('A`)ドクオは透明人間のようです

  
4: 留学生(樺太) :2007/04/23(月) 19:04:58.80 ID:uGaQhEucO
  
 『もし透明人間になれたらどうする?』

 こんなありふれた話題。
 中学生にもなれば、誰でも一度は話した事があるだろう。



 模範解答はない。が、人気のある答えはある。
 『女湯覗く』とか。『うぜぇ奴ぶん殴る』とか。
 『公道で自慰』とか。『あの娘のリコーダーをチュパチュパベロリンガする』とか。

 大体が個人的な欲望で、ただの野望なだけだったりする。
 よく考えれば、いくらでも活用方法はあるというのに。

 ――しかし、何故よく考えないのか。
 答えは至って簡単。透明人間なんて、実際にいる訳がない。
 だから真面目に思考する必要がないのだ。

 『もし〜だったら』の考え。『もし〜なれたら』の考え。
 透明人間という存在は、所詮空想の産物なのである。



 だが、この世界は広い。透き通っていない透明人間もいる。
 ただ――その透明人間は、よく話題に出る透明人間ではない。
 つまり語意の違いはあれど、やはり『透明人間』は存在する。

 また、実在する。
 このVIP町に、確かに実在している。



  
5: 留学生(樺太) :2007/04/23(月) 19:05:57.09 ID:uGaQhEucO
  
 ところで、透明度というものがある。
 単位もあるのだが、それは今のところ関係無い。
 簡単に言えば、ガラスよりも空気の方が透明度の純度が高いのだ。


 この世界で一番透明の純度が高いのは空気である。
 いわゆる、『限りなく透明に近い半透明』。
 空気。無。零。それらは限りなく透明な存在。


 ここで話を戻す。
 『透き通っていない透明人間』の存在についてだ。


 ――そこに存在している事はわかるが、影が薄い。
 そんな特徴を持つ人間は、総じて『空気』と呼ばれる。
 変わった趣味を持つ"オタク"や、元々暗めな"ガリ勉君"等がそれに当てはまる事が多い。

 また、俗に空気と呼ばれる人間はすべからく世間や流行に疎い。
 自らの世界に浸っている可能性が高いからだ。
 そしてそんな人間は必ずと言っていい程いじめられたり、除け者にされる。

 ただ周りに順応しないだけで、いじめられる。
 空気という存在は、そういう存在なのだ。

 ――ただ、『いじめられすらしない人間』を空気と呼ぶ場合もある。
 だがここでは、『いじめられるような、影の薄い人間』を空気と呼ぼう。



  
6: 留学生(樺太) :2007/04/23(月) 19:07:15.12 ID:uGaQhEucO
  
 そして本題。実在する透明人間についてだ。
 名をドクオといい、前述した通りVIP町に住んでいる。

 VIP高校に通う彼は、生まれつき透明だった。
 何色に染まる事も出来ず、ただただ透明でいて。
 もちろん、例外なく彼もいじめられていた。

 時には直接的に。
 そして時には――間接的に。



 『透明人間』。
 なんと意味の広い言葉なのだろうか。



 最後に、『空気と呼ばれる人間』を『透明人間』に置き換えてみよう。



 これでもうわかると思う。
 『透き通っていない透明人間』、とは。つまり――



  
8: 留学生(樺太) :2007/04/23(月) 19:08:54.08 ID:uGaQhEucO
  
 「人間の繋がりって、磁石に似てるよね?」

   「くっついて、離れない。絆が強ければ、強いほど」

     「だけどね。もし――その繋がりを断ち切られたら?」

       「断たれないまでも、逆さにされてしまったとしたら?」

         「君は、正気でいられる? 自分の色を、忘れずにいられる?」



 ――これは、一人の透明人間が紡ぐ物語。












 ('A`)ドクオは透明人間のようです



戻る次のページ