( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです

104:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:17:16.79 ID:8EfekdEx0
  
第二話 「ファースト・コンタクト」


「フヒヒヒヒwwwこんな所にガキが寝て居やがるぜwww
 このナリからすると、そうとう金を持ってそうだぜwww
 おっ? この腕輪は高そうだなwwwこりゃイイ値で売れるぜwww」

人々の欲望が渦巻く歓楽街の一角で、ぐったりと横たわる少年が居た。
体の至る部分には青痣が浮かび、その意識は失われている。

そして、その少年の所持品を盗もうと、一人の男が彼に近づいていた。
このような輩はこの街にはごまんと存在しており、決して珍しくない。
そんな見慣れている光景であるせいか、周りの者達も盗人を止めようとはしなかった。

「頂いていくかwww って、ん? なんだこれ? ひっついて離れねえ」

「おい……そこの馬鹿」

盗人が少年の腕時計を引き離そうと苦戦しているその時だった。
不意に一人の男が、盗人の肩を掴み、声を掛けてきたのだ。

「んああ? てめえ何者だ?ぶっ殺さr――」

盗人が不機嫌そうに振り返り、背後の男に凄もうとした瞬間、彼の体は鮮やかに宙へと舞いあがった。

「何だ、口の割に大したことねえな」

男は、痙攣しながら地面に横たわる盗人を横目に、自身の左手をまじまじと見つめながら呟いた。
その左手はネオンの輝きを吸収し、複雑に絡み合う原色を放っていた。



108:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:18:54.02 ID:8EfekdEx0
  
傷だらけの酷い状態を目の当たりにした男は、その表情をしかめた。
男の太い眉は、表情の動きに合わせるかのようにゆっくりと動く。

「おい、しっかりしろ!! 生きてるか!?」

男は乱暴に少年の頬を叩く。
しかし、少年は小さくううっ、と呻き声を上げるものの意識が戻る様子は無い。

「まあ、放っておくわけにはいかねえよな……って、重いな。何喰って育ったんだコイツ?」

反応が無いことを悟った男は、そのまま強引に少年を担ぎ上げる。
男はやれやれといった表情で溜息をつくと、ゆっくりと立ち上がった。

「仕方ねえ。アイツの店に連れて行くか」

少年を連れて行く当てを見つけたのか、男はすぐに足を前に進める。

「フッ……何やってるんだ? 『正義の味方』はとっくに廃業したってのによ……」

男はふと立ち止まり、小さく嘲った。
未だに捨てきれない自身の甘さに苦笑したのだ。

「全く……変なのを拾っちまったぜ……」

男はもう一度溜息をつくと、再び歩き出し、歓楽街の喧騒の中に溶け込んでいった。



112:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:20:09.89 ID:8EfekdEx0
  
廃墟と化した街の一角に、その店はひっそりと存在していた。
お世辞にもきちんとした建物と呼べるものではなく、廃材を無理矢理組み合わせたような粗末な造りである。
そして、店前の看板には、小さく『バーボンハウス』と手書きの文字が記されていた。

('、`*川「バーボン……ハウス?」

彼女はその看板をぼんやりと見つめていた。

('、`*川「ここになら、水と食料に……薬があるかねえ」

彼女は、ビコーズと名乗る少年との会話の後、当ても無く荒廃した街を歩いていた。
建物から眺めるのに比べて、実際に歩いて見る街並みの凄惨さは、ひどく現実味を帯びているように感じられた。

さらに、彼女が目を覆いたくなるものが街には存在した。
それは重症を負っているにも関わらず、路上に放置されている人々の姿だった。

彼らを見かけるや否や、彼女はすぐに彼等に手を差し伸べようとする。
傷を負って居る者を介抱したり、治療したりと、彼女は自身の心が赴くままに行動した。

しかし、彼女に出来る事と言えば、布切れを使って傷口を縛る位の気休めに過ぎない程度であった。
そこで彼女は足が棒になるほどの時間を掛けて、薬や水や食料を求めて廃墟を彷徨い歩き、この場所に辿り付いたのだ。

('、`*川「とりあえず入ってみようかしら……」

彼女は、おずおずと建物の扉の前に立つ。
その扉は木製の質素な造りで、少しの振動で崩れそうなほど脆く見える。
彼女はしばらく躊躇していたが、決心をつけると同時に、思い切ってノブを回し、扉を開いた。

