ξ゚听)ξツンが感情を喰うようです

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 00:28:55.02 ID:YxJ6fJXjO
(;'A`)「こんな所に居たのか……探させんなよ」

从 ゚∀从「お、ドクオ。どうした?」

( 'A`)「……いやちょっと、大事な話」

从 ゚∀从「あ?」


ある日の休日、俺はハインを訪ねた。
目的は一つ。後悔はしたくないから、言う事を言う為だ。

しかし家にはおらず、携帯にかけても出る事はない。
諦め気味にアパートの屋上へ行けば、高岡は大の字になり寝ていた。


( 'A`)「なぁ高岡……」

从 ゚∀从「なんだ改まって、気持ち悪ぃな」

( 'A`)「お前さ……」

从 ゚∀从「……」

( 'A`)「寂しく……ねぇか?」

从 ゚∀从「……は?」

( 'A`)「いや、あんな汚い部屋で一人で住んでさ……」



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 00:30:03.58 ID:YxJ6fJXjO

从 ゚∀从「汚……汚くはねぇよ。綺麗じゃあねぇけど」

( 'A`)「寂しくは?」

从 ゚∀从「……寂しかったらなんだよ」

( 'A`)「いや……」


言葉に詰まった。俺はこんな事言うつもりだったのか?

……なんかもう、分かんなくなってきた。
コイツとマジに話す事なんて、もしかしたら初めてじゃないか……?


(;'A`)「いや……あー……」

从 ゚∀从「なんだよ、ハッキリ言えよ」

(;'A`)「えー、とさ……」


( 'A`)「あ、家に来いよ」

从 ゚∀从「……はぁ?」

(;'A`)「いや、カーチャンもお前を気に入ってるしよ。
      一人で住むよりよくねぇか? うん、いいと思うぜ?」



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 00:32:05.65 ID:YxJ6fJXjO
……自分が見えない。

从 ゚∀从「やだ」

断られた。


从 ゚∀从「俺は今の生活気に入ってるし。寂しくても構わねぇよ」


……寂しいんじゃねぇか。
前なにげなしに聞いた、コイツの両親が亡くなってる事を。
だからか俺に、死ぬな死ぬな言ってたのかな……。


( 'A`)「……まぁ、お前がいいならいいや」

从 ゚∀从「……そんだけ?」

( 'A`)「おう」

从 ゚∀从「……つまんねー奴だな」

( 'A`)「……傷ついた」

从 ゚∀从「知るか。それよりどっか行こうぜ、暇なんだよ」


なんか俺、流されるまま一生が終わる気がしてきた……



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 00:33:40.26 ID:YxJ6fJXjO




  エピローグ

   『幸福という感情、幸せという何か』






10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 00:36:07.93 ID:YxJ6fJXjO
从*'ー'从「はい、あ〜ん」

(´<_`* )「あ〜ん」

从*'ー'从「おいしい?」

(´<_`* )「おいしい〜」

( ´_ゝ`)「……おい」

从*'ー'从「卵焼き食べる〜?」

(´<_`* )「食べる〜!」

从*'ー'从「あ〜ん!」

(´<_`* )「あ〜ん!」

(♯´_ゝ`)「……おい、そこのバカップル」

从*'ー'从「甘い〜?」

(´<_`* )「あま〜い!!」

(♯´_ゝ`)「人の病室で何やってんだよッ!」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 00:37:46.26 ID:YxJ6fJXjO

从'ー'从「あ、兄者さん」

(´<_` )「居たのか兄者」

(♯´_ゝ`)「ムキーッ! 踏ん付けてやるッ!!」




从'ー'从「でも起きなかった時は驚きましたよ〜」

(´<_` )「あぁ、死んだかと思ったな」

( ´_ゝ`)「わざわざ入院なんかせんでも大丈夫だってのに……」

从'ー'从「念には念ですから! 何ともないみたいで良かったですよ〜」

(´<_` )「痔が見つかって良かったな、兄者」

(;´_ゝ`)「痔は忘れてあげて……」

(´<_` )「あ、これ見舞いのフルーツな」

( ´_ゝ`)「わぁ〜! バナナがいっぱいだぁ〜!」

从'ー'从「私からもお見舞いのフルーツです」

( ´_ゝ`)「わぁ〜! またバナナ! 盛り合わせがよかったな〜!」



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 00:39:23.02 ID:YxJ6fJXjO
(´<_` )「そういえば、誰か見舞いに来たのか?」

( ´_ゝ`)「……聞くなよ」

从'ー'从「しぃ先輩たちは来るって言ってましたよ?」

( ´_ゝ`)「ジョルジュ以外なら誰でもいいや……」

(´<_` )「まぁ俺達が来たんだからいいじゃないか」

( ´_ゝ`)「……その弁当はなんだよ」

从*'ー'从「兄者さんのお見舞いにと思って作ったんですけど、
      作ってるうちに弟者くんに食べさせてあげたくなっちゃって〜」

(´<_`* )「照れるからやめろよ……」

( ´_ゝ`)「外でやってくれんかのぅ……」

从*'ー'从「はい、タコさんウィンナーだよ〜」

(´<_`* )「あ〜ん」

( ´_ゝ`)「俺のウィンナー食わせてやろうか」

从'ー'从「黙れポークビッツ」

(;´_ゝ`)「えぇぇ!?」

(´<_` )「ドンマイ」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 00:43:06.97 ID:YxJ6fJXjO
从*'ー'从「はい、弟者くんあ〜ん」

