( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです

209:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:04:50.17 ID:8EfekdEx0
  
第三話 「英雄の過去、それぞれの決意」


『英雄』が出て行った後、三人は無言のままであった。
ショボンは無言で皿を洗い、ペニサスはペンダントを見つめ、ブーンは自身の腕にあるVIPライザーを弄ぶ。

(´・ω・`)「昔は正義に燃えていたいい男だったんだけどね……でも彼は変わってしまった」

そんな中、始めに口を開いたのはショボンだった。
続くようにして、残る二人も口を開く。

('、`*川「……確か、『悪の軍団』が壊滅してしまったから、って聞いたけど」

(´・ω・`)「それもある。ある意味『悪の組織』を追いかけることが彼の生きがいでもあったからね」

( ^ω^)「それも、ってことは他にも原因があるんですかお?」

(´・ω・`)「というよりはむしろ、もう一つの原因の方が彼を大きく変えるきっかけとなったんだ。
      全てに燃えるようにぶつかっていた彼が、変わってしまった出来事が……ね」

('、`*川「もう一つの原因?」

(´・ω・`)「そうだ。……少し長くなるけど、いいかな?」

ショボンは食器を拭く手を止め、真直ぐに二人のほうを見た。

(´・ω・`)「あれはもう一年前の出来事になる。それはとても雪の多い日だった――」

そして小さく間を開けた後、彼は静かに語り始めた。



212:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:06:21.78 ID:8EfekdEx0
  
『英雄』である『J』が、まだ躍起になって『悪の軍団』である『しっと団』を追いかけていた頃の話だ。

彼の左腕が義手だっていう事は、先程見た通り知っているよね?
彼はその義手を駆使して『しっと団』と戦っていた。
そして僕は、彼のサポート役として主に彼の左腕のメンテナンスを行っていた。

そして一年前のあの日も、街のパトロール、もとい…おっぱいウォッチンg……
げほっ!!ごほっ!!……いや、失敬。今のは忘れてくれ。
とにかく恒例として街に見回りに行こうとした彼を、僕は『バーボンハウス』で見送っていたんだ。
  _
( ゚∀゚)「んじゃショボン、パトロール行ってくるぜ」

(´・ω・`)「うん。おっぱいの見すぎで他所見して怪我しないようにね」
  _
(;゚∀゚)「ああ大丈夫だ……多分な」

あの頃の彼は、おっぱいに殆どの情熱を注いでいた。
僕はむしろ男の尻のほうが……あ、いや、ごめんなさいしないといけないよね。
真面目にやるから、ペニサスさん……その闘気をしまってくれないか?
まあ……彼はそれくらい熱い男だったんだ。

川 ゚ -゚)「ジョルジュ、またここに居たのか。……今日も、出動するのか?」

彼女はクー。ジョルジュの恋人だ。

その凛とした容姿は美しく、なぜ彼なんかと付き合っているのかわからなかったが、
彼女のクールな性格と、彼の熱い性格が上手い具合に噛み合ったんだろうね。
結婚を約束していたほど二人の仲は熱いものだった。



215:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:07:35.12 ID:8EfekdEx0
  
ちなみに、彼は彼女の貧乳について気にしていたみたいだ。
……まあ僕は、ガチムチとした兄貴の胸板の方が好k

痛っ!! イテテテテテ!! 折れる!! 折れます!! 折れたことあるんです!!
お願いですからペニサスさん、間接技だけは辞めてくれないか?

……とにかく彼等はラヴラヴだった。
  _
( ゚∀゚)「おっ、クーじゃねえか。大丈夫だって。俺は強いから誰にも負けはしねえよ」

川 ゚ -゚)「いや、そうではない。他の女子のたわわな胸を見るのは我慢しろ」
  _
(;゚∀゚)「……お前等、俺を何だと思ってるんだ?」

川 ゚ -゚)´・ω・)『変態戦士おっぱいライダー』
  _
(;゚∀゚)「ちょwwwねーよwww俺様は今をときめくスーパーヒーロー、義手の『J』だぜ」

一見ふざけているような彼だが、心の芯はしっかりしている。
街の住民が困っていると聞けば、直ぐに飛んでいくし、
命の危険にさらされれば、身を投げ出してでも助けに行く。

そんな飾らない彼の性格のおかげだろうか、彼は老若男女、全ての人に愛されていた。
いや、巨乳の美人に痴漢で訴えられて留置所に入ったこともあるけど……本当に彼はいい奴なんだよ。
  _
( ゚∀゚)「まったくお前等は……んじゃ、さっさと行ってくるぜ」

そして、彼はいつものようにパトロールに出動して行った。



220:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:09:05.82 ID:8EfekdEx0
  
('∀`)「ハッハッハッ!! ノコノコと現れたな『J』よ!!
    今回の『2月13日は48時間☆バレンタインなんてないよ☆作戦』は、
    貴様をおびき寄せる為の、いわば餌ッ!!
    今日こそは貴様を倒し、この世界を征服してやるぜ!!」
  _
( ゚∀゚)「ぬうう……14日は乙女達が唯一自分から男に告白できる一日。
     それを無きものにしようとするなんて、非道の極み!!
     許さねえッ!! 絶対に世界はこの俺が守る!!」

