( ^ω^)と(*゚ー゚)は恋人同士のようです
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 22:20:41.57 ID:WEgfL5/y0
- / ,’ 3は不思議なハンバーグをつくるようです
後編「王女に愛されたシェフ」
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 22:23:58.65 ID:WEgfL5/y0
――その頃、荒巻は最後の仕上げにかかっていた。
/ ,' 3「……。」
荒巻がこのハンバーグの能力に気づいたのは、己自身の体験であった。
――たまたま料理の練習に、と作ったハンバーグ。
頭に光が生まれ、脳を満たしていくような、そんな感覚に襲われた。
気づくと、夢を見ていて、その夢は、自分の頭の中には無いもので――。
夢を見終わると、自然と涙が流れ、何かすっきりしていた。
この体験をしてから、いろいろな料理で試した。
しかし、何度作っても作っても、その体験にはめぐり合えなかった。
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 22:25:10.15 ID:WEgfL5/y0
そうしている間に、荒巻の中に仮説が生まれた。
『ハンバーグ』でしか『想い出』もしくは『強く見たいと願う記憶』を見ることができない。
そして、『一度きり』。
『見れる人』と『見れない人』がいる。
見ることができるのは、印象の強い過去、現在を持つ人。強いコンプレックスを抱えた人。
それに、その記憶が消えかかっている事。
いわゆる、トラウマを抱えた人である、ということがわかった。
トラウマといっても、良い想い出、悪い想い出がある。
どちらがその人に想い出としてよみがえるかはわからない。
ただ、自分の中によみがえった想い出は、心地よく、忘れられないものだった――。
- 43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 22:25:53.71 ID:WEgfL5/y0
/ ,' 3「……できた。」
さらに盛り付けたハンバーグに仕上げのソースを垂らす。
――自分で言うのも可笑しいが、おいしそうだ。
この香りを嗅ぐ度に、頭に想い出がよみがえってくる。
荒巻が、ハンバーグを目の前にボーっとしていると、ドアの開く音が聞こえた。
/ ,' 3「――?」
その音のあった方向には、ミセリが荷物を持って立っていた。
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 22:34:18.21 ID:WEgfL5/y0
ミセ*゚ー゚)リ「――!!」
/ ,' 3「ミセリ様……どうなさったのですか?」
ミセ*゚ー゚)リ「……。」
どこか怒っているような表情をしているミセリ。
ミセ*゚ー゚)リ「荒巻……でしたか?」
/ ,' 3「は、はい。」
ミセ*゚ー゚)リ「あたしを、この城から連れ出してくださりません?」
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 22:34:59.78 ID:WEgfL5/y0
強がったような態度で荒巻にすごいことを言い放つミセリ。
/ ,' 3「な、なにをいってるんですか!」
ミセ*゚ー゚)リ「もう、比べられるのには懲り懲りです。さあ、出口まで連れて行ってください。」
――ミセリ様が、今は亡き王女と比べられているのに、嫌気をさしているのは知っていた。
きっと、私以外にも言う人が多かったのだろう。
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 22:35:49.55 ID:WEgfL5/y0
――――――――――
/ ,' 3『やはり、写真でお伺いした、王女様そっくりでお綺麗です。』
ミセ*゚ー゚)リ『……あなたもですか……?』
/ ,' 3『え?』
ミセ*゚ー゚)リ『いえ、なにもありません。これからよろしくお願いします。』
――――――――――
/ ,' 3「だからって出て行くというのは……!!」
ミセ*゚ー゚)リ「いえ、もう固く決めました。」
/ ,' 3「でていかれては、国王様たちも悲しまれます!」
荒巻はミセリの目に少し涙が浮かんでいるのを見た。
大きな目から、大きなしずくがこぼれようとしている。そこになぜか、荒巻は美しさを覚えた。
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 22:39:06.74 ID:WEgfL5/y0
そして、少し篭った声でミセリは言った。
ミセ*゚ー゚)リ「私は、生まれてから、私を見てもらったことがありません。これが、どれだけ悲しいことかおわかりですか?あなたは、ここの人間に評価されて、ここにきたのでしょう?」