(´<_`* )「あ〜ん」

(ヽ´_ゝ`)「帰ってくれよ……」

(´<_` )「でも兄者から、あんな兄らしい言葉が出るとはな……」

从'ー'从「格好よかったですよ?」

( ´_ゝ`)「ははは、兄として当然の事を言ったまでSA!」

(´<_` )「……嬉しかったよ、兄者。
       無事で……本当によかった」

( ´_ゝ`)「当たり前だ。俺は簡単には死なん」

(´<_` )「虫並の体力!」

从'ー'从「虫並の精神力!」

(´<_` )「虫並の知力!」

从'ー'从「虫並の顔!」

(´<_` )「それが!」

从'ー'从「兄者!」

( ´_ゝ`)b「流石だな、お前ら。悪口のオンパレードだよ」



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 00:45:51.76 ID:YxJ6fJXjO


从'ー'从「退院はいつ頃になるんですか〜?」

( ´_ゝ`)「あと2、3日で追い出されるだろうな」

(´<_` )「健康体だもんな」

( ´_ゝ`)「俺だって元気に野原を駆け回りたいよ」

(´<_` )「ポニーかお前は」

从'ー'从「あ、卒業とか大丈夫なんですか〜?
     この時期に入院しちゃったら大変なんじゃ……」

( ´_ゝ`)「ふっ、甘いよナベっち」

(´<_` )「次ナベっちって呼んだら殺すからな」

(;´_ゝ`)「……俺はこう見えて秀才なんだ、ナベ……渡辺さん」

从'ー'从「へぇ〜かなり意外です〜」

(´<_` )「進路は決めたのか?」

( ´_ゝ`)「あぁ、ラウンジ大学に行こうと思ってる」



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 00:47:58.66 ID:YxJ6fJXjO

(´<_` )「そうか、兄者も大学生か……」

从'ー'从「世も末ですね〜」

(;´_ゝ`)「……君、さっきからちょこちょこ失礼だよね」

(´<_`* )「……そこがいいんだよ」

从*'ー'从「もう〜恥ずかしいよ弟者く〜ん」

(;´_ゝ`)「……そんなにバカップルだったか?」

(´<_`* )「時間は常に流れてるからな……。
       兄者が寝てる間にも、俺達の愛は大きくなっていくのさ」

从*'ー'从「時間は流れても2人の愛は……流れないよ?」

(´<_`* )「やめろってば〜」

( ´_ゝ`)「あ、やべぇ殴りてぇ」



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 00:53:44.41 ID:YxJ6fJXjO


( ´_ゝ`)「そろそろ胃に穴が空きそうなんで、帰ってもらってよろしいでしょうか?」

(´<_` )「そうだな、長居は悪いし」

从'ー'从「また明日来ますね〜?」

(;´_ゝ`)「いや、マジ勘弁」

(´<_` )「照れるな照れるな。明日もバナナ持ってきてやるから」

(;´_ゝ`)「そんな食えねぇからバナナ……」

从'ー'从「それじゃ、お邪魔しました〜」

(´<_` )「また明日な」

(;´_ゝ`)「来ないでくれ……」



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 00:55:31.30 ID:YxJ6fJXjO

「カラオケでも寄ってく?」

「あ、いいねぇ〜! 行こう行こう〜!」




( ´_ゝ`)「……」


( ´_ゝ`)「……いいなぁ彼女」


( ´_ゝ`)「……」


( ´_ゝ`)「バナナ……」


( ´_ゝ`)「……モグモグ」


( ;_ゝ;)「甘い……」



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 00:57:41.04 ID:YxJ6fJXjO
(;,゚Д゚)「何もこんな買わなくてもいいじゃねぇかよ」