('A`)「できるものならやってみろ。
    恋人も出来ずに日々悶々と過ごす毒男たちの痛み……思い知るがいい!!」
  _
( ゚∀゚)「ふん……そんなもの粉砕してやるぜ。この左腕でな」

('A`)「かかれっ!!戦闘員たちよ!!奴を血祭りにあげるんだッ!!」

『ヒ〜〜〜〜〜ッ!!!!』
  _
( ゚∀゚)「『Type-Sword』ッ!! 行くぜッ!! かかってこい!!」

彼は、毎日のように『しっと団』と死闘を繰り広げていた。
そして、どんな窮地に追い込まれても必ず勝つ。
お陰で僕は彼を心から信頼できたんだ。

彼が街に出ている間、僕は資金稼ぎの為に表向きの拠点として、『バーボンハウス』を経営していた。
酒場という形で情報収集もできるからね。

(´・ω・`)「じゃあ、僕は買出しに行って来るよ。クー、いつも手伝ってもらってすまないね」



223:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:10:37.71 ID:8EfekdEx0
  
川 ゚ -゚)「いや、気にしないでくれ。
     ここで働いていれば、帰ってきた彼を出迎えることができるからな。それに今日は……」

(´・ω・`)「そうか、バレンタインだったね。……では、すまないが、開店準備の方は頼んだよ」

川 ゚ -゚)b「了解した」

僕は、いつものように彼女に店を任せ、買出しに出た。


――しかし、それが間違いだったんだ。
  _
( ゚∀゚)「喰らえッ!! 『ROP』(ロケット・おっぱい・パンチ)!!」

('A`;)「馬鹿な……俺のメカ『メイドちゃんロボット〜絶対領域バージョン〜』があっさりと……」
  _
( ゚∀゚)「とどめだッ!! 『BOK』(ボイン・おっぱい・キック)!!」

('A`;)「や〜ら〜れ〜た〜」

――キラン☆
  _
( ゚∀゚)「……さて、さっさと帰るか」

彼はいつものように敵を一掃し、『バーボンハウス』へ向かっていた。
闘いの後に『バーボンハウス』で一杯やるのが彼の習慣だったからね。
しかもバレンタインデーを彼は楽しみにしていた。
さぞかし彼は舞い上がっていただろう。

……愛する彼女の、心からの贈り物を受け取れるはず、だったからね。



226:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:12:18.03 ID:8EfekdEx0
  
  _
( ゚∀゚)「お〜ねがいマ〜イメ〜ロディ♪って、ん? どうした? 店が暗いな。
     はっは〜ん、さては二人して俺を驚かせようって……」

しかし、彼は直ぐに不穏な空気を感じ取った。
店の外には、割れたガラスが散乱していて……只事ではないってすぐにわかったんだろう。
  _
(;゚∀゚)「おい? ショボン? クー? 冗談が過ぎるぜ……居るんだったら返事しろよ」

彼はすぐに店内に入り、僕達の姿を探した。
  _
(;゚∀゚)「……ッ!! おい!! ショボン!! クー!!」

店内は荒れ果ていて、それまでの面影を残して無かった。
扉は外され、窓は割れ、酒瓶は砕け、壁には銃痕が残っていた。
そして彼は店内に誰も居ないことを確認すると、急いで裏の調理場へと回っていった。

(´・ω・`)「しまったな。渋滞に巻き込まれてすっかり遅れてしまった。
       彼女にすまないことをしt……えっ!?」

僕が店に到着したのはその後だった。
その日に限って、雪のせいで大渋滞が起こってしまったんだ。
『バーボンハウス』に着く頃には、すっかり辺りは真っ暗になっていた。

(;´・ω・)「……これは一体……? くそっ!!」

僕も店の荒れ具合に、只事ではないと思ったんだ。
そして、彼と同様に店内を一通り見て回った後に、裏の調理場へと向かった。



231:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:14:42.54 ID:8EfekdEx0
  
(;´・ω・)「……」

僕は調理場の扉の前で、護身用の銃を持って身構えた。
店内は激しい戦闘の跡が残っていた。
クーは元々某国のスパイ出身で、戦闘の経験もそれなりにあったけど、荒れ具合からかなり苦戦したことが窺い知れたからね。

そして、僕は一呼吸すると、警戒しながら扉を蹴破った。
  _
(  ∀ )「……」

調理場では暗闇の中、電気も付けずに『J』が立ち尽くしていた。

(;´・ω・)「……なんだ『J』か。脅かすなよ。そんなところで突っ立って何やってるんだい?
       クーと喧嘩でもしたのかい?」

僕は安心して銃を下ろし、調理場の電気のスイッチを付けた。


――だがその瞬間、『バーボンハウス』で何が起こったかを僕は見た。

川 ;;。V听)「……」

(;´・ω・)「うわああああああああああああっ!!!!!」

その光景は酷いものだった。
彼女の頭は真ん中から真っ二つに割れていた。
身体全体には、何者かによって噛まれた跡もあった。
彼女の雪のように白い肌も、無残に喰いちぎられていたんだ。
もはや、彼女の美しさは見る影も無かったよ。



234:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:16:18.94 ID:8EfekdEx0
  
(;´・ω・)「ひっ、ジェ……『J』ッ!! こいつは一体!!」

僕は、すごく取り乱したよ。
先程まで元気に言葉を交わした彼女の身体が、変わり果てた姿で横たわったんだからね。
  _
(  ∀ )「……」

彼は僕の問いには答えなかった。
その代わりに、彼は彼女の横を指差した。

<ヽ:::。Д:::゚)「……」

彼女の横には、一体の死体があった。

しかし、それを見た瞬間、僕はその死体がこの世のものではないと悟った。
皮膚は爛れ、骨は突き出し、眼球は飛び出していた。
そんな存在は映画の中でしか見たことが無かったよ。

<ヽ:::。Д:::゚)「あ……ウ……」

僕はさらに驚いた。
驚くべきことに、損傷が激しい死体が喋ったんだからね。
僕は直感したよ。

――ああ、コイツは化け物だって、ね。
  _
(  ∀ )「……」

だが、彼はそれを見ても動じることは無かった。
いや、むしろ驚くべき行動を取ったんだ。



238:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:18:14.40 ID:8EfekdEx0
  
  _
(  ∀ )「うおおおおおおおおおおおおッ!!!!」

彼は思いっきり、その死体を殴ったんだ。
死体の頭はあっさりと潰れた。
それでも彼は殴るのを止めなかった。
彼は殴った。殴り続けた。ただただ殴った。

気がつけば、それが死体であると解らない位まで、粉々になっていたよ。
どれが肉で、どれが骨で、どれが血か、それすら判断できなくなるほど、彼は殴った。
  _
(  ∀ )「……く……」

そして、突然彼は殴るのを止めた。
  _
(  ∀ )「ク――――――ッツ!!!!」

そうして、彼は泣いた。ひたすら泣きじゃくった。
後ろに僕が居たのにも関わらず、感情を抑えようともせずに泣いた。
そんな姿初めてだったよ。
僕は、彼の豪快で勇敢な姿しか見たことなかったからね。

(;´・ω・)「お、おい……『J』……どこへ?」
  _
(  ∀ )「……クー……」

その後、彼は失意のまま『バーボンハウス』からしばらくの間姿を消した。
僕は彼の消息を追ったが、見つけることは無かった。



240:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:19:23.70 ID:8EfekdEx0
  
('、`*川「その後は……どうなったの?」

(´・ω・`)「彼は、それから現在まで屍達を駆り続けている。
       時々、左腕のメンテナンスの為に『バーボンハウス』に来るが、
       それ以外では滅多来なくなってしまった」

(;^ω^)「ジョルジュさんにそんな過去が……」

ペニサスとブーンは余りの壮絶な出来事に、大きな衝撃を受けた。
『英雄』と呼ばれた者の過去は、彼等が入り込むには深過ぎた。

(´・ω・`)「ああ。でも僕も責任を感じているんだ。
       あの日買出しに行かなければ、彼女の命を救えたかもしれない」

(;^ω^)「……でもショボンさんのせいってわけじゃ」

(´・ω・`)「それも彼が言ってくれた。でも、それでは僕の気が済まなくてね。
       彼が心置きなく屍を狩れるように全力でバックアップしている」

('、`*川「……」

(´・ω・`)「彼はもう『英雄』ではないんだ。今の彼の頭に世界を救うなんて考えは無い。
       純粋な屍に対する復讐。彼の行動原理はそれだけだ」

('、`*川「……わかったわ。彼の過去を聞いた以上、これは私が口を挟む問題ではないねえ。
     ところで……ブーンちゃんはどうするの?」

(;^ω^)「へ? 何がですかお? というかその呼び方むず痒いですお……」

聞きなれない自分の呼ばれ方と、唐突な彼女の質問に彼は戸惑った。



244:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:20:54.71 ID:8EfekdEx0
  
('、`*川「話を聞いてわかるとおり、この世界には危機が迫ってるの。
     私は出来ることならこの世界をなんとかしたい。
     でも、それは危険なことで、たまたまここに飛ばされた貴方が関わる必要はないわ。
     だから貴方は、無理に私に付き合わずに元の世界に帰る事だけ考えればいいのよ」

それは、己の孫に似た姿の少年を危険に晒したくない、という気持ちから出た言葉であった。

彼女は既に決意を固めていた。
荒れ果てた街の姿を見て、住人の話を直接聞いて、この世界を放ってはおけないという想いがさらに強まったのだ。
ただし、同時にそれは危険なことだということも重々理解していた。

( ^ω^)「――僕だって」

だが、彼は言った。

( ^ω^)「僕だってこの世界を何とかしたいお!!
       ……そりゃ戦うのは好きじゃないし、怖いお。
       でも……僕もこの世界で苦しんでいる人たちをこの目で見たんだお。
       だから、僕もペニサスさんと同じ気持ちだお!! 是非、一緒に手伝わせてくださいお!!」

彼は、力強くそう答えた。

彼もまた、自分の世界で鋼鉄の巨人とともに戦っているのだ。
他人が傷き悲しむ姿を見るのを彼は耐えられなかった。
あの、自分の大切な人に似た少女のような、そんな者達を見るのが苦しくて仕方なかったのだ。

