( ^ω^)がリプレイするようです

47: 78 ◆pSbwFYBhoY :2007/07/08(日) 18:54:29.91 ID:UUzPGDIm0

以下、本編とは『直接的』な関係はありません。
読んでも読まなくても、先を読み進める上で何の支障もありません。

ただ、もしかしたら不快な想いをされる方がおられるかもしれません。

その点を考慮に入れて読み進めてくれる方がいらっしゃるようでしたら
あと少しだけお付き合いください。



49: 78 ◆pSbwFYBhoY :2007/07/08(日) 18:55:08.34 ID:UUzPGDIm0




















53: 78 ◆pSbwFYBhoY :2007/07/08(日) 18:57:05.07 ID:UUzPGDIm0


(´・ω・`)「内藤ホライゾン。一九二八年生まれ。没年は二〇〇六年。
     母国の西の果て、山と海に囲まれた港町にてその生を受ける。

     造船業に従事していたあなたの父は、港から見える水平線の先、
     故郷では見ることの出来ない地平線の彼方に果てない未来の夢を見たのでしょうか?
     あなたにホライゾンという名を与えます」


(´・ω・`)「お世辞にも裕福な家庭とは言えなかった。
     それでもあなたは、真面目で厳しい父、温和で優しい母、
     生まれたときからの付き合いである津出麗子とその家族、
     その他善良な人々に囲まれ、素直で明るい、笑顔のよく似合う少年へと育っていきます。

     学校の成績は中の中。運動も中の中。
     童顔のふっくらとした頬を除き、体格も中肉中背。特筆すべき点は何もない。
     しかしあなたは、その名に違わぬまっすぐな心根の青年へと成長していきました」




56: 78 ◆pSbwFYBhoY :2007/07/08(日) 19:00:42.50 ID:UUzPGDIm0


(´・ω・`)「しかし、時代は回る。
     戦火は善良な国民の下へと飛び火し、あなたの幸せを奪ってゆく。

     先にあなたの父が徴兵され、やがて死亡の報が届けられました。
     そしてあなたもまた、泥沼へと落ち込んでゆく時代の流れなすすべもなく巻き込まれ、徴兵されます。

     届けられた紙。血の色をしたその赤は、時がもたらした精一杯の嘲りだったのでしょうか?」


(´・ω・`)「そして、徴兵前夜。あなたは幼馴染である津出麗子を呼び出します。
     あなたは彼女を前に敬礼すると、『これまでありがとう』と、感謝の言葉だけを述べました。

     決して『生きて帰ってくる』とは言わなかった。
     それは時代の風潮だけでなく、あなたの胸の内にあった漠然とした生への諦めが、
     あなたをしてその言葉を言わしめなかったのでしょう。

     うつむけた顔を上げ、目に涙を浮かべながら、津出麗子はつぶやきます。
     『必ず帰ってきなさいよ』 それでもあなたは、最後までそれに対する肯定を口にしなかった。

     翌日、揺られる列車から見た彼女の姿に、あなたはいったい何を想ったのでしょうか?」



59: 78 ◆pSbwFYBhoY :2007/07/08(日) 19:04:26.91 ID:UUzPGDIm0


(´・ω・`)「漠然と死を覚悟していたあなたは、やがてそれを正してくれる青年と出会います。
     毒田勇男。とある出来事によって親しくなったあなた方は、共にあまたの屍の上を歩きます。

     硫黄島。故郷から遠く離れた灼熱の島。
     のちに悲劇の島と語り継がれるその場所で、あなたは彼と、一つの誓いをします。

     『必ず生きて故郷に帰り、残されたものを幸せにする』

     薄暗く蒸し暑い地下基地の中に、あなたと彼の希望の声が響きました」


(´・ω・`)「しかし、毒田勇男は死ぬ。
     共に逃げ出そうと駆け出した地下基地の狭い廊下。
     その先にあった光を見た直後、陥落した入り口。

     その隙間からまるで雑草のように生えた彼の右腕。
     閉ざされた未来をつかむかのようにまっすぐと天に伸びるその右腕。
     そこに握られていた血に染まった小さなお守りを前に、あなたは慟哭します。

     その悲しみは国を越え、言葉を越え、敵味方の垣根さえも越えて、周囲の米兵にも伝わります。

     魂の抜け殻と化したあなた。米兵は悲しげな視線を投げかけ、あなたを捕虜にします。
     思えばあなたの不幸の始まりはここから……いえ、赤紙を手にした時からだったのでしょう」