(*゚ー゚)「だって久しぶりのデートでしょ?
     たっぷり貢いでもらわなきゃ」

(;,゚Д゚)「貢ぐって……つーか前が見えねぇぞゴルァ」


たまの休日。ギコ君を誘い、デパートに来ている。
2、3時間ブラブラしあれこれ買ってる内に、ギコ君が倒れそうな程の大荷物ができあがった。

荷物はギコ君、私は次の店へ。
そんな数時間、かなり楽しいデート……もといショッピング。

ゴルァァァ……と呻く低い声が後ろから聞こえた。
ちょっとヒヨったな、ギコ君……少し休憩を入れよう。


(*゚ー゚)「飲み物買ってくるよ、何がいい?」

(;,゚Д゚)「コーラ頼む」

(*゚ー゚)「あれ? 炭酸嫌いじゃなかった?」

( ,,゚Д゚)「なんか飲みたい気分なんだよ……」



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:00:06.96 ID:YxJ6fJXjO

仕事に疲れた下戸のような事を言うギコ君。
大量の荷物を横に置くと、大きく一息ついていた。

隅の方にあった飲食店。
レストランも数あるこのデパートでは、中々経営は苦しそうで、私達以外にお客は居なかった。

コーラとソフトクリームを頼むと、淡いピンクのエプロンをしたおばちゃんはすぐに用意をしてくれた。
暇だったのだろう。直ぐ様出来たそれらを両手に持ち、席へと戻る。

休日という事もあり回った店々は中々騒がしかったのだが、
ここは場所が違うように静かで、落ち着いて話が出来そうだった。


(*゚ー゚)「はい」

( ,,゚Д゚)「お、ありがと」

(*゚ー゚)「ごめんね、疲れた?」

(;,゚Д゚)「まぁぶっちゃけ、かなり」

(*゚ー゚)「まだ前半戦なんだけど」

(;,゚Д゚)「え……いや金だってヤバイだろ?」



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:02:03.25 ID:YxJ6fJXjO

(*゚ー゚)「リラクシィで意外と儲かっちゃった。
     まだ財布はあったかいよ」


(*゚ー゚)「口の中は冷たいけどね(爆)」


( ,,゚Д゚)「……」


ズズズズズ……とギコ君がコーラを飲む。
ストローってのが可愛いらしい。


( ,,゚Д゚)「ま、しぃが満足するまで付き合うさ」

(*゚ー゚)「その言い方はギコ君が退屈みたいに聞こえるよ?」

(;,゚Д゚)「え? いや、あぁ……」

(*゚ー゚)「……嫌ならいつでも言ってくれていいんだよ?」

(;,゚Д゚)「いや、嫌ではない! 絶対に!」

(*゚ー゚)「……ホントに?」

( ,,゚Д゚)「本当に。うん、楽しいよ」



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:04:04.99 ID:YxJ6fJXjO

少し赤くなるギコ君。
私はそれを横目に、ソフトクリームを舐める。
甘い。冷たい。そのせいか頭が冴え、少し意地悪をしたくなった。


(*゚ー゚)「私の事、どう思ってる?」

(;,゚Д゚)「ゔぇ……?」


間を保たすようにか、ギコ君は大袈裟にコーラを啜った。
でも私は、視線を外さない。
じっ、とギコ君を見つめ、返答を待つ。

2度、3度とこちらをチラ見すると、ギコ君は改めて私を見つめた。


( ,,゚Д゚)「……」

(*゚ー゚)「……」



( ,,゚Д゚)「好ゲエップ」


(*゚ー゚)「……」

おばちゃん「……」



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:06:05.56 ID:YxJ6fJXjO

(;,゚Д゚)「……」


……ゲップ、ね。


(*゚ー゚)「ごちそうさま」


バリバリとコーンを噛み砕き、席を立つ。
ギコ君も慌てて謝るが、もう私は歩き始めている。

大量の荷物は急いで持つには多すぎるようで、持つも落とし、持つも落としで中々来れないようだ。
焦りの表情が濃くなり、額の汗が遠くからでもわかった。

そんな一人相撲を続ける彼に、私は背後から近づく。


(;,゚Д゚)「も、持てねぇぞゴルァ……ちっくしょ……」

「ギコ君」

(;,゚Д゚)「え?」


振り返ったギコ君の頬に、軽くキス。
彼は素っ頓狂な顔と声で、その驚きを私に伝えた。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:08:02.19 ID:YxJ6fJXjO

手近にあった小さい荷物を拾い、踵を返すとまた出口を目指す。


(*゚ー゚)「はやくしてよ、日が暮れちゃうよ?」

(,,*゚Д゚)「お、おう……」


惚けながらも荷物を纏め、ギコ君はゆっくりと歩きだす。
千鳥足に近いギコ君には、店員のおばちゃんが親指を立てグッジョブと呟いたのは聞こえなかったろう。

私も親指を立て、おばちゃんへサインを返した。


(,,*゚Д゚)「なんだ? それは」

(*゚ー゚)b「女にしか分からないサインよ……」



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:10:02.88 ID:YxJ6fJXjO

寂しくはねぇよ。どうせ変わんねぇし。
今が寂しくないんだから、変わんねぇだろ。

変わりたくはない。ずっとこのままでいい。

今回も、何も変わらなかったんだから。

多分……これからも変わらないはずだ。


( 'A`)「なにボーッとしてんだよ」

从 ゚∀从「あ……いや、別にぃ?」


箸が止まってたようだ。軽く麺がふやけ始めてる。
にしても、毎日ラーメン食ってる気がするな。


从 ゚∀从「もっとなんかこう、美味いもん食いたいな」

( 'A`)「? 美味ぇだろ?」

从 ゚∀从「昨日も三食ラーメンだったからなぁ……」

(;'A`)「はぁ? おま、それならそうと言えよ」

从 ゚∀从「忘れてた。まぁ食うけどさ」



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:12:04.62 ID:YxJ6fJXjO

俺は好きな物は先に食うタイプだ。
ガキの頃給食にプリンが出るやいなや、気付けばスプーンが刺さっていた。
ショートケーキの苺は先に食う。中に挟まれてる苺も先に食う。

そんな俺だ。
チャーシューメンを頼んだ筈だが、今食ってるそれは普通のラーメンへと姿を変えていた。


从 ゚∀从「……チャーシューくれよ」

( 'A`)「嫌だね」

从#゚∀从「いいじゃねぇか1枚くらい!」

(♯'A`)「お前チャーシューメンだろうが!
     俺のは普通のだぞ!? こっちが貰いたいくらいだわッ!」

从 ゚∀从「うへぇ〜、ケチくせぇ奴だなぁ〜。
     やっぱお前ん家なんか行かねぇ。俺は一人で暮らす!」


割り箸を1本の棒のように持ち、ビシッ!とドクオに向け言ってやった。

ドクオは静かにそうか、と呟くと、ずるずるラーメンを啜り始めた。
俺も釣られてずるずるずるずる……ずるずる……。



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:14:02.77 ID:YxJ6fJXjO

从 ゚∀从「……チャーシュー」

( 'A`)「やらん」

从 ゚∀从「ケチ」

( 'A`)「なんとでも言え」

从 ゚∀从「……じゃあメンマでいいよもう」


しょうがねぇ、妥協だ妥協。
返事の前にドクオの丼に箸を延ばし、メンマを3つ掴む。

あ、一緒にチャーシュー挟んじった。まぁいいや。


(♯'A`)「おいッ!!」

从 ゚∀从「あー、人のモノって美味そうに見えるけど、食うと普通だな」

(♯'A`)「……もう何もやらん」


器の底を持ち、横を向きながらラーメンを食うドクオ。
わりとコイツは拗ねやすい。ガキだね、まだまだ。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:16:04.31 ID:YxJ6fJXjO