('、`*川「そうかい……」

彼女は彼の真に迫る眼差しに気圧され、それ以上は何も言えなかった。



246:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:22:40.02 ID:8EfekdEx0
  
('、`*川「でも……無理はしちゃだめだよ」

しかし、彼のことを気遣うことは止めなかった。
他人と解っていても、やはり彼の姿を自分の孫と重ねてしまうからである。

( ^ω^)「わかってますお。っていうか、どうせ帰り方が分かんないんだお。
       だったら僕も手伝わせてもらいますお」

(´・ω・`)「なんだかすまないね、無関係の君達を巻き込んでしまって。
       この世界の神もいい加減だね、まったく」

ショボンは二人の間を割るように口を挟み、ペニサスの首に掛けられたペンダントをしげしげと眺める。

(´・ω・`)「で、この世界を救うったってどうするんだい?」

(;^ω^)('、`;川「あ……」

彼は核心をついた。

(´・ω・`)「『貴方の心の向くままに行動すればいい』ってのも曖昧だね。
       具体的に何をしろって言ったわけでもないし。
       ペニサスさん、とりあえず貴方は一体どうするんだい?」

('、`*川「そうねえ、とりあえず外で怪我をしている人がいるから、手当てをしないとね」

(´・ω・`)「うん、それがいいだろうね。そのペンダントの力もあるし、屍達と直接戦うには危険すぎる」

( ^ω^)「ところで、屍ってさっきから話に出てきますけど、
       僕が外を歩いている時には一匹も見なかったですお」



251:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:24:24.80 ID:8EfekdEx0
  
ブーンは先程から思っていた疑問を口に出した。
彼自身もこの街を徘徊していたが、それらしきものとは遭遇していない。

(´・ω・`)「ああ、この付近に居た屍は『J』があらかた狩ってしまったんでね。
       それに奴らは夜に出没する。その点では君達は運が良かったのかもしれないよ」

('、`*川「屍っていうのはそんなに恐ろしいの?」

(´・ω・`)「うん。奴等はちょっと傷つけた位じゃ死なない。腕一本になっても動き続ける程だ。
      それに身体能力もずば抜けて高い。その腕力は岩を切り裂き、その牙は骨をも砕く」

(;^ω^)「そいつはヤヴァイお……それをやっつけるなんてジョルジュさんは相当強いんだお」

(´・ω・`)「まあね。曲がりなりにも元『英雄』だからね。
       だがその数は一向に減らない。これが厄介でね」

(;^ω^)「そうですかお……うーん……せめてダイヴィッパーさえあれば……」

彼が思い浮かべた鋼鉄の巨人。それは、地を割り天を裂くほどの力がある。
だが、残念ながらこの世界にやって来たのは彼のみであった。
そのもどかしさに、彼は思わず歯噛みする。

(´・ω・`)「まあ、ともかく当面は住民の治療にあたるんだろう? だが、じきに暗くなる。
       夜はゴロツキと屍がうろついているから危険だ。今日は良かったらここに泊まるといい」

('、`*川「え? いや……でも……」

(´・ω・`)「お客も来ないし退屈なんだ。良かったら君達の世界の話をもっと聞かせてくれないか?」

こうして、あらかた会話を交わした後、ショボンの唐突な申し出によって、彼らは『バーボンハウス』で夜を過ごすことになった。



253:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:25:55.06 ID:8EfekdEx0
  
日は完全に沈み、外は完全な暗闇に包まれる。
空を覆う雲は消えることなく、月と星の薄明かりですら遮るのだ。
そんな街の片隅で、闇に溶け込むようにひっそりと佇む廃工場。
そこに、屍達と対峙する元『英雄』の姿があった。

<ヽ:::。Д:::゚)「グ……ググ……」
  _
( ゚∀゚)「まったくよお、テメエ等は殺しても殺しても減らないのな。
     まるでゴキブリみたいだぜ」

何百もの屍達は彼の周りを囲み、低い唸り声を上げていた。
暗闇の中で、真赤の眼光が無数に浮かんでいる。
倒しても次々に沸いて出る屍達の姿に、彼は溜息をついた。

<ヽ:::。Д:::゚)「グア……ウ……」
  _
( ゚∀゚)「おいおい、そんな目で俺を見るなよ。そんなに俺を喰いたいのか?」

屍の口元からは、唾液が零れ落ちている。
その眼光は獣のように鋭く、『J』を睨む。
  _
( ゚∀゚)「じゃあ、リクエスト通り……喰らわせてやんよ!!」

彼の言葉と共に左腕の義手は発光した。
屍達はそれを合図に一斉に彼に襲い掛かる。

<ヽ:::。Д:::゚)「グギャアアアアッ!!!!」



257:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:27:48.41 ID:8EfekdEx0
  
屍達は、四方から次々と駆けて来る。
人間の限界をも遥かに凌駕する速度だった。
腐敗した外見とは裏腹に、屍の基礎能力は凄まじいものだ。
  _
( ゚∀゚)「ったく、行儀が悪いな」