('、`*川「失礼……します」



115:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:21:35.88 ID:8EfekdEx0
  
扉が開くと、備え付けられたベルが店内に鳴り響いた。
そして、その次に静かな声が彼女へと向けられた。
落ち着いた男の声だった。

(´・ω・`)「ようこそ、バーバンハウスへ……お客さんとは珍しいね」

その声は店内奥の方から聴こえた。

('、`*川「……」

彼女は店内をゆっくりと見渡す。
店内もその外見と同様、質素な造りになっていた。
手前には、ひび割れた木製のテーブルと破れたソファーが三組。
そして奥には斜めに偏ったカウンターと、歪んだ丸椅子が備え付けられていた。

(´・ω・`)「……どうしたんだい?中に入ったらどうだい?」

('、`*川「……え? ……あ、はい」

彼女は店員の声にハッとして、カウンター席の方へと歩いていった。

(´・ω・`)「このバーボンはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい」

彼女がカウンター席に座ると、店員は彼女の前に一杯の茶色い液体の入ったカップを差し出した。

('、`*川「あの……私はお酒を飲みにきたわけでは……」

(´・ω・`)「お金の事は気にしなくていい。こんな世の中じゃ、そんなもの役には立たないからね」

('、`*川「は……はあ」



118:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:23:25.59 ID:8EfekdEx0
  
彼女は、目前の店員の顔をしげしげと見つめた。
見た目は三十代前半ほどであろうか。
しょぼくれた形の眉が印象的な顔であった。

('、`*川「あの……何処かでお会いしませんでしたっけ?」

彼女には、店員の顔に何か見覚えがあるような気がした。

(´・ω・`)「……さあ? 僕みたいな顔は何処にでも居るからね。他人の空似じゃないかな?」

('、`*川「……そうですか」

店員は、さらりと彼女の問いかけをかわす。

(´・ω・`)「しかし、久しぶりのお客さんで嬉しいよ。今日は一体どうしたんだい?」

会話を続けるように、店員は彼女に質問を投げかけた。
だが、それは質問と言うよりは、社交辞令に似たようなものである。

('、`*川「あ、そういえば私は水と食料と薬を求めて歩いてたんですが……」

(´・ω・`)「水と食料はいいとして……薬? 貴方は別に怪我はしていないようだけど」

店員は彼女を軽く一瞥しながら言った。
所々、彼女の体は埃で汚れているものの怪我らしい怪我はしていない。

('、`*川「いえ、あの……路上に沢山の怪我人の人たちが居たものですから……
     私は何も出来なかったのですが、放っておけなくて……」



121:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:25:26.75 ID:8EfekdEx0
  
彼女は遠慮がちにそう答えた。
その一言一言からは、気品が溢れているように感じられる。

(´・ω・`)「……うーん」

彼女の唐突な要求に戸惑っているのか、店員は腕を組みながら首をかしげていた。

('、`*川「やっぱり、駄目ですよね……」

彼女は暫くの間、その様子を心配そうに見つめていた。

見ず知らずの人間にいきなり頼みごとをしたところで、受け入れられる可能性が低いことは彼女にも容易に想像できる。
物資も充分に無いこんな世界ではなおさらだ。

('、`*川「無理だったらいいんですよ、ごめんなさいね」

彼女は、やはり無理かと諦め、返事を聞かないまま店から出ようと席を立ったその時であった。

(´・ω・`)「……素晴らしい」

店員から発せられた次の一声は意外なものであった。

('、`*川「へっ?」

(´・ω・`)「いや、気に入ったよ。
       今時他人を気遣える人間なんて、こんな殺伐とした世の中で滅多に居ないからね」

店員は小さく微笑むと、彼女の両手を取りながら目を輝かせて言った。



123:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:26:57.09 ID:8EfekdEx0
  
('、`*川「は、はあ」

突然手を握られ、彼女は返す言葉を忘れてしまったようだった。
それをよそに、店員はさらに続ける。

(´・ω・`)「残念ながら水と食料は必要最低限しかないから分けられないが、
       酒なら薬代わりに傷口を消毒できるから何本か持っていくといい」

