ドクオは正義のヒーローになれないようです
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:05:29.53 ID:tI/BiIXZ0
- 第四十七話『血戦 その3 〜ロマネスクVSハインリッヒ 後編〜』
〜 前回までのあらすじ 〜
彼女は年上 第一話『恋人のできない女』
ζ(゚ー゚*ζ「でさー、私の彼ったらそこであんな事言ってさー。
流石の私も頭きちゃって」
(*゚ー゚)「はいはい」
もう三十分になろうかという彼氏の愚痴を、私は延々と聞き続けていた。
これで、今日の昼休みも潰れてしまうことになりそうだ。
全く……
そんなに文句ばかり出るなら、いっそ別れてしまえばいいのにといつも思う。
そんなことを言えば話が余計長くなるので、
口には決して出さないけれど。
ζ(゚ー゚*ζ「はあ…… まあ最後にプレゼントもって謝ってきてくれたからいいんだけどさ。
ほら、彼ってそういう優しいとこがあるじゃない?」
デレが嬉しそうな顔でそういう。
愚痴を言っていたかと思えばすぐこれだ。
結局、この手の話は最後には惚気話になる。
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:06:41.37 ID:tI/BiIXZ0
- ζ(゚ー゚*ζ「そーいえばさー。 しぃって彼氏作らないの?」
(*゚ー゚)「う、うん。 まだ気になる人がいないっていうか……」
余計なお世話だ。
反射的にそう言いたくなるのを無理矢理押し込め、
当たり障りの無い生返事でお茶を濁すのが社会人としての嗜み。
ζ(゚ー゚*ζ「そんなこと言ってたらずっと彼氏なんてできないままだよ?
私達だっていつまでも若くないんだからさー。
早く結婚の相手に目星つけとかなくちゃ行き遅れちゃうよ?」
(*゚ー゚)「うん……」
本気で余計なお世話だ。
と、叫びそうになったが……
心の隅では、デレの言うことももっともだと理解していた。
私ももう27歳。
四捨五入すれば30歳の大台にのる年齢だ。
同い年の友人達の中には結婚して家庭を作る人も増えてきて、
中にはもう子供が小学校に進学するような友達もいる。
そんな中、私はこうして独身貴族と貫いているというわけだ。
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:07:29.54 ID:tI/BiIXZ0
- 今まで、恋人が全くできなかったというわけではない。
しかし今までに付き合った男性の人数がたったの二人というのは、
平均よりはずっと少ない人数なのだろう。
それに付き合ってみても、
どうにも長続きしなかったのだ。
その理由としては、男を見る目が無かったというのもあるかもしれないが、
別れた原因の大半は自分の正確にあるような気がする。
付き合っていてもどこか冷めている感じがする。
別れる際には必ずこう言われたし、自分でも自覚症状はある。
が、それはどうしてなのかは自分にも分からない。
そんなわけで今現在彼氏いない暦3年目に突入しているわけであるが――
新しく恋人を作ろうとは思えなかったし、できそうにもなかった。
一人でいることに孤独や不安を感じることが無いわけではない。
だけど、それを埋める為だけに恋人を作るというのは、
どこか汚らわしい行為のように思えた。
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:08:30.55 ID:tI/BiIXZ0
- (*゚ー゚)「はあ……」
思わず溜息が出る。
家族は直接は何も言ってこないが、
早く結婚して孫の顔を見せてくれという無言のプレッシャーは日に日に強くなってくる。
だけど、その為だけに結婚して子供を産むなんて真っ平御免だ。
白馬の王子様がやってくるなんて、子供じみた空想を持っているわけではない。
だけど、付き合ったり、結婚したりするのは、
