( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです

314: アイドル(東京都) :2007/04/12(木) 23:48:42.46 ID:bbp9NxIy0
  
「ごうんごうんごうん……」

海上に、機械の振動と一定の重低音が響き渡る。
港にはクレーン車、ダンプカー、トラックが勢ぞろいしており、子供ならドキがむねむねするような光景だ。
どの車も黄色で統一され、車体にはいびきをかくアザラシ似の生物の絵と、「ARAMAKI」のマークが描かれている。

世界有数の大企業、荒巻コーポレーション。
そのマルチでバイタリティ溢れる荒巻社長の手腕は、土木業界にも及んでいた。

今作業を行っているのは、有限実行会社「荒巻組」。
その名の通り、中小企業との提携ではなく、荒巻コーポレーション直属の会社である。

道路の舗装からお家のリフォームまで、手広い事業と、丁寧で迅速な作業が各界、一般層にて好評。
どこぞの携帯業界やプロ野球界に参戦を果たした企業とは大違いの活躍ぶりだ。

と言っても、今回の作業は頭から真っ二つにされて海に墜落した五体目の“ARASHI”、腐女子の引き上げである。
言ってしまえば、御家の作業。
特にこれといってメリットがあるわけでもなかった。

「先輩……ちょっと、起きてくださいよ先輩」
「んああ…? なんだよぉ〜、ふああ、仕事場じゃ……ふあ、監督って呼べっつってんだろぉ〜」

海上近くに立てられていたプレハブ小屋にて、二人の男の姿があった。
一人は寝ていたのを起こされた髭面の男、そしてもう一人は起こした若い青年。
髭面の男は起こされたことに不満がある面持ちだったが、青年はそれよりも険しい顔をしていた。

「も〜、何言ってんスか! 仕事中に寝るなって何度も言われてんでしょう?」
「だってさ〜、現場監督って暇なんだもん……」

そう言って、髭面の男はまた大きく欠伸をかいた。



316: アイドル(東京都) :2007/04/12(木) 23:50:40.20 ID:bbp9NxIy0
  
「暇だからって寝ないでくださいよ、またコーヒー淹れましょうか?」
「いや、いいよ……ん〜、なんか目が覚めちまったみたいだ」

髭面の男はごきごきと首を鳴らす。

「それじゃ監督、ちょっと来て欲しいんスけど」
「え? なに、なんかトラブルでもあったのか?」

髭面の男が少しシリアスな表情になる。
だが、それは責任がある立場からというより、「俺に迷惑かかるのいやだな〜」という不安から来たものだ。

「いや、トラブルってか……どっこ探しても見つからないんスよ」
「見つからない? 何が?」
「半分っス」
「は? 半分?」

状況が掴めずぽかんと呆ける髭面の男に対して、青年は自分の頭からへそのあたりまで、すーっと指で撫でた。

「だから、引き上げる体の半分っスよ」



320: アイドル(東京都) :2007/04/12(木) 23:51:25.96 ID:bbp9NxIy0
  


      エアーがクオリティを育てたようです

( ^ω^)ブーンが巨大ロボットに乗り込んだようです編
  
        第四話外伝「深海からの挑戦」



324: アイドル(東京都) :2007/04/12(木) 23:52:52.57 ID:bbp9NxIy0
  
あの、惨劇に終わったブーンの初デート(通称:アングリーブロンドヘアーオーガデイ)から数日。
ブーンとドクオはぼっこぼこにされながらも渾身の土下寝(全身を使っての謝罪)で、なんとかツンからは許しを貰っていた。

その後、二人はクーの方にも謝ったが、本人は「そうか」という一言だけ。
しかし、単に彼女が気にしていなかっただけなので、今はすっかり元の鞘に収まっている。

( ^ω^)「……」
('A`)「……」

そうして、ブーンとドクオのコンビは今日も今日とてドクオ宅にてゲーム対戦である。
激しい戦いを越えた二人も、“ARASHI”が来なければ普通の高校生なのだ。
初デート失敗というブーンの心の傷はなかなか癒えなかったものの、それで疎遠になるほど二人の仲は弱くない。

ちなみに、今やっているゲームはス○Vサードス○ライク。1P側のドクオがケ○、対する2P側のブーンが春○である。

(;^ω^)「あっ!」
('A`)「ヨワイネーキミタチ」

体力ゲージの半分ほど残して、ドクオが勝利を収める。
画面上ではケ○が嬉しそうにピースをしていた。

(;^ω^)「つ、次は負けないお」
('A`)「ホンダ」

もちろんゲームに関してはドクオに一日の長があるが、ブーンは決して下手なわけではない。
都内のゲーセンで負けることはありえないし、訓練のおかげで反射神経も良くなっている。
しかし、それでもブーンはドクオになかなか勝つことができなかった。



328: アイドル(東京都) :2007/04/12(木) 23:54:50.60 ID:bbp9NxIy0
  
( ^ω^)「おっ! おっおっおっ!」
('A`)「……」

やがて、連敗続きで相当気合が入ったのか、ついにブーンがドクオのことを追い詰める。
スコアは一対一、しかもドクオのケ○の体力は残り一ドット、削られるだけでも終わりという状況だ。

( ^ω^)「とどめだお!」
('A`)「……」

ブーンは勝利を確信し、超必殺技のコマンドを入力する。
しかし、その時ドクオの頬がニヤリと弛んだ。

「鳳翼○!! ぬるぽー!」
「ガッガッガッガッガッガッガッ、ガッガッガッガッガッガッガッ、ガッ」

(;゚ω゚)「フォオオオオオオ!?」
('A`)「マケルヨウソハナイ」

あろうことか、ブーンの出した超必殺技をドクオは全てブロッキング(ダメージ無しのガード)。
そして、そのまま垂直ジャンプ強Kから疾風迅○脚までコンボを繋げられ、あえなくドクオの逆転勝ちとなった。

(;^ω^)「も、もういいお……負けを認めるお……」
('A`)「オレノツヨサニ、オマエガナイタ」

ブーンは力なくコントローラーを床に置き、小さくため息を吐く。
その時点で、ドクオの286連勝であった。



333: アイドル(東京都) :2007/04/12(木) 23:57:25.76 ID:bbp9NxIy0
  
ブーンはゲームの電源を切り、テレビの画面を地上波へと戻す。
すると、ニュースが流れ込んできた。

( ^ω^)「……お? あ、これ荒巻さんとこのヤツだお」
('A`)「アア、ウミノナカニデキルヤツカ」

ニュースにて、「海中ステーション完成間近」のテロップが流れてくる。
続いて工事中の様子と、どのようなものになるのかという完成予想図、そして荒巻の会見の様子が映された。

海中での巨大ステーション建造。
この事業は、ブーンがダイヴィッパーに乗り込むよりずっと前、何年も前から続けられてきた事業であった。
当時から既に荒巻コーポレーションは確固とした地位を確立していたが、それは日本の中だけのこと。
世界から注目されるようになったのは、このプロジェクトを発表したことからである。

今までにも海中での工場建設などはいくつか例があったが、荒巻のそれは規模が段違いであった。
全長数キロにも及ぶ巨大施設の建造を日本の一企業が行うというのは、もちろん前代未聞。
これによって、世界中に「眠ってるように見えるけど起きてる獅子、ARAMAKI」の名が知れ渡った。

( ^ω^)「へー、もうすぐできるんだってお」
('A`)「フーン」

とんでもない事業ではあっても、直接関わりのない二人にとっては「へえ、そうなんですか」ぐらいのものである。
その時、テレビには現地に赴くリポーターの姿が映っていた。

(’e’)「現場の東海林です。何故、このようなことが起こってしまったんでしょうか。残念でなりません」

リポーターは何故か重い足取り、悲痛な表情でしばらく歩き、深刻な口調で現在の工事状況を話す。
どう見ても、殺人事件のそれであった。

(’e’)「それでは、早速目撃者の証言に移ろうと思います」



335: アイドル(東京都) :2007/04/12(木) 23:59:17.00 ID:bbp9NxIy0
  
(’e’)「あなたが、目撃者ですか?」
( ■□■)「へ? あ! アンタ見たことあるよ! リポーターさんだろ!」

リポーターが話しかけた相手は、何故か顔にモザイク処理を施され、プライバシーの関係で音声も変えられていた。
目撃者と言われたが、どうやらこのプロジェクトの関係者のようである。

(’e’)「何故、このような事件が起きたのだと思いますか?」
( □■□)「は? 造ることになった理由ってこと? それはまあ、ロマンだなやっぱ」
(’e’)「ロマン? 愉快犯ということでしょうか」
( ■□■)「え? よくわかんないけど、海って母性を象徴するだろ。で、母性っつったらおっぱい。
      つまり、海はおっぱいに通じるものがあるんだよ」

おかしいのはリポーターだけかと思いきや、どうやら相手の方もそれなりのようである。

( ^ω^)「……あれ? ドクオ、この人もしかして……」
('A`)「エ?」

リポートを受けている人物を、訝しげな表情のブーンが指差す。
それを聞いて、漫画を読んでいたドクオも慌ててテレビに向き直った。
  _
( □■□)「男だったらさ、やっぱでかいおっぱいに触れたいだろ。で、海がおっぱいに通ずるとなれば、とんでもない巨乳だよな。
      そんな巨乳だったら、触れないわけにはいかねえ。で、計画が始まったんだよ」
(’e’)「なるほど、犯人にはそのような動機が…」
( ■□■)「母性ってのを考えると、やっぱ男にとっての究極のおっぱいはカーチャンのおっぱいなのかもしれないなあ」
(’e’)「なるほど……ご協力、どうもありがとうございました」