( 'A`)「そういえばジョルジュの奴、留年するらしいぞ」

从*゚∀从「留年? ギャハハハハ、だっせぇー!!」

( 'A`)「お前、笑えねぇよ……来年もアイツが居るんだぞ?」

从;゚∀从「あ゙ッ、そういう事か……うぜぇな」


と、さっきからおっさんがチラチラ煩そうに見ているので、とりあえずガンを飛ばしといた。
ギャハハハ、目ぇ逸らしてやんの。


( 'A`)「それに、ウチは単位足りなくても
     3年までは行けるからいいけど、お前は卒業できんのかよ」

从 ゚∀从「人の心配より自分の心配しろよ。
     俺が学校行った時、いつもお前いねぇじゃねぇか」

( 'A`)「それはお前が、屋上か保健室に直行するからだろ」


……そう言われてみれば、3日に1度は教室に行く程度かもしれん。
留年はだせぇな……今度からはちゃんと行くかな。

少し勉強の事を考え嫌な気分になってると、ごちそうさま、と器を置く音と共にそんな声が聞こえた。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:18:21.17 ID:YxJ6fJXjO
見れば、ドクオの丼は底に龍の模様が、茶色の残り汁や胡椒と共に顔を見せている。
かたや俺のは、汁を吸ってうどんみたいになった黄色い麺。
少し考え、ごちそうさまと言っといた。


( 'A`)「なんだ、残すのかよ」

从 ゚∀从「ラーメンは飽きた。あと1ヵ月はいいや」


いかつい店主が睨むようにこっちを見ているが、一々気にはしない。

立ち上がり、財布から札を出して会計するドクオに奢ってと頼むが、アッサリと断られた。
仕方なくペラペラな財布から小銭を捻出し、無駄に油っこい店を出る。

……毎度ーって言われたし、来週には来てやるかな。


从 ゚∀从「うし、ゲーセンでも行くかッ!」

( 'A`)「……財布見せてみろ」

从 ゚∀从「……」

( 'A`)「貸さねぇからな」



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:20:11.69 ID:YxJ6fJXjO

本当にケチな奴だ。
まぁ付き合いが短いわけじゃない。粘れば貸してくれる筈。

少し身なりを正し、振り向きながら俺は言う。
全てを出し切る、最高のおねだりッ!!


从*>∀从「金貸して♪」




10円玉を投げ付けるドクオ。

なるほど、俺の価値は10円か。ぶっ殺すぞ。


( 'A`)「まぁ追い追いな。とりあえず行くか」

从#゚∀从「チッ……ケチケチケチケチケチケチケチケチ……」


これから行くのは、街の中央にあるゲーセン。
大してデカくは無いが、人が少ないため俺達はよく行く。

ドクオも当たり前のようにそこを目指すようで、先頭切って歩き出した。
追い歩きながら10円玉を財布に入れてみたが、他の小銭に当たる音すらしない。
悲しい財布だ……ラーメンちゃんと食えばよかった……。