やっぱり心の底から信頼できて、好きだと思える人とするものなのではないだろうか。
こんなことデレに言えば、
「夢見すぎ」って馬鹿にされるんだろうけど。
「おーい、羽二屋クン。 この書類を得意先の天国商事まで届けてくれー」
(*゚ー゚)「あ、はーい!」
課長の声が、私の思考を現実に引き戻した。
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:09:36.63 ID:tI/BiIXZ0
(*゚ー゚)「えーと、天国商事はこの角を曲がって……」
私は急いでいた。
交通事故が原因で渋滞が起き、
すっかり時間の予定が狂ってしまっていたのだ。
訳を話せば相手も許してはくれるだろうが、
遅刻というのは矢張り社会においては良い印象を与えない。
そんなわけで、私はこうして走れメロスの如く息を切らして疾走する破目になっている。
(*゚ー゚)「もう! これだからハイヒールは!」
ハイヒールを履くようになって大分経つが、
どうしてこの靴はこんなに機能性を無視した造りになっているのだろう。
学生時代、陸上部でスパイクに慣れてしまっていただけに、
余計にそう感じられた。
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:10:37.81 ID:tI/BiIXZ0
- (*゚ー゚)「きゃっ!」
と、コンクリートの切れ目にハイヒールの踵を取られ、
私は派手に地面に倒れこんだ。
その拍子に、書類を入れた袋が地面に転がる。
(*゚ー゚)「やばっ!」
書類袋が道路に飛び出て、今にも車のタイヤで轢かれそうになった。
まずい。
あの中には大切な書類が入っているのに、
車の下敷きになったりしたら一大事だ。
立ち上がろうとするが、
こけた拍子に足首を痛めてしまい、すぐに起きられなかった。
このままじゃ……!
(,,゚Д゚)「よっと!」
と――
学生服を着た少年が道路に飛び出し、書類袋を拾い上げて歩道に戻った。
直後、書類袋のあった場所を車が通過していく。
(,,゚Д゚)「大丈夫か? これ、あんたのだろ?」
そう言いながら、少年は私に書類袋を差し出した。
――これが、私と彼、射手由(いてよし)ギコとの、初めての出会いだったのだ。
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:11:50.02 ID:tI/BiIXZ0
* 以下、何事も無かったかのように再開 *
( ФωФ)「るあああああああああああああああ!!」
拳を固く握り締め、ロマネスクはハインリッヒに向かって駆けた。
从 ゚∀从「…………」
対して、ハインリッヒは何の構えも取らず、
余裕の笑みを浮かべたままロマネスクを見据えている。
何か企んでいるな。
ロマネスクはそう直感したが、すぐにそれを思考の外へと弾き出した。
どうでもいい。
相手が何をして来ようと、この拳が当たればそれで全て決着する。
拳を当てる。
それ以外のことは、考える必要など無い。
( ФωФ)「おああ!!」
斧の様な一撃を、ロマネスクはハインリッヒに叩き込もうとした。
だがその瞬間――
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:13:00.74 ID:tI/BiIXZ0
- ( ФωФ)「!!?」
ロマネスクの体が、殴りかかるのと同じ速度で宙に舞った。
( ФωФ)「――――!?」
空中で体勢を立て直し、何とか足から着地する。
今のは!?
パンチがハインリッヒに命中する直前、体が宙に浮いていた。
この日本という国には、合気道という武道があり、
その武道は相手の力を利用して技をかけ、投げ飛ばすという。
ハインリッヒは、そういった技で自分の攻撃を捌き、
投げたとでもいうのだろうか。
――いや、違う。
そうじゃない。
そういったものとは、根本的に何かが違う……!
