ドクオは正義のヒーローになれないようです
- 1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと30,120秒 :2008/01/10(木) 21:47:28.44 ID:CiKpMNOe0
- 第二部 第十四話『狂熱果てる時! 宇宙大魔王VS正義のヒーロー!!』
〜前回までのあらすじ〜
12月某日、某会社での出来事
('A`)「おつかれーっす。 今日はもう帰りまーす」
( ゚∀゚)「ところがどっこい帰れません。
今年度中の決済に計算の合わないところがあるんで年が明ける前までにその修正ね。
あと他の備え付け簿冊の手入れと、来年度用の書類綴じの準備もあるから。
ついでに来年になったらさっそく新年一発目の企画書も出してね。
勿論、草案なんかじゃなくてきっちり仕上げたの。
それらが全部終わるまで休みは無いんでヨロシコ」
('A`)「嫌でちゅー。
僕は定時に帰って年末休み、正月休みもしっかり取るんでちゅー。
そんでエロゲやってコミケ行って現行小説も書くんでちゅー」
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと29,583秒 :2008/01/10(木) 21:48:36.04 ID:CiKpMNOe0
- (#゚∀゚)「あ? お前明日から自分の席が無くなっててもいいってことか?」
('A`)「うるせーこれでも喰らえ。 ぺっぺ」
(#゚∀゚)「てめえくるァそこに直れこの給料泥棒が。
その腐った性根叩きなおしてやる」
('A`)「うっせ、この社畜が。 過労死しろ」
(#゚∀゚)「殺す! 社会的に殺す! いやボーナスカットだ!」
(;'A`)「すいません勘弁して下さいごめんなさい」
この話はフィクションです多分
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:31:02.74 ID:OvlBNkTJ0
-
*以下、何事も無かったかのように再開*
( ФωФ)「…………」
とある星の、とある国の古城――
その中庭で、ロマネスクは何をするでもなく暇を持て余していた。
この城は、数ヶ月前この星に来た際に元の城主から奪い取ったものだ。
宇宙を支配する為の旅を続ける途中、
気紛れに立ち寄ってみた星なのだが――
その城下町を最初に見た時、
ロマネスクはその余りの惨状に閉口したものだった。
田畑は荒れ果て、用水路は濁り、
街には病が蔓延し、役人の不正が横行していた。
民草は、疲弊し切っていた。
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:31:23.28 ID:OvlBNkTJ0
- だが、領主はそんな状況を改善しようとするどころか、
逆に理不尽なまでの重税を民に課し、
より一層民衆を苦しめていたのだ。
下種め。
ロマネスクはそう感じずにはいられなかった。
圧倒的な暴力で人々を支配する。
それはいい。
強者が弱者を支配するのは世の理だ。
だが、私利私欲の為だけに、
何の理念理想も無く、何の考えも無く人々を治めるなど、
支配者の器ではない。
無目的に民衆から税を搾り取ったところで、
結局はそれがもとで国力が弱まって自滅していくのが関の山。
より効率的に民衆から搾取する為には、
支配者が率先して治安を整え、生活の下地を創ってやる必要があるのだ。
それをしない支配者に、
支配者となる資格等ない。
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:31:49.27 ID:OvlBNkTJ0
- 何より――
ロマネスクが気に入らなかったことは、
圧制に逆らう民衆の処刑の方法だった。
領主に逆らった者はギロチン刑。
それがこの国の法律であり、その刑の執行は処刑人が行っていたのだったが、
ロマネスクにはそれが許せなかった。
自分に歯向かう者を処刑するのも支配者の務めではあるが――
それは、支配者自らの手によって行われるべきなのだ。
それを人任せに、しかも反逆者の反逆の理由すら聞く事なく処刑するなど――
下種な行いにも程があった。
そして、そんな輩をロマネスクが見逃しておく筈もなかった。
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:32:16.45 ID:OvlBNkTJ0
- ロマネスクは手始めに領主とその奸臣をまとめて一掃すると、
自分が新たに支配者へと成り代わった。
そしてまずは蔓延していた病の治療薬を調合して城下に配布し、
堕落し切っていた官憲の体制を改め、
荒廃していた土地と河川の復元に努めた。
そんな甲斐もあって――
この数ヶ月で、城下町には以前までには考えられない程の活気が戻っていた。
当然、仮にも一国の領主を排除して新たな領主となるなどといった蛮行を、
他の国が許す筈もなく、ロマネスクの国には幾度と無く討伐の為の兵が送られてきた。
無論、ロマネスクは残らずそれを返り討ちにしてきたのだが。
民衆からは、そんなロマネスクを褒め称える声で持ちきりだったが――
ロマネスクにはそれが不満だった。
ロマネスクが目指すのは、
あくまで人々を恐怖のどん底に陥れる為の悪の大魔王であり、
人々から感謝される魔王など様にならないのにも程がある。
まあいい。
今のうちに精々勘違いして、束の間の平和を味わっているがいい。
時が来れば、復興した街を完膚無きまでに蹂躙し尽くして、
絶望の谷底へと叩き落してやる。
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:32:34.80 ID:OvlBNkTJ0
- ( ФωФ)「…………?」
と、城の入り口の方から扉が打ち破られる音が聞こえてきた。
恐らく、何者かが城に攻め入って来たのだろう。
またか。
ロマネスクは辟易する。
あれだけ何回も叩きのめしてきたというのに、
また倒される為にやって来るとは、学習能力が無いにも程がある。
( ФωФ)「?」
こちらに近付いて来る足音の数に、ロマネスクは首を傾げた。
足音は、たった一つ。
馬鹿な。
何百何千の兵を動員してもこの自分を倒せなかったことは、
分かっている筈だ。
それを、たった一人で攻め込んでくるだと?