そうして、全く噛み合わないリポートは幕を閉じる。ニュースの内容も、芸能関係のものへと変わっていった。

(;'A`)「……イマノ、ドウミテモ」
(;^ω^)「……長岡さんです。本当にありがとうございました」



339: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:01:04.14 ID:JYuvxwMW0
  
「こんな国はもう滅ぼせ! 今はただ、スクラップ&スクラップ! 改革なんていくらやったって無駄だ!!」

しばらく呆けた表情で二人がニュースを見ていると、部屋に携帯の着信音が鳴り出した。
ブーンが携帯を取り出して確認すると、そこには「ツン」と表示されていた。

( ^ω^)「はい、もしもし」

「あ、ブーン? 今すぐドクオ連れてこっちに来て欲しいんだけど」

(;^ω^)「! ついに六体目が現れたのかお!?」

「え、あー……とにかく来て。よろしく」

(;^ω^)「え、ツン? ちょ、コスモス! コスモース!」

いつも通り、一方的にツンの方から電話が切られる。
仕方なくブーンも携帯を耳から離し、ドクオに事情を説明した。

('A`)「ナンナンダロウナ?」
( ^ω^)「まあ行けばわかるお……あ、そうだお! 長岡さんにさっきのこと聞いてみるお!」

携帯を上着のポケットに入れ、ブーンはテレビの電源を消す。
ドクオも外出用の服に着替えると、部屋の電気を消した。

( ^ω^)「あれ、親に言わなくていいのかお?」
('A`)「モウマンタイ。カーチャン、キョウパートナンダヨ」
( ^ω^)「そうかお、じゃ……」

二人はそれぞれの腕にあるVIPライザーに向かって、「リターン」の言葉を口にした。



342: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:02:57.65 ID:JYuvxwMW0
  
( ^ω^)「俺、参上」
('A`)「モモタロス! カッテニデテコナイデヨ!」

二人がふざけあいながらオペレーティングルームのドアを通る。

しかし、ドアの向こうは非常に緊迫……とまではいかなくとも、若干の緊張に包まれていた。

ξ ゚听)ξ「あ、来たわね」

モニターを注視していたツンが、二人の方に振り返る。
二人はキモイ愛想笑いで応えるが、結果はやはりツンの眉をひそめた。

( ^ω^)「で、なんなんだお?」
ξ ゚听)ξ「そうね。実際に見てもらった方がいいわ。礼子さんお願い」
b゚ー゚)「はいはいー」

礼子の操作で、モニターに一枚の衛星写真が映る。
何やら海上の写真のようだが、白く細長い何かが写っている。
表示された倍率から、それが巨大な物体であることが計り知れたが、計算に弱い二人は正確な数値まではわからなかった。

('A`)「コレハ……イカ?」
ξ ゚听)ξ「そう、大王イカよ」

ツンの返事に、ブーンとドクオの二人は「おおっ」と歓声を上げる。
続いて、「そうはイカんざき」やら「| ゚Д゚| ノイカガナモノカ」などのつまらないダジャレが聞かれた。

ξ ゚听)ξ「あんた達……少しはおかしいと思わないの?」
( ^ω^)「え、どこが可笑しいんだお」
('A`)「デモコノシャレ、カーチャンハバクショウシテルゼ? カーチャンイガイワラワナイケド」
ξ ゚听)ξ「違う。大王イカがこんな海上で見られるわけないでしょ」



345: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:05:14.36 ID:JYuvxwMW0
  
ツンに言われるまで忘れていたが、流石にブーンとドクオも大王イカが深海生物であることは知っていた。
余計な説明をしなくて済んでほっとしたツンは、さっさと話を進める。

イカの写真が撮られたのは、日本近海。
礼子が趣味の衛星ハッキングをしていたところ、偶然見つけたものだった。

写真から推定されるに、イカの体長はおよそ30m。しかし、足の長さを入れれば恐らくその倍に達すると思われる。

初めは礼子が面白半分でツンに見せたものだったが、ツンにとってはそれこそ怪しむべき対象であった。
海上に現れたこともそうだが、ツンが気になったのはその規格外の大きさである。

一説によると、今までに発見された大王イカは一番大きなもので20mを超えたと言われている。
だが、今回発見された大王イカは優にその倍以上の大きさだ。
そのようなものが、どうして今になって突然確認されたのか。それが、ツンの抱いたもう一つの疑問だった。

ξ ゚听)ξ「それで気になって……最新のツールで拡大してみたものがこれよ」

ツンの指示によって、礼子がパネルを操作する。
やがて、モニター上には「google」のマークの後、イカの拡大写真が映し出された。

( ^ω^)「これは……頭の部分かお? イカ焼き何人分作れるかお」
('A`)「オイ、パイクワネェカ」

ツンの無言の圧力を感じ、二人はじっと拡大写真を見つめる。
そして、二人はそこにあるものが映っていることに気が付いた。

(;^ω^)「アッー! こ、これ……頭の部分にまた頭があるお……」
(;'A`)「ヒイイ、ド-マンセーマンドーマンセーマン、カラアゲモラオウオンミョウジ!」

おわかり頂けただろうか。写真のイカの頭から浮き上がるように存在する、もう一つの頭を。



348: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:07:14.27 ID:JYuvxwMW0
  
( ^ω^)「ううううううううううううううううう」
('A`)「プヨプヨスルナー!!」
ξ ゚听)ξ「変な歌なんか歌ってないで、よく見なさいよ」

言われて今一度写真に目を向けると、二人はその顔に何かしらの既視感を憶えていた。
しかも、それほど古い記憶ではない。

( ^ω^)「……あ! これ、この前倒した“ARASHI”だお!」
ξ ゚听)ξ「Exactly(そのとおりなんだからねっ!)」
('A`)「オーディエンス!」

写真に映っていたのは、先日ブーン達によって倒されたはずの“ARASHI”、腐女子であった。
次いで、モニターに映された腐女子のデータと合わせてみても、やはり同じものだと確認できる。
唯一の違いは、戦いの後遺症のせいで顔が右半分のみしかないことだった。

ちなみにドクオは空気イスをしながら「それじゃあみなさんを信じて……」などと言っていたが、無視されていた。

( ^ω^)「じゃあ、このイカは操られてるのかお?」
ξ ゚听)ξ「でしょうね。巨大化もその影響だと思うわ」
('A`)「B、軽部真一! アサニソノカオハキツイ! ファイナルアナウンサー!」

独自の路線を貫くドクオは最初からいないものとされ、ツンによる説明が続く。

今回は相手が相手なため、迎撃する場所は海中、もしくはその上空に限定される。
だが、後者のやり方ではどうしても確実性に欠けてしまう。
なので、今回は海中での戦いになると、ツンはブーンと、一応ドクオにも聞こえるように話した。

( ^ω^)「海の中……あれ、でもダイヴィッパーって海の中でも戦えるのかお?」
('A`)「オレ、バタフライシカデキネーゾ」
ξ ゚ー゚)ξ「んっふっふ……その質問を待ってたわ!」



351: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:09:33.09 ID:JYuvxwMW0
  
得意そうな表情の後、ツンは礼子の元に近寄り、耳打ちする。
礼子がくつくつと笑う中、モニターに格納庫の様子が映し出された。

(;^ω^)「おっ!? なんか違うお?」
(;'A`)「オ、オレノフォックスニ……ナンカツイトル」

格納庫にはダイヴィッパーとアクセルフォックスの姿があったが、その容姿に変化が見られていた。
ダイヴィッパーの手足と胸元には、上から被せるようにジェットノズルが取り付けられ、より重厚感が増している。
それらは鎧のようにダイヴィッパーを包んでおり、マリンブルーのカラーがまるで海中であるような印象を醸し出していた。

そして、フォックスの方はというと、横に開いた翼は畳まれ、ダイヴィッパーよりも大型のジェットノズルが取り付けられている。
だが、取り付けられたと言っても、見た目にはただノズルが乗っかっているようにしか見えない。
また、作業に支障が出たのか、G.Tキャノンが使用不可になっていた。

ξ ゚听)ξ「見よ! この海中装備! そしてこの二つが合体すればっ……」

ツンが目で合図し、礼子が「はいはい」と言いながらパネルを操作する。
すると、モニター上にて二機の合体シュミレーションが表示された。

ξ ゚听)ξ「深海の王者! マリン・ダイヴィッパーの完成よっ!!」

ツンが片手でガッツポーズを作り、その場の全員が「おおー」と言いながら拍手を送る。

だが、実際腐女子を倒した時から現在までの間に造ったとなれば、相当優れた出来と言える。
元々ダイヴィッパーとフォックスは精密機械が多いせいで機密性は高かったが、流石に海中での活動には限界があった。
それを、この短期間でなんとか使用できるまでにしたのである。

これも一重にツンの才能、もしくはロボットに対する愛情の成果なのかもしれない。
だが、この装備を開発するに当たって、実はツンよりも大きく貢献した人物が存在していた。



356: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:11:18.11 ID:JYuvxwMW0
  
( ^ω^)「長岡さんが?」
ξ ゚听)ξ「そう。設計はほとんど長岡さんがやってくれたの」

この海中装備を発案したのはもちろんツンだが、その開発には長岡の存在が実に大きかった。
深海度に伴う圧力、海流の規模など、開発にはツンの不向きな分野が多く、それをフォローしたのが長岡なのである。

('A`)「ナンデナガオカサンガ?」
ξ ゚听)ξ「あたしも知らなかったんだけど、長岡さんって昔……」

「海洋学を専攻していたんだよ」

声と共に、オペレーティングルームのドアが開く。皆が一斉に視線を向けると、そこにはショボンの姿があった。

ξ ゚听)ξ「ショボンさん、今帰ってきたんですか?」
(´・ω・`)「ああ、たった今ね」

ショボンはふうと一息つくと、ブーン達の元に近付く。そうして、何処か昔話でもするかのように話し出した。

(´・ω・`)「何の因果か、長岡とは大学が一緒でね。あいつが海洋学、僕が宇宙工学を専攻していたんだ――」



359: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:13:00.32 ID:JYuvxwMW0
  
――ショボンと長岡。

二人は偶然にも、同じ美府大学の出身であった。
ブーンとドクオも二人が昔からの知り合いであろうことは感じていたが、大学時代からの仲というのは初耳である。

大学に入って間もない頃、いつも落ち着いていて天才肌であるショボンは、周りからは少し浮いた存在となっていた。
彼自身も人付き合いは苦手で、話す相手と言えば教授ぐらいなものであった。

そんなある日、大学の裏庭でショボンが参考書を読んでいると、唐突に彼へ声をかける人物の姿があった。

その人物こそ、若かりし頃のジョルジュ長岡である。



361: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:14:11.11 ID:JYuvxwMW0
  
  _  
( ゚∀゚)「俺の好きなおっぱい知らない?」

それが、長岡のショボンにかける第一声であった。

当然ながら、ショボンは長岡のことを腐れ脳みそな人物なのだと思い、その発言を無視する。
しかし、彼はすぐに再び面食らうことになる。
何故なら、いきなり長岡がショボンの隣に腰掛けてきたからだ。
  _  
( ゚∀゚)「よっこらせっくす」
(´・ω・`)「……」

ショボンは関わらない方がよいと、参考書で己の目線を隠しながら少し横に移動する。
すると、長岡もそれに追随するように動いてきた。
それで余計怪しんだショボンは、その後もなんとか離れようとしたが、相変わらず長岡はぴったりと横に居座ってくる。