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:13:57.24 ID:tI/BiIXZ0
- ( ФωФ)「小癪な!!」
ロマネスクが、今度は左のミドルキックでハインリッヒに応戦した。
( ФωФ)「!!!」
が、またしても結果は同じ。
キックはハインリッヒに届くことなく、
逆にロマネスクの体が後方に吹っ飛んで、勢い良く地面に叩きつけられた。
「ワンワンワン!(ロマネスク様!)」
ジョナサン達が、ロマネスクに駆け寄ろうとする。
( ФωФ)「来るな!!」
それを、ロマネスクは大声で制した。
( ФωФ)「この程度のことで慌てふためくな。
お前達は、黙って我輩の闘いを見ていろ」
ロマネスクが立ち上がり、ハインリッヒを見据える。
今ので、はっきり分かった。
ハインリッヒが自分に対して仕掛けてきたのは、合気などではない。
何故ならば、ハインリッヒが自分に触れた感触は、一切無かったからだ。
いくら合気道とはいえ、投げるには相手の体に触れ、
その触れた点を梃子の原理で利用しなければならない。
触れずに投げるなど、魔法でも使わなければ不可能だ。
つまり、ハインリッヒのそれは、
技術(スキル)ではなく能力(スペック)の範疇、超能力や魔法といった類のもの。
それも更に限定するならば、物理学的系統の能力。
それは――
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:15:44.82 ID:tI/BiIXZ0
- ( ФωФ)「『斥力』、か」
ロマネスクは呟くように言った。
『斥力』。
物体同士がお互いに引き付けあう力、『引力』とは正反対の、
物質同士がお互いに反発し、遠ざけあう力。
その力を利用し、攻撃時の運動ベクトルを強引に捻じ曲げ、
あらぬ方向へと攻撃を捌いたのである。
そう考えれば、戦艦に放ったミサイルの軌道が急に変わったのも説明がつく。
『斥力操作』。
それが、ハインリッヒの異能――
从 ゚∀从「ハッ――
こんな短時間で俺の能力を見破ったのは、お前が初めてだぜ。
単なる筋肉馬鹿って訳じゃねぇみたいだな」
感心した風に、ハインリッヒが軽く手を叩く。
从 ゚∀从「そこまで分かってるなら、もう見当がついてんだろ?
つまり、お前の攻撃は俺には届かないってこった。
十年同じことを繰り返そうと、絶対当たらねえんだよ」
嘲るようにハインリッヒは言った。
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:17:20.95 ID:tI/BiIXZ0
- ( ФωФ)「下らん」
しかし、ロマネスクはそんなことはどうでもいいと言わんばかりに、
再度真っ直ぐにハインリッヒに向かって突っ込んだ。
正面からの、何の小細工も無いストレート。
それしか知らないというような、真っ直ぐな攻撃。
そして、その攻撃はあまりに真っ直ぐな故に――
从 ゚∀从「馬鹿か手前は?」
ハインリッヒの能力の、格好の餌食だった。
( ФωФ)「ぬう!?」
ロマネスクの拳が90度右に軌道を変え、虚空を猛スピードで切り裂いていく。
確かに凄まじい威力ではある。
が、その威力も命中しなければ何の意味も無い。
( ФωФ)「フンッ! 確かに避けるのは上手のようだが、それでは我輩を倒せんぞ!!」
从 ゚∀从「間抜けが! 俺の能力が防御にしか使えねェと誰が言った!!
こういう使い方も――」
ハインリッヒが大きくバットを振りかぶって、
从 ゚∀从「――あるんだよおおおおおおおおおおおおおお!!!」
そのまま、ロマネスクを打ち抜いた。
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:18:41.76 ID:tI/BiIXZ0
- ( ФωФ)「!!!!!!!」
毎度の如く、防御も何もすることなく攻撃を喰らったロマネスクが、
その一撃で大きく吹き飛ばされた。
錐揉み回転しながら宙を翔け――
そのまま、地面に激突する。
从 ゚∀从「どおぉぉだァ。 今の一発はよぉ。 痛ェだろォ」
いやらしい笑みを顔に浮かべながら、ハインリッヒはロマネスクに問いかけた。
从 ゚∀从「『斥力』による運動ベクトル操作――
それによって、遠心力衝撃力作用反作用速力筋力――あらゆる力を一点に集中させた一撃だ。
ただのバットのスイングとは訳が違うぜェ」
自慢げに、ハインリッヒが愛用の金属バットを振り回した。
( ФωФ)「フンッ」
しかし、ロマネスクはあれだけの攻撃を受けたにも関わらず、
何事も無かったかのように立ち上がった。
ダメージが無い訳ではない。
しかし、ロマネスクはそれを微塵にも感じさせることはなかった。
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:19:53.80 ID:tI/BiIXZ0
- ( ФωФ)「成る程、確かに言うだけのことはある。
が、手品のタネが割れてしまえばどうということもないな」
ロマネスクが服についた汚れを払いながら言った。
从 ゚∀从「何余裕ぶっこいてやがる!