ミセ*;ー;)リ「そんな方に……私の気持ちがお分かりになられま……すか……?」
涙を手でゴシゴシと拭うと強い口調でこう言った。
ミセ*゚ー゚)リ「私を……連れ出しなさい!」
/ ,’ 3「……。ミセリ様……。」
- 49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 22:40:28.50 ID:WEgfL5/y0
/ ,' 3「本当に……本当に、国王様たちがあなたを見ていないとお思いだと?」
ミセ*゚ー゚)リ「……。」
/ ,' 3「ミセリ様……あなたは……愛されすぎています。あなたは、生まれてからずっと愛され続けているのです。」
ミセ*゚ー゚)リ「……ここに来て間もないあなたになぜそのようなことがわかるわけありません。」
/ ,' 3「わかります。愛されていなければ、そのような綺麗な格好や、きちんとした教養は実につけられる訳がありません。」
ミセ*゚ー゚)リ「……。」
/ ,' 3「それに……お亡くなりになられた女王様。あなたを愛していなければあなたをお産みになられないはずです。」
- 50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 22:41:28.49 ID:WEgfL5/y0
- ミセ*゚ー゚)リ「……う、生んでから無くなる愛もあるはずです、きっと……。」
/ ,' 3「親子の愛が、無くなるとおっしゃってるのですか?」
ミセ*゚ー゚)リ「……ええ。」
/ ,' 3「そうですか……。」
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ……つれてってくださるのね?」
/ ,’ 3「ミセリ様がそうおっしゃるのなら……。しかし、一つだけ私の方からお願いをしてもよろしいでしょうか?」
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 22:42:23.89 ID:WEgfL5/y0
- ――もしかしたら。
ミセ*゚ー゚)リ「……なんでしょう?」
――もしかしたら、ミセリ様は。
/ ,' 3「……私の故郷の料理なんですが、一口食べてくださいませんか?」
――見えるかもしれない。
ミセ*゚ー゚)リ「……何を急におっしゃるんですか?時間がないのです。早く連れ出してくださいな。」
/ ,' 3「ミセリ様は、今からここを出ていくので、もう私の作った料理を食べてはいただけないでしょう。
ですので、最後に一口と思ったのですが……。」
――何かを、見出せるかもしれない。
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 22:43:12.93 ID:WEgfL5/y0
- ミセ*゚ー゚)リ「最後……。」
ミセ*゚ー゚)リ「そう……ですね。最後……ですものね。」
/ ,' 3「少し冷めてしまっていますが……。」
そういって、フォークとナイフを添えてミセリにハンバーグを差し出す。
ミセ*゚ー゚)リ「こ、この料理の名前はなんというのですか?」
/ ,' 3「ハンバーグ、です。」
ミセ*゚ー゚)リ「荒巻の故郷の料理なのですか?」
少したじろいだ感じでミセリは聞いた。
/ ,' 3「そうです……。元はアメリカですが、私がいた国で人気の料理です。」
ミセ*゚ー゚)リ「じゃ……じゃあ食べますね……。」
/ ,' 3「お口にあうかはわかりませんが……。」
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 22:43:57.73 ID:WEgfL5/y0
ミセリは、フォークとナイフをつかい、ハンバーグを口に入れた。
この国から言わせれば、濃い味付けなので、少し驚いたような顔をした。
ミセ*゚ー゚)リ「……!!」
/ ,' 3「……どうでしょうか?」
ミセ*゚ー゚)リ「え……あ……。あれ……?」
/ ,' 3「見えて……きましたか?」
――こう冷静に努めていた私ですが……内心ひやひやが止まりませんでした。
もし、このハンバーグで、ミセリ様が『見えなかった』ら、僕はミセリ様を連れてどこかへ行かなければいけなかった。
もともとこういう賭け事まがいのことには運がなかったし、これまでだって二者択一は避けて来ていた。
結果オーライという言葉が似合う。
ミセリ様は、何を見ているんだろうか――。
- 55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 22:47:38.74 ID:WEgfL5/y0
――なにこれ……。
『はやく産湯を持ってきて!!!』
『おめでとうございます!!』
『女の子ですよ!女王様!!』
『いやーこれはめでたいですぞ!!』
――宮殿の……みんな……?