やがて、ショボンは仕方ないと諦め、とにかく隣を気にしないように参考書に集中した。
  _  
( ゚∀゚)「……ある日、俺の友人のトムがこう言ったんだ」
(´・ω・`)「……」
( ゚∀゚)「……」
(´・ω・`)「……」
( ゚∀゚)「……」
(;´・ω・`)「言えよぉ!」

そう叫んだ後、ショボンは心の中で「しまった」と後悔した。

慌てて参考書で顔を隠すが、時既に遅し。
ちらりと横を見ると、そこには満面の笑みを浮かべた長岡の姿があった。



365: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:16:10.26 ID:JYuvxwMW0
  
  _  
( ゚∀゚)「なーんだなんだ! 結構普通の奴じゃんか!」

豪快に笑いながら、長岡はショボンの肩をばしばしと叩く。
ショボンはまんまと相手の術中にはまってしまったことを悔いながら、諦観するように参考書を閉じた。

(;´・ω・`)「なんなんだ君は……僕に何か用でも?」
( ゚∀゚)「いや、別に用はないよ。ただ、天才ってのはどんな奴なのかと思ってさあ」

「天才」という言葉を聞いて、ショボンの眉がぴくりと動く。
小さい頃からなんでもできたショボンにとって、その言葉は常に自分と共にあったものだった。

何かを成し遂げる度に増えていく、親からの、周囲からの期待。
そして、ことあるごとに使われるショボンを表す言葉……天才。
ショボンにとって、それは名誉な言葉と共に、自分が孤独だと思わせる言葉でもあった。

自分が成功できたのは、才能だけでなく、それ以上の努力があったから。
彼自身がそう思っていても、周りから聞かされるのは「そもそもの出来が違う」、「あなたのようにはなれない」というものばかり。
努力を重ねれば重ねるほど、自分が他の人から離れていくことをショボンは感じていた。

(´・ω・`)「……なんだ、ただの面白半分かい」

ショボンは長岡から「普通の奴」と言われた時、本当は無意識に喜びを感じていたのだ。
だが、その後の「天才」という言葉や態度から、すっかりその思いも消え失せてしまい、今は失望にも似た感情を憶えていた。
  _  
( ゚∀゚)「……あのさあ、ところでお前、ストークスの法則って知ってる?」
(´・ω・`)「え……いや、知らないけど」

ショボンがそう答えると、突然長岡は大声で笑い出した。



369: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:18:07.45 ID:JYuvxwMW0
  
  _  
( ゚∀゚)「だっせー! 知らないのかよ! じゃあベルヌーイの定理は?」
(´・ω・`)「う……名前は聞いたことあるけど」

ショボンが答えると、やはり長岡はさも可笑しそうに笑い出す。
そもそも長岡が言っているのは、全て流体力学についてのことである。
宇宙工学を専攻しているショボンが知らないのも無理はない。

だが、それでも長岡は鬼の首を取ったかのように笑っていた。

(;´・ω・`)「な、なんなんだよ一体……何がそんなにおかしいんだ」
( ゚∀゚)「だってさー、天才とか言われてる奴が知らないことを、俺は知ってるんだぜ? これは面白いだろ!」

ショボンは長岡の答えを聞いても、何がそこまで面白いのか理解できなかった。
だが、ショボンは同時に、どこか不可思議で新鮮な感覚に陥っていた。
長岡のこの態度は、ショボンが接してきた同年代の人物のどれとも違っていたからだ。
  _  
( ゚∀゚)「俺はジョルジュ長岡、お前は?」
(;´・ω・`)「ショ、ショボン=バーボン……」
( ゚∀゚)「ま、知ってたけどな!」

そうして、ショボンと長岡の二人はお互いの存在を認識した。

専攻している学問は違えど、ショボンには同じ立場で話せる人物ができたことは実に大きかった。
くだらない世間話で暇を潰す……そんな他愛のないことも、ショボンにとっては新鮮な出来事なのである。
ただ、周りには長岡がショボンにつっかかっているようにしか見えないのがほとんどだったが……。

そうして、なんだかんだで二人の仲は途切れることなく、現在にまで至るのである。



373: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:20:06.33 ID:JYuvxwMW0
  
( ^ω^)「へえー」
('A`)「……」
ξ ゚听)ξ「人に歴史あり、って感じねー」

ショボンの昔話の後、三人はそれぞれに感嘆の態度を表す。
しかし、その中でドクオの反応だけが少し違っていた。

('A`)(……チョットニテルナ、オレタチト)

ドクオは、初めてブーンと会った時のことを思い出していた。
その境遇は違えど、ブーンとの出会いがドクオにとって実に大きなことだったのは同じだ。
ドクオの中で、ブーンと長岡、そして自分とショボンの姿がおぼろげに重なる。
そのことに、ドクオは少しだけむずがゆいような感覚を憶えていた。

( ^ω^)「お? そういえばその長岡さんは?」
(´・ω・`)「あいつなら、今さっきステーションに送ったとこだよ」
('A`)「ア! ジャアヤッパリ、アレノカンケイシャナンスネ」
(´・ω・`)「あれ、よく知ってるね。まあ、関係者どころか総責任者だけど」

ショボンの言葉に、ブーンとドクオは「おおっ」と目を見開いて驚く。
続けて二人はニュースのことを聞いてみたが、ショボンは出かけていたので見ていないと話した。

(;^ω^)「長岡さんってもしかして……ゴイスーな人なのかお?」
('A`)「ギロッポンデシースー?」
(´・ω・`)「まあ、あいつも一応整備技術主任だからね」

長岡が整備技術主任という地位なのも初耳だったし、二人は大いに驚かされた。
なにせ、二人にとっての長岡のイメージはただの「おっぱい好きの変な人」だったからだ。
その驚きっぷりに、ショボンが経緯について聞きたいかと話すと、ぶんぶんと二人は首を縦に振る。
そうして、わざとらしくこほんと息を吐いた後、ショボンは厳かに話し出した。



377: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:22:06.10 ID:JYuvxwMW0
  
長岡こそ、このプロジェクトの発案者であった。

同時に、海中開発は彼の長年の夢でもあった。

しかし、夢だけでは成り立たない「会社」という現実。

整備技術主任という地位にありつつも、その熱意が認められるまでは難しかった。

しかし、それでも男は諦めなかった。

男の戦いが始まった……。

( ^ω^)「ででんでんででんでん! 風の中の昴〜♪」
('A`)「プロジェクトエーックス……! ……エーックス……エーックス……」
(´・ω・`)「とりあえず理解はしてくれたのかな」

ショボンの説明が終わると、二人は難しい顔で「う〜ん」と唸る。
しかし、ショボンの説明の仕方がスマートだっただけに、二人にもちゃんと効果が現れていた。

( ^ω^)(おっぱいだけじゃなかったんだお……)
('A`)(オッパイダケジャナカッタンダナ……)

二人にとっての長岡の認識は、「おっぱい好きの変な人」から「おっぱい好きのすごい人」に変わっていた。

ξ ゚听)ξ「あー、そろそろ“ARASHI”の方に話を戻したいんだけど」
(´・ω・`)「おっと、すまない。腐女子はまだ日本近海をうろうろしているのかい?」

ショボンの質問に、ツンはこくりと頷く。
次いで、モニター上に今までの行動パターンが映された。
見ると、腐女子は大きく移動するようなことはなく、日本の周りをぐるぐると回っている。



382: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:24:07.08 ID:JYuvxwMW0
  
ξ ゚听)ξ「要するに、さっさと行って、さっさと片付けて欲しいわけよ」
( ^ω^)「アイヨー」
('A`)「GIG!」

ツンはあっけらかんという風に言い放つ。一度倒した相手なだけに、二人も少しふざけたような返事だった。
そこへ、当然のようにショボンが釘を刺す。
二人はそれで気を引き締めると、駆け足でオペレーティングルームから格納庫の方へ向かった。

(´・ω・`)「全くあの二人は……ん?」

そこで、ショボンはモニター上に映っていた腐女子の現在までの行動パターンが目に入る。
その途端、その表情が段々と険しくなっていった。

(;´・ω・`)「……っ! こ、この距離は!?」
ξ;゚听)ξ「え……ど、どうしたんですかショボンさん……」
(;´・ω・`)「日本との距離がこんなに縮まっている…! 僕が留守にしていた、この短時間でか…!?」

ショボンは表情に明らかな焦りを浮かべながら、傍にあったデスクを拳で叩く。
いつも冷静なショボンのこの行動に、ツンはびくりと体を震わせた。

ξ;゚听)ξ「で、でもそんなに近付いては……」
b;゚ー゚)「ちょ、ちょっと待ってください」

礼子が焦りつつも素早い操作でデータを算出すると、確かにある程度腐女子は日本との距離を縮めていた。
だが、それでもすぐに日本へ到達するというわけではない。少なくとも、まだ数日はかかるはずである。

(;´・ω・`)「そうじゃない! くそっ、このままじゃ……!」

しかし、新たに弾き出されたデータはそれだけではなかった。
腐女子が通ると思われるルート上――そこに、海中ステーションの姿があった。



384: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:26:05.95 ID:JYuvxwMW0
  
( ^ω^)「VIP START!」
('A`)「VIP START!」

二人の掛け声で、それぞれの機体に命が吹き込まれる。
コクピットに明かりが点り、次いで外の光景を映すモニターが全天周囲に広がった。

海中装備のせいでモニターの表示に若干の違いはあったが、イメージの伝達係数に支障はない。
シートに座り、イメージコンバージョナーに手を通せば、途端に頭の中を風が通り抜けたような感覚。
試しにブーンはダイヴィッパーの腕を動かしてみたが、やはり何の違和感もなかった。

今回の場所は海中なので、出撃するハッチも別の場所のものになる。
フォックスは格納庫内のレール上を進み、ブーンはダイヴィッパーを専用のリフトへと歩かせる。
重量が増えているせいか、なんとなくブーンはその歩みに重みのようなものを感じていた。

( ^ω^)「ドクオ」
('A`)「ン、ナンダブーン」

リフトによって移動する間、ブーンが無線によってドクオに話しかける。

( ^ω^)「実は今気付いたんだけど、海の中ってどんな風に操縦すればいいのかお」
('A`)「エ?」

そう言って、二人は同時に沈黙する。
勢い勇んで乗り込んだのまではいいものの、途端に不安感が二人を襲った。
機体を乗せたリフトは、そんな気持ちなどお構いなしに進んでいく。