そう言うとすぐに店員は、後ろの棚から次々と酒瓶を取り出し、カウンターの上に次々と置いていく。

('、`*川「え? あ……ありがとうございます」

予想外の店員の厚意に呆然としながらも、とりあえず礼だけは言った。

('、`*川「あ……でも、見ず知らずの私にどうして?」

次々と重ねられていく酒瓶を見つめながら、彼女は聞いた。

(´・ω・`)「これでも僕はこの仕事が長くてね。信用できる人間とそうでない人間の区別はつくつもりだ」

店員は、ふと酒瓶を運ぶ手を止めて、彼女の目を見据えながらこう返した。

(´・ω・`)「それに……」

そしてコホンと咳をして、一間置いてから穏やかに言った。

(´・ω・`)「貴方からは……癒されるというか、懐かしい感じがするんだ。
       まるで母親と話しているような、そんな感じが……ね」

('、`*川「……」



127:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:28:16.54 ID:8EfekdEx0
  
店員は言い終わると照れ臭そうに顔を逸らし、大きく欠けた皿を無言で拭き始める。
やはり彼女は、その姿を呆然と眺めていた。

「邪魔するぜ」

沈黙が支配していた店内に突如、扉を乱暴に開ける音と共に、大声が響いてくる。
  _
( ゚∀゚)「よお、相変わらず寂れた店だな」

中に入ってきたのは、黒い革のジャンバーの下に白いTシャツを着た体格の良い男だった。
特徴的な太い眉とその服装も相まって、その容姿は豪快というに相応しい。

(´・ω・`)「……これまた珍しいお客だ。『J』じゃないか。
       悪いが丁寧に扉を開けてくれないか? 店が崩れてしまう」
  _
( ゚∀゚)「……おいおい、その名前はもう捨てたんだ。今はただのニートだぜ」

店員は入ってきた男を見るなり、親しげに声を掛けた。
男は店員の注意を無視して、ずかずかと彼の方に足を進めていく。
二人は顔見知りのようであった。

(´・ω・`)「……まったく。ところで今日は一体何の用だい?
      『それ』のメンテナンスかい? あれほど乱暴に扱うなって言ったのに」

店員は毎度のことなのか、男が来た目的を分かっていたかのように話を切り出した。
  _
( ゚∀゚)「いやいや、『これ』は大事に扱っているつもりだぜ、たぶん。
     ……まあ、それは置いといて今日は別の用事だ」

太眉の男は、左腕を顔の横に上げて店員に見せびらかすように言った。



132:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:31:10.85 ID:8EfekdEx0
  
('、`*川「えっ……!?」

彼女はそれを見て驚きの声を上げた。

男の左腕は義手であった。
無機質な造りの腕は吊り下げられた電灯を反射し、鈍く金属光を放っている。
  _
( ゚∀゚)「ちょっと待ってくれよ」

驚く彼女を気にも留めず、男は店員に待つように促すと一旦店から出た。
そして再び扉を開け、今度は何かを背負って店内に入ってきた。
  _
( ゚∀゚)「実は、途中でコイツを拾っちまってよ。
     ショボン何とかできねえか? 手当てとか俺はよく分からんからな」

男の背に乗っていたのは、一人の少年であった。
意識が無く、ぐったりと首を垂らして男の背にもたれかかっている。
  _
( ゚∀゚)「またコイツが重いんだ。何喰って育ったんだ? まったく……」

小さく愚痴をこぼしながら、男はカウンターの方へ近づいて行く。
そして傍まで来ると、ペニサスはその少年の顔をはっきりと確認できた。

(※)ω`)「……」

('、`;川「ブーンちゃん!?」

少年の顔を見ると、すぐに彼女は狼狽する。
ぼろぼろになった彼の顔は、彼女の知る孫そのものであったからだ。



136:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:32:42.46 ID:8EfekdEx0
  
(´・ω・`)「……? 知り合いかい?」

('、`;川「私の孫です! 大変!! 早く手当てしないと!!」

少年の酷い有様に我を忘れて、彼女は彼のほうへと駆け寄った。

(※)ω`)「……」

('、`;川「え!? いや、違う……でもよく似ているわ」

しかし、間近でその少年の顔を覗き込むと、すぐに彼女は違和感を感じ取った。

確かにその特徴的な面持ちは、彼女の孫に見間違う程にそっくりであったが、よく見ると、彼女の孫よりも体格は一回り大きい。
その上、彼女の肉親のみが感じ取れる直感と言うべきものが、少年が孫ではないと判断していた。