しかし、それでも彼は落ち着き払っていた。
迫り来る屍達を見据えながら、ゆっくりと両腕を上げ、構えを取る。

<ヽ:::。Д:::゚)「ガウッ!!!!」

屍達はみな一斉に牙を向け、爪を立て、彼の身体を引き裂こうとした。
多方向からの同時攻撃。
それは『J』が回避する場所が無いことを示していた。

<ヽ:::。Д:::゚)「グギャッ!!」

だが、次の瞬間屍達は互いに噛み付き、刻み合った。
彼等の猛襲は空を切り、同士討ちの形になったのだ。

「スローすぎて欠伸が出るぜ」

次に、上から声が響いた。
屍たちが見上げると、地面に立っていたはずの『J』の姿はいつの間にか宙に浮かんでいた。
彼は地で蠢く亡者に向かって吐き捨てる。
  _
( ゚∀゚)「面倒くせえから、一気に片付けてさせてもらうぜッ!!『Type-Sword』ッ!!」



260:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:29:31.98 ID:8EfekdEx0
  
同時に彼の左腕に変化が起こった。
義手の拳部分が、回転しながら腕内に引き込まれると、代わりに筒内から尖った光が漏れ出した。

目が眩むほどの黄光だ。
棒状に筒から伸びたと思えば、それは一瞬で一本の刃へと姿を変える。
半身ほどもある光の刃が、彼の左腕から飛び出したのだ。
彼は空中で一回転すると、大きく左腕を振り上げその身を群の中へと投げ出した。

<ヽ:::。Д:::゚)「ギ――」

屍達の口から声とも悲鳴とも言えない音が発せられると同時に、一閃の黄筋が群の中を走った。
  _
( ゚∀゚)「気をつけろよ……こいつはよく切れるんだぜ」

彼が地に降り立つと同時に、周りに居た屍の胴体は真二つに分かれる。
屍も自身が斬られたことが解らないほどの疾さであった。
そしてコンマ数秒ほど遅れて、胴体の切口からは黒い血が溢れ出す。

<ヽ:::。Д:::゚)「……グ……?」

<ヽ:::。Д:::゚)「……グ……グギャアアアアアアッ!!」

攻撃を受けなかった屍達はその光景に一瞬呆然としたが、仲間の死を悟ったかのように怒りの雄叫びを上げる。
  _
( ゚∀゚)「なんだ? お前等にも仲間意識ってもんがあったのか?
     だがボーッとするなよ。次はテメエ等の番だッ!!」

彼は鋭く吼えると、再び群の中へと身を飛び込ませる。



261:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:31:27.61 ID:8EfekdEx0
  
  _
(♯゚∀゚)「うおおおおおおおおおおッ!!」

彼は無心で、ただひたすら刃を振り回した。
腕を一振りする毎に、屍達の胴体は二つに裂かれていく。
復讐に燃えた彼の前では、圧倒的な数を誇っていた屍も全く歯が立たない。



――そして辺りが静まり返る頃、屍達は見る影も無く、只の肉片と化していた。
  _
(;゚∀゚)「ハアッ……ハアッ……ったく、全く歯ごたえが無いな」

その強気な言葉とは反対に、さすがに息が切れていた。
簡単に倒せるとはいえど、やはり数は多い。
彼は義手を元の形に戻すと、革のジャンバーからジッポライターを取り出した。

彼は屍を狩り終えた時に、決まってその場所を焼き払う。
屍達を完全に灰にするためだ。
体が千切れても、なお屍の体の一部は脈を打ち、這いずり回っている。
それはまさに、無念な想いの深さを表しているかのように見えた。
  _
( ゚∀゚)「……悪いが、さっさと燃やさせてもらうぜ」

そして、彼が周囲にガソリンを撒き、そこに火を付けようとした瞬間だった。



265:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:32:58.18 ID:8EfekdEx0
  
「グガアアアアアアッ!!」
  _
(;゚∀゚)「!?」

背後からだ。
後方から放たれた殺気に気づき、彼は咄嗟に前へと跳んだ。
刹那の差で、彼のいた空間を鋭い刃が抉る。
  _
(;゚∀゚)「うおっ!!」

彼は背中に何かが擦れる感触を味わった。
着ていた革のジャンバーが刃先によって裂けたのだ。
彼は体勢を立て直すとすぐに、敵の姿を確認しようとライターの火で辺りを照らす。