('A`)「ナアニ、オレニマカセテオケヨ!」
( ^ω^)「お! 心強い発言だお! 何か自信でもあるのかお?」
('A`)「アア。ナンタッテオレハ……“エコー・ザ・ドルフィン”ヲノーミスクリアシタオトコダカラナ!」
(;^ω^)「ますます不安になったお」



388: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:28:04.37 ID:JYuvxwMW0
  
b;゚ー゚)「ブーンくん! ドクオくん! ちょっと聞いてもらえる!?」
( ^ω^)「お?」
('A`)「ナンスカ?」

スピーカーから、慌てた様子の礼子の声が流れ込む。丁度その時、リフトは出撃ハッチ前にて停止した。

(;^ω^)「え……ほ、本当なんですかお!?」
b;゚ー゚)「ええ、だからとにかく急いで欲しいの」

礼子から説明を聞き、二人の間に大きな緊迫感が漂う。

だが、腐女子の今までの進行速度から、海中ステーションに辿り着くのは約四時間後。
対して、ブーン達が海中ステーションに向かうとすれば一時間もかからない。
既に海中ステーションには避難勧告が発信され、何もなければ余裕をもって撃破できるはずであった。

(;^ω^)「っ!」

天井のシャッターが閉まる警告音に、ブーンはびくりと体を震わせる。
ダクトより海水が流れ込み、赤いランプの発光がその場を埋め尽くした。

十分に海水が補充されると、ようやく出撃用のハッチが上下に開く。
二人の目の前に、どこまでも広がる深い深い蒼が広がった。

( ^ω^)「ドクオ、出撃後すぐに合体だお……ドクオ?」
('A`)「……」
(;^ω^)「ドクオ? ドクオ聞いてるのかお!」
(;'A`)「! アア、ワルイ。ワカッテル、スグニガッタイダナ……」

ダイヴィッパーとフォックス、それぞれのスラスターから大きく波が噴射される。
そうして、二つの機体は押し出されるようにして海中へと発進した。



390: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:30:05.79 ID:JYuvxwMW0
  
(´・ω・`)(何事もなければいいんだが……)

オペレーティングルームでは、モニター上に二機の合体する模様が表示されていた。
新しい装備と名前を与えられたダイヴィッパーは、そのままひたすらに海中を進んでいく。
最初は多少ふらつきをしたものの、障害物が多いわけでもないので、程なくして操縦に慣れたようだった。

b;゚д゚)「はい……はい……ええっ!?」

慌てふためく礼子に、ショボンとツンが一斉に目を向ける。

(´・ω・`)「どうしたんだい礼子さん?」
b;゚д゚)「そ、それが……ステーションの避難は進んでるようなんですけど……長岡さんが」

礼子が言い終わる前に、ショボンがくっと眉根を寄せる。
そして、すぐさまヘッドセットを自分の頭に装着した。

(b;´・ω・`)「おい長岡! 聞いてるのか長岡!」
(b ゚∀゚)「ん、なんだショボンか。言った通り、俺は避難する気はねーぞ」

無線から聞こえてきた長岡の言葉に、ショボンはぎり、と奥歯を噛み締める。
しかし、その答えは予想していたのか、ショボンは自らを抑えるように静かな語調で話しはじめた。

(b;´・ω・`)「……いいかい長岡。時間的に余裕はあるが、何が起こるかわからない。今すぐそこから避難するんだ」
(b ゚∀゚)「お前日本語通じねーのかよ? だから、俺は残るって言ってんの」
(b;´・ω・`)「何故だい。避難は進んでいるんだろう? だったら何故君だけ残る必要がある」
(b ゚∀゚)「だってよ、もし何か起こった時に誰もいなくちゃフォローできないだろ」

その発言は、明らかに自分よりもステーションを優先させるものだった。
ショボンはそれを聞いて、さらに眉根を深くする。
その緊張は、傍にいるツンや礼子にもひしひしと伝わっていた。



392: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:31:49.52 ID:JYuvxwMW0
  
(b;´・ω・`)「長岡……君だって人命が最優先されるべきなのはわかっているだろう?」
(b ゚∀゚)「大丈夫、俺以外は全員逃げるように言ったよ」

冷静なショボンも、いい加減その感情を抑えることができなかった。強く拳を握り、段々と声が大きくなっていく。

(b;´・ω・`)「だったら君だって逃げるべきだろう! 率直に言おう、君は死にたいのか!?」
(b ゚∀゚)「死にたくなんかねえよ。だけどな、死んでも守らなくちゃいけねえものってのはあんだよ」

ショボンに対して、長岡の声は終始落ち着いたものだった。二人の平時からすれば、まるで真逆の態度である。
  _  
(b ゚∀゚)「ステーションは、海中開発はやっと掴んだ俺の夢だ。こんなことで手放すわけにはいかねえ」
(b;´・ω・`)「気持ちはわかる! しかし…!」
(b ゚∀゚)「それに、これで開発が中止されたら……また何年も海が謎のままで放置されちまう」



397: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:33:19.49 ID:JYuvxwMW0
  
その言葉こそ、長岡の本心が現れたものだった。

長岡の夢とは、海を知ること。
地球の七割を占めながら、未だ海には未知の部分が数知れない。
人間は「外」を知るよりもまず、「内」を知るべき。長岡はそう考えたのだ。

今回の開発計画も、実際はまだこの夢への第一歩に過ぎない。
世間の目が宇宙にばかり向けられる中で、必死に固持し続けたその信念が、今の長岡を動かしていた。
  _
(b ゚∀゚)「……誰かの夢じゃない。これは俺の夢だ。自分の夢ぐらい、自分で守れねーとな」
(b;´・ω・`)「っ! 長岡! 長岡!」

そう言って、通信は一方的に切られた。
ショボンはその後もマイクに向かって呼び続けるが、やがて諦め、その場にうなだれるようにして立ち尽くす。

(b;´・ω・`)「くっ…! その夢だって……君が生きていなかったら意味がないだろう……!」

ショボンはヘッドセットを外すと、すぐさま傍にいたツンに駆け寄った。



401: プロガー(東京都) [一分三十秒後ぐらいに一番ループ] :2007/04/13(金) 00:35:54.29 ID:JYuvxwMW0
  
( ^ω^)「……」
('A`)「……」

海中を進む中、ブーンとドクオは終始無言だった。
だが、その思うことは同じ。
一刻も早く、腐女子を撃退すること。そして、ステーションへの被害を出させないこと。
奇しくも、その思いは機体へと伝わるイメージにも影響し、その初航行は順調だった。

('A`)「トラエタゾ!」

ドクオが見るモニター上で、赤い点の点滅が早くなる。
表示された目標との距離は、およそ六百メートル。
進行する角度の関係から、垂直に交わるような形になる。

( ^ω^)「……見えた! あれだお!」

モニター上のダイヴィッパーと腐女子を示す点が狭まる。
その時既に、二つの距離は肉眼で確認できる程にまで迫っていた。

( ^ω^)「大真剣でぶった切ってやるお!」
('A`)「イヤ! ハナレテコウゲキダ!」

二人の意見が拮抗しながら、機体は尚も腐女子に近付いていく。
融合した大王イカは巨大で、それこそ肉眼で感じる大きさはダイヴィッパー以上のものである。

ブーンは機体に大真剣を構えさせながら、ドクオは火器管制に意識を向けながら、その巨体を見据える。
すると、大王イカのちょっとした小屋ぐらいはありそうな目玉がぎょろりと動いた。
その視界にダイヴィッパーを捉え、腐女子は凄まじい速度でその場から――

――逃げ出した。



404: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:37:56.90 ID:JYuvxwMW0
  
(;゚ω゚)「ええっ!?」
(;゚A゚)「オ、オォイ!?」

驚嘆する二人の目の前で、腐女子がありえない速さで逃げていく。
その巨体からは想像できない程のスピードで、その場に残った推力の反動がダイヴィッパーにまで届く。
水中を突き進むその姿は、さながら巨大なミサイルのようであった。

(;'A`)「ニ、ニゲタ?」
(;^ω^)「ツ、ツン、どういうことだお?」
ξb ゚听)ξ「……もしかしたら、潜在的な恐怖心かもしれない」

それを聞いて、二人の頭の上にクエスチョンマークが浮かび上がる。
どうやら、腐女子はダイヴィッパーへの恐怖心を抱いているのではないか、というのがツンの見解らしい。
胴体を二つに斬られたことや、今までの行動から察するに、腐女子に理性が残っているとは判断しにくい。
しかし、潜在的に植えつけられた敗北からの恐怖心が、ダイヴィッパーの姿で触発されたのではないか、ということだそうだ。

いざ戦おうとしていた二人にとっては、実に気の抜ける行動だった。
だが、その直後、二人の顔はみるみる内に青ざめていく。

(;゚ω゚)「って、まずいお! このままじゃ!」
(;゚A゚)「ステーションガアブネエ!!」

腐女子の進む先、そこには建設中のステーションが存在している。
しかも、あの速度なら到着時間も大幅に短縮されるはずだ。

二人はすぐさま機体に腐女子の後を追わせるようイメージを作り出す。
スラスターから爆発するような推力が噴出し、世界最大級の追いかけっこが始まった。

(;^ω^)「ツン! ツン! 腐女子がどれくらいでステーションに着くか教えてくれお!」
ξb;゚听)ξ「待って! 今計算してるわ……」



410: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:40:17.92 ID:JYuvxwMW0
  
オペレーティングルームにて、礼子の指が推定速度からのデータを算出する。
そうして、はじき出された腐女子のステーション到達までの時間は、約二十分後。
その事実を伝えられたブーンとドクオに、戦慄という冷や汗が溢れ出る。

(;'A`)「ソ、ソンナニスグナノカヨ……!?」
ξb;゚听)ξ「全く速度が衰える気配がない……とにかく急いでちょうだい!」

ダイヴィッパーは海中を凄まじい速度で進むが、それでも追いつくには足りなかった。
ブーンとドクオは二人分のイメージでもって、スラスターにさらなる熱を与える。
二つの巨大な急流が、その距離を縮めようとしていた。