('、`;川「……でも、このまま放っておけないわ。なんとかしないと」

だが、彼女にはそんなことは関係がなかった。
急いで少年をソファーに寝かせ、ハンカチを取り出し彼の顔を拭く。

(´・ω・`)「酷いね……骨が何箇所か折れてるようだ。
       打撲も酷いね……下手すれば内臓も傷ついているかも。早く手当てをしないと」

その横で、店員は丹念に少年の傷の具合を診る。
余りにも惨い状態を見て、彼はその垂れ下がった眉をさらに窄めた。
  _
( ゚∀゚)「とにかくよく分からんがヤバい状態なんだろ? ショボン、どうでもいいから早く何とかしろよ」



141:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:34:18.69 ID:8EfekdEx0
  
傍らで立ち尽くしながら、男は店員を急かす。

(´・ω・`)「参ったな、息も弱くなっている。何とかしたいのはやまやまだが……
       しかし、ウチに置いてあるのは工具だけだ。医療用の器具は置いて無いよ。
       ここまで酷いとそれなりの設備が必要だが……」

それに対して、店員は困り果てた顔で男に答えた。
  _
(;゚∀゚)「マジかよ……っても、それなりの施設を探すったってこの状況じゃな」

街は、見る影も無く廃墟と化している。
そのような状態で、まともに医療施設が残っている可能性は皆無に等しい。

('、`;川「……」

彼女は心配そうに、二人のやり取りを見つめていた。
だがその内容から、良い方法があることは読み取れない。
落胆したように彼女は溜息をつき、再び少年を介抱する。

(※)ω`)「う……う……」

少年はよほど苦しいのか、苦咽の声を漏らしていた。
顔はひどく腫れ上がり、血の気が引いたように青ざめていた。

('、`;川「しっかりするんだよ……」

一通り、彼女は少年の体を拭き終わり、彼の額に手を当ててみた。
彼の体は、思わず手を離しそうになるほどに熱くなっている。



145:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:36:16.23 ID:8EfekdEx0
  
('、`;川(お願い……神様。この子を助けてちょうだい……)

彼女は何も出来ないことを悟ると、藁にもすがる思いで必死に祈り始めた。

すると、突然彼女に変化が起こった。
それは眩いばかりの発光だった。
一定の色に留まらない、七色の輝きが彼女達の居た空間を埋め尽くす。

('、`;川「ッ! えっ!? これって!?」

よく見ると、その光の源は彼女のネックレスであった。
銀色の鎖に繋がれた宝石が、彼女の心に呼応するかのように光を放っている。

光は輪郭を為し、円を描くように一つの輪となって少年を包んでいく。
その輝きは、まるで彼を優しく抱きしめるように感じられる。

そして、その直後には、少年の体に変化が起こった。

(※)ω`)「……」

( ´ω`)「……」

( -ω-)「……」
  _
(;゚∀゚);´・ω・)「!?」

('、`;川「こ……これは? 一体?」

光の輪が少年の体に入り込む毎に、傷は塞がり、腫れは引き、表情に生気が戻っていく。
輝きが消える頃には、あれだけ負傷していた体が完全に回復していた。



150:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:37:43.22 ID:8EfekdEx0
  
(;゚∀゚);´・ω・)「……」

その不可思議な光景を、その場に居た者は目と口を大きく開き、ただ驚くようにぼんやりと見つめていた。
  _
(;゚∀゚)「……なあ、今の見たか?」

(;´・ω・)「ああ。……これは間違いなくべホマ……魔法なんて初めて見たよ」
  _
(;゚∀゚)「違う……これはケアルガだ」

(;´・ω・)「……いや、これはどう考えてもべホマだ」

唐突な出来事に二人は混乱していた。
余りの錯乱振りに、どちらが正しい魔法の名前かを言い争っている。

('、`;川「……」

しかし、一番混乱しているのは当の本人のペニサスであった。
一瞬にして傷が治ることなど、彼女の長い人生の中でも一度とて経験したことがなかったことだ。

('、`;川「この……ネックレスが?」

彼女は再び、自分の首に掛けられた銀の鎖を眺めていた。
そんな中、店員と男の二人は彼女に近づいてこう言った。

(´・ω・`)「これは驚いた! こんな現象見たことも聞いたこともないよ!」
  _
( ゚∀゚)「なんだか分からんが……すげえ!! やるじゃねえか、ばあさん!!」



155:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:39:15.19 ID:8EfekdEx0
  
二人は興奮が醒めないのだろうか。
感嘆を露わにした大声で、次々と彼女に賞賛の言葉を投げかける。

('、`;川「これは……私がやったの?」

しかし、彼女は未だに戸惑っている様子であった。

(;-ω-)「……う……ん」

(;^ω^)「おっ?」

少年の意識はいつの間にか戻っていた。
横からは、何やら騒がしい声が飛んでくる。

(;^ω^)「……ここは? 僕は一体?」

彼の目に映ったのは、くたびれた家具が並ぶ飲食店らしき室内。
そして、大声を上げている三人の人影であった。

(;^ω^)「確かツンと出会って、DQNにボコボコにされて――」

彼はその様子をおぼろげに見つめながら、頭の中で状況整理を必死に行っていた。
  _
( ゚∀゚)「ばあさん、今度その白魔法教えてくれよ!! いいだろ? なっ! なっ!」

(´・ω・`)「いいや! べホマは僕が教えてもらうんだ!!」
  _
( ゚∀゚)「いやいや俺が!! ……って……ん? 坊主気がついたか?」



158:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:40:46.94 ID:8EfekdEx0
  
彼が目覚めてすぐに見つけたのは、二人の男と一人の女性。
その内の一人の男は、熱心に手前に居た女性に話し掛けている。
しかし、意識が戻ったことに気付くと、すぐに彼にも声を掛けてきた。

(;^ω^)「えっ!? ジョ……ジョルジュさん?」

少年にその顔は見覚えのあるものだった。
それは目の前に居た男、自分の知り合いであるジョルジュ長岡である。
彼は見慣れたその姿を見て、反射的にその名を呼んだ。
  _
(;゚∀゚)「へ……? なぜ俺の本名を知っている?
     それを知っている奴は、そうは居ないはずだが……」

(;^ω^)「いやいや、みんな普通に知ってますお。ふざけないでくださいお」

男が急に自分の本名を呼ばれて驚く中、少年はさも当たり前のように平然と答える。

(´・ω・`)「『J』の名前を知っているとは……不思議な子だね」

そのやり取りを腕組みしながら聞いていた店員は、男と同様に驚き、思わず呟いた。

(;^ω^)「 あれっ!? ショボンさんまで!! よかったお!!
       まったく……今までみんな何処に行ってたんですかお」

(;´・ω・)「!? なんで僕の名前まで……」



161:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:42:24.25 ID:8EfekdEx0
  
全く面識の無い少年に自分の名前までも言い当てられてしまい、店員はますます動揺を隠せなかった。

(;´・ω・)「ちょっと落ち着いて欲しい。何で君は僕と『J』の名前を知っているんだい?
       僕達は、君と今までに会ったことがないと思うんだが」
  _
(;゚∀゚)「同感だぜ……何者なんだよお前」

(;^ω^)「……えっ? 二人ともどうしたんだお!? 僕だお!! ブーンだお!!」

少年は二人の態度に違和感を覚えたのか、声を荒げて、改めて彼等に問いただした。

すると突然、三人のやり取りを傍観していた女性は、『ブーン』という言葉に反応し、少年に詰め寄った。

('、`;川「!!……やっぱりブーンちゃんなの?」

(;^ω^)「え……? どなたですかお?」

しかし、今度は少年が彼女を知らなかったようであった。
他人行儀の口調で、目の前の彼女に彼は答えた。

(;^ω^)「……」

('、`;川「……」
  _
(;゚∀゚)「……」

(;´・ω・)「……」

店内を微妙な空気と沈黙が埋め尽くす。



165:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:43:35.45 ID:8EfekdEx0
  
('、`;川「とりあえず、落ち着いて整理しましょうか」
  _
(;゚∀゚);´・ω・);^ω^)「……賛成」

とりあえず彼等はカウンター席へと座り、この状況を落ち着いて考えようとした。
全員の表情は狐につままれたような珍妙な面持ちであった。

そんな中、最初にぺニサスが口を開く。

('、`*川「まずは私からね。……こんな事を言っても信じられないかもしれないけど……
     単刀直入に言うと、私はこの世界の人間じゃないの」
  _
( ゚∀゚)「何いってやがんだばあさん? 頭ボケてんじゃねえのか?」