お前は自分の置かれてる状況が分かってんのか!?」
苛立たしげに、ハインリッヒが叫んだ。
ロマネスクからの攻撃は当たらない。
ハインリッヒからの攻撃は一撃必殺。
この絶望的な状況下で、なおロマネスクはその自信を揺るがさない。
それが、ハインリッヒを苛立たせていた。
( ФωФ)「お前の力が、汗水流し、血反吐を吐いて体得した技術であったならば、
多少は厄介だったかもしれん。
しかし、技術でも何でもない、ただの降って沸いたような能力など、我輩の前では無力。
そんなものでは、我輩は倒せない。
それと、十年同じ事を繰り返しても当たらないと先程言っていたな。
ならば――」
ロマネスクは拳を握り直し、
( ФωФ)「――百年、繰り返すまでだ」
力強く、そう言った。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:21:19.51 ID:tI/BiIXZ0
从 ゚∀从「ハアッ、ハアッ、ハッ――」
ハインリッヒは息を切らせながらバットを握り直した。
( ФωФ)「…………」
ハインリッヒの視線の先では、ロマネスクがむくりと立ち上がってくる。
全く――どういった化物なんだ、あいつは!?
ロマネスクとハインリッヒが戦闘を開始してから既に30分以上――
その間に、ハインリッヒはロマネスクの全ての攻撃を跳ね返し、
逆に渾身の一撃をそれこそ雨のように叩き込んできた。
ロマネスクの体は既に満身創痍。
体中から鮮血が流れ、恐らく骨も砕けているであろう。
いくら相手が超人的な耐久力と回復力を持っているとはいえ、
最早立っているのもやっとな筈だ。
なのに――
なのに、どうしてあいつは不気味なくらい余裕のある顔をして、
こっちは追い詰められた気分になっているのだ!?
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:24:00.20 ID:tI/BiIXZ0
- 从 ゚∀从「…………」
ロマネスクを殴り続けたせいで、
ハインリッヒの手の平はじんじんと痛みを発していた。
手応えは充分過ぎる程あった。
それも、一発や二発ではない。
なのに、どうして奴は倒れない!?
それだけじゃない。
普通、あれだけ攻撃を無効化されたら諦める。
ハインリッヒと闘った相手は、例外無くそうだった。
自分がいくら攻撃しても相手には通用しない。
その絶望に囚われた相手は、悪足掻きの力のこもらない攻撃しかしなくなる。
だが、ロマネスクはそんな今までの相手とは違った。
どれだけ攻撃を受け流されようが、一つも気にすることなく全力で――
いや、むしろ更に力のこもった攻撃をしかけてくる。
有り得ない。
何故、こいつは諦めない!?
何が、この男を動かしている!?
