( ^ω^)ブーン達の冒険はまだ始まったばかりのようです

  
1:女子高生(東京都) [プロローグ] :2007/03/26(月) 14:48:07.10 ID:5RDAbSqc0
  
僕達は遂に目標だった敵の城に辿り着いた。
今までの旅の道程を思い出すと本当によく頑張ったと思う。
自分で自分を褒めてあげたいくらいだ。
しかし、褒めてあげるのは敵を倒してからにしよう。

( ´_ゝ`)「よくぞここまで来たな」

(´<_` )「だが、我ら門番を倒さなければ貴様らは一歩たりとも城の中に入れる事はないぞ」

門番がいる。こいつらを倒せば遂に最終決着だ。
もう、後へは引けない。

( ^ω^)「お前らを倒して僕は平和を掴み取るお!」

ξ゚听)ξ「ここからが正念場ね」

('A`)「俺はあの時のようにこのままで良いのか……? なぁ、答えてくれよ」

それぞれの思いを胸に僕達は飛び出した。

( ゚ω゚)「うぉぉぉぉおおおおお!」


『僕達の冒険はまだ始まったばかりだ! 渡辺先生の次回作にご期待ください!』


―あれれ〜? ブーンのドキドキ☆大冒険・完―



  
2:女子高生(東京都) :2007/03/26(月) 14:49:03.94 ID:5RDAbSqc0
  
閉鎖的な空間。
外の情報は閉められた窓からしか得られない。
窓からは天に向かって伸びてゆく大木のようなビルばかり見える。
そんな一室から声が聞こえてくる。

从'ー'从「ふぅ〜、終わったよ〜」

(・∀・)「長い間お疲れ様でした。これで連載は終了ですね」

そう言い放つと男はペンを置いたばかりの女から原稿用紙を受け取る。
原稿には3人のキャラが2人組の敵に立ち向かうシーンが描かれている。

从'ー'从「今まで大変だったんだよ〜」

(・∀・)「ご苦労様です。今までありがとうございました」

男は別れの言葉を残し、部屋から出て行く。



  
3:女子高生(東京都) :2007/03/26(月) 14:49:24.91 ID:5RDAbSqc0
  
この女→从'ー'从は渡辺。漫画家だ。
幼少の頃から絵を描くのが好きで、小中高と絵を描き続けていた。
そして大学に入り、何となく漫画研究会という集団に属してしまった。
それが彼女の人生の転機であった。

彼女は多くの漫画に触れているうちに、読むという立場から描くという立場に回ってみたいと思い始めた。
そんな思いが生まれてからはそう時間は掛からなかった。
元々絵を描き続けていた腕と一般から少しずれた発想力を武器に、話題の処女作『ブーンのドキドキ☆大冒険』を描き上げたのだ。
それを友達に見せて回っているうちに「面白い」と口コミで広まり、様々な人が彼女の元へと寄ってきた。

思った以上に好評で気を良くした渡辺は思いきって某少年週刊誌で多大な発行数を誇る集○社に話題の処女作を送ってみた。
すると何か色々と凄そうな賞を受賞してしまうというまさかの出来事が起こり、そのまま期待の新人漫画家としてデビューを果たしたのであった。



  
5:女子高生(東京都) :2007/03/26(月) 14:49:49.61 ID:5RDAbSqc0
  
だが、現実は厳しかった。
タイトルは最初のをそのままあまり弄らずに『あれれ〜? ブーンのドキドキ☆大冒険』として連載開始。
生き生きとしたキャラ達が現代社会のドライな子供達に受けて、当初はアニメ化やゲーム化など彼女の元に吉報が転がり続けていた。
しかし彼女のルーズな性格が災いしたのか、連載から数年経っても殆ど変わらない展開に読者は飽き始めてきた。
遂には読者アンケート毎週ビリで打ち切り候補ナンバー1というあまりに不名誉な地位まで手に入れてしまったのだ。

アニメ終了。ゲームは在庫を抱え困り果てる店が日々増えている。
さすがに呑気な性格とは言ってもここまで人気が落ちてきてしまった頃には彼女は焦りだした。
苦肉の策で「ソードマスターヤマト」のような超展開を繰り広げるも、読者アンケートの順位は上がってこない。
結局、最終決着直前の所で打ち切りが決まってしまったのであった。