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:22:28.87 ID:YxJ6fJXjO

从 ∀从「てッ!」

('A` )「ん? どした?」


どうやら子供と肩がぶつかったようだ。
なるほどなるほど、俺にぶつかるとは


从#゚∀从「いい度胸だなコラァ! どこに目ぇ付けてんだよッ!!」

(;=゚ω゚)ノ「ぁ、ぁ……ごご、ごめんなさいだょぅ……」

从#゚∀从「この目は飾りか? 抉ってやろうかボケチンが。
     つーか痛ぇなぁ。腕折れたから弁償しろ」

(;=゚ω゚)ノ「べ、弁償……? 治療費とかじゃなくて、弁償……?」


……ん? 弁償じゃないのか?
弁償って車とか物の時か? …………


从#゚∀从「どっちでもいいんだよガキ!! いいから金よk」

「子供相手に何してんだ、よッ!!」

(;=゚ω゚)ノ「ひぃッ!」



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:24:19.07 ID:YxJ6fJXjO

後頭部にガツンと衝撃。ドクオの拳だろう。
……俺が馬鹿なのは絶対アイツのせいだ。


从;゚∀从「いってぇ〜……」

(;=゚ω゚)ノ「あ、ありがとうございますょぅ……」

( 'A`)「気にすんな、ただの―――――」

(=゚ω゚)ノ「……?」

从 ゚∀从「どした?」

( 'A`)「……あ、いやなんでもない。
     ほら行け、もうこういうのに絡まれんなよ」

(;=゚ω゚)ノ「はい……すみませんでしたょぅ」


ペコリと頭を下げると、ガキは逃げるように走っていった。


从 ゚∀从「知り合いか?」

( 'A`)「……ん? まぁ、他人の空似だ」

从 ゚∀从「……ふ〜ん」



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:26:20.94 ID:YxJ6fJXjO

その後、どこかぼけっとするドクオを引きつれ、ゲーセンで遊びまくった。
金も借りまくった。

着く前はうわの空だったが、暫らくすれば元通り。

どころかテンションも上がってるくらいで、中々久しぶりに爆笑するドクオを見た気がする。


やっぱり俺にはわかんねぇ。

好きとか、幸せとか、寂しいとか、悲しいとか。
全然わかんねぇし、わかりたいとも思わん。

それよりも今楽しい事が嬉しいし、明日なにを食うか考えるだけで明日が待ち遠しい。

俺は不器用だから、自分から何もしなければ変わる事はない。

それで十分、今で、充分。



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:28:03.47 ID:YxJ6fJXjO

夜でも一帯だけ明るい区画。
そこには俺の仕事場があり、夜中にも人が少しだが居る。

運転しながらも、その付近の明るさを横目で感じる。
嫌いじゃない明かりだ。
必要な人間の為だけに灯される、貴重な明かりだから。

しかし5分としないで、その明かりは後方へと失せ去った。
少し淋しくあったが、気を抜けば事故りそうな程にくらい。

ヘッドライトを頼りに、舗装された黒い道を、もう眠りについている街を進む。


ミ,,゚Д゚彡「お、本当にやってるみたいだな」


暫らくして、看板を数個のランプで照らす、いかにも穴場の店って感じのバーを発見する。
店内からは音一つしないが、明かりは点いてるようだしやっているだろう。

小さな駐車場に車を停め、店内へと向かった。



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:30:05.95 ID:YxJ6fJXjO

(´・ω・`)「やあ、いらっしゃい」

ミ,,゚Д゚彡「おう、久しぶり」

(*´・ω・`)「あら、フサちゃんじゃな〜い!
       ご無沙汰ね〜もぉ〜」

ミ,,゚Д゚彡「なんだオカマバーかよ。帰るわ」

(´・ω・`)「……冗談だよ。暇だったんだ」

ミ,,゚Д゚彡「……だろうな」


店内はガラリとしていたが、照明を落としているせいで雰囲気は完璧だ。
……寂れたバーの雰囲気だが。


ミ,,゚Д゚彡「もっと中央に置けばいいじゃねぇか。
      駅前の店に食われちまうぞ」

(´・ω・`)「十分食われてるよ。それに土地を借りる余裕なんかないし。
      それで、注文は?」

ミ,,゚Д゚彡「車で来たから酒は無理」

(´・ω・`)「……帰ってくれ。馬鹿にしてるのかい?」

ミ,,゚Д゚彡「コーヒーくれ。あと何か食う物も」



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:32:02.08 ID:YxJ6fJXjO

(´・ω・`)「……」


不満げにショボンは、カウンター内で料理を……


(´・ω・`)「はい」

ミ,,゚Д゚彡「……なにこれ」

(´・ω・`)「ハム」


皿に適当に盛って出されたのは、安物感丸出しのハム。
割り箸とコーヒーを手渡され、明らかなミスマッチを覚悟しながらパキと箸を割った。


ミ,,゚Д゚彡「……よかったな、後遺症もないようで」

(´・ω・`)「あぁ、本当によかった。
      今度皆を誘って、パーティーでもと思ってるよ」

ミ,,゚Д゚彡「いいねぇ、アイツ等そういうの好きそうだしな。
      喜ぶと思うぜ? かなり金はかかりそうだが」

(´・ω・`)「お金で済むなら全然構わないよ。
      ……廃人になっていたら、謝っても許してもらえる問題じゃないし」



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:34:03.23 ID:YxJ6fJXjO

ミ,,゚Д゚彡「まだ気にしてんのか? 結果論でいいじゃねぇかよ」

(´・ω・`)「……渡辺さんや、内藤君。彼らに悪い事をしたからね。
      それにもし失敗してたら、一生の傷を皆に残す所だった」

ミ,,゚Д゚彡「……そう考えると恐いな。その可能性があったってのも。
      でもまぁ少し早計ではあったが、あぁいう決断は世の中には必要だ」

(´・ω・`)「……僕には必要ないよ」

ミ,,゚Д゚彡「ガキじゃねぇんだ、我儘言うなよ。
      クーを雇ったんだろ? お前は十二分な、大人だよ」

(´・ω・`)「……クーちゃんには感謝してるよ、華がなかったからね。
      ただ経営の為にも、彼女には辛い思いをさせるかもしれないけど……」

ミ,,゚Д゚彡「辛くねぇ仕事なんかねぇよ。楽な人生なんか糞くらえだ。
      人間として生きるなら尚更。辛くてナンボ、振り向いてナンボ」

ミ,,゚Д゚彡「どんなに嫌でも、明日は来るからな」


ハム1枚を箸で丸め、口に運ぶ。
その後に、たっぷりと甘くしたコーヒーを飲む。

うん、これは厳しい。



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:36:30.52 ID:YxJ6fJXjO

(´・ω・`)「……咲かない花は、綺麗かな?」

ミ,,゚Д゚彡「……あ?」

(´・ω・`)「止まない雨はない。明けない夜もない。
      ……咲かない花はある」

ミ,,゚Д゚彡「……綺麗だと思う人間には、輝いて見えるさ」

(´・ω・`)「……そんなものか」


カップを掴みコーヒーを一気に煽り飲むと、溶けずに残った砂糖が底に溜まっていた。
俺はおかわりを頼み、今度はちゃんと溶けるようにと、念入りに掻き混ぜた。



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:38:06.39 ID:YxJ6fJXjO

ノハ#゚听)「クー! 朝だぞ、起きろぉぉぉぉぉぉお!!!!1」


朦朧とする意識をじんわり冴ましていく。
それが朝スッキリ目覚める方法だと、いつかテレビで言ってた気がする。

残念ながら私は、その方法を取れそうにない。


「……まだ7時じゃないか」

ノハ#゚听)「何言ってるんだッ! 早起きは三万の得だぞッ!!??」

「三文だ……三万なら起きるさ……」

ノハ#゚听)「仕事だろ! 我儘言うなッ!!」

「9時からなんだ……まだ寝れる……」

ノハ#゚听)「駄目だ! 起きろ! はりーでうぇいくあっぷだッ!!」


ヒートの叫び声は本当にうるさい。
本人は普通の声らしいが、100人中130人は大声と認めるだろう。

そんな声量を常に出してるのに、喉が潰れた事はないらしい。
是非それを活かせる仕事に就くべきである。
パトカーのサイレンとか。



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:40:06.22 ID:YxJ6fJXjO
布団を頭まで被り、その大声を少しでも軽減しようと試みたが、意味はない。
意味は無いのに、無情にもヒートは布団を引っ張り、私に起きろと言い続ける。