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:25:07.27 ID:tI/BiIXZ0
- ( ФωФ)「どうしたハインリッヒ。 冷や汗が出ているぞ」
口の端に笑みを浮かべながらロマネスクは言った。
从 ゚∀从「化物め……!」
ハインリッヒは唇を噛んだ。
お前からの攻撃は通用しない。
ハインリッヒはそう言いはしたが、内心彼女は焦っていた。
ハインリッヒの能力も、際限なく無限に使用出来るわけではない。
力の量にも、限界がある。
それもロマネスク級のとてつもない攻撃を捌くとなれば、
必然的に通常より多く力を消耗することになる。
これは、ハインリッヒがいまだかつて経験したことのない状況であった。
今までは、力の枯渇など気にする前に相手は死んでいたから。
だが――
ロマネスクという規格外の怪物は、
そのハインリッヒの莫大な力さえ脅かそうとしていた。
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:26:09.35 ID:tI/BiIXZ0
- ( ФωФ)「ぬおおおあ!!」
ロマネスクが正面からノーガードで突っ込んでくる。
从 ゚∀从「舐めんな!!」
ハインリッヒは斥力でロマネスクを弾き飛ばすと、
大きくバットを頭上に振り上げた。
从 ゚∀从「いい加減……くたばれええええええええええええええええええ!!!」
声を張り上げながら、ハインリッヒがロマネスクの脳天目掛けてバットを振り下ろした。
斥力操作により威力を何倍にも膨れ上がらせた一撃が、ロマネスクの頭部を捉える。
殺った。
ハインリッヒがそう思った瞬間――
( ФωФ)「捉えた」
ロマネスクの拳が、ハインリッヒ目掛けて飛んできた。
馬鹿な。
あの一撃を受けながら、反撃をしてくるなんて。
まずい。
斥力操作で避け――
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:27:36.01 ID:tI/BiIXZ0
- 从 ゚∀从「!!!!!!」
かわし切れなかった。
直撃こそ無かったものの、
ロマネスクの右拳が、ハインリッヒの左即頭部を掠める。
从 ゚∀从(や――ばッ――)
掠っただけ。
それだけで、ハインリッヒの脳は大きく揺さぶられていた。
視界がぐにゃりと歪み、平衡感覚が失われる。
がくりと膝が折れ、地面に突っ伏す。
( ФωФ)「――随分と短い十年だったな」
ロマネスクがハインリッヒを見下ろして言った。
そして勿論この好機を逃すロマネスクではない。
続けざまに、右の蹴りでハインリッヒの頭部を狙う。
从 ゚∀从「うおおおおおおおおおおおあああああ!!」
残った力を振り絞り、ハインリッヒが斥力操作でロマネスクの蹴りの軌道を変えた。
ロマネスクは蹴りを空振り、バランスを崩して頭から地面に激突する。
が、それで打ち止め。
ハインリッヒには、もうほとんど力は残されてはいない。
次が来たら、もう後が無い……!
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:28:52.44 ID:tI/BiIXZ0
- ( ФωФ)「……ここまでのようだな」
ゆっくりと、ロマネスクが立ち上がった。
从 ゚∀从「くッ――!」
ハインリッヒが後ずさる。
( ФωФ)「お前も部下達の下へと送ってやる。
精々、あの世では部下を労わってやるんだな!!」
ロマネスクが止めの一撃を放った。
渾身の、右ストレート。
从 ゚∀从「ぐああああああああああああああ!!!」
ハインリッヒには、もうその一撃を無効化するだけの力がなかった。
まともにそのパンチを受け、大きく吹き飛ばされる。
が――
从 ゚∀从「かかったな! アホが!!」
ハインリッヒの顔には、笑みが浮かんでいた。
と、ハインリッヒの吹き飛ぶ方向が急激に変わる。
斥力操作で、吹き飛ぶ向きを強引に変更したのだ。
その先には――
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:29:49.28 ID:tI/BiIXZ0
- ( ФωФ)「しまった!!」
ロマネスクが、そこでハインリッヒの狙いに気がついた。
ハインリッヒが吹き飛ぶ向きを変えた先。
そこにいたのは――
「キャウウン!!」
『WAN=HO=NYANS』達だった。
从 ゚∀从「ヒャハハハハハ。
形勢逆転、ってヤツだなァ」
ハインリッヒの腕が、ジョナサンの首を掴んでいた。
( ФωФ)「ジョナサン!!」
从 ゚∀从「動くんじゃねえ!!」
今にも飛びかかろうとしたロマネスクを、ハインリッヒが制した。
从 ゚∀从「そのままじっとしてろよ。
少しでもおかしな真似をすれば、この犬の命はねェぜ……」
( ФωФ)「くッ……!」
ハインリッヒが手に力を加えると、ジョナサンは苦しそうに呻き声を上げた。
- 49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:30:50.97 ID:tI/BiIXZ0
- 「ワン! ワン! ワンワン!
(構うことはありません! このまま私ごとこの女を倒して下さい! 元より、覚悟は出来ております!!)」
健気にも、ジョナサンは己の命を顧みることなくそう告げた。
从 ゚∀从「どうしたァ? もう一撃加えれば、俺を倒せるぜ?