  
7:女子高生(東京都) :2007/03/26(月) 14:50:15.27 ID:5RDAbSqc0
  
時は流れる。その流れはとても速くて気付けばかなり流されてしまっていることもある。
渡辺が最後の原稿を書き上げてから、彼女の時間は物凄いスピードで流れていく。
そして時は彼女の最終話が掲載される頃になっていた。

从'ー'从「私の漫画終わっちゃったよ〜」

コンビニで最終話の載っている週刊誌を渡辺は手に取る。
何とも中途半端な場面で終わってしまった自分の作品。
1人で読んでいると何故だか切ない気持ちになって視界がぼやけてくる。
こんな所で泣くなんて嫌だ。そう思った彼女は自分の作品を読むのを止めることにした。

他の漫画を読み飛ばしながら目次のページを開いてみる。
そこには書いた覚えのないコメントが載っている。
文章を考えるのが苦手な彼女は毎回担当の人に代理で書いて貰っていたのだ。



  
8:女子高生(東京都) :2007/03/26(月) 14:50:40.46 ID:5RDAbSqc0
  
『今まで応援ありがとうございました。次回作を待っててくださいね!』

読者から見れば普通の去り際のコメントにしか見えなかっただろう。
しかし、渡辺にとっては担当の人からの応援にも感じられたのだ。
今回はダメだったけど、次で挽回しろ。そう言っているように。

从;ー;从「私…… 頑張る〜!」

せっかく涙堪えてたのになぁ。
ここ、コンビニなのになぁ。
不思議そうに見られちゃってるなぁ。

そんな事を思いながらも涙は止まることを知らなかった。
担当の……いや、元担当の暖かさが打ち切りで冷え切った心には暖かすぎて。



  
10:女子高生(東京都) :2007/03/26(月) 14:51:05.43 ID:5RDAbSqc0
  
从ぅー;从「もう帰る〜」

溢れてくる涙を拭って彼女はコンビニから出る。
右手にはさっきまで開いていた雑誌を持って。

「ちょwwwお客さん万引きっすかwwwww勘弁してくださいよwwwwwサーセンwwwwwww」

必死になって追いかけてくる店員。

从'ー'从「あれれ〜? お金払うの忘れちゃったよ〜?」

もう既にマイペースに戻っている渡辺。
目は少し赤くなっているが、もうすっかり泣きやんだようだ。



  
11:女子高生(東京都) :2007/03/26(月) 14:51:36.42 ID:5RDAbSqc0
  
从'ー'从「ごめんね〜?」

「お金払ってもらえればそれで良いっすwwwww今後気をつけてくださいよwwwwwww」

妙に馴れ馴れしい店員に雑誌分の金を払う。
店員の妙に滑稽な態度がひどく愉快に感じた。
そして、彼女はまた家路に向かう。

从'ー'从「あれれ〜? 私の家までの道がわからないよ〜?」

从;ー;从「迷子になっちゃった〜。ふええぇぇぇぇん……」

また泣き出す渡辺。
もう子供と呼べる年齢ではないはずなのに、いつまでも心は大人に成長しないようである。

いや、きっとそれが彼女の長所なのだろう。



  
12:女子高生(東京都) :2007/03/26(月) 14:52:04.39 ID:5RDAbSqc0
  
心が子供のままだから、好きなように漫画が描けたのだ。

心が子供のままだから、好きな物を終わらせられたら純粋な分ショックだったのだ。

心が子供のままだから、打ち切りの時強がっていても結局は涙を流すことになってしまうのだ。

心が子供のままだから、まるで本当に命があるようなキャラを作れたのだ。

心が子供のままだから、キャラ達に本当に命を与えてしまったんだろう。



  
13:女子高生(東京都) :2007/03/26(月) 14:52:29.95 ID:5RDAbSqc0
  
作者の渡辺自身も思いも寄らなかったであろう。
完璧に打ち切られた自分の作品。
その登場人物がその後、どう自分の運命と足掻いているのか。



( ´ω`)「ここはもう既に終わった世界だお……」

ξ゚听)ξ「私たちは夢を与える為に生まれたキャラなのに、終わった世界にいたままで良いわけがないじゃない」


これは、打ち切りという終わりから始まる渡辺が生み出したキャラクター達の話。





〜( ^ω^)ブーン達の冒険はまだ始まったばかりのようです〜



戻る第1話