ドクオは正義のヒーローになれないようです
- 110: 遣唐使(岡山県) :2007/04/09(月) 20:29:41.93 ID:YNqfuACx0
- 第十五話『正義の使者とハリボテヒーロー』
〜前回までのあらすじ〜
正義のヒーローに憧れ、
『マスク仮面』を名乗り日夜奮闘していた青年、ドクオ。
しかし、彼の夢は叶うことがないまま、
日々陰鬱とした人生を送っていた。
そんなある日、ふとした偶然で狼の妖怪、
銀に出会うことで彼の日常は一変する。
次々と現れる怪人。
続発する異常な事件。
そういった事件に否応無しに関わっていくうちに
ドクオは悪の秘密結社に捕らえられ、
そこで怪人改造手術の失敗作と融合する。
その時得た脅威の力で窮地を脱するドクオ。
しかし、そんな彼の正体を、
ブーン達JOWは掴もうとしていた――
- 115: 遣唐使(岡山県) :2007/04/09(月) 20:37:39.08 ID:YNqfuACx0
* べ、別にネタギレになったわけじゃないんだからね! *
('A`)「……うわっ」
目が覚めると、自分の部屋の布団の中だった。
イ从゚ ー゚ノi、「起きたか、マスク仮面」
ドス女が、俺の顔を覗き込んでくる。
どうやら、こいつがここまで運んで来てくれたらしい。
イ从゚ ー゚ノi、「……何があったか、覚えておるか?」
声のトーンを落とし、ドス女が尋ねてくる。
('A`)「あ〜…… まあ、大体は」
今回は、思い出すまでもなく、はっきりと覚えている。
闘いの記憶が、脳にはっきりと焼き付いていた。
('A`)「しかし、ここ最近になって、俺何回気絶したんだ?」
素朴な疑問が浮かび、それが言葉となって口から出てくる。
本当に、ここ数日の間のぶっ倒れっぷりは異常である。
もしかしたら、ギネスに載れるんじゃないだろうか。
イ从゚ ー゚ノi、「所構わず気絶するのが正義のヒーローの仕事らしいな」
('A`)「うっせ」
ドス女の皮肉に、短く返す。
だがここまで運んでくれた手前、あまりきつくも言えない。
- 121: 遣唐使(岡山県) :2007/04/09(月) 20:42:52.99 ID:YNqfuACx0
('A`)「…………」
イ从゚ ー゚ノi、「…………」
静寂が訪れ、俺とドス女は互いに目を合わせずに視線を泳がせていた。
('A`)「…………」
だが、俺にはドス女にどうしても聞かねばならないことがあった。
意を決し、それを問い正す為に口を開く。
('A`)「……なあ、ドス女」
イ从゚ ー゚ノi、「何じゃ?」
ドス女が努めて平静を装った様子で答えた。
('A`)「お前が、いきなり俺の部屋に押しかけてきたのは……」
イ从゚ ー゚ノi、「…………」
ドス女が、それ以上聞くなと目で制してくる。
しかし、俺は構わず言葉を続けた。
- 125: 遣唐使(岡山県) :2007/04/09(月) 20:53:04.11 ID:YNqfuACx0
- ('A`)「……俺が、化物に変身しないかどうか監視する為だったのか?」
イ从゚ ー゚ノi、「…………」
ドス女は、何も答えなかった。
しかし、その沈黙こそが雄弁に俺の問いかけを肯定していた。
('A`)「……もしものときは、殺してでも俺を止める為に?」
イ从゚ ー゚ノi、「…………」
ドス女は、何も答えなかった。
イ从゚ ー゚ノi、「……すまぬ」
永遠のような一瞬の沈黙の後、ドス女はポツリと言った。
イ从゚ ー゚ノi、「……隠してはいたが、騙しているつもりは無かった」
ドス女が向き直り、深々と頭を下げる。
イ从゚ ー゚ノi、「じゃが、これだけは信じてくれ!
儂は、お主を殺したいなどとは、決して思っておらぬ!