( ^ω^)「おっ! 今だおドクオ!」
('A`)「アンカーハッシャ!!」

機体の背部から二本のワイヤー付き鉤爪が発射される。
飛ばされた鉤爪は大王イカの体に深々と刺さり、即座に“返し”が飛び出てその動きを捕らえた。

(#`ω´)「いいぃくおおおぉぉ!!」
(#`A')「ドォォッコイショオオォォォ!!」

ダイヴィッパーの両手が伸びたワイヤーを掴む。
そのまま機体はスラスターを逆方向へと噴出させ、腐女子の進行を阻止せんと試みる。

(#`ω´)「ふんぬぬぬぬぬ……!」
(#`A')「ギギギ」

しかし、二人の腰が浮き上がる程のイメージでも、その進みを完全に止めることはできなかった。
それどころか、じりじりと機体は腐女子に引きずられていく。
腐女子の本能からくる恐怖心と、二人の是が非でも阻止するというイメージ。
その結果は、わずかに腐女子の方に軍配が上がっていた。



412: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:42:07.40 ID:JYuvxwMW0
  
(;`ω´)「ふおおお……、おっ!?」
(;`A')「グウウウ……、ッ!?」

やがて、二人は一番見たくなかったものを視界に捉える。
アンカーの先、腐女子よりも先の場所にそびえる建造物。

守らなければならない場所――海中ステーションの姿を、二人はついに目の当たりにした。

(;`ω´)「う、う……うわああああああっ!!」
(;`A')「トマレヨオオオオオッ!!」

その姿を見てか、増幅した二人のイメージがダイヴィッパーに力を与える。
機体はワイヤーを掴んだまま、スラスターの噴射を再び爆発させる。
その進行方向は、下。
ダイヴィッパーは凄まじい勢いで海中を潜っていった。

( `ω´)「衝撃の!!」
(`A')「ビダァァァン!!!!」

その膂力でもって、ダイヴィッパーは腐女子の体を海底の地面へと叩きつける。
巻き上がる海底の粉塵が、二つの巨体を覆っていった。

やがて、ついに諦めたのか、腐女子の逃げようとする動きが止まる。
二本の足を自身の背後へと回し、乱暴にアンカーを外すと、腐女子はいざダイヴィッパーの方へと居直った。
そうして、巨体を持った人ならざる二つの視線が交錯する。

( ^ω^)「ドクオ! ここで奴を食い止めるお!」



416: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:44:05.24 ID:JYuvxwMW0
  
腐女子の十本の足の内、二本が威嚇するかのように持ち上がる。
二人がそれを確認した瞬間、海中とは思えない程の速度で突きが繰り出された。

( ^ω^)「大真剣! とりゃああっ!!」

海中にてその動きは鈍るものの、大真剣の切れ味は変わらない。
伸びた足を斬り落とさんと、ダイヴィッパーは横凪ぎに剣を振るう。
目の前に伸びてきていた足の一本は、飴細工のように半分からその先を切断された。

( ^ω^)「もう一丁!」

ブーンは返す刀でもう一本の足を狙う。
しかし、足の動きはそれよりも速く、逆に剣を持っている手を絡め取られた。

(;^ω^)「ぐっ、このっ……!」
(;'A`)「! オ、オイブーン! アレミロ!」

ドクオの指し示す先に、ブーンはちらりと視線を向ける。
すると、そこには驚くべき光景があった。
先ほど斬り落としたはずの足の一本が、もう既に再生を始めていたのだ。

(;^ω^)「ツン! ツン! なんか生えてるお!?」
ξb;゚听)ξ「お、落ち着いて! きっとこれも寄生の影響よ!」

腐女子の寄生によって起こった突然変異は巨大化だけに留まらなかった。
大王イカの極端な巨大化……それはつまり、異常な速度での成長能力。
その能力が、同時に再生能力すら与えていたのだ。

再生した一本が、再びダイヴィッパーに向かって突き出される。
伸びた足は機体の首にくるりと巻きつき、そのまま引き千切らん勢いで締め上げた。



418: プロガー(東京都) [二分後にストップ] :2007/04/13(金) 00:45:35.25 ID:JYuvxwMW0
  
(;^ω^)「ま、まずいお!」
('A`)「マカセロ! ワームトーピドー!!」

機体の背部、フォックスに追加された装備部分から複数の魚雷が発射される。
魚雷は真っ直ぐに腐女子の本体へと飛んでいき、炸裂音と共に連鎖の爆発を巻き起こす。

爆発の威力で本体が怯み、同時にダイヴィッパーを拘束する足の力も緩む。
その隙にブーンは大真剣でもって機体を脱出させ、ついでに二本の足を斬り落とした。

( ^ω^)「どんなもんじゃーい!」

ブーンが勇み、斬られた足が海底へと沈んでいく。
本体と離れたせいで能力を失ったのか、そのままあっという間に崩れていった。

「――!!!!」

(;゚ω゚)「のわあああああ!?」
(;゚A゚)「ナナナナ、ナンダア!?」

突然、二人を急な頭痛が襲う。
見ると、大王イカに寄生した腐女子の顔面が大きく口を開けていた。

ξb;゚听)ξ「! 超音波だわ! 外部音声を遮断して!!」

ツンの指示でブーンがそれらしいスイッチを切ると、途端に二人の頭痛が治まる。
しかし、放たれた超音波の衝撃は凄まじく、ダイヴィッパーが自然とその場に膝をつく。
見ると、周囲にあった岩や珊瑚も大きくその形を崩していた。

その凄まじい威力に二人は慄くが、結果はそれだけに収まらなかった。
衝撃波は水中を渡り、さらなる被害を及ぼしていたのだ。



423: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:48:00.64 ID:JYuvxwMW0
  
  _  
(;゚∀゚)「おっわああああ!! な、なんだあ!?」

海中ステーション全体がその衝撃に大きく震える。
管制室にて戦いの様子を見守っていた長岡は、バランスを失ってその場に尻餅をついた。
  _  
(;゚∀゚)「あのイカがなんかやったのか……?」

揺れがおさまると、長岡は近くにあったデスクに手をかけて立ち上がる。
モニターには、腐女子と肩膝をつくダイヴィッパーの姿が映っていた。
  _  
(;゚∀゚)「おいおい、何してんだよ……しょうがねえなぁ」

長岡はヘッドセットを取り出し装着すると、無線を専用の周波数に合わせる。
モニター上に「OK」のサインが出たのを確認し、すうっと息を吸い込んだ。
  _  
(b#゚∀゚)「おらあっ!! 何してんだっ!! さっさと立て!!」
(;゚ω゚)「ぎゃぼー!?」
(;゚A゚)「ドンタッチミー!?」

長岡の耳に、二人の驚く声が聞こえてくる。
さっきまで超音波でやられていたところに、今度は怒声を浴びせられたのだ、驚くのも無理はない。
だが、そんなことはお構いなしに長岡は叫び続けた。
  _  
(b ゚∀゚)「ほらっ! 追撃来てるぞ!」
(;^ω^)「あっ、は、はい!」

モニター上に、ダイヴィッパーが追撃の足を斬り落とす姿が映る。
それを見て、長岡は小さくガッツポーズを作った。



428: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:50:06.59 ID:JYuvxwMW0
  
  _  
(b ゚∀゚)「それでいい! 油断すんなよ!」
(;^ω^)「はい!」
('A`)「ナガオカサン! ソッチハブジデスカ!?」
(b ゚∀゚)「ああ、こっちは……」

そこで、長岡はちらりとモニターを垣間見る。
  _  
(b;゚∀゚)(……嘘だろ)

その瞬間、彼の全身にぶわっと冷や汗が浮かび上がった。
  _  
(b;゚∀゚)(BとIが……外壁損傷だとっ……!?)

長岡は、完全に次の句を失ってしまう。
この海中ステーションは、AからJまでの合計十個のブロックで形成されている。
そして、長岡の見るモニターにはステーション内の各ブロック状況が映されていた。

通常ならば、正常を表す意味のグリーンでブロックは表示される。
しかし、まるでその存在を誇張するかのように、その中でBとIの二つだけが異常を示すレッドで表示されていた。

(;'A`)「ナガオカサン? ナガオカサン、ドウカシタンデスカ!?」
(b;゚∀゚)「えっ……あ、いや! こっちは無事だ! 気にせず戦え!」

なるべく感情を出さないように、いつもの調子で長岡は話した。
  _  
(b ゚∀゚)「いいか! とにかく相手を決して見くびるなよ! そうすりゃ必ず勝てる!」

長岡はそれだけ忠告すると、無線のスイッチを切る。
そして、一度だけ小さく息を吐くと、すぐさま管制システムと向かい合った。



432: プロガー(東京都) [二番ループ] :2007/04/13(金) 00:53:03.65 ID:JYuvxwMW0
  
('A`)「ダイジョウブカナ……」

コクピットで、ドクオが心配そうな声を上げる。
長岡は一方的に通信を切ってしまったため、二人には少しだけ不安が残る形となってしまった。

( ^ω^)「大丈夫だお! とにかくアイツを倒すお! それで全てまるっとどこまでも解決だお!」

ブーンは自分の不安な気持ちを抑えつつ、沈んだドクオを元気付ける。
ドクオもその気持ちをすぐに察し、力強く「おう!」と答えた。

('A`)「ソウダ! シンブソウッテヤツ、タメシテミヨウゼ!」
( ^ω^)「お! グッデストアイデアだお!」

ブーンは出撃前、ツンから一つのデータチップを渡されていた。
中に入っているデータは、ダイヴィッパーの追加装備についてのものである。
今回の開発によってダイヴィッパーが得たのは、海での行動補正だけではない。
「戦闘は火力!」が信条のツンによって、追加装備には様々な武装が施されていたのだ。

ブーンがコクピットの外部入力スロットにチップを挿入すると、モニター上に数々のデータが表示された。

('A`)「ヨシ! セッカクダカラ、オレハコノブソウヲエラブゼ」
( ^ω^)「把握したお! トロイボム!!」

ブーンが叫ぶと、ダイヴィッパーの肩部から円盤状の物体が飛び出した。
やがて円盤は腐女子の胴体に貼り付き、赤く点滅を始める。

( ^ω^)「ドクオ、これはどんな武器なんだお?」
('A`)「エート、コレハ……ヨウスルニ、ジゲンバクダンラシイナ」
( ^ω^)「おっ! で、いつ爆発するんだお?」
('A`)「ミッカゴ」