暗殺か?
いや、ならば足音を隠そうともしないのは不自然だ。
そして、この自信に満ちた足音。
まさか、本当に一人でこの自分を倒そうと――
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:33:54.23 ID:OvlBNkTJ0
- ( ФωФ)「――――!?」
ロマネスクの皮膚に、針で刺されるような戦慄が襲い掛かった。
これは――
この感覚は何だ!?
それは、ロマネスクにとって初めての感覚だった。
心臓を鷲掴みにされたような、
全身の体温が一気に冷やされるようなこの感覚。
これは――これは、まさか恐怖だとでもいうのか?
そんな筈はない。
これまでどんな相手だって真正面から闘って打ち倒してきた。
どんな大軍とだって、たった一人で闘い、滅ぼしてきたのだ。
それが――
たった一人の、まだ姿すら見ていない相手に対して、
敗北の恐怖を感じてしまっているだと!?
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:34:24.65 ID:OvlBNkTJ0
- ( ФωФ)「!!!!!!!!」
次の瞬間、中庭の出入り口の扉が音を立てて粉砕した。
その奥から、一つの影が姿を現す。
炎の様に、血の様に、どこまでも真っ赤な、その姿。
ノパ听)「よお」
真紅の女が、片手を挙げてロマネスクに声をかける。
( ФωФ)「……何者だ」
内心の動揺を隠しながら、ロマネスクが訊ねた。
これが――こいつが、先程感じた恐怖の正体だというのか?
どこにでもいるような、この女が?
ノパ听)「お前をぶっ倒しに来た刺客だよ。
って言っても、アタシは弱い者虐めする趣味はねーからな。
逃げるんなら、今の内だぜ?」
ロマネスクと刺客との距離、およそ20メートル。
その距離を一歩一歩、ゆっくりと狭めながら女は言った。
( ФωФ)「逃げる、だと――?」
この自分が、弱者だというのか。
逃げるとでもいうのか。
先程感じたプレッシャーで、萎縮しかけていたロマネスクの魂が、
再び熱く燃え上がる。
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:34:53.17 ID:OvlBNkTJ0
- ノパ听)「……はん。 どうやらやる気満々みたいだな。
ま、こっちも穏便に話が片付くとは思ってなかったけどな」
10メートルの距離の所で、女は足を止めた。
ノパ听)「しっかし、驚いたよ。
魔王に侵略された国っていうから、どんな地獄になってるのかと思ったら、
前とは比べ物にならないぐらい立派な所になってるじゃんか」
( ФωФ)「勘違いするな。 別に善意でも何でもない。
我輩はいずれこの星の全てを支配する。
その第一歩となる所がみすぼらしくては、我輩の威信に関わってしまうからな。
それだけだ」
そう、断じて人々の為などではない。
自分の為。
それだけだ。
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:35:57.91 ID:OvlBNkTJ0
- ノパ听)「ま、そういうことにしといてやるよ。
んじゃ、そろそろおっぱじめるか」
女が少し腰を落とし、構えを取る。
ロマネスクはそれを制するように左手を前に出して、
( ФωФ)「待て。 貴様――名は何という?」
そう訊ねた。
自分でも、何でこんなことを聞いたのかは分からない。
ただ、無性に名前を知っておきたかったのだ。
ノパ听)「アタシは――
いや、やっぱ後にしとこう」
名前を言いかけて、女は止めた。
ノパ听)「30分後に、お前がまだくたばってなかったら教えてやるよ!!」
( ФωФ)「笑えない――冗談だ!!」
黒衣の魔王と、紅蓮の勇者の影が、
弾けるように飛び立ち、激突した。
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:36:53.21 ID:OvlBNkTJ0
・
・
・
ノパ听)「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ!!」
( ФωФ)「ぐッ……!」
両手を合わせた手四つの体勢のまま、ロマネスクは動けずにいた。
いや、動かせなかった。
全身の筋力を総動員して素直ヒートを押し返そうとしているのだが、
素直ヒートの体はビクともしない。
