識別する為だけに与えられた呼称。

それは、名前というより最早記号でしかなかった。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:40:36.81 ID:Yh/7BGbe0
生まれてきた彼を待っていたのは、
実験と実践の日々。

日々絶え間なく様々な改造や改良を施され、
その性能を極限まで試される。

自分と共に『製造』された被検体は、
日を追うごとに少なくなっていき、ついには残ったのは彼一人となった。

そして――
狂気のような実験の果て、ついに彼は『完成』したのだ。

しかし、完成した彼を待っていたのは、
自由など望むべくもない、それ以上の地獄だった。

命令のまま闘い、殺し合うだけの日々。

その中で、彼は多くのものを捨てていった。



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:41:32.35 ID:Yh/7BGbe0
余計なことを言わない為言葉は捨てた。
任務の遂行には必要ないから。

余計なことを聞く耳は捨てた。
任務には何の意味も無いから。

余計なことを思う心は捨てた。
任務に支障を生むだけだから。

迷いを生じる希望はいらない。
命を縮めるだけだから。

怖れを生じる絶望はいらない。
命を棄てるだけだから。

惑いを生じる夢はいらない。
命を無駄にするだけだから。

何も持たず、何も望まず、何も感じない。
そうすることが、任務の遂行の為最も必要なこと。

そう教えられ、そう信じてきたのだ。



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:43:33.09 ID:Yh/7BGbe0
誰かが自分を殺戮機械と呼んだ。

その言葉は、恐らく正しい。
自分はきっと血の通う生物などではない。

自分の体には、氷の様に冷たい鉄が流れている。

それでいい。
そうあるべきだ。
そう、思っていた。

だが――



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:44:17.73 ID:Yh/7BGbe0


( ФωФ)「我輩を倒せるのは、魂の込められた拳のみ!!」


あの男と出会い、闘ってから、
自分の中で何かが確実に変わっていった。

己を殺すのではなく、己を最大限に活用して、
感情の赴くままに闘う、自分とは正反対のあの男、
杉浦ロマネスク。

それはクックルが初めて出会う種類の男だった。

今までに、苦戦したことは何度かある。
しかしそれでも、機械のように、冷静に冷徹に闘うことで、
どんな強敵でも葬ってきた。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:44:55.58 ID:Yh/7BGbe0
だが、奴は違った。

どれだけ正確な角度で打ち込んでも、
どれだけ完璧なタイミングで叩いても、
どれだけ完全な攻撃でも、倒せない。

どころか、
それこそ子供の喧嘩のような幼稚な攻撃で、
この自分を倒してのけたのだ。

理解出来なかった。
何故、あんな闘い方で、この自分に勝つことが出来たのか。

同時に、自分の中でとある感情が生まれた。

あの男に勝ちたいと。



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:46:06.03 ID:Yh/7BGbe0
最初はそれを、初めて任務を失敗したことの屈辱だと思っていた。
しかし、どうやらそれは違う。
そもそも、屈辱を感じるような心はとっくの昔に捨てている。

ならば何故、自分はこれ程までに奴に焦がれている。

自分の全力を尽くしても、勝つことが出来なかったからか?

いいや、違う。
そもそも勝利とは、自己の目的を達成することで得られるもの。

だとすれば、自分はどうだ。
何の目的も目標もなく、ただ殺していただけ。
つまり、自分は殺してはいたが、一度も勝っていないことになる。

そうか、つまりは、そういうことか。
自分は生まれて初めて、目的というものを持ったのだ。
何かを、求めているのだ。

それが――杉浦ロマネスクに、勝つということ。

クックルの冷え切った体に、熱が灯る。
この時初めて、クックルは『生まれた』のだ。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:47:38.26 ID:Yh/7BGbe0
( ゚∋゚)「…………!!」
連続で、ロマネスクの体に突きや蹴りを打ち込んでいく。

ロマネスクはそれを避けようともせず、
こちらからの全ての攻撃を喰らっていく。

正気ではない。
気力で痛みを無視しているのかどうかは知らないが、
肉体には限界というものがある。

いくら痛みを押さえ込んだところで、
肉体が損傷しているという事実は変えようがない。

にも関わらず、ロマネスクは全く変わらない――
いやそれどころか、ダメージを負う毎に更に力強い反撃を返してくるのだ。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:48:18.89 ID:Yh/7BGbe0
その気になれば、
いくらでも自分の攻撃を受けるなり捌くなりすることが出来るだけの技量を持っているだろう。
なのに、それをしない。

それは、ロマネスクの闘いにおける矜持なのか――

――いや、そうじゃない。
そういう闘いをするからこそ、ロマネスクはここまで強いのだ。

ダメージの計算だとか駆け引きだとかテクニックだとか、
そういう凡百の領域にはこいつは存在していない。

そんなものを無視したところに、
こいつは立っている。

だからこそ、自分はそんなロマネスクを倒したいと、
生涯唯一の夢を抱いたのだ。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:49:36.36 ID:Yh/7BGbe0
( ゚∋゚)「…………!」
左の拳を右のテンプルに叩き込んだ。
グラリと、ロマネスクの巨体が傾く。