435: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:54:57.47 ID:JYuvxwMW0
  
(;^ω^)「ちょwwwおせえwwwwww次だお次!」
('A`)「ジャア、ツギハコノ“パラライズニードル”ッテヤツデ!」
( ^ω^)「おっちゃんゴメン!」

ダイヴィッパーの手首から小型の針のようなものが発射される。
これもまた腐女子の体に命中し、二人はその様子をwktkしながら見守った。

('A`)「アレ、ナントモネエナ」
( ^ω^)「なんでだお……相手の首筋に当てることで必ず気絶させるって書いてあるお……」
('A`)「クビ?」

そもそも、イカに首はなかった。

(;^ω^)「使えNEEEEEEEEEE」
('A`)「コレカンガエタノ、ナガオカサンダナ」
(;^ω^)「ちゃんとしたのはないのかお!?」

ブーンはデータを適当に読み飛ばす。
すると、「最大威力」や「とっておき」と書いてある項を見つけた。

('A`)「ナニナニ、ファイアフォックス? ドンナブキナンダ?」
( ^ω^)「えーっと、炎を纏ったフォックスを敵に体当たりさせるみたいだお」
('A`)「オオ! スゴソウナワザジャマイカ!」
( ^ω^)「欠点としては、一回使ったらもう二度と使えないみたいだお」

その項には、他にも「最終兵器」やら「イッパツエッグ」などとも書かれていた。

('A`)「タダノトッコウジャネーカ!」
(;^ω^)「もうこうなったらやるしか……!」
('A`)「オネガイヤメテ、ヤメテオネガイ」



437: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 00:57:01.38 ID:JYuvxwMW0
  
( ^ω^)「じゃあこれだお! ワロストマホォォォォク!!」

ブーンが叫ぶと、ダイヴィッパーの背部から二本の手斧が飛び出す。
一般的な斧とは違い、それは刃の部分が「w」を横にしたものになっていた。

ブーンは大真剣を機体の背部に戻し、代わりに斧の柄を掴ませる。
振りかぶるようにして投げられた斧は、回転しつつ腐女子の足を片っ端から切り落としていった。

( ^ω^)「おっ! これはまともだお!」
(;'A`)「! イヤ、ダメダ……」

腐女子の足が、切り落とされた順からどんどんと再生していく。
投げられた斧は機体の手に戻ってきたが、残念ながらこの武器も役に立つとは言えなかった。

(;'A`)「クソ……スグニモトニモドッチマウ」
(;^ω^)「くっ…! こうなったら胴体をぶった切ってやるお!」

ダイヴィッパーは斧でもって、今度は直接攻撃を試みる。
しかし、その腕が振り上げられた途端、またもや凄まじい衝撃が機体を襲った。

「――!!!!」

(;^ω^)「うあっ! ま、またかお!」

ダイヴィッパーは斧を盾に使うが、超音波の衝撃で機体はじりじりと後退していった。
視覚的な効果はほぼ無いに等しいものの、実際は凄まじい威力である。
事実、防ぐのに使った斧の刃にはひびが入り、使い物にならなくなっていた。

(;'A`)「チカヅクコトモデキネエノカヨ!?」
(;^ω^)「あの超音波と再生能力をなんとかしないと……」



441: プロガー(東京都) [二分後にストップ] :2007/04/13(金) 00:59:06.20 ID:JYuvxwMW0
  
ブーンは再びデータの方に目を通す。
すると、掌から鋼鉄条の網を飛ばす武装と、胸部から水流を吐き出す武装を見つけた。
しかし、その武装が具体的な解決に繋がるとは考えにくい。
二人はこのまんじりともしない状況に、ますます焦りを強くしていった。

(;^ω^)「ツン! なんとかならないのかお!」
ξb ゚听)ξ「……そうだわ! 新武装のヤマダサーチを使って!」
('A`)「コレカ! ヤマダサーチ!!」

ツンの指示を受け、ダイヴィッパーの腕から小型の機械が複数発射される。
しかし、撃ち出された機械は全て腐女子の足によって防がれた。

(;^ω^)「アッー! やられたお!」
ξb ゚听)ξ「いいえ! あれでいいのよ!」

機械は叩き落されることなく、そのまま防いだ足へと貼り付く。
すると、機械の本体から削岩機のようなものが飛び出した。
機械はその部分でもって貼り付いた足に穴を空けると、そこから体内へと潜り込んでいった。

('A`)「イッタイドウイウブキナンダ?」
ξb ゚ー゚)ξ「これで腐女子の身体情報を解析するのよ!」

この新武装「ヤマダサーチ」には武器としての威力はないが、埋め込んだ相手の身体情報を解析する機能がある。
集められたデータは全て地上のオペレーティングルームへと発信され、それによって相手の弱点を探るのだ。

ξb ゚听)ξ「……よし! あいつの弱点がわかっ…!」

威勢の良いツンの声が聞こえた瞬間、それは突然起こった。
ダイヴィッパーの巨体をも揺らす、大きな地響き。
コクピットで驚く二人が視線を動かすと、そこには倒壊するステーションの姿があった。



448: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 01:01:05.85 ID:JYuvxwMW0
  
  _  
(b;゚∀゚)「うおっ!」

ステーション全体が揺れる衝撃に、長岡は姿勢を保てず転倒する。
慌てて立ち上がると、長岡はすぐさまモニターでステーションの状況を確認した。
  _  
(b;゚∀゚)「ふ〜、間に合ってよかったぜ……」

そうして、長岡はモニターにブロックの倒壊する様子を目撃する。
しかし、それによってさして慌てる様子はない。
何故なら、倒壊したブロックは先ほど外壁損傷が見られた、Iの一つだけだからだ。

ブロック倒壊の理由は、言わずもがな腐女子の発した超音波攻撃である。
だが、一回目に放たれた時点で、長岡は損傷の見られたブロックをシャッターで隔絶していた。
これは元々全体の被害を抑えるためのシステムだったが、建設が完成間近であったからこそできたことだと言える。

長岡は安堵の声を漏らすも、その心境はやはり切迫したものだった。
  _  
(b ゚∀゚)「よし、あとはBブロックを閉鎖すれば……」

長岡は再び管制システムを操作し、続けてBブロックのシャッターを作動させようと試みる。
  _  
(b ゚∀゚)「……あれ?」

長岡の指が何度も同じ動作を繰り返す。
しかし、モニターに表示されるのは「ERROR」という無情なメッセージのみ。
そのメッセージが表示される度、長岡の動作と、そして動悸は早くなっていく。
  _  
(b;゚∀゚)「なっ…!? 片側のシャッターが……閉まらない……!?」



451: プロガー(東京都) [一分後に三番→四番(一度ずつ)] :2007/04/13(金) 01:03:09.90 ID:JYuvxwMW0
  
Bブロックを隔絶するためには、その両側にある二つのシャッターを作動させなければならない。
しかし、長岡の操作によって作動したのは片側のみ。
その後も何度と長岡はシステムに作動を要求するが、やはりシャッターが動く様子はなかった。
  _  
(b;゚∀゚)「システムに……まだ不十分な箇所があったのか……くそっ!」

長岡は忌々しげにデスクに自らの拳を叩きつけた。
悔しさに顔を歪めつつ、モニターで戦いの様子を確かめる。
しかし、そこには二度の超音波攻撃によって、劣勢を強いるダイヴィッパーの姿が映っていた。
  _  
(b;゚∀゚)「ぐっ……俺の夢、ここで終わっちまうのか……?」

長岡は俯き、その焦りが少しずつ絶望という感情に変わっていく。
同時に、その思いはまるで走馬灯のように長岡にこれまで自分が歩んできた道を思い出させる。



454: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 01:05:01.17 ID:JYuvxwMW0
  
――幼い頃に初めて、「おっぱい」というものを知り、長岡はそれに人生を捧げる価値を見出した。

もちろん、それは人からは偏愛と呼ばれるようなものだ。それでも、彼にとっては誇りであり、信念だった。
くじけそうになっても、何度となく自分で自分を奮い起こし、その思いを一層強くしてきた。

そして、彼がその果てに辿り着いたのは、「海」というとてつもなく大きな場所。
彼はこの大きな「海」という存在に、どこか「おっぱい」と同じものを感じていた。
その感情はいつしか憧れへと変わり、彼は「おっぱい」と「海」のどちらにも、変わらぬ愛情を捧げ続けて来たのだ……。
  _  
(b; ∀ )(……Bブロック……B……バストのB、か……)

そんな彼が、ようやく掴んだ夢の第一歩、海中ステーションの建設。
それが、今になってこんな形で終わってしまう。ただの死にぞこないだった奴に、無残にも壊されてしまう。
  _  
(b  ∀ )(……冗談じゃねえ……こんなところで……こんなところで終われるもんかよ……!!)

やがて、長岡の中では絶望と違う、何かが熱く燃え滾っていった。



455: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 01:06:27.03 ID:JYuvxwMW0
  
  _  
(b ゚∀゚)「……忘れてたぜ……おっぱいは優しく触れるだけじゃダメだ。時には強く揉みしだく!!」

長岡はモニターでステーションの全体図を確認し、すぐさま管制室を飛び出す。
  _  
(b ゚∀゚)(アイツらを信用しねえなんて……バカだったぜ)

長岡は全速力でステーション内をひた走る。その瞳、胸の内に、もはや絶望の色はない。
代わりにあったのは、ブーンとドクオを一時でも信じられなかった自分への怒り。

そして、絶対に自分の夢に手出しはさせないという、決意という感情だった。

ξb;゚听)ξ「長岡さん!? 長岡さん!? 返事をしてください長岡さん!!」
(b ゚∀゚)「お?」

そこで、長岡はツンの声がヘッドセットから聞こえてきていることに気が付いた。
  _  
(b ゚∀゚)「どうした嬢ちゃん、俺は無事だぜ」
ξb;゚听)ξ「ああよかった……ステーションが崩れたから心配で……」

ツンの大きく吐いた溜め息がマイク越しに長岡へと伝わる。
ブーン達からはステーションへの連絡方法がわからなかったため、代わりにツンが確認を取っていた。

ξb;゚听)ξ「それで長岡さん……走ってるんですか? どうして?」
(b ゚∀゚)「ああ、実はブロックを閉鎖するシャッターが一つ降りなくてよ。今から手動で降ろしに行くんだ」

それを聞いた途端、ツンは絶句する。
長岡が向かうのは、外壁が損傷したもう一つの場所、Bブロック。

そこで、長岡は手動でシャッターを降ろそうという魂胆だった。



461: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 01:08:20.13 ID:JYuvxwMW0
  