儂は――!」
ドス女はそこで言うのをやめ、ゆるゆると頭を横に振った。
イ从゚ ー゚ノi、「――いや、こんなのは、綺麗事じゃな。
どれだけ言葉で取り繕おうと、
最悪の場合を想定において監視していたことには変わらぬ。
お主には、どれだけ軽蔑されようと仕方が――」
('A`)「違うんだ!」
耐え切れず、ドス女の言葉を遮って俺は叫んだ。
- 127: 遣唐使(岡山県) :2007/04/09(月) 20:59:17.48 ID:YNqfuACx0
- ('A`)「……違うんだ。
お前に謝って欲しいとか、そういうんじゃ、ない。
大体、あんな化物みたいなのに変身するような男、
放っとけっていう方が無理な話だ。
そのことで、お前を恨もうなんて気は、更々無い」
はっきりと覚えている。
蝙蝠男を殺したときの、あの感覚。
あんな化物みたいな力が、俺の中に。
('A`)「それに、俺を殺すつもりなら、
さっき気絶してたときといい、幾らでもチャンスがあった筈だろ?
それをしなかったってことは、
なるべくなら殺したくなかったってことだろ?」
こんな化物、いつ殺されたって文句が言えないのに、ドス女はそれをしなかった。
どころか、近くで見守り、暴走を食い止めようとさえしてくれていたのだ。
- 130: 遣唐使(岡山県) :2007/04/09(月) 21:05:33.38 ID:YNqfuACx0
- ('A`)「だから俺は――
その、何て言うか……
……嬉しかったんだ。
――いいや、違う。
一言、言っておきたかったんだ」
溢れる程の嬉しさを込めて。
はちきれんばかりの感謝を込めて。
('A`)「その、ありがとう、って――」
恐らく生まれてこのかた最大の勇気を振り絞って、
俺はドス女にそう告げた。
ありがとう。
こんな俺に構ってくれて。
ありがとう。
こんな俺を見捨てないでいてくれて。
イ从゚ ー゚ノi、「ドクオ……」
ドス女が感極まったような表情を見せ――
イ从゚ ー゚ノi、「キモ」
('A`)「ぶち殺すぞ」
前言撤回。
このババア、俺が怪人として退治される前に必ず道連れにしてやる。
- 131: 遣唐使(岡山県) :2007/04/09(月) 21:11:47.49 ID:YNqfuACx0
('A`)「あ、そうだ」
イ从゚ ー゚ノi、「うん?」
ふと、ある重要なことが頭の中に呼び戻されてきた。
そうだ、すっかり忘れていた。
今すぐにでも、やらなきゃならないことがあるんだった。
('A`)「悪い、ちょっと俺出かけてくるわ」
イ从゚ ー゚ノi、「? どこへ行くつもりじゃ?」
急いで身支度をする俺の背中に、ドス女が声を投げかけてくる。
('A`)「大した用事じゃねえ。
夜までには戻る」
そう、他の人にとっては、別段大した用事ではない。
だが、俺にとっては何よりも優先すべき問題だった。
果たして、間に合うか――
- 134: 遣唐使(岡山県) :2007/04/09(月) 21:19:14.52 ID:YNqfuACx0
('A`)「あー、見つかんねー……」
ゴミの山の麓で、俺は溜息をついた。
ここはVIP市で出された粗大ゴミの廃棄場所。
以前俺が捨てたマスク仮面変身スーツも、
ここに運ばれてきているはずだった。
('A`)「現代人は物を粗末にし過ぎだろ、常識的に考えて……」
文字通り山のようなゴミを掻き分け、変身スーツを探す。
しかし……これは流石に尋常の量じゃねえぞ。
ドス女には夜までには戻ると言ったが、それまでに見つかるかどうか……
('A`)「……たく、何やってんのかねえ、俺も」
一度は捨てた夢の筈だ。
もう、いらないものだった筈だ。
なのに今、往生際が悪くも再びその夢の残骸を探している。
希望の残り火を、集めようとしている。
――結局、死ぬまでこの夢とは付き合っていかなければならないんだろう。
そうやって割り切るしか、今の所無い。
割り切れるほど、まだまだ大人にはなれていないけれど。
- 138: 遣唐使(岡山県) :2007/04/09(月) 21:31:40.97 ID:YNqfuACx0
- ('A`)「……ちなみにゴミ漁りのことを英語でスカベンジと言います」
スカベンジとスカトロってどこか似てるよね☆
下ネタ大好きドクオ豆知識でした!