('、`♯川「……あなた死ぬわよ」(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ)
  _
(;゚∀゚)「あ、いや……その……ごめんなさい」

『J』は途中で茶々を入れたが、彼女の瞳から発せられた殺気に思わず怯んだ。

(´・ω・`)「まあまあ……とにかく興味深いね。詳しく聞こうじゃないか」

その間に入るようにショボンが続く。

('、`*川「ええ……実は――」

彼女は、自分の世界でビコーズという少年に出合ったこと。
そして彼に導かれるままにこの世界にやってきたことなど、これまでの経緯を話した。



169:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:45:23.58 ID:8EfekdEx0
  
(´・ω・`)「成る程ね。ここの住人にしては身なりが綺麗すぎるし、
       貴方は嘘を付くようなような人間には見えないし……
       それに先程の不思議な力といい……わかった、信じよう」

彼女の話に皆が納得するまで、それほど時間は掛からなかった。
彼女がこの世界の住人でないことを示す確かな証拠が、いくつか存在していたからだ。

(;^ω^)「あの……僕も……もしかしたら……」

次に、しばらく黙って話を聞いていたブーンが口を開いた。

(´・ω・`)「おや、君もかい?良かったら話を聞かせてくれないか?」

(;^ω^)「実は僕はカクカクシカジカ、バロバロバーロー……ペロッ……コレハセイサンカリ――」

ショボンに促され、彼もこの世界に来るまでの経緯や、自分の住んでいた世界について事細かに話した。

(´・ω・`)「ふむ……鋼鉄の巨人ダイヴィッパーか。確かにそんなものはこの世界には存在しないが……」
  _
( ゚∀゚)「zzz……」

ショボンは、顎に手を乗せて考え込むように呟く。
その一方で『J』は話に付いて行けず、いつの間にか目を開けたまま眠りこけていた。

そして、ある程度考えがまとまったのか、ショボンは全員に向かってこう言った。

(´・ω・`)「まあ、二人がこの世界に迷い込んできたのも、別に不思議なことではないかもね。
       確かにこの世界は正体不明の物に飲み込まれつつある。
       今更、何が起こってもおかしくはないよ」



173:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:47:40.76 ID:8EfekdEx0
  
(;^ω^)「ええと……一つ聞きたいんですお。
      なんで、この世界には、僕の世界に居るツンやジョルジュさん……
      それにショボンさんと名前が同じそっくりさんがいるんですかお?」

立て続けに自分の知り合いに似ている人物に会ったブーンにとって、それはもっともな疑問であった。

(´・ω・`)「恐らく、僕達の世界と君達の世界の関係は、
       平行世界、いわゆる『パラレルワールド』同士ではないのかな?
       例えば別の『パラレルワールド』では、別の意志をもった君自身が無数に存在する。
       ぺニサスさんの世界では君の同姓同名のそっくりさんが、孫として存在しているようにね」
  _
( ゚∀゚)「zzz……」

(;^ω^)「う〜んややこしいお……」

突然出てきた単語にブーンは困惑する。
『J』に至っては、完全に思考を放棄していた。

('、`*川「ま、いいじゃない。そっくりさん同士が一緒に居るわけでもないし」

ぺニサスは、ビコーズから前もって聞いていたせいか、割とすんなりとその話を飲み込めたようだった。

(´・ω・`)「ところでぺニサスさん。そのビコーズとかいう……
      少年の言っていたことを詳しく聞かせてくれないか?」

('、`*川「ええ。正直完全に把握しきれてないかもしれないけど――」

再び、ショボンは彼女に質問をぶつけた。
この世界に来た経緯は聞いたものの、ビコーズとの会話の内容までは聞いていなかったからだ。
彼女は、覚えている限りのことを皆に話した。



177:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:49:47.57 ID:8EfekdEx0
  
(´・ω・`)「……成る程ね。
       確かに、ビコーズとか言う少年の言っていた現象は、
       この世界に起こっていることと一致しているし、『英雄』も『悪の組織』も実在していた。
       あとは、『sks』とビコーズの関係。その辺について詳しく聞きたいね」

('、`*川「『sks』はこの世界の源……みたいなものかしら?
      彼については『sks』と対話できるとかどうとかって言っていたけど……」

(´・ω・`)「ビコーズ=この世界の神っていうことなのかな?
       しかし、それにしては彼のやっていることは中途半端だ。
       神レベルの力をもっているなら、なぜさっさとこの世界を元に戻さない?
       ペンダントに変化して力を貸す方法は回りくどい気がするのだが」

('、`*川「さあ……彼はペンダントに変わったきり話そうとしないし、
     彼はただ『貴方の心の向くままに行動すればいい』って言っただけで」

(´・ω・`)「うーん……さっぱり解らないな……
       神(?)が、世界を救おうとしているのは確かだが、その手段が謎だよね」

そして、ショボンの言葉の後には沈黙が残った。
ビコーズの言葉の意味も、そしてこの世界を救う方法も全く見当が付かない。

(;^ω^)「あの……」

そこへ、突然ブーンが話題を切り出した。

(;^ω^)「この世界の……『英雄』さんに力を借りればいいと思いますお。
      僕達だけで無理なら、彼の力を借りればいいと思いますお」



181:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:51:45.70 ID:8EfekdEx0
  
『英雄』は未だに屍達を狩り続けている、というのがブーンの聞いた話だ。
ならば、彼と手を組めば世界を救う糸口が見つかるのではないか。
ブーンはそう考えた。

(´・ω・`)「いや、それは無理だ」

しかし、彼の意見をショボンは真っ向から否定した。

(;^ω^)「そんなやぶからぼうな……」

きっぱりと無理だと言われ、ブーンは少し落ち込んだ。
頭を振り絞って考えた策が完全に切り捨てられたからだ。

(´・ω・`)「いや、それもある意味正論なんだが、実はそれについて残念なお知らせがあるんだ……」

ブーンをフォローしつつ、ショボンは続ける。

('、`*川「それは……何?」

(;^ω^)「……気になるお」

次に出てくる言葉を、二人は固唾を飲んで見守る。
そして、それは衝撃的な事実だった。

(´・ω・`)「君達が『英雄』とか呼んでいる人物……それは、横でイビキをかいて寝ているこの馬鹿だ」
  _
( ゚∀゚)「zzz……」

('、`;川(;^ω^)『工工エエエエエ('Д`)エエエエエ工工!!』



183:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:53:46.84 ID:8EfekdEx0
  
   _
Σ(;゚∀゚)「うおっ!!」
  _
( ゚∀゚)「んだよ……人がせっかく気持ちよく寝てたっていうのに……」

突然の大声に驚いたのか、『J』はぴくりと身体を震わせて目を覚ました。

('、`*川「それなら仕方ないねえ。ニートじゃ無理だわね」

(;^ω^)「もっとカッコいいのを想像していたお……ガッカリだお……」
  _
(;゚∀゚)「なんだか知らねえが……酷いことを言われた気がするぜ」

その間の抜けた『英雄』の姿に二人は落胆していた。
思わず辛辣な感想を口から漏らす。
  _
( ゚∀゚)「意味が分からねえから、ショボン産業で説明しろ」

(´・ω・`)「二人は異世界住人。
       この世界を救うためにやってきた。
       元『英雄』の『J』は馬鹿」
  _
(;゚∀゚)「最後は何か聞き捨てならねえが……把握した」

ショボンの簡潔な説明のおかげで、どうやら頭の良くない『J』は理解したようだ。

('、`*川「……先程の発言は謝ります。貴方が『英雄』なら話が早いわね。
     是非、私と一緒にこの世界を何とかしましょう」



189:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:55:01.69 ID:8EfekdEx0
  
彼女は気を取り直し、共に世界を救うことを『J』に提案した。
何をすればいいか解らない状況で、目の前に『英雄』がいることは大きい。
正義の為に戦っていた彼ならば、喜んで助力してくれると彼女は考えていた。
  _
( ゚∀゚)「だが断る」