ξb;゚听)ξ「なっ!? 何を言ってるんですか!?」
(b ゚∀゚)「いやだから、実際に行って俺がシャッターを閉めるんだよ」

長岡の吐く息が少し落ち着く。
専用の作業エレベーターに乗り込んだからだった。

ξb;゚听)ξ「馬鹿なこと言ってないで、早く避難してください!!」
(b ゚∀゚)「大丈夫だって、パッと行ってダッと閉めればすぐ終わるよ」

ツンが聞く長岡の口調は、彼女が知る彼の普段のものと何ら変わらなかった。
しかし、それはツンに悲壮なイメージを思い起こさせる。
何より、その行動自体がツンには信じられないことが大きかった。

ξb;゚听)ξ「無理ですよ! 一人だけじゃ無理です!」
(b ゚∀゚)「なあに、気合と根性でなんとかなるって」
ξb;゚听)ξ「戦ってる最中なんですよ!? 危険過ぎます! やめてください!!」
(b ゚∀゚)「……あのなー、嬢ちゃん」

長岡は終始落ち着いた口調だった。
まるで、今の状況を楽しんでいるような、そんな風にも錯覚してしまうぐらいにツンには聞こえていた。
  _  
(b ゚∀゚)「無理だとか、危険だとか……そういうのができた時が一番かっこいいんだよ!」
ξb;゚听)ξ「は…っ?」
(b ゚∀゚)「ま、嬢ちゃんにはわかんねえか」

そう言って、長岡はからからと笑った。何故だか、ツンはそれ以上喋ることができなかった。
  _  
(b ゚∀゚)「俺の夢は、こんなとこで終わるようなもんじゃねえ……それを証明するのさ」

そうして、エレベーターはBブロックへと到着した。



465: プロガー(東京都) [一分後に五番ループ] :2007/04/13(金) 01:10:16.64 ID:JYuvxwMW0
  
(;^ω^)「……長岡さんは、そう言ったのかお」
ξb;゚听)ξ「ええ。何を言っても聞いてくれなくて……ごめんなさい」
('A`)「……」

ツンはブーンとドクオに、長岡の動向を伝えた。
二人はそれに驚くが、まずは長岡が無事であることに安堵する。

(;^ω^)「無事でよかったお……」
ξb;゚听)ξ「よくないわよ! 長岡さん、死のうとしてるのと同じじゃない!」
('A`)「……マア、ダイジョウブダロ。ナガオカサンナラ」

ドクオの言った言葉に、ツンはまたしても言葉を失う。
何より、長岡を尊敬するドクオがそんなことを言うなんてと、ツンは思った。

ξb;゚听)ξ「な、何言ってんのよ!? 長岡さんが心配じゃないの!?」
('A`)「ソリャ、モチロンシンパイダヨ。デモ……ナア、ブーン?」
( ^ω^)「おっ! 長岡さんなら大丈夫だお!」

その言葉には、二人が長岡に寄せる信頼の大きさが現れていた。
ただ、ツンだけはその言動に思わず言葉を失う。彼女は、あくまでも純粋に長岡が心配だったからだ。

しかし、もちろん二人とて長岡が心配でないわけがない。
本当なら、すぐにでも戦いを放棄して助けに行きたいところだった。

だが、そうすること、その気持ちを言葉にすることは、長岡への裏切りだと二人は考えた。
長岡の行動は、自分達を信じたからこそのこと。
ならば、それに応えなければならない。自分達の役目を果たさなければならない。二人はそう思った。

その証拠に、二人は話している間、決して腐女子への視線を外そうとはしなかった。
もう決して、長岡の邪魔をさせてなるものか、と。



469: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 01:12:11.80 ID:JYuvxwMW0
  
  _  
(b;゚∀゚)「こいつはひでえな……」

エレベーターの到着した先、外壁損傷したBブロックにて、長岡は思わず辟易する。
ひびの入った隔壁、漏れ出している海水、まさしく一触即発の光景が広がっていた。

長岡はシャッターが降りるはずのブロックの境目に走り、状況を確認する。
すると、シャッターは七割ほど閉まっており、なんとも不自然な状態で止まっていた。

長岡はすぐそばの非常用と書かれた収納ラックから、手動用のクランクを引きずり出す。
そして、その取っ手を掴むと、渾身の力でもって回し始めた。
  _  
(b#゚∀゚)「ふんぬらごわーっ!!」

果たして火事場の馬鹿力というやつなのか、掴んだクランクが少しずつ回っていく。
しかし、それも長岡の全体重をかけてやっとのことである。
シャッターも重低音と共に降りていくが、全て閉まるには結構な時間がかかりそうだった。
  _  
(b#゚∀゚)「んぐぐぐ……!」

長岡はクランクを回しつつ、ふいに足元に冷たい感触を憶える。
ちらりと視線を動かすと、漏れた海水が長岡のいるブロックにまで溢れてきていた。
ばしっ、という音と共に、壁のひびもどんどん増えていく。
長岡はさらに力を込めるが、やはり一人でやるには相当な無理があった。
  _  
(b#゚∀゚)「くそっ……俺は諦めねえぞ! 死んでも閉めてやるからな!!」

絶望的な光景に彩が増えていく中、長岡は誰に聞かせるでもなく一人気を吐き続ける。

しかし、その背後に人影が近付いていたことを、彼はまだ気付いていなかった。



472: プロガー(東京都) [一分後にストップ] :2007/04/13(金) 01:14:10.20 ID:JYuvxwMW0
  
( ^ω^)「ツン! さっき言ってたこと、あいつの弱点を教えてくれお!」
ξb;゚−゚)ξ「……わかったわ」

ツンは二人の思いを完全に把握することはできなかった。
だが、ヘッドセットから聞こえてくるブーンの声。
その声に、ツンは全てを任せてもいいような、そんな力強さを感じていた。

ξb゚听)ξ「腐女子の体は大王イカの胴体と、腐女子としての中枢部分……コアで形成されているわ」
( ^ω^)「コア?」
ξb゚听)ξ「あの腐女子の顔の部分がそうよ。驚異的な再生能力も、そのコアの力よ」
('A`)「ジャア、ソレヲブッツブセバイインダナ!」

ドクオの威勢の後、ダイヴィッパーの体を青白いオーラのようなものが包んでいく。
超音波によって受けたダメージは回復し、機体そのものの出力も格段に上昇する。
深い蒼が支配する海中でも、その輝きははっきりと見られていた。



476: プロガー(東京都) [一分後に六番(一度)→七番(ル)] :2007/04/13(金) 01:16:18.58 ID:JYuvxwMW0
  
ξb゚听)ξ「待って! コアを攻撃するにしても、あの超音波をなんとかしないと……」

ツンの忠告によって、攻撃しようとしたダイヴィッパーの動きが止まる。
機体が纏うオーラにはバリアのような役目もあるが、それでもあの超音波を防げるかは難しい。
ヤマダサーチによる解析でも、超音波を防ぐ手立てまでは見つからなかった。

('A`)「シンブソウハ?」
ξb゚听)ξ「生憎、超音波を防ぐなんてものは……」
( ^ω^)「……それなら……」

ふいに、ブーンが呟く。
静かな声にドクオとツンが耳を澄ますと、続けて自信満々の声が発せられた。

( ^ω^)「……足りない分は、クオリティで補えばいいお!!」



477: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 01:17:34.79 ID:JYuvxwMW0
  
ξb;゚听)ξ「ど、どういうこと? ブーン?」

ツンの怪訝そうな声がコクピットに届けられる。
ブーンは力強く叫んだものの、もしかしたら空元気かとまでに彼女は思っていた。

しかし、そんな憂いの全てを吹き飛ばすかのように、ブーンは叫ぶ。
今度のそれは、イメージを伴って。

( ^ω^)「いいから見てるお! トロイボム!!」
(;'A`)「エッ? オ、オイ、ソレハ……」

具体的なことも話されないまま、ブーンは使用する武装の名を叫ぶ。
しかし、それを聞いてドクオは愕然とする。
それもそのはず、その武装――トロイボムは、先ほど全く役に立たなかったものだからだ。



481: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 01:18:39.61 ID:JYuvxwMW0
  
( `ω´)「いぃぃくぅぅぅおおおおおっ!!」
('A`)「!?」
ξb;゚听)ξ「えっ!?」

ブーンの後押しするような気合と共に、ダイヴィッパーの肩部から円盤状の時限爆弾が飛び出す。
すると、それを見たドクオとツンは驚愕の表情を作った。
何故なら、放たれたトロイボムは形状こそ変わらぬものの、その身に青白いオーラを纏っていたからだ。

ξb;゚听)ξ「あれは……ダイヴィッパーと同じ…っ!?」

青白いオーラを纏ったトロイボムは不規則な動きで近付きつつ、腐女子の胴体に貼り付く。
そうして、先ほどと同じく赤い点滅が始まったが、その時とは点滅する速度が明らかに違っていた。

やがて、点滅の間隔がゼロになった瞬間、腐女子に貼り付いたトロイボムが眩い光を放つ。
巻き起こった爆発は前に使った分にまで及び、連続して凄まじい爆炎が腐女子を包み込んだ。



484: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 01:20:06.76 ID:JYuvxwMW0
  
( ^ω^)「やったお! 成功だおっ!」
('A`)「マジカ……」
ξb;゚听)ξ「まさか……ブーンのイメージが武装の性質を変化させたって言うの…っ!?」

誘爆に誘爆を重ねた大爆発で、腐女子の体にも大きなダメージが現れる。
驚異的な再生能力も流石に追いつけなかったようで、その動きに明らかな緩慢が見られた。

しかし、残念ながら肝心のコアの部分は未だ健在で、じきに再生されるのは確実である。
ブーンは追撃しようとするが、そうはさせまいと腐女子の口が大きく開かれた。

( ^ω^)「! 超音波だお!」
(`A')「コンドハオレガヤッテヤル! シールドウェブ!!」

ドクオのイメージの後、ダイヴィッパーの掌からオーラを纏った網が発射される。
網は放射状に広がり、すっぽりと腐女子の体を包み込む。
その瞬間、超音波が放たれたが、衝撃波は全てオーラ条の網によって封じ込まれた。



487: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 01:21:17.50 ID:JYuvxwMW0
  
( ^ω^)「今だお! バイナリィスクリュー!!」

ダイヴィッパーの胸に追加されたジェットノズルから、二つの水流が吐き出される。
増幅された水流は渦を巻き、巨大な腐女子の体を巻き込みながら上昇していく。
その姿は、さながら二匹の龍がその顎でもって腐女子を飲み込もうとするかのようであった。