ま、出来ねえよなァ。 何たって、手前は部下を見捨てねえんだもんなあ?」
ハインリッヒが邪悪な笑みを浮かべてそう言うと、
どこからかヘリコプターの旋回音が聞こえてきた。
( ФωФ)「!?」
ロマネスクが上を見上げると、いつの間にか戦艦の上空を戦闘ヘリが飛んでいる。
从 ゚∀从「やっと来たか」
ハインリッヒがそう呟いた直後、戦闘ヘリから縄梯子が下ろされた。
ハインリッヒはジョナサンを抱えたままそれに足をかけ、
ヘリの上昇に合わせて上へ上へと移動していく。
ロマネスクは、それをただ見ているしか出来なかった。
- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:31:28.00 ID:tI/BiIXZ0
- 从 ゚∀从「残念だったなあ、ロマネスク!
確かに戦艦部隊は手前に壊滅させられたが、計画に大した支障は無え!」
( ФωФ)「何だと!?」
ロマネスクがハインリッヒに問いかけた。
从 ゚∀从「いずれ分かるさ。
それと――忘れもんだ!!」
ロマネスクの攻撃が完全に届かないほどヘリが離れたところで、
ハインリッヒはジョナサンを海へと投げ捨てた。
( ФωФ)「ジョナサン!!」
何の躊躇も無く、ロマネスクはジョナサンを救出すべく海の中へと飛び込んだ。
从 ゚∀从「じゃあな! ロマネスク!!」
高らかに笑い声を上げながら、ハインリッヒを乗せたヘリは戦艦から遠ざかっていった。
しかしロマネスクはそれには脇目も降らず、一直線にジョナサン目掛けて泳いでいく。
程なくして、ロマネスクはジョナサンの所まで辿り着き、そのまま戦艦の上まで救出した。
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:32:16.30 ID:tI/BiIXZ0
- 「クゥ〜ン……
(申し訳ございません、ロマネスク様……!
私の所為で、あの女を取り逃がすことになってしまって……
この罪、我が命をもって――!)」
ジョナサンがうなだれ、己の非を深々と詫びた。
しかし、ロマネスクはそれを責めるようなことは一切せず、
( ФωФ)「お前が責任を感じる必要は無い。
全ては人質を取る隙を与えてしまった我輩の責任。
お前に、落ち度は一切無い。
それに言ったろう?
兵の為に命を張るのが、将の務めと」
ロマネスクは静かに、そう告げた。
( ФωФ)「それに、人質を取らねば逃げることすら出来ないような輩、
取り逃がしたところで何の不都合もあるまい。
所詮は下郎。
我輩の覇業を成すにあたり、どれほどの障害にもならぬわ」
言いながら、ロマネスクはどこかにひっかかりを感じていた。
去り際に、ハインリッヒが言っていた言葉――
あれが、どうにも気にかかる。
この戦艦部隊――
元々、捨て駒のつもりだったとでもいうのか?
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:32:51.43 ID:tI/BiIXZ0
- ( ФωФ)「支度をしろ。
すぐに、『漢祭り』で街まで戻るぞ」
ロマネスクは遠隔操作で『漢祭り』を甲板に着陸させた。
そして、もう一度ジョナサンに向き直り――
( ФωФ)「怪我は無いな。
お前が、無事で良かった」
「――――!」
ぶっきらぼうな、しかし限りない優しさが秘められた言葉。
ジョナサンは改めて、ロマネスクに生涯を捧げようと誓うのだった。
〜第四十七話『血戦 その3 〜ロマネスクVSハインリッヒ 後編〜』 終
次回、『血戦 その4 〜ドクオVS怪人トラ男〜』乞うご期待!〜
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/22(日) 23:34:00.17 ID:tI/BiIXZ0
- この番組は、
age35恋しくて
悪魔のKISS
聖者の行進
チャンス!
あと誤爆すみませんでした
の提供でお送りしました
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