慈悲のない奴だ。
ヒートのおかげで目は覚めたが、それがまた不満を私によこす。

このままお前が学校に遅刻するまで粘ってやろうか。

と考えた所で、寝起きで揺るまった筋肉は言う事を聞かず、
布団のついでと言わんばかりにパジャマまで剥がされてしまった。


川;゚ -゚)「さむ……寒い」

ノハ* )「な、なんて格好してるんだクー! いやんッ!!」


自分で下着だけにさせたくせに、耳まで赤くし両手で顔を覆うヒート。
まぁ、指の隙間から私を見ているが。


ノハ* 听)「は、早く着替えろ! 先にご飯食べてるからなッ!」

川 ゚ -゚)「言われなくても着替えるさ。
     満足したら早く行け。遅刻するぞ」


タンスから適当に服を選ぶ。派手な服は駄目だな、というか無い。
あるのは白と黒の服のみ。我ながらいいセンスだ。



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:42:02.49 ID:YxJ6fJXjO

物色している姿をヒートは壁に隠れ覗き見ていたらしく、私が視線を送るとビクッとして階下へと走っていった。


「クーのエッチィィィィィィィィイイ!!!!11」


そんな言葉を残して。


川 ゚ -゚)「なんなんだアイツは……」




ノハ*゚听)「ごちそうさまッ!」

川 ゚ -゚)「ごちそうさま」

ノパ听)「よし、行くぞッ!」

川 ゚ -゚)「だから私は9時だって」

ノハ#゚听)「駄目だ駄目だッ! 早く行って準備を手伝う!
     早い内から媚を売って時給を上げて貰えッ!!」

川 ゚ -゚)「疾しい計画だな」



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:44:06.82 ID:YxJ6fJXjO

ヒートは学校、私はバイト。
ニートから社会人に復帰した私の職場は、バーボンハウスだ。

ちなみに、働き出してから今日で2週間が経った。
接客というのはどうにも好きになれないが、徐々に慣れてはいると思う。

ショボンはバーを開く日を増やしたいらしく、昼の喫茶は私に一任したいようだ。
バイトに任せるな、と反論もしたが、なら社員にならないかい?と返された。
勤務が増えるのは勘弁なので断っといた。

まぁバイトだろうが正社員だろうがやる事は変わらない。
今はコーヒーの煎れ方やら料理の作り方やらを、徹底的に教えられている。

手先が不器用な私は料理がすこぶる苦手で、最近は生傷が絶えない。

正直な所、辛くはある。
体力だって戻ってこないし、弱い精神は逃げろといつも呟く。

そんな時、私はヒートに励ましてもらう。

「とりあえず頑張れと言ってくれ」
「頑張れぇぇぇぇえ!!!!11」

これで3日は保つ。私も中々阿呆なようだ。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:46:05.24 ID:YxJ6fJXjO