どころか、少し気を抜いただけでそのまま押し潰されてしまいそうな位、
自分は追い詰められている。
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:38:40.87 ID:OvlBNkTJ0
- ノパ听)「アハハハハハハハハ!!」
( ФωФ)「…………ッ!」
素直ヒートの手に、更なる力が込められる。
常識外れの握力がロマネスクの手を締め付け、
手の骨がメキメキと今にも砕けそうな音を立てて軋んだ。
( ФωФ)「!!?」
と、ロマネスクの両足が突然地面を離れた。
素直ヒートが、ロマネスクの手を握ったままその体を持ち上げたのだ。
ノパ听)「ハアァッ!!」
力任せに、素直ヒートがロマネスクの体を投げ飛ばす。
( ФωФ)「ぐあッ!!」
矢の様な速さでロマネスクの体が宙を舞い、
そのまま地面に叩きつけられた。
思わず、ロマネスクの口から呻き声が漏れる。
ノパ听)「どうした、ロマネスク? そんなもんか?」
放り投げたロマネスクに近付きながら、素直ヒートは言った。
ノパ听)「それとも、尻尾巻いて逃げるかい?
それならそれで構わないぜ。
アタシも弱い者虐めをする趣味はねーからな。
逃げるんなら、今の内だぜ?」
10メートル程距離を開けた所で、素直ヒートは立ち止まった。
まるで、あの日のことを再現するかのように。
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:39:09.97 ID:OvlBNkTJ0
- ( ФωФ)「黙れ……!
偽者如きが、あの女の真似をするな……!」
拳を固め、ロマネスクが立ち上がる。
負ける訳にはいかない。
自分は、こんな奴に、あの女の偽者なんかに、
負ける訳にはいかないのだ……!
ノパ听)「ああそう。 折角見逃してやるっつってんのにな。
ま、しょうがないか。
じゃあ――」
素直ヒートが腰を落とし、
ノパ听)「さっさとおっ死ねよ!!!」
( ФωФ)「ほざくな、偽者が!!!」
黒衣の魔王と、紅蓮の勇者の影が、
弾けるように飛び立ち、激突した。
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:39:31.06 ID:OvlBNkTJ0
最初に重い衝撃がロマネスクの顔面を襲った。 最初に重い衝撃がロマネスクの顔面を襲った。
素直ヒートの右拳が一直線にロマネスクの右頬を捉え、 女の右拳が一直線にロマネスクの右頬を捉え、
その威力にロマネスクの頬が大きく歪む。 その威力にロマネスクの頬が大きく歪む。
( ФωФ)「ぐうッ!!」 ( ФωФ)「ぐうッ!!」
崩れそうになる膝を無理矢理支え、 崩れそうになる膝を無理矢理支え、
ロマネスクが倒れまいと踏ん張る。 ロマネスクが倒れまいと踏ん張る。
ノパ听)「らああ!!」 ノパ听)「らああ!!」
続けて、素直ヒートの爪先がロマネスクの顎にめり込んだ。 続けて、女の爪先がロマネスクの顎にめり込んだ。
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/13(日) 18:40:28.03 ID:OvlBNkTJ0
- ( ФωФ)「がふッ!」 ( ФωФ)「がふッ!」
ロマネスクの顔が跳ね上がり、上空を仰ぐ。 ロマネスクの顔が跳ね上がり、上空を仰ぐ。
そのダメージを感じる暇も無いうちに、 そのダメージを感じる暇も無いうちに、
右脇腹への素直ヒートの左フック。 右脇腹への女の左フック。
肝臓を突き抜けるような衝撃に、 肝臓を突き抜けるような衝撃に、
思わずロマネスクが身を屈める。 思わずロマネスクが身を屈める。
ノパ听)「どうしたどうした!!」 ノパ听)「どうしたどうした!!」
頭を屈めたところに、 頭を屈めたところに、
頭上から素直ヒートの踵が唸りを上げて降りかかる。 頭上から女の踵が唸りを上げて降りかかる。
( ФωФ)「がッ!!」 ( ФωФ)「がッ!!」
踵が正確に頭頂部を捉え、 踵が正確に頭頂部を捉え、
ロマネスクが顔面から地面に突っ伏した。 ロマネスクが顔面から地面に突っ伏した。
何だ、これは。 馬鹿な。
まさか――これはまさか。 何だこの女の出鱈目な強さは。
今までの攻撃、これは―― この自分が――ここまでいい様にやられるだと!?
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