下ネタだけに『豆』知識ってねえ!
ゲハハハハハハハハハ!!
……死のう。
('A`)「ってこんなこと考えてる暇があったらさっさと探そ……っ痛ってぇ!!」
最低な下ネタを考えているとき、飛来したゴミが頭を直撃した。
イ从゚ ー゚ノi、「すまん、手が滑った」
('A`)「…………!」
見ると、ドス女の姿がゴミ山の頂上付近にあった。
('A`)「……何でお前がここにいんだよ」
てか本当に、どうしてここにいるんだ。
ってかいつからいるのだ。
- 139: 遣唐使(岡山県) :2007/04/09(月) 21:32:29.81 ID:YNqfuACx0
- ('A`)「気持ちは嬉しいけど、別に俺は手伝ってくれなんて……」
イ从゚ ー゚ノi、「勘違いするな。 別に、お主の探し物を手伝っているわけではない。
儂もちょっと、間違えて捨ててしまったものを探しにな」
ドス女は俺からの質問を否定するように言った。
('A`)「んじゃ何を探してんだよ」
イ从゚ ー゚ノi、「お主に教える義理は無い。
……まあ、もしかしたら、お主の探しているものに似ているかもしれんがな」
('A`)「……そーかよ」
それ以上は聞かず、俺とドス女はそれぞれまたゴミの山を漁り始めた。
……ったく、お節介焼きめ。
何だって、俺なんかの為にそこまでするんだ。
……ありがとう。
- 143: 遣唐使(岡山県) :2007/04/09(月) 21:41:06.87 ID:YNqfuACx0
('A`)「……見つかんねえ」
イ从゚ ー゚ノi、「……無いな」
捜索すること数時間。
しかし、マスク仮面変身スーツは影も形も見つからなかった。
日は西の空に沈みかけ、夕焼けが周囲を照らし始めている。
('A`)「てか、匂いを嗅ぐなりして探せねえの?」
イ从゚ ー゚ノi、「こう辺りが臭くては流石に無理じゃ。
儂の鼻とて、万能ではない」
('A`)「チッ。 使えねえワン公だ」
イ从゚ ー゚ノi、「ファックユーぶち殺すぞゴミめら……!」
……何故にそこで利根川なんだよ。
('A`)「……もういいよ。
別に、一度は捨てた物だし、何となればまた作れば……」
イ从゚ ー゚ノi、「それでいいのか?」
俺の諦めの言葉を、ドス女が遮った。
イ从゚ ー゚ノi、「そこで諦めてしまって、本当にそれでいいのか?
お主の夢は、希望は、その程度のものだったのか?」
射抜くような視線をこちらに向けて、ドス女が言った。
- 145: 遣唐使(岡山県) :2007/04/09(月) 21:49:29.57 ID:YNqfuACx0
- ('A`)「……たってよ、これ以上どうしろっていうんだよ!?
頑張ったって、駄目なことだってあるんだよ!!」
俺は怒りを込めた口調で反論した。
そう、努力は必ずしも報われるとは限らない。
世の中は、ドス女みたいに強い奴ばかりではないのだ。
イ从゚ ー゚ノi、「それで、お主が本当に満足ならな。
お主が頑張っているのは知っておるし――
儂も、努力が足りないとか、そんな糞の役にも立たぬ無責任なことを言うつもりもない。
じゃが、お主の目は、まだ諦めていないじゃろう?
満足しておらぬのじゃろう?
一度や二度挫折したくらいでそれが何じゃ。
困難な障害が何じゃ。
失敗しない人間が、いるとでも思っておるのか?