しかし、『英雄』の返事は彼女の予想と正反対のものであった。

('、`;川「そんな……貴方は悪と戦う正義の味方じゃないんですか?」
  _
( ゚∀゚)「御免だぜそんなの。俺はとっくに正義の味方は廃業したんだ」

彼は彼女に対して、平然と悪態を付く。
その態度は彼女が描いていた『英雄』像とは、ひどくかけ離れたものであった。
  _
( ゚∀゚)「それに、こんなボウズとばあさんに何が出来るんだ?
     女子供に助けられるなんて俺はまっぴらごめんだぜ」

('、`;川(;^ω^)『……』



192:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:56:53.51 ID:8EfekdEx0
  
『J』が言うことも一理あった。
ぺニサスが出来る事といえば、先程の治癒能力以外に無い。
ブーンに至っては、ダイヴィッパーが無ければ只の高校生である。
つまり、世界を救うには彼らは余りに無力すぎたのだ。
  _
( ゚∀゚)「ともかく、それについてはアンタたちで勝手にやっててくれ。
     ショボン世話になったな。俺は行くぜ」

そして最後に吐き捨てると、席を立ち、店を後にしようとする。

(´・ω・`)「おい!! 何処に行くんだ!?」

『J』を止めようと、ショボンは叫んだ。
彼はそれに応えるかのように背を向けたまま、面倒臭そうに言い放った。
  _
( ゚∀゚)「……『狩り』だよ、『狩り』」

一瞬、『J』は歪んだ笑みを浮かべると、そのまま乱暴に扉を閉め、『バーボンハウス』から出て行ってしまった。

(´・ω・`)「やれやれ」

ショボンは視線で彼を見送ると、大きく溜息をついた。



196:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:57:56.47 ID:8EfekdEx0
  
一方その頃。

(`・ω・´)b「そこのお嬢さん!!」

d('A`)「我々と一緒に!!」

                     / jjjj      _
                   / タ       {!!! _ ヽ、
                  ,/  ノ        ~ `、  \ 
                  `、  `ヽ.        , ‐'`  ノ  
                    \  `ヽ('A` ) " .ノ/ 
       (`・ω・´)   ̄"⌒ヽ   `、ヽ.  ``Y"   r ' 
      / 〉 ヽ' /    、 `、   i. 、   ¥   ノ  
      γ  --‐ '    λ. ;  !   `、.` -‐´;`ー イ  
     f   、   ヾ    /   )    i 彡 i ミ/     
     !  ノヽ、._, '`"/  _,. '"     )    {   
     |   ̄`ー-`ヽ 〈  < _ ヽ.    /     `\  
      !、__,,,  l ,\_,ソ ノ   /   /ヽ、  ヽ.  
          〈'_,/ /   /   /  ノ    ヽ.   〉  
              | |  イ-、__  \  `ヽ    {   f  
           l.__|   」_  l    \ \   |  i 
           _.|  .〔 l  l    ノ  _>  j  キ 
           〔___! '--'     <.,,_/~  〈   `、
                             `ー-‐'
「美 し い 筋 肉 を 共 に 創 り 上 げ な い か ! !」



202:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 00:59:48.89 ID:8EfekdEx0
  
(*゚ー゚)「きゃ〜ス・テ・キ☆
    私もあなた達みたいな大胸筋を作ってみたかったの!!」

(`・ω・´)「うむ。君も3時間で我々のような美しい筋肉になれる」

('A`)「筋肉の道は棘の道!!
   共に『脂肪』という強敵に立ち向かおうではないか!!」

(*゚ー゚)「私…どこまでもあなた方に付いて行きます(はぁと」

(`・ω・´)b「そうと決まれば、早速腹筋1000回だ!!」

d('A`)「君が思っている以上にキング・オブ・マッスルへの道は険しいぞ!!」

(*゚ー゚)「はいっコーチ!!
    私は必ず……あの北斗七星の脇でひっそりと光り輝く……
    『筋肉の星』になってみせます!!」

シャキンと元『悪の組織』首領は、新たに『筋肉教』なる組織を創り上げていた。
一見、カルト集団のような思想『筋肉主義』を掲げていたが、
思いのほかノリと勢いだけで、着実に新しい信者を増やしつつあるという。


第二話 完



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