好機――

続けての連撃を放とうとした瞬間、
クックルの背筋をぞわりとする悪寒が走った。
それは、生物としての本能が告げる、生命への危険信号だったのかもしれない。

( ゚∋゚)「――――!」
その危険信号を察知したクックルが、
咄嗟に顔の前で両腕を交差させて防御姿勢を取った。

( ФωФ)「るおおおあッ!!!」
そのガードの上から、ロマネスクが拳を叩きつけてくる。

( ゚∋゚)「!!!!!」
ロマネスクの拳がクックルのガードを弾き飛ばし、
そのままクックルの顔面にめり込んだ。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:50:04.26 ID:Yh/7BGbe0
( ゚∋゚)「……!!!」
そのまま殴り飛ばされ、JOW日本支部の外壁へと激突した。

脳が激しく揺さぶられたことで、
視界が歪み、足がガクガクと震える。

たった一発のパンチで、
今まで自分がロマネスクに与えたダメージの差をチャラにされた。

何という拳。
何という男。

これが、杉浦ロマネスク――

( ФωФ)「どうした」
殴った位置から動かず、ロマネスクがクックルに言った。

( ФωФ)「そんなものか、クックル。
        お前の、この闘いに懸ける想いとはそんなものか」
さっき、止めを刺す時間は充分にあった筈なのに――
敢えて、そうしなかった。

普通に考えて、合理的ではない。
喋っている暇があるなら、止めを刺すべきだった。
そうしないと、生き残れない。

だが――
今自分は、そんな生き様に、憧れすら抱いている……!



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:51:49.69 ID:Yh/7BGbe0
( ゚∋゚)「――――!!」
全身の力を総動員し、再びロマネスクに突進した。

( ФωФ)「らあッ!!」
迎え撃つように、ロマネスクが左のストレートを放ってくる。

( ゚∋゚)「!!!!!」
しかしクックルは、その一撃をそのまま顔面で受けた。

もう防御などどうでもいい。
パンチを打つというのなら、
キックを打つというのなら好きにしろ。

その代わりこちらも、
好き勝手に攻撃させてもらう……!

( ゚∋゚)「…………!」
ロマネスクのパンチを喰らいながら、
クックルがお返しの右拳を打ち込んだ。

( ФωФ)「がふッ!!」
ロマネスクの胸板にクックルの右拳が突き刺さり、
ロマネスクが苦悶の表情を浮かべる。

効いている。
自分のパンチが、ロマネスクに効いている。

クックルはその時、かつて味わったことの無い程の満足感と達成感を覚えていた。
そしてその快感が、更にクックルを突き動かす。



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:52:37.12 ID:Yh/7BGbe0
( ゚∋゚)「!!!!!!」
本能の赴くまま、滅多矢鱈に腕を振り回しながらロマネスクを叩いた。

かつてクックルが見下していた、
子供の喧嘩のような攻撃。
技術も糞もない、低次元なパンチ。

だが、どうだ。
その低レベルな攻撃が、今こうしてロマネスクを追い詰めている。
あのロマネスクを、叩いているのだ。

( ФωФ)「ごおおおあッ!!」
ロマネスクも、ただやられっぱなしでは無かった。

クックルの攻撃の合間を縫うようにして、
渾身のボディーブローを叩き込む。

( ゚∋゚)「…………!!」
背中を突き抜けるような衝撃に、
クックルは思わず体をくの字に折って、
口から胃液交じりの吐寫物を撒き散らした。

だけど、止まらない。
こんなことで今の自分は止まらない。
止められない。

今しかないのだ。
自分が、初めての夢を叶えることが出来るのは。
命を燃やす瞬間は今この時だけ……!



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:53:38.18 ID:Yh/7BGbe0
( ゚∋゚)「!!!!!!!」
低い姿勢から右足を跳ね上げ、
ロマネスクの顔面を蹴り飛ばした。

( ФωФ)「ぐッ!!」
追撃を仕掛けようとしていたロマネスクが、
カウンター気味にその蹴りをもらい、
流石に堪えられず膝を折る。

が、倒れない。
どころか、嬉しそうな笑みすら覗かせて、
真っ直ぐにクックルを見据えてくる。

その笑みに、クックルは思わず吸い込まれそうになった。

なんと、男を魅了する笑顔なのか。
更に、魂を奮わせる。
感情を、昂ぶらせる……!