『おお……これが……これがわしの娘……』
『……王女様……?』
『王女様が……!!!』
『おい!!キセリ!!どうした!!!』
- 56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 22:48:19.47 ID:WEgfL5/y0
――キセリ……私の、お母様……。
ミ;゚∋゚)「キセリ!!!しっかりしろ!!!」
キセ* ー)リ「あ……なた……。」
(;<◎><◎>)「これは……出産の負担で……!!」
(;<◎><◎>)「看護班!!早く手術の準備を!!」
看護班「は、はい!!」
ミ;゚∋゚)「ど、どういうことだ!?」
(;<◎><◎>)「く、詳しくはわかりませんが、体に強い負担がかかっていてとても危険な状況です……!!」
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 22:51:15.18 ID:WEgfL5/y0
- 看護班「準備できました!!」
ミ;゚∋゚)「そ……そんな……。なぜ……。」
――お母様……。
「もう……いいのよ……。」
ミ ゚∋゚)「な、なにを……。」
(;<◎><◎>)「助かる見込みはありまs――
キセ* ー)リ「これだけ……これだけ弱っていては……手術しても耐えられないでしょう……?それくらいはわかるわ……。」
- 58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 22:51:58.00 ID:WEgfL5/y0
- (;<◎><◎>)「……!!」
ミ;゚∋゚)「ほ、本当なのか……?」
(;<◎><◎>)「た……たしかに、王女様が耐えられる可能性は低いです……。」
ミ; ∋)「……。」
キセ* ー)リ「だから……だから……。最後に、その子を抱かせて……お願い……。」
そういうと、キセリは震える手でミセリを抱えた。
その場にいた、全員が涙を流していた――。
キセ* ー)リ「私のかわいい……ミセリ……。あなたを最後に……抱けてよかった……。」
ミ ∋ )「……。」
- 59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 22:52:40.58 ID:WEgfL5/y0
- キセ* ー)リ「あなた……。ミセリを……たくさん愛してあげて……。」
ミ ;∋;)「……。いわれなくとm……。」
キセ* ー)リ「みんなの愛を受けて……この子は大きくなっていきます。どうか……どうかお願いしましたよ……。」
――お母様……。
キセリの腕の力が、徐々にぬけるのが、目に見えてわかった。
そして、ミセリのほうを、薄くしか開かない目で見詰め、言った。
『愛してる……ミセリ……。』
――そこで、気がついた。
- 61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 22:53:37.54 ID:WEgfL5/y0
- ミセ*;ー;)リ「……はっ!!!」
――目が覚めると、私は片ひざをつき、涙を流していた。
/ ,' 3「……見えたんですね……。」
ミセ*;ー;)リ「ええ……。」
ミセ*つー;)リ「あなた……こんな素敵な力をお持ちでしたのね……。」
/ ,' 3「素敵だなんてとんでもない。私も、なぜこんなことができるのかわからないくらいですから……。」
ミセ*つー゚)リ「可笑しい人ですわねw」
――ミセリ様が微笑んだ顔を見たのは、一年ここにいて、初めてでした。
それが、どうも愛らしかった。
/ ,' 3「どんな想い出を見たか、などは聞きません。でも、私の目に狂いが無ければ、ミセリ様は愛されているということに気づいていらっしゃるはずです。」
- 62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 22:58:13.15 ID:WEgfL5/y0
ミセ*゚ー゚)リ「……ええ。私は、人の何倍も愛されていたようですね。」