('A`)「イクゼ! ブーン!」
( ^ω^)「夢を守るその人を……今! 僕たちが守るんだお!!」

腐女子の体は一定の場所まで上昇すると、そこで二つのそれぞれ独立した渦によって固定される。
それを見上げながら、ダイヴィッパーは背部から大真剣を取り出した。

機体は大真剣を掲げるようにして両手で持ち、ブーンは腐女子に向かってその狙いを定める。
ダイヴィッパーは背部のスラスターを噴射しながら、その場で高速回転をし始めた。

('A`)「ウオオオオオオオオッ!!」

ドクオのイメージによって起こった機体の回転は、どんどんとその速度を増していく。
同時に足元からもスラスターが噴射され、ダイヴィッパーは地面から撃ち出されるようにして飛び上がる。

そうして、まさしく弾丸と化した機体は、動けない腐女子へと一直線に突き進んだ。



492: プロガー(東京都) [ループだけ止めてくれ] :2007/04/13(金) 01:23:18.60 ID:JYuvxwMW0
  
その狙いは、もちろん腐女子のコア。
時間をかけてはいられない。再生の暇も、反撃の隙も与えない。

この一撃により、その生命力の全てを奪う。

そのための、驚異的なまでの攻撃力。
それを生み出すには、どんなイメージが必要か。

ブーンが作り出したイメージは、荒れ狂う竜巻と撃ち出される銃弾。
全てを巻き込む回転と、全てを貫く爆発力。

二つの力が合わさった、極端なまでの威力を伴った一撃。
それを現実のものとするため、ブーンの叫びがコクピット内に轟いた。

( ^ω^)「ダイヴィッパー! スピン! クラァァァッシュ!!!!」

咆哮、そして撃砕。

旋風と化した機体は渦を、オーラの網をまるで紙のように突き破る。
そして、突き出された大真剣の切っ先が腐女子の顔面――コアに触れた途端、その巨大な体が爆ぜた。

まるで削岩機でも扱うかのように、腐女子の体がみるみるうちに削られていく。
そうして、暴風の如き一撃はコアを貫くどころか、一瞬にしてその上半身を丸ごと吹き飛ばした。

やがて、通り抜けた向こうで機体の回転が収まると、渦も相殺されて残った下半身の部分が海底へと沈んでいく。
その特異な能力の反動が来たのか、残った部分は全て底の砂へと消えていった。



496: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 01:25:40.35 ID:JYuvxwMW0
  
( ^ω^)「やったお!!」
ξ(゚ヮ゚*dξ「すごいわ! 二人とも!」
('A`)「ソンナコトヨリ! ナガオカサンハ!?」

勝利の余韻を味わう間もなく、ドクオに急かされてツンはステーションへと連絡を繋ぐ。

ξb;゚听)ξ「長岡さん! 長岡さん無事ですか! 長岡さ……」

ツンが声を張り上げる中、その場に再び大きな地響きが起きる。
まさかと思い、三人が一斉にステーションへと視線を向けると、そこには信じられない光景が広がっていた。

見えたのは、そのまさか――再びステーションが倒壊を始めていたのだ。



499: プロガー(東京都) [三十秒後に八番ループ] :2007/04/13(金) 01:27:05.02 ID:JYuvxwMW0
  
(;゚ω゚)「そ、そんな……!」
(;゚A゚)「ウソダロ……ウソダロォッ!?」
ξb;゚听)ξ「長岡さん! お願いだから返事してよっ! 長岡さん!!」

三人の悲痛な叫びをかき消すかの如く、無情にもステーションのブロックは倒壊し続ける。
ダイヴィッパーも慌てて近くへと向かうが、果たしてどうすることもできなかった。

( ;ω;)「嘘だお……これじゃ……僕達は何のために戦ったんだお……」
ξb;凵G)ξ「嫌よ! お願い応えて! 応えてよっ!!」
(;A;)「ウウ……ウワアアアアッ!!」

「……やあ、バーボンハウスへようこそ」

( ;ω;)「……へ?」

突然聞こえてきた声に、三人は同時にぽかんと口を開ける。
それは、ダイヴィッパーとオペレーティングルームの両方に向けられたものだった。

「なに泣いてんだ! あんなんで俺が死ぬわけねえだろ!」

(;'A`)「ナ、ナガオカサン!?」
(;^ω^)「それに、さっきのは……ショボンさんかお!?」
ξb;゚听)ξ「! ちょ、ちょっと二人とも! レーダーを!」

言われて、ブーンとドクオの二人はすぐさまレーダーに目を向ける。
すると、そこにはダイヴィッパーの他に、新たに小さな点が示されていた。

ブーンは急ぎ、それを肉眼で確認できる位置にまで機体を移動させる。
すると、そこには一艘の深海作業艇の姿があった。



504: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 01:28:51.86 ID:JYuvxwMW0
  
  _  
(b ゚∀゚)「二人ともオツカレチャーン」
('∀`)「ブジダッタンデスネ! ナガオカサン!」

その声は、作業艇からのものであった。
聞こえてきた長岡のねぎらいの言葉に、ドクオは歓喜の表情を作る。

(b´・ω・`)「全く……世話が焼けるよ」
( ^ω^)「やっぱりショボンさん! でも、どうして……」
(b´・ω・`)「まあ、ちょっとした人命救助さ」

ショボンはそう言って、疲れを取り戻すかのようにふう、と息を吐く。
毎度の呆れからくるようなものではなく、本当に疲れているようだった。

ξb;゚听)ξ「あっ! じゃあ、あの時……」

ツンがあることを思い出して、声を上げる。それは、オペレーティングルームでの出来事。
長岡から一方的に通信を切られた後、気付けばショボンはあっという間にその姿を消していた。
ただ一言、ツンに「後は頼む」という言葉を残して。

(b´・ω・`)「ああ、悪かったね。全て任せてしまって」
ξ(゚ヮ゚*dξ「そうか……長岡さんを助けに行ったんですね」
(b ゚∀゚)「いやー、いきなりショボンが現れた時は心臓が飛び出て、そのままおっぱいになるかと思ったぜ」

倒壊しつつあったBブロックにて、長岡に近付く人影……その正体は、ショボンだった。
ショボンは管制室に辿り着き、状況を把握すると、すぐさまBブロックに向かった。
そうして、二人が協力したおかげで、なんとかシャッターを降ろすことに成功したのである。
  _  
(b ゚∀゚)「二人合わせて、2000万パワーズだぜ!」
(b´・ω・`)「何言ってるんだ、僕は逃げた方がいいと言ったのに……」



507: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 01:30:32.06 ID:JYuvxwMW0
  
  _  
(b ゚∀゚)「上手くいったんだからいいだろー? これは貸しにしといてやるよ!」
(b´・ω・`)「ふう、君は一度でも返したことがあるのかい」

聞こえてくる二人の会話に、ブーン達は思わず顔が緩んだ。
いつもと変わらぬその調子に、二人が生きているということを実感させられていた。
そして、それは戦いに勝利したのだということにも。

( ^ω^)「とにかく良かったですお! やったーやったーヤッターマンですお!」
('A`)「ハア、ナンカハラヘッタヨ。サッサトカエロウゼ」

ドクオの提案に、全員が無条件で賛成する。
一言だけ挨拶を済ました後、各々ヘッドセットを外す。
その場で方向転換し、ダイヴィッパーは荒巻コーポレーションへと戻っていった。
  _  
( ゚∀゚)「……しかし、よく俺がBブロックにいるってわかったな」
(´・ω・`)「君の考えなんてすぐわかるよ、単純だからね」

皮肉のようにも聞こえるその言葉に、長岡は小さく笑う。
それにつられてか、ショボンの頬もわずかに緩んでいた。
  _  
( ゚∀゚)「ショボン」
(´・ω・`)「ん?」
( ゚∀゚)「ありがとよ」
(´・ω・`)「ああ」

目線を合わせるわけでもなく、なんでもない風に、二人はそう言葉を交わす。
そして、ダイヴィッパーの後を追うようにして、作業艇は帰路へと着いていった。



512: プロガー(東京都) :2007/04/13(金) 01:32:02.87 ID:JYuvxwMW0
  
( ^ω^)「ドクオ、この後どうするのかお?」
('A`)「ンー、ナンカクッテカラカエルワ」

戦いが終わり、ブーンとドクオは格納庫近くのレストルームで休息を取っていた。
ベンチに腰掛け、その手にはマックスコーヒーが持たれている。

( ^ω^)「……案外、あっさりしてるもんなんだお」
('A`)「ソウダナ」

格納庫では、ダイヴィッパーに付けられた海中装備の取り外し作業が進められていた。
しかし、ただ付いているものを外すだけなので、それほど難しい作業ではない。
それを指揮しているのは長岡で、あんな危険な目にあっても元気なままである。

( ^ω^)「おっ、どこで食べるのかお?」
('A`)「ココノショクドウニスルワ。ヤスイシ」
( ^ω^)「そうかお」

別に困るわけではないが、そこで二人の会話が止まる。
なんとなくブーンが格納庫の方に目を向けると、既に機体は元の状態に戻っていた。
今は続けてのメンテナンス作業が行われている。

その後もしばし二人は沈黙していたが、ブーンはコーヒーを飲み干すと、ゆっくりベンチから立ち上がった。

( ^ω^)「じゃあ、先に帰るお」
('A`)「オウ」

軽く挨拶を済まし、ブーンは地上へのエレベーターへと向かう。
乗り込み、閉まるドアの隙間からブーンが見たドクオの姿は、まるで老人のようだった。
戦いの最中は平気なように見えても、やはりドクオも精神的に疲れていたのだ。



515: プロガー(東京都) [丁度いいところでストッピドゥ] :2007/04/13(金) 01:33:11.98 ID:JYuvxwMW0
  
( ^ω^)「……」

ブーンは壁に寄りかかりながら、ぼーっと反対側の壁を見つめる。
その脳裏に戦いのことを思い出すこともなく、ただただ無心だった。

( ^ω^)「……おっ」

そんな静寂を破るかのように、ブーンの腹から間の抜けた音が聞こえてくる。
緊張が途切れたせいか、今になってブーンも空腹を意識し始めていた。

( ^ω^)(……僕もここで食べていくかお)

ブーンが階数表示を見ると、もうすぐ地上に着こうとしていた。
このエレベーターはノンストップなので、途中で下りに変えることはできない。
なので、ならばブーンはドクオと一緒に行こうと、VIPライザーを口元に近付けた。

( ^ω^)「リターン!」

そう口にした瞬間、ブーンの体は光の粒になってその場からかき消えた。




第四話外伝 続



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