64: 78 ◆pSbwFYBhoY :2007/07/08(日) 19:08:29.53 ID:UUzPGDIm0


(´・ω・`)「それから終戦までの時間を、あなたは捕虜として過ごします。
     おめおめと生き延び、生き恥を晒す自分に絶望しながらも、それでもあなたは生き続けます。

     やがて十五年戦争も幕を閉じます。内藤さん。あなたは玉音放送を聞きましたか?
     耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んだあなたに対して、戦争は一体何をもたらしましたか?」


(´・ω・`)「『川の流れのように、ゆるやかにいくつも時代はすぎて』いく。 
     かつてこんな歌がありました。内藤さん、きっとあなたも耳にしたことがあるでしょう。

     このように、時とはよく川の流れに例えられます。
     一度流れ去った時は二度と元には戻らない。ゆるやかに、けれどもひたすらに未来へと流れてゆく。
     そんな時の流れの中で、あなたは再びの母国へと帰り立ちます。

     破壊された町、蹂躙された命。
     崩れ落ちたあまたの瓦礫の上には、それでも前に進もうとする人間の意志だけが残されました。
     生き残ったあなた方は狂ったように働き、やがて母国に異常なまでの繁栄をもたらします」


(´・ω・`)「エコノミックアニマル。狭い日本、そんなに急いでどこに行く。 
     獣と揶揄されたあなた方が作り上げた未来の先で、子供たちはどこへたどり着きましたか?

     高度な医療。自動化された生活。公平な教育。掃いて捨てるほどの食料。多種多様な娯楽。

     一見すると、この上ないしあわせへと子供たちはたどり着いたように見えます。
     しかし、果たして本当にそれでよかったのでしょうか?」



65: 78 ◆pSbwFYBhoY :2007/07/08(日) 19:11:40.92 ID:UUzPGDIm0


(´・ω・`)「崩壊したモラル。腐敗した政治。
     金だけを求め、人の精神的豊かさを犠牲にする経済。
     母なる海や大地は汚染され、夜空に瞬いていた星の河はまったく見えなくなりました。

     発達しすぎた世界に子供たちは未来への希望を抱かなくなり、
     彼らは刹那的な快楽の中へと落ち込んでいきます。

     そんな彼らの間では、頑張ることは嘲笑の対象となり、
     如何に世を楽に渡っていくかが追い求められ続けています」


(´・ω・`)「親が子を殺し、子が親を殺す。
     デジタル化したテレビの中では、今日も誰かが誰かを殺しています。

     あなたが必死に守りたがっていた命に、
     あなたが必死に追い求めた未来に、かつての価値は無くなりましたよ? 

     そんな未来を見て、あなたは、毒田勇男は、いったい何を想っているのですか?」



69: 78 ◆pSbwFYBhoY :2007/07/08(日) 19:16:15.87 ID:UUzPGDIm0


(´・ω・`)「母国の土を再び踏むことになったあなた。
     踏みしめた土は、一体どんな感触でしたか?

     揺られる列車。すし詰めにされた人々に紛れ、
     あなたは毒田勇男の故郷へと降り立ちます。
    
     終わった戦争の残り火に怯える暗い町。
     月明かりだけが照らすその町での毒田そらのと一件。

     『嘘つき!なんであなたは生きているの!?兄だけ死んで、なぜあなたは生きているの!?』

     投げかけられた恨みの言葉。あなたはそれに何も返しませんでした。
     しかし、本当は何を想ったのですか? 何を返したかったのですか?」


(´・ω・`)「……そして、たどり着いた故郷。過去の名残を一切残さない荒野の町。

     流れる浦上の川は死体と血、人の脂で埋め尽くされ、人間は虫けらのように死んでゆく。
     汚染された空気は生き残った人々、津出麗子の身体に死の宣告をもたらします。

