ドクオは正義のヒーローになれないようです

600: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/17(土) 23:24:24.50 ID:LOFX/q7G0



エピローグ 『終わらない日々とどこまでも続く物語』



621: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/17(土) 23:25:33.36 ID:LOFX/q7G0


             *              *             *


「……それで、そのドクオって人はどうなったの?」
幼い少年が、くたびれた服を着た青年に興味津々といったふうに尋ねた。

「さて、ね。
 死んだのかもしれないし、まだどこかで正義のヒーローの真似事をやってるのかもしれない。
 彼がその後どうなったのかは、君の心の中ってやつだな」
「えー、そんなのつまんなーい!」
少年が不満げに唇をすぼめる。

青年はそれを見て、ちょっと困ったような顔で笑い、
「ごめんごめん。
 でも、めでたしめでたしで終わる物語ばっかりだと面白くないだろう?」
そう、からかうように言った。

「ずるーい!
 そんなこと言って、お話の続きを教えたくないだけなんだー!」
「はははは、そんなこと無いって」
憤慨する少年をなだめながら、青年はおかしそうに笑っていた。



628: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/17(土) 23:26:33.89 ID:LOFX/q7G0





「……ねえ」
ふと思い出したように、少年が口を開いた。

「うん?」
青年が聞き返す。

「正義のヒーローって、本当にいるの?
 困った時、本当に助けに来てくれるの?」
真っ直ぐな瞳で、少年は青年にそう訊ねた。

青年はしばし沈黙し、
そして少年に負けないぐらい真っ直ぐな瞳で見つめ返し、
「――ああ。
 いるさ。
 ここにいて、君がピンチになった時、必ず助けに来てくれる」
そう言って、少年の胸の上を軽く叩いた。

「うん!」
少年はにっこりと微笑むと、大きく頷いた。
それを見て、青年も満足げに微笑む。



636: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/17(土) 23:27:34.63 ID:LOFX/q7G0



「ここにいたのか。
 全く、急に一人でどこかへ行きおって。
 探すのに苦労したぞ」
と、青年と少年の後ろから、女の声がかけられた。

少年が振り向くと――
そこには銀色の髪をした、着物姿の女性が立っていた。

その腰には、日本刀。

あれ?

少年は思う。

この姿、どこかで聞いたことがあるような――

「悪い悪い。
 ちょっと道草したくなってさ」
青年が軽く頭を下げて、女性に謝った。

と――



650: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/17(土) 23:28:55.06 ID:LOFX/q7G0
「!!!?」

突然の強風が、その場にいる三人を襲った。

驚いて空を見上げると、
一台のUFOが空に浮かんでいる。

そのUFOはどんどんこちらに近付いて来て――
少年達の前まで来たところで、その動きを止めた。

「まずは見事と褒めておこう、マスク仮面。
 よくぞ、この星をここまで甦らせた」
UFOの中から、一人の男が姿を現した。

筋骨隆々の肉体を、黒いマントで包んだその姿。

それを見て、少年はようやく確信する。

まさか、この人は。
ここにいる人達は――



658: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/17(土) 23:29:46.55 ID:LOFX/q7G0
「遅えんだよ、ロマネスク。
 待ちくたびれたぞ」
青年が黒マントの男にそう憎まれ口を叩いた。

「フンッ、死ぬまでの時間を先延ばしにしてもらったと感謝して欲しいものだな。
 だが、それもここまでだ。
 さあ、マスク仮面!
 今こそ約束を果たす時だ!!」
黒マントの男がUFOから飛び降り、青年の前へと着地した。
青年はそれに物怖じすることなく、真正面から黒マントの男を見据える。

「悪い、ドス女。
 この子をつれて、安全な場所まで下がっててくれ。
 すぐ、済ませるからさ」
「――ああ。
 負けるでないぞ」
女性が少年の手を取り、軽く青年の背中を押してから後ろに下がる。



673: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/17(土) 23:30:53.36 ID:LOFX/q7G0
「最後のお別れは終わりか?
 ならば、そろそろ始めるとしよう」
「ほざいてろよ。
 すぐに吠え面かかせてやるぜ」
青年と黒マントの男が、顔を突き合わせて睨み合う。

だが、そこには悪意や憎しみなど一つも存在していなくて――
むしろ、二人は親友との再会に喜び合っているかのようにすら見えた。

ああ、そうか。

少年は思う。

まだ、さっきの物語は終わってないんだ。
今もまだ、続いていってるんだ。



687: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/17(土) 23:32:51.38 ID:LOFX/q7G0



――己の信念に殉じた男がいた。



――肉親を護る為、その身を闇に堕とした男がいた。



――誰よりも優しく、人間らしく生きてきた女がいた。



――欺瞞に気付かず、しかし最後まで仲間との絆を信じながら死んでいった女がいた。



――志半ばで、しかし最後に仲間を助けて息絶えた男がいた。



――愛していた者に殺された少女がいた。



697: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/17(土) 23:33:28.18 ID:LOFX/q7G0
――機械だった心と体に、最後に人間としての魂を取り戻した男がいた。



――自分の思想を実現する為に、世界を滅ぼそうとした男がいた。



――永劫の退屈の果て、狂った男がいた。



――誰よりも純粋であるが故に、壊れてしまった少年がいた。



――老いて愛する者と離れることを怖れ、悪魔に魂を売り渡した男がいた。



703: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/17(土) 23:34:15.66 ID:LOFX/q7G0




――民を護り、その民に殺された正義のヒーローがいた。



――悪を貫こうとした宇宙大魔王がいた。



――孤独に怯え、なおも誇りを失わずに生きようとした女がいた。



そして――



――そして、正義のヒーローになれない男がいた。



706: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/17(土) 23:34:58.41 ID:LOFX/q7G0





これは、そんな彼らが織り成してきた物語。

そしてその物語はきっと、これからもずっと続いていく――



711: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/17(土) 23:35:34.56 ID:LOFX/q7G0





( ФωФ)「行くぞ、マスク仮面!!!!!」

('A`)「来い、ロマネスク!!!!!」









('A`)ドクオは正義のヒーローになれないようです


         〜 完 〜



729: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/17(土) 23:36:45.21 ID:LOFX/q7G0
この番組は、


オムライス様
そして、この物語を読んで下さった読者の皆様方全て

の提供でお送りしました。



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