「グ……グウウウ……」
  _
(;゚∀゚)「……ッ!!」

そして、彼は火に照らされた敵の姿を見た瞬間、身体を強張らせた。
  _
(;゚∀゚)「……嘘だろ?……何でお前が……」

彼は信じられなかった。
いや、信じたくはなかった。
彼は目の前の出来事を否定したかった。
しかし、彼の意思と関係なく現実は突きつけられていた。



269:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:34:37.63 ID:8EfekdEx0
  
  _
(;゚∀゚)「何でお前が居るんだよ……クーッ!!!!」

川 ;;。V听)「……」

それは、彼が最も愛した者の姿だった。
彼女は、あの時の――屍によって殺されたあの日のままの姿で残っていた。

川 ;;。V听)「……ジョ……る……ジュ……」

彼女は彼の、『J』の名前を呼んだ。
しかし喉が潰れているのか、その声は不鮮明である。
  _
(;゚∀゚)「クー、お前一体……」

しかし、彼はその再会を喜ぶことはなかった。
皮肉なことに彼女自身が、彼女を殺した屍と化していたからだ。

川 ;;。V听)「わ……タシ……キみ……ヲ……」
  _
(;゚∀゚)「な……何が言いたい?」

彼女は何か言いたそうに、声を振り絞るように言葉を発する。
彼はそれを待たずに、彼女に問い掛ける。
だが、動揺のあまり彼の声は震えていた。

川 ;;。V∀゚)「……くイたイ」



272:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:36:20.18 ID:8EfekdEx0
  
彼女は、今までに見せたことの無いような表情を浮かべた。
それは元の彼女からは想像できない、醜悪な笑みだった。
口を避けんばかりに開き、牙を向け、唾液を垂れ流す。
まるで欲望をそのまま表情に映したような、そんな狂相であった。
  _
(;゚∀゚)「うああああああああああッ!!」

彼はそのまま後ずさった。
先程までの余裕はもはや、無い。
情けなく悲鳴を上げるその姿は、『英雄』の面影すら残していなかった。

川 ;;。V听)「グギャアアアアアアッ!!」

そして、彼女は駆け出した。
彼を喰うためだ。
その速度は、他の屍と同様に素早い。
彼女の爪は、容赦なく新鮮な肉を切り裂かんと振り上げられる。
  _
(;゚∀゚)「うおおおッ!!」

彼は咄嗟にそれを左腕で防いだ。
鈍い衝撃と共に、硬質な金属音が辺りに響き渡る。
  _
(;゚∀゚)「うわっ!! くっ!!や……止めてくれクー!! 俺だ!! ジョルジュだ!!
    俺が解らないのか!?」



276:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:37:50.93 ID:8EfekdEx0
  
必死に彼女の猛攻をかわしながら、彼は叫んだ。
彼女の爪と彼の左腕が交錯する度に、小さく火花が跳ねる。

川 ;;。V听)「グギャアアアアアアッ!!」

しかし、彼女の手が止まることはない。
むしろその表情は、彼を喰うことを悦んでいるようにも見える。
  _
(;゚∀゚)「くそっ!!」

彼は苦し紛れに彼女の腹を蹴った。
みり、という音を立てて、腐食した筋肉が潰れるような感覚が彼の足を伝う。

川 ;;。V听)「ギエエエエエエッツ!!」

彼女の身体はいとも簡単に後方へと吹き飛ぶ。
そして、二回、三回と転がると、そのまま地面へと倒れた。
  _
(;゚∀゚)「ハアッ……ハアッ……どうしてだよ……俺はお前の仇を討つために……」

川 ;;。V听)「ウ……ウ……ウ……」

眼前で横たわる彼女に対して、彼は問うた。
その一方で、彼女は苦しそうに声を上げながらも、殺気を含んだ眼差しを変えることは無かった。
  _
(;゚∀゚)「くそっ……」



277:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:39:20.99 ID:8EfekdEx0
  
彼は、左手の拳を見つめ思い切り握り締めた。
義手の能力を開放すれば、彼女を倒すことは容易い。
だが、彼はそれをするのを躊躇した。
変わり果てた姿といえど、それは愛した彼女本人なのだ。
  _
(;゚∀゚)「!?」

しかし、それがいけなかった。
彼が一瞬目を離した隙に彼女の姿は消えていたのだ。

川 ;;。V听)「グギャアアアアアアッ!!」

いや、消えたのではなかった。
一瞬の内に跳躍し、距離を詰め、彼の頭上に迫っていたのである。
  _
(;゚∀゚)「畜生オオオオオオッ!!」

彼は左拳を再び握り締めた。
思いきり、天に向かって義手を突き上げる。

川 ;;。V听)「ギャアアアアアアッ!!」

彼女も指先に力を入れ、爪を刃物のように鋭く伸ばした。
勢い良く、地に向かって右腕を振り下ろす。

鉄槌は彼女の顔に振り抜かれた。
凶刃は彼の腹に突き立てられた。
速さはほぼ互角。

そして、二人は衝突――



280:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:40:58.10 ID:8EfekdEx0
  
  _
(;゚∀゚)「……ぐ……は……」

屍の爪は深々と彼の腹に突き刺さっていた。
彼女の腐敗した腕に、どろり、と鮮血が伝う。

(;゚∀゚)「……ちく……しょう……」

彼は悔悟の言葉を吐くと、力無く地面へと崩れ落ちた。
口からは血が咳と共に溢れてくる。
今の一撃は、脂肪だけでなく内臓までをも傷つけていた。

彼の左拳は、彼女の右腕よりも早く、その標的を捉えていた。
だが、彼は寸前で拳を止めてしまった。
彼女の、クーの生きていた頃の笑顔が頭を掠めたのだ。

彼には彼女を殺すことは出来なかった。
彼は、彼女の為に今まで屍を殺し続けていたのである。

川 ;;。V∀゚)「ギ……ヒヒヒヒヒヒ」

しかし、彼女は躊躇うことはなかった。
目の前の肉を喰らう。
それだけが頭を支配していたのだ。

彼女は、小さく呻き声を漏らす彼の姿を見下ろすと、不気味にカタカタと音を立てて笑った。
  _
(;゚∀゚)「……ぐっ……喰えよ……お前に喰われるなら……本望だ」

彼は伏したまま、諦めたように呟く。



284:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:42:46.25 ID:8EfekdEx0
  
彼は刺される寸前まで、彼女が感情を取り戻すことを期待していたが、それも儚い願望で終る。
そして、最後の希望も潰えた今、彼は一つの『終末』を望んだ。
せめてならば、喰われることで彼女の血肉となり、愛する者と一つになることを願った。