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:54:38.21 ID:Yh/7BGbe0
( ФωФ)「るうううううううあァッ!!」
( ゚∋゚)「――――!!!」
いつしか二人は足を止め、
直立不動で向き合ったままの体勢から、
お互いを殴り合っていた。

技も何も無い、純粋な暴力だけ闘い。
原初の闘争の光景が、そこにはあった。

これだ。
これこそが、自分の求めていたものだ。

殴り、殴られながらクックルは思った。

いいや、これだけでは駄目だ。
まだ、ロマネスクを倒していない。

ロマネスクを倒すことで、初めて自分の人生を始めることが出来るのだ……!



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:55:22.56 ID:Yh/7BGbe0
( ゚∋゚)「……!?」
ガクンと、クックルの体が傾いた。

これは!?
まさか、自分の体に限界がきているというのか!?
もう、なのか!?

冗談ではない。
ロマネスクだって、ボロボロなのだ。
後一押し、
たった後一押しするだけで倒すことが出来るのだ。
それなのに……!

( ゚∋゚)「…………!!」
だが、クックルの意思とは裏腹に、
クックルの肉体はゆっくりと、しかし確実に敗北へと近付いていった。

クックルの打ち込むパンチからは次第に力が抜けていき、
代わりにロマネスクのパンチを受ける毎に体の中からごっそりと何かが失われていく。



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:56:47.85 ID:Yh/7BGbe0
嫌だ。
負けたくない。

折角、折角見つけたのだ。
自分の目的というものを。

何も与えられず、何も掴むことが出来なかった生涯で、
初めて見つけた夢なのだ。

負けたくない。
失くしたくない。

( ;∋;)「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
獣のような雄叫びを上げながら、クックルは泣いていた。

欲しい玩具を買ってもらえなかった子供の様な、
幼稚な、しかし純粋な泣き声。

それは、どんな苦痛を受けてきても泣くことのなかった、
クックルの流す初めての涙だった。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:58:08.06 ID:Yh/7BGbe0
( ФωФ)「……クックル、貴様は本当に強かった。
       だが、貴様はここで負ける。
       ここで、斃れ、果てる」
ロマネスクはクックルの泣き顔を見据えながら、
すっと目を細め、右腕を大きく後ろに振りかぶった。

( ФωФ)「貴様の敗因はたった二つ。
       一つは、今まで貴様が、自分の為に闘ってこられなかったこと。
       ……そしてもう一つ、決定的な理由は――」
充分右腕を引き絞ったところで、ロマネスクの右腕が唸りを上げてクックルの左胸に襲いかかった。

( ;∋;)「――――ッ!」
その瞬間を、まるでビデオのスロー再生のようにクックルの瞳は捉えていた。

しかし、クックルは動けなかった。
もう何をしようと自分は負ける。
そう、知ってしまったからだ。



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:58:38.53 ID:Yh/7BGbe0
( ФωФ)「――この我輩が、強過ぎたことだッ!!!」
一瞬。

その一瞬の間に、
ロマネスクの右拳がクックルの左胸部を突き破り、心臓を貫いた。

ビクン、とクックルの体が大きく痙攣し――
そして、二度と動かなくなる。

( ;∋;)「――――」
悔し涙を浮かべたまま、クックルは息絶えていた。

それは、殺人機械として人生の殆どを生きてきたクックルの、
人間としての最期だった。



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 18:59:34.30 ID:Yh/7BGbe0



( ФωФ)「…………」
ロマネスクは、クックルの亡骸を静かに地面に横たえた。

恐るべき、強敵だった。

もしもこいつが、もっと前に人間としての力を得ていたならば、
負けたのは自分だったかもしれない。

( ФωФ)「――――!」
と同時に、ロマネスクが先刻から抱いていた不安が、
明確な確信となって稲妻のように彼の体を貫いた。
     ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
何故、自分が今ここで闘った相手がクックルだったか。

自分が素直ヒートに変身した棺桶死オサムとかいう輩と闘って破れたことは、
向こうは当然知っている筈。

にも関わらず、一度自分に負けたクックルを、
自分にぶつけてきた。

確実に仕留めるつもりならば、決してそんなことはしない筈なのだ。



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 19:00:23.63 ID:Yh/7BGbe0
つまり、別にクックルは自分を斃せなくとも良かった。
どちらでも、良かったのだ。
時間稼ぎになれば、それだけでも良かったということ。

つまり――
敵は、既に目的を達成しているということになる……!

( ФωФ)「おのれ……!!」
ロマネスクは舌打ちし、JOW日本支部の中へと駆け込んだ。

既に手遅れ。
そう分かっていながらも、足を止められるようなロマネスクではなかった。

マスク仮面、すぐに戻れ。
自分の読みが正しければ、奴らの目的はお前が考えている以上に恐ろしいものだ。
奴らは――

( ФωФ)「…………!」
歯を食いしばったまま、ロマネスクはドクオの後を追うのだった。


〜第二部第七話『血着! 〜ロマネスクVSクックル〜』 終
 次回、『終わっていく世界』乞うご期待!〜



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/11(日) 19:01:07.92 ID:Yh/7BGbe0
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