ノパ听)「いってきまぁぁぁぁぁぁあす!!」

川 ゚ -゚)「8時か……まぁいいや、行ってくる」


ヒートは折れる事がない。対して私はぐにゃぐにゃに柔らかい。
まだ家でダラダラしていたかったが、折角早くに起こされたので、時給を上げよう計画を試してみる事にした。

2人で出立の挨拶をしたが、母親は既に出勤している。


川 ゚ -゚)「ほら、鍵。無くすなよ?」

ノパ听)「分かってる! 無くさないさッ!」

川 ゚ -゚)「自信があればあるほど不安になるな」

ノパ听)「……ん? 何してるんだ?」

川 ゚ -゚)「見てわかるだろう。スクーターにまたがっているんだ」

ノパ听)「……学校までの見送りは?」

川 ゚ -゚)「……バーボンハウスは学校とは反対なんだが」

ノパ听)「いいじゃないか! 余裕あるんだろッ!?」

川 ゚ -゚)「……」



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:48:07.30 ID:YxJ6fJXjO

もうさっきの疾しい計画は忘れているらしい。
鶏なみの記憶力だな。やはりパトカーのサイレンの仕事に向いている。

一つため息、まぁ仕方ないな。言うとおり時間はある。
私は愛車を降り、手押しでヒートと共に学校を目指す事にした。




通学路か、なんか久しぶりだな。
人は多いのに、みな同じ制服を着て、どこか澄ました顔で同じ場所を目指す。

まだマシだな。違う色のスーツを着て、違う会社に行くサラリーマン。
共通なのは、死んだ顔をしている事。
彼らよりかはマシだ。青春があるのだから。

私はもう無いだろうな。
自分から捨てたんだ。もう一度与えられるとは思わない。
それは少し悔しい。楽しい事は私も好きだしな。

でも楽しい事は、生きてれば絶対に見つかる。
今頑張る事で、いつか見つかる。私はそう思う。
それを信じて、生きた顔で生きてやる。


……死んだ顔をして歩くサラリーマン達は、人生楽しいのだろうか。



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:50:03.41 ID:YxJ6fJXjO

楽しくなくても生きるのだろうか。

家族がいるから頑張るのだろうか。
ただただ慣性で生きているのだろうか。

……諦めないのかな、人生を。
投げ出さないのかな、人生を。

それは、それはかなり、格好いいな。
私にはとても真似できない事だろうな。

学生の群れに逆らい歩く、死んだ顔のオッサンを見つけた。

頑張れ、と。
心の中でだが、始めて赤の他人を応援した。



川 ゚ -゚)「……頑張れよ、ヒート」

ノハ*゚听)「うむ! クーの分も卒業してくるぞッ!!」


なんとなく呟いたのだが、いつの間にか学校前に着いていたようだ。
ヒートは無駄に頼もしい事を言うと、元気に片手を挙げ校門をくぐっていった。


川 ゚ -゚)「さて、私も行くか」



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:50:47.08 ID:YxJ6fJXjO

光を反す鈍いシルバーなメットを被ると、光を吸う黒いスクーターにまたがる。

また今日も一日頑張るか……。


「クゥゥゥゥゥゥゥゥウウウ!!!!11」

川 ゚ -゚)「ん?」

「がぁんばれぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!!!111」

川 ゚ー゚)「……あぁ」


後押ししてくれるその声を背中に受け、私はバーボンハウスを目指した。



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:52:06.04 ID:YxJ6fJXjO

太陽がサンサンと照ってるのに、今日は少し肌寒い。
少しだが吹く風は、俺の金髪を揺らす。

髭でも伸ばして、髪は黒く染めるかな。
イメチェンして心機一転、適当に頑張るかな。


( ゚∀゚)「はぁ……」


右手を空に、真直ぐ伸ばす。

高く照らす太陽は掴めないが、その光を遮る事はできた。
たまにこうやって暗くしねぇと、疲れちまう。

少し1人にならねぇと、自分を見失っちまう。


「……先輩」

( ゚∀゚)「……ん?」

「……私と、付き合ってください!」

( ゚∀゚)「……」



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:54:06.42 ID:YxJ6fJXjO

あ、俺が告られたわけじゃねぇ。
今居るのは屋上に上がる階段の上、一個高くなってる場所だ。

その下で、1年っぽい女が3年っぽい男に告白をしていた。
青春だねぇ〜……


「……ごめん。俺、彼女いるんだ」

( ゚∀゚)「あちゃー……」

「そう、ですか……お時間とらせてすみませんでしたッ」


女はそう言うと、サッとお辞儀をした。
別に心底悪かったと謝ったわけじゃないだろうな。

……マジに好きなのかね、あんな男を。

  _
( ゚∀゚) 「……伊藤よりかはマシだな」


……あ、思い出した。
前に伊藤が言ってた、俺がアイツを助けたとかどうとかって話。



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:56:13.60 ID:YxJ6fJXjO

あの日も天気がよかったな、確か。
んで日光浴してたら、野太い声で「付き合ってくれ」ってのが聞こえた。

確か3年の……名前なんか知らねぇ男だ。
んでその相手が伊藤。
当然俺はアイツの事なんざ知らねぇし、地味な女だとしか思わなかった。

伊藤は少し考えて、俯き気味にそれを断った。
そこまではまぁ、よくある話なんじゃねぇのかね。
違うのはそっからだ。

男の方が女にキレやがった。
「なんでだよ!」ってな具合に。だっせぇ奴だ。

そんな醜い口喧嘩でも俺は腹が立つのに、
野郎は屋上のフェンスまで伊藤を追い込み、付き合えとかホザきやがった。
嫌だと震えながら言った伊藤を、そいつは殴った。

気付いたら殴ってた。ボコボコにしてた。
女にした20倍近く殴ってやった。

なんであそこまでキレたのかね、俺は。
若気の至り、中々の青春だな。


( ゚∀゚)「……あーあ、泣いてるよ」



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 01:58:17.33 ID:YxJ6fJXjO

昔を思い出してる間に、さっきの女はフェンスに寄り掛かり、小さく声をあげ泣いていた。
嫌いだね、すぐ泣く奴は。

可哀相ではないだろ。下調べしてなかったんだろ?
それに3年なんかすぐ卒業するじゃねぇかよ。
フラれたくらいで全く……

……なんでこんな色恋沙汰を俺が考えなきゃならねぇんだよ……。


( ゚∀゚)「チッ……寝よ」


くだらねぇくだらねぇ。
折角一人なんだから、そういうのを持ち込むんじゃねぇよ。

俺が眠りにつくまで、女はずっと啜り泣いていた。
慰める役は俺じゃねぇから、俺がする事は何もない。

邪魔しねぇように、寝るだけだ。



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 02:00:07.09 ID:YxJ6fJXjO

私は今、学校の図書室に居る。

前までここに居る理由は、ブーンを待つためだった。
部活に入ってないブーンだが、18時に帰る事がたまにあり、その暇潰しにここに居た。

18時まで何をしてるのかと終わった後に聞いたら、餌の人達とダベっていたとか。
今では当然その必要はないのだが、私はここに居る。