無様でも、惨めでも、失敗から何かを得るのが――うおお!?」
そう言っている途中で、ドス女はゴミの山から転げ落ちた。
熱弁に夢中になっているあまり、バランスを崩してしまったのだ。
- 150: 遣唐使(岡山県) :2007/04/09(月) 22:00:48.73 ID:YNqfuACx0
- ('A`)「だ、大丈夫か!? ドス女!!」
俺は慌ててドス女の所へと駆け寄った。
今、結構高い所から落ちてたぞ。
イ从゚ ー゚ノi、「つつつ……
平気じゃ、大事ない――ぐわ!」
痛みを必死でこらえていたドス女の頭に、
さっきのドス女の転落の衝撃で崩れかかっていたゴミ山の一角が降り注いだ。
('A`)「お、おい、本当に大丈夫――」
そういいかけ、俺は言葉を止めた。
ドス女の目の前に落ちてきたゴミ、それは――
イ从゚ ー゚ノi、「どうした、マスク仮――」
きょとんとしていた俺に何か言おうとしたドス女も、
それに気づいて俺と同じきょとんとした顔になる。
('A`)「……あった」
マスク仮面変身スーツが、そこにはあった。
かつて捨てた夢の残骸が、再び、目の前に姿を現していた。
イ从゚ ー゚ノi、「……な? 無様な失敗から、得られるものもあろう?」
してやったりといった顔で、ドス女が笑う。
('A`)「は…… ははは、ははははははははは」
イ从゚ ー゚ノi、「くくッ…… くくく、くくくくくくくくく」
('A`)イ从゚ ー゚ノi、「あーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」
堪え切れず、俺達は大声を上げながら笑い転げた。
何故だかとてもおかしくて、ひたすらに、笑い続けた。
- 153: 遣唐使(岡山県) :2007/04/09(月) 22:06:58.21 ID:YNqfuACx0
('A`)「……んじゃ、帰るか」
イ从゚ ー゚ノi、「ああ」
ひとしきり笑い終えたあと、俺達は家に帰ることにした。
やることはたくさんある。
まず、銭湯に行って汚れを落として、コインランドリーで服を洗濯して、
それから、変身スーツを修繕しなければならない。
さて、どれから手をつけるべきか……
イ从゚ ー゚ノi、「――待て」
と、ドス女が右腕で俺を制した。
先程とは別人のような鋭い顔つきで、一方に視線を向ける。
そこに居たのは――
(,,゚Д゚)「よう、また会ったな」
('A`)「――ギコ!」
VIP署の刑事にして――空気を読まない出歯亀野郎、ギコ。
こいつ、また良い雰囲気の時に邪魔しに現れやがって……!
- 155: 遣唐使(岡山県) :2007/04/09(月) 22:16:06.65 ID:YNqfuACx0
- イ从゚ ー゚ノi、「偶然、というわけではなさそうじゃな」
日本刀の柄に手をかけながら、ドス女がギコに尋ねる。
(,,゚Д゚)「……この前、そこの兄ちゃんが持ってる
へんてこなスーツがゴミ捨て場に捨てられてるのを見つけてね。
そのまま捨てっ放しかとも考えたが、
もしかしたら、また拾いにくるかも、と思ったわけだ。
……そして、その考えは正しかったようだ」
ギコが懐に手を忍ばせながらこちらに歩み寄る。
恐らく、あの中には拳銃が握られているのだろう。
イ从゚ ー゚ノi、「ふむ、そういうことか。
なかなかに慧眼じゃな。
じゃが――」
ドス女がギコから視線を外す。
イ从゚ ー゚ノi、「同じことを考えていた連中が、他にもいるようじゃぞ?」
('A`)「――――!?」
(,,゚Д゚)「――――!?」
ドス女のその言葉に、俺とギコは一斉に周囲を見回した。
川 ゚ -゚)「…………」
ξ゚听)ξ「…………」
(´・ω・`)「…………」
それに合わせて、物陰からぞろぞろと知らない奴らが姿を見せる。
何だ、こいつらは。
一体、いつからそこに――
- 159: 遣唐使(岡山県) :2007/04/09(月) 22:20:10.51 ID:YNqfuACx0
- ('A`)「…………!」
――と、以前見たことのある顔を、その中に見つけた。
忘れもしない。
かつて、正義のヒーローは存在すると。
自分が正義のヒーローだと。
俺に言ったあの少年。
( ^ω^)「…………」
その少年が、無言のまま俺を見据えていた。
〜第十五話『正義の使者とハリボテヒーロー』 終
次回、『因縁の対決、『魔弾』VS『銀獣』!』乞うご期待!〜
- 161: 遣唐使(岡山県) :2007/04/09(月) 22:21:07.10 ID:YNqfuACx0
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