その言葉を理解したのかどうかは解らないが、彼女は口を大きく開き彼の肉を喰らわんと齧り付くこうとする。
  _
(;-∀-)(クー、俺はもう――)

彼は諦めたようにそっと目を閉じた。
彼女の牙が突き立てられることを、そして、彼の肉体が喰いちぎられることを覚悟した。

「情けねえな……『英雄』さんよお……」

だが、彼の望みは何者かの声によって遮られた。
押し殺すような低い声が、静寂に割って入るように室内に響く。
次に、壁の方からぴきっ、と小さい亀裂音が走る。

川 ;;。V∀゚)「ギ……!?」

屍は何者かの出現に、身体を強張らせる。

「それでもお前は……俺のライバルかよッ!!」

ついには、亀裂音が次第に軋みへと変わり、廃工場全体を揺らす。
脆く、朽ちた天井は、みし、と音を立てて埃と破片を落とした。

「なあ、『J』よ……いいやっ!! 今のテメエは只の腰抜けだッ!!」

そして、叫びと共に壁は砕かれた。



288:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:44:25.83 ID:8EfekdEx0
  
「Go! Go! Muscle!」      リング〜に〜稲妻走り〜♪     炎の戦士をてらす〜♪


                   / タ       {!!! _ ヽ、
                  ,/  ノ        ~ `、  \        _
                  `、  `ヽ.   /⌒ヽ , ‐'`  ノ      /  `j
                    \  `ヽ(`・ω・´)" .ノ/    /  /`ー'
         ('A`)  ̄"⌒ヽ   `、ヽ.  ``Y"   r '      〈  `ヽ
      / 〉 ヽ' /    、 `、   i. 、   ¥   ノ       `、  ヽ
      γ  --‐ '    λ. ;  !   `、.` -‐´;`ー イ         }   (*゚ー゚)    ,-、、
     f   、   ヾ    /   )    i 彡 i ミ/         / ノ    ̄⌒ヽ   「  」
     !  ノヽ、._, '`"/  _,. '"     )    {         ノ  ' L     `ヽ./  /
     |   ̄`ー-`ヽ 〈  < _ ヽ.    /     `\      / , '    ノ\  ´  /
      !、__,,,  l ,\_,ソ ノ   /   /ヽ、  ヽ.     (     ∠_   ヽ、_, '
          〈'_,/ /   /   /  ノ    ヽ.   〉     i  、      ヽ
              | |  イ-、__  \  `ヽ    {   f  _,, ┘  「`ー-ァ   j
           l.__|   」_  l    \ \   |  i  f"     ノ   {  /
           _.|  .〔 l  l    ノ  _>  j  キ |  i⌒" ̄    /  /_
           〔___! '--'     <.,,_/~  〈   `、ヾ,,_〉       i___,,〕
                             `ー-‐'

     『筋肉教』テーマソング: 「キン肉マン GO FIGHT!」
       歌:串田アキラ
       作詞:森雪之丞 作曲:芹澤廣明 編曲:川上 了



293:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:46:07.78 ID:8EfekdEx0
  
('A`)「ひと〜つ!! 人世の脂を啜(すす)り」

(*゚ー゚)「ふた〜つ!! 不埒なドーピング三昧」

(`・ω・´)「みっつ!! 醜い脂肪の鬼を、退治てくれよ筋肉神!!」

(`・ω・´)「『筋肉レッド』シャキンッ!!」

('A`)「『筋肉ブルー』ドクオッ!!」

(*゚ー゚)「『筋肉ピンク』しぃッ!!」

('A`)(`・ω・´)(*゚ー゚)『筋肉教!! 只今見参ッ!!』

壊れた壁の外から現れたのは三人のマッチョだった。

そして、彼らは壁を素手で壊して中に入ると、それぞれ赤、青、桃のフンドシをつけて、ポーズを取り始めた。

川 ;。V∀゚)「ギ……?」

あまりの唐突さに、彼女は動きを止める。

(*゚ー゚)「すばらしいわ……私の大胸筋(うっとり」

('A`)「ゴッド・オブ・マッスル、もとい筋肉神さま!! 今日も決まりましたね!!」

(`・ω・´)「いや、ミスター・ドクオ。君のサイドチェストには上腕二頭筋に対する『愛』が足りない。
      残念ながら、50点というところだ」

<('A`;)「イエッサー!! ……筋肉は奥が深すぎる。さすが筋肉神さまだ」



298:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:47:58.21 ID:8EfekdEx0
  
(`・ω・´)「あと、ミス・しぃ。君はもう少し、大臀筋(尻の筋肉)で『希望』を表現したほうがいい。
      あまりに大胸筋に偏りすぎだ。筋肉にはバランスが必要なんだ」