元々読書は好きだったのだが、
今はその小さな趣味を共有できる友達も出来て、かなり好きな部類へと入った。


ξ゚听)ξ「何読んでるの?」

('、`*川「適当に取ってきたら……」


ペニちゃんが持っていたのは、「オワタの大冒険」。
いつぞや彼女のお陰で、大号泣させられた漫画だ。


ξ゚听)ξ「……泣けるわよ、それ」

('、`;川「えぇ……」


小首をかしげ、ページをめくるペニちゃん。



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 02:02:27.33 ID:YxJ6fJXjO

本当に静かな子だ。
寝てるくせにうるさいコイツとは大違いである。


( *´ω`)「ぶおっ! ……うふふ……」

ξ;゚听)ξ「気持ち悪い笑い方ね……」

('、`*川「でも優しいよね、内藤君。本に興味ないんでしょ?」

ξ゚听)ξ「無いわねー。星の王子さまを、お星様の話だと思ってたもの」

('、`*川「それでもツンちゃんを待ってくれてるし……」

ξ゚听)ξ「一人で帰んのが寂しいのよ。それに、ただ寝たいだけじゃないの?」

('、`*川「それでも、ジョルジュさんとは大違いだよ……」

ξ゚听)ξ「ねぇ、あの人の何がいいの?
     どう見てもペニちゃんとタイプ違うじゃん」

('、`*川「……かっこいい」

ξ゚听)ξ「まぁ顔はいいけど……ヤンキーよ? ヤンキー。
     どこで知り合ったのよ?」

('、`*川「1年生の時、部活の先輩に屋上にって呼ばれたの。
     私その時サッカー部のマネージャーやってて、その人はチームのエースだったの」



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 02:04:17.87 ID:YxJ6fJXjO

ξ゚听)ξ「あらら、意外とモテるのね」

('、`;川「いが……まぁそれで突然、付き合ってくれって言われたんだけど……」

ξ゚听)ξ「フッたの?」

('、`*川「うん……よく知らなかったし。
     そしたら、調子に乗るなッて……頬を殴られたの」

ξ#゚听)ξ「はァ!?」

('、`*川「そしたらジョルジュさんが後ろから現れて……」

 _,
('、`*川「殴られた痛みわかるか……?
      教えてやるよッ!!」


('、`*川「ってフルボッコに……」

ξ゚听)ξ「はぁ〜……なんかスッキリしたわ。
     それからずっと一緒に居るの?」

('、`*川「んーと、その後ジョルジュさんは退学になりかけたんだけど、
     私が事情を話したら、1ヵ月の停学で済んだの」

ξ゚听)ξ「長ッ……耐えられないわ私」



78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 02:06:16.49 ID:YxJ6fJXjO
('、`*川「なんか最長らしいし、前々からのも貯まってたのかもね。
     その後部活辞めて……暇になったから放課後はここに居たの」

('、`*川「それで何故かジョルジュさんも図書室に居て。
     それからずっと……」

ξ;゚听)ξ「え? 何か大事な部分ハショらなかった?」

('、`*川「最初はパシリ扱いで……まぁ今もだけど」

ξ゚听)ξ「経緯は把握したけど……やっぱり判んないわ。
     今日だって黙って帰っちゃったんでしょ?」

('、`*川「まぁいつもの事だし……」

ξ゚听)ξ「たまにはビシッと言った方がいいわよ?
      付け上がるばっかりよ、ああいうタイプは」

('、`*川「いや……うん、そうなんだけど……」

「何かしたい事とかあるのか?」

('、`*川「え、ご飯とか一緒に食べ行ったり……」

( ゚∀゚)「よし、じゃあ食い行くか」

('、`*川「え? いいんですか? ジョルジュさ……」

('、`;川「でゅえぇッ!? 帰ったんじゃないんですか、ジョルジュさんッ!!」



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 02:08:03.46 ID:YxJ6fJXjO

ξ;゚听)ξ「でゅえぇ……?」

( ゚∀゚)「屋上で寝てただけだ。それよりオラ、飯行くぞ」

('、`*川「え……本当にいいんですか?」

( ゚∀゚)「おう、ラーメンでお前の奢りな」

('、`;川「ら、らーめん……いつも行くじゃないですか……」

ξ゚听)ξ(奢りには触れないのかしら……)

( ゚∀゚)「贅沢言うな。腹減ってんだ、早く行くぞー」

('、`;川「あ、待ってくださいよ……。
      ごめんねツンちゃん、また明日……」


バタバタと騒がしく、ペニちゃんは本を元の棚に戻しジョルジュさんを追って行った。
だいぶ振り回されてるようだが、それでもペニちゃんは幸せそうだった。


ξ゚听)ξ「ま、人それぞれね……私だったらキレてるわ……」

( *`ω´)「チェヤー!!……うふふ……」

ξ゚听)ξ「……17時30分……帰るか」



81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 02:08:54.88 ID:YxJ6fJXjO

本を閉じ、元あった場所に……何処だっけな……。
まぁいいや、適当に置いとこう。どうせまた明日読むだろうし。

本についていた赤い紐をさっきまで読んでいたっぽいページに挟む。
挿絵のお陰ですぐわかった。

偶然かは分からないが目に入ったオワタの大冒険の隣に、それを置き席へと戻る。

涎を垂らし、変な笑いと笑みを浮かべながら眠るブーンに蹴りを入れ、鞄を持つ。


ξ゚听)ξ「ほら、帰るわよ」

( ´ω`)「お……? おぉ、おおお……おぉ?」

ξ゚听)ξ「日本語でおk」

( ^ω^)「お……もう帰るのかお?」

ξ゚听)ξ「もう1時間も経ってるわよ。
      ほら立って涎拭いて、帰るわよ」

( ^ω^)「お、帰る……」

(;^ω^)「おぉっ!?」



82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 02:10:04.59 ID:YxJ6fJXjO

ブーンが口周りの涎を腕で拭い立とうとすると、コケた。
足が痺れた……と呻くように言い、おおぉと本当に呻く。

格好悪すぎる……。


ξ゚听)ξ「まったくアンタは……ほら、立ちなさい」


そう言い私は手を差し伸ばす。
恥ずかしいか? 恥ずかしいわね。
でもこのままじゃ帰れないもの。しょうがないのよ。
妥協よ妥協。ホントよ。ホントなんだからッ!


ξ#゚听)ξ「早く立ちなさいよッ!!」

(;^ω^)「あ、足が……手が届かないお……」

ξ#゚听)ξ「ホンットにアンタは!」


じれったくなり、腕を掴んで無理矢理立たせる。
当然足は痛いだろう。だが問答無用だ。



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/24(月) 02:11:24.02 ID:YxJ6fJXjO

(;^ω^)「いたたたっ、痛い痛い痛いおッ!!
       治るまで待ってくれお!!」

ξ゚听)ξ「駄目よ、帰るの」

(;^ω^)「あだっ、ツ、ツンンッ痛いおおおおお!!!11」


そのまま1Fに降り、学校を出た。
その時にはブーンは泣きべそをかいていた為、残っていた少ない生徒からは変な目で見られていた。

……まぁいいや。どんな目で見られても。


私は、幸せだし。





ξ゚听)ξツンが感情を喰うようです


おしまい



戻るあとがき