     それでも立ち上がる人々。愛した故郷の町を復旧させ、過去の傷を新たな町の礎としました。

     再会した幼馴染。徐々に生まれ変わっていく故郷。
     互いの両親を失い、それでも支えあいながらあなた方は生きていきます。

     めでたく夫婦の契りを交わしたあなた方。その営みの先に子が出来なかったのは、
     原爆という悪魔の残した傷跡によるものだったのでしょうか?」



70: 78 ◆pSbwFYBhoY :2007/07/08(日) 19:18:31.33 ID:UUzPGDIm0


(´・ω・`)「時が経ち、しばしの平安の中をあなたは生きます。

     その中での、あなたを好いてくれる女性との出会い。
     あなたは戸惑いながらも、内藤麗子と共に彼女との親交を深めてゆきます。

     父の跡を継ごうとしたのかは定かではありませんが、あなたは造船所に職を見つけます。
     そして徐々に、だが確実に、あなたはあなたの社会を築いてゆきます」


(´・ω・`)「しかし、それも終わる。内藤麗子の死。
     毒田勇男以来、再びあいまみえた大切な者との今生の別れ。

     絶望に打ちひしがれたあなたは、故郷の町から逃げるように去ります。

     その去り際、渡辺という女性から投げかけられた声。
     それに対する返答となんら違わず、あなたは流れるように母国の首都へとたどり着きます」



74: 78 ◆pSbwFYBhoY :2007/07/08(日) 19:21:30.66 ID:UUzPGDIm0


(´・ω・`)「その街で、あなたは出会う。最愛の妻の生き写しのごとき少女に。
     ひょんなことから出会った彼女を前に、あなたは堰を切ったかのように泣き崩れます。

     そして、あなたは言う。『おいで。僕が君を、守ってあげる』

     そんなあなたを前に、彼女は何を想ったのでしょう? 今となってはわかりません。
     ただひとつだけ確かなことは、彼女があなたを信じたこと。

     彼女に麗羅という名を与えたあなたは、その後の人生を彼女のためだけに捧げ、生きてゆきます」


(´・ω・`)「静かで、地味で、時代の風潮に逆らうことなく流れていった
     それからのあなたの二十年弱。それがあなたの人生最後の、幸福なひと時。

     しかし、それもついに終焉を迎えます。

     彼女を幸せにする。そのバトンを次の世代の男性へと託そうとした最後の最後で、
     あなたは彼女を、最愛の娘である麗羅を失います」



75: 78 ◆pSbwFYBhoY :2007/07/08(日) 19:23:01.42 ID:UUzPGDIm0


(´・ω・`)「それからのあなたの人生は見るに耐えません。

     仕事を止め、酒におぼれ、結婚するはずだった娘に託そうとした貯金や
     彼女の死の代償たる保険金は底をつき、家を失い、何もかもを失い、
     最後には路上を寝床とするホームレスへと落ちぶれてしまいました。

     地平線の名を持つあなたの心根はどんどんと荒んでゆき、
     やがてあなたは偏屈で寡黙な、孤独な老人へと姿を変えてゆきます。

     それでも死ねず、細々と生きながらえ、終わりは通り魔に殺されるというあっけないもの。

     誰に尋ねても不幸と答える、それがあなたの人生でした」



78: 78 ◆pSbwFYBhoY :2007/07/08(日) 19:25:40.81 ID:UUzPGDIm0


(´・ω・`)「そして、あなたはやり直します。

     再びの時の流れへとその身を落とし、
     私が託したやり直しという名のペンを握り、時の筋書きを書き直そうと動き出します。

     けれども、待っていたのは毒田勇男、内藤麗子との二度目の別れ。毒田そらからの変わらぬ罵声。
     繰り返される過去の悲劇に、老いたあなた意識は再び直面します。

     私はそれに耐えられなかった。私はそれから目を逸らそうとした。
     しかし、そんな弱い私に向けて、あなたは言ってくれました」


(´・ω・`)「『自分は傷ついてなどいない』 

     そう言い切ったあなたの瞳に、私は生といういばらの道をたどってきた命の力強さを感じました。

     最良の未来を追い求めるその瞳に、私は知らず知らずの内にたじろいでしまっていたのでしょう。
     その結果として、最後にあなたにタブーを伝えられなかった私自身が私はあまりにも憎く、
     そして何よりも悔やまれます。

     お願いします。あの方法だけには手を出さないでください。どうか、どうか、お願いします」



82: 78 ◆pSbwFYBhoY :2007/07/08(日) 19:27:17.37 ID:UUzPGDIm0


(´・ω・`)「……いまさら謝ってもせん無いことですね。

     内藤ホライゾン。私はあなたを信じます。私はもう目を逸らしません。
     あなたの成す最後のやり直しを、私はこの目にしかと焼き付けます。

     あなたに時の神クロノスの加護があらんことを、
     あなたのリプレイが最良の結果に終わらんことを、私は切に願います。

     そして、あわよくば、私に人間の持つ可能性を見せてください。お願いします」



                                               <続く>



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