(*゚ー゚)>「はっ、はいっコーチ!! 私はどこまでも付いていきます!!」

どうやら、ポージングの完成度がシャキン的に問題があったようだった。
ドクオとしぃは彼の指導を熱心に聞いている。
  _
(;゚∀゚)「へ? ドクオ? それに……誰こいつら?」

その不可思議な状況を『J』は間の抜けた表情で眺めていた。

川 ;;。V听)「……ギアアアアアアアッ!!」

しかし、屍はすぐに気持ちを切り替えると、三人を標的に疾走する。
  _
(;゚∀゚)「……ッ!? 馬鹿ッ!! ドクオ早く逃げろ!!」

それに気づくと『J』は思わず叫んだ。

(`・ω・´)「むっ……なんと、筋肉が腐っている!?
      これはいけない。トレーニングが足りないからこうなるんだ……」

シャキンは慌てることなく、迫り来る屍の筋肉を冷静に分析する。

('A`)「神よ、ここは俺が彼女を鍛えなおしましょう」

ドクオはシャキンに声を掛けて、一歩前に出た。
そして、おもむろに全身の筋肉に力を込める。
彼の大胸筋はみちり、と音を立て、風船のように膨れ上がった。



301:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:50:01.51 ID:8EfekdEx0
  
('A`)「一日24時間のハードトレーニングで鍛え上げたこの筋肉の力ッ!!
   しかと目に焼き付けるがいい!!」

                       ピカッ!!!

       |\ ,   ('A`) 、 _,,,/|
       /´`''" '"´``Y'""``'j   ヽ\      
      /{ ,ノ' i| ,. ,、 ,,|,,. 、_/´ ,-,,.;;l  \        
     / '、 ヾ ,`''-‐‐'''" ̄_{ ,ノi,、;;;ノ   \
    /  ヽ、,  ,.- ,.,'/`''`,,_ ,,/     \
   /    `''ゞ-‐'" `'ヽ、,,、,、,,r'       \
  /       ,ノ  ヾ  ,, ''";l          \
 /       ./        ;ヽ           \
/       .l   ヽ,,  ,/   ;;;l            \
        |    ,ヽ,, /    ;;;|            \

「『美しい筋肉の瞬き(ビューティフル・マッスル・フラッシュ)』ッ!!」

説明しよう。
『美しい筋肉の瞬き(ビューティフル・マッスル・フラッシュ)』、
略して『BMF』とは、筋肉から発せられるエネルギーと、
身体に塗られたシャキン特製のオイルとの化学反応により、
発光現象を起こす必殺技である!!



304:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:51:53.29 ID:8EfekdEx0
  
川 ;;。V听)「ギャアアアアアアッツ!!!!」

太陽の如き小麦色の聖なる光を受け、屍は目を覆いながら苦しみ始めた。

('A`)「ふっふっふっ、どうした? お前にはこの筋肉が眩し過ぎたのか?」
  _
(;゚∀゚)「え゛っ……嘘? なんか効いてるんですけど……」

一見馬鹿馬鹿しいこの技も、なぜか屍に通用していた。
屍は、もがくように地面を這いずり回っている。
『J』は今までのシリアスな展開が嘘だったかのようなこの有様に、少し凹んだ。

川 ;;。V听)「グ……ッ……」

たまらないとばかりに彼女は後ずさると、すぐに壁の方へと駆け出した。

川 ;;。V听)「……ギッ!!」

彼女は大きく腕を振り壁を爪で切り裂いた。
強固な造りのコンクリートの壁が、あっさりと切り刻まれる。
そして、筋肉に見とれる三人の横で、すぐに彼女は壁にできた穴から逃げ出してしまった。

('A`;)「あ、 しまった!!あまりに自分の筋肉が美しすぎて、止めを刺すのを忘れてしまった!!
    神よ!! 俺が追って止めを!!」



309:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:53:41.74 ID:8EfekdEx0
  
(`・ω・´)「いや、待ちたまえ。そこにいるナイスマッスルな彼の手当てが先だ。
      見たまえ、彼の腹筋が悲鳴を上げている」

<('A`;)「はっ!! 仰せのままに!!」

ドクオは急いで『J』の元に駆け寄った。
  _
(;゚∀゚)「ぐっ……くそ……」

『J』は苦咽を上げ、地面に横たわっていた。
血が傷口からとめどなく流れ落ち、床を赤く染め上げている。

('A`;)「『J』しっかりしろ!! 大丈夫か!!」
  _
(;゚∀゚)「……うっドクオ……今の……俺の気持ちを一言で表すと……」

('A`;)「しっかりと筋肉を保て!! おいッ!!」
  _
(;-∀-)「国語の……ゴリ松……」
  _
(;-∀-)「ガクッ」

('A`;)「『J』――ッ!!」

『J』は意味不明な言葉を呟き、意識を失った。

第三話 完



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