ミセ*゚ー゚)リ「そして……お母様にも会えました。記憶の中のことですが、私にはそれで十分です。」
ミセ*゚ー゚)リ「荒巻……ありがとう。」
/ ,' 3「いえ……こんな簡素な料理で喜んでいただけて光栄です。」
ミセ*゚ー゚)リ「……では、パーティーに戻りますね!」
/ ,' 3「はい!」
笑顔を取り戻したミセリは、荷物を重たそうに引きずって部屋へと戻っていった。
- 63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 22:59:04.63 ID:WEgfL5/y0
- / ,' 3「……。」
<_プー゚)フ「あれ?荒巻。会場見にいってないのか?」
/ ,' 3「はい。少し用事があったもので。」
<_プー゚)フ「ふーん……あれ?それ、なんだ?」
/ ,' 3「これですか?これはハンバーグっていいます。」
<_プー゚)フ「ああ聞いたことあるな。アメリカかどっかの肉団子みたいな奴だろ?」
/ ,' 3「言ってみればそうかもしれませんねw」
<_プー゚)フ「一口もらってもいいか?」
/ ,' 3「はい、どうぞ。」
<_プー゚)フ「……。味が濃いけど、うまいな!」
/ ,' 3「ありがとうございます。なんでしたら、そちら全部食べてしまってください。」
<_プー゚)フ「ん?いいのか?」
/ ,' 3「はい。作りすぎちゃった残りですから。」
<_プー゚)フ「そうか。それならいただいてくよw」
少しうれしそうにハンバーグを持っていくプラズマン。その背中を見て、物思いにふける荒巻。
パーティーの喧騒に消えそうなそれは、荒巻に少しの安心を与える。
ミセ*゚ー゚)リ「……荒巻、か。」
- 64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 23:01:59.33 ID:WEgfL5/y0
ミ ゚∋゚)「ミセリ!どうしたんださっきは、勝手にパーティーから抜け出しおって。」
ミセ*゚ー゚)リ「ごめんなさい。少し気分が悪くなってしまいまして……。」
ミ ゚∋゚)「そ、そうなのか。無理はするんじゃないぞ?」
ミセ*゚ー゚)リ「はい。あと、お父様――。」
ミセ*゚ー゚)リ「私が生まれる前のお母様のお話、今晩私に話してくださいませんか?」
ミ ゚∋゚)「……。急にどうしたかと思えば、もちろんいいに決まっておろう。馴れ初めから話してやるぞ!」
ミセ*゚ー゚)リ「そこまではよろしいですw」
- 65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 23:04:09.70 ID:WEgfL5/y0
- ――そして間もなく、私はミセリ様の専属のシェフになった。
当初は、わがままなミセリ様をどう押さえ込んだのか?などとよく聞かれたが、その度にこういっていた。
/ ,' 3「フォークとナイフをうまく使ったんです。」
もちろん聞いた人は意味のわからない解答に頭を抱えただろう。
でも、わかる人にだけわかってもらえればよかった。
私と、ミセリ様のみわかれば、それでよかった。
- 66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/19(土) 23:05:21.29 ID:WEgfL5/y0
- そして、専属シェフになってからというもの、相変わらずミセリ様の言動に振り回されていましたが、たまに、作って欲しいと頼まれたハンバーグを作り、おいしいといわれることで疲れなど吹き飛んでいました。
――ミセリ様が結婚なさった時も、私はかわらずハンバーグをミセリ様にお出ししました。
変わらぬ笑顔で食べてくださるミセリ様にお仕えしていました。
そして今。
私は『リリー』という洋食屋を営んでいます。
少し小さくて、古臭くて。
ミセリ様のような笑顔が見たくて……。
今日も表に『OPEN』という看板をかけています。
( ^ω^)と(*゚ー゚)は恋人同士のようです
サイドストーリー集
/ ,' 3は不思議なハンバーグをつくるようです 完
戻る/あとがき