( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです

313:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:55:33.01 ID:8EfekdEx0
  
第四話 「衝突」


(=-ω-)ノ「う……ん……」

(=゚ω゚)ノ「ん……僕は……どうしたんだょぅ?」

( ^ω^)「おっ!! 目が覚めたお!!」

('、`;川「ふう……これで大丈夫ね」

『バーボンハウス』から『J』が去って三日後。
彼らは依然として廃墟と化した街の中にいた。

(=゚ω゚)ノ「全然痛くないんだょぅ!! ありがとうだょぅ!!」

('、`;川「じゃあ、気をつけてね」

ペニサスとブーンは、あの日からずっと傷付いた住民の治療に当たっている。
幸い、ペニサスがペンダントの治療の力を使いこなすことが出来たため、
薬や医療機器を使用しなくても、彼等の傷を癒すことができた。
ペンダントを使った治療は評判を呼び、連日、長蛇の列を作るほどに人が集まっている。

(;^ω^)「でもペニサスさん、大丈夫ですかお? 休んだほうが……」

一向に短くならない列を眺めながら、彼は彼女の体を心配した。
彼女が治療を続ける度に、額からは汗が流れ、息が弱くなっていく。
彼には、彼女が消耗しきっているように見えた。



316:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:57:11.21 ID:8EfekdEx0
  
('、`;川「……ええ、まだまだ大丈夫よ。
     それからブーンちゃん、別に敬語じゃなくても大丈夫よ」

しかし、彼女は彼の気遣いをやんわりと断ると、気丈に見えるように振舞った。

(;^ω^)「いや……でも……」

('、`;川「いいのよ。遠慮しないで頂戴」

(;^ω^)「は……はあ……」

彼女はブーンが他人とは分かっているものの、やはり彼の顔を見る度に自分の孫を思い出す。
そのせいで、つい孫と同様に彼と接してしまうようであった。
だが、ブーンは照れ臭いこともあり、彼女の態度に未だ戸惑っていた。

/ ,' 3「あの……まだですかな?」

Σ('、`;川「あ、はい、只今!!」

( ・∀・)「こっちはまだかな? 一時間以上待ってるんだけど」

(;^ω^)「すみませんお!! もうちょっとなのでしばらくお待ちくださいお!!」

二人が語り合っている最中にも、次々と列に並ぶ者が押し寄せてくる。
彼らは、それをさばくだけで精一杯だった。



317:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 01:58:48.30 ID:8EfekdEx0
  
( ^ω^)「今日も大変でしたお。でもお陰で食料と水も分けてもらえたお!!」

('、`*川「そうだね。ショボンさんも喜ぶかしらねえ」

結局、治療は外が完全に暗くなるまで続いた。

彼らはあれから『バーボンハウス』を拠点に活動を行っている。
ショボンは一日だけでなく、以降も宿代わりに店を提供し続けた。
二人は彼の申し出を遠慮したのだが、強引なショボンの意向により、結局折れることとなる。
それでは悪いと思った二人は、その代わりに、分けてもらった物資をショボンにも与えることに決めたのだ。

( ^ω^)「それにしても外は真っ暗ですお。早く帰らないと危ないお」

('、`*川「夜は物騒だってショボンさんが言ってたからねえ。私達も気をつけないと」

日を追うごとに患者は増え、帰る時間も徐々に遅くなっていた。
夜は強盗などのならず者や、最悪の場合、屍に遭遇する危険もあったため、彼らは辺りを警戒しながら道中を行く。

「うう……ううう……」

( ^ω^)「おっ?」

そんな中でブーンは何かに気づいた。
人がすすり泣くような、そんなか細い声であった。

('、`*川「? どうしたのブーンちゃん?」

( ^ω^)「何か声がするんですお」

('、`*川「ん……本当ね」



322:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:00:28.16 ID:8EfekdEx0
  
耳を澄ませて周囲を伺うと、ちょうど彼等の横にある、崩れかかったドーム状の建物からその声は聞こえてくる。

('、`*川「もしかしたら、怪我で動けない人がいるのかもしれないわ」

(;^ω^)「おっ? それは大変ですお。さっそく行ってみるお」

二人は決断すると、すぐに建物の中へと入った。
中は暗く、はっきりと様子が伺えない。
そこで、ブーンはショボンから借りた懐中電灯があることを思い出した。
すかさず懐からそれを取り出すと、スイッチを入れて、辺りを照らす。

(;^ω^)「なんだか不気味だお……」

('、`*川「大丈夫よ。いざとなったら私がついているわ」

屋内は家具や衣服で散乱し、生活の跡を漂わせている。
どうやら居住用に作られた民家であるようだった。

(;^ω^)「……誰もいないお」

('、`*川「随分埃が酷いわね。しばらく人が住んでいないのかしら?」

彼らは家中を歩き回るが、人影はどこにも見当たらない。
手当たり次第にドアを開けたり、押入れを探ったりするものの、気配すら感じられない。

(;^ω^)「あっちの部屋には誰も居ませんお」

('、`*川「ここもだめね……」



326:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:02:07.27 ID:8EfekdEx0
  
こうして二人の探索は、最後に一番奥の部屋を残すのみになった。

(;^ω^)「あとは、この部屋だけだお」

('、`*川「……? 何か物音が」

扉の奥からは水滴が落ちるような、湿った音が聴こえてくる。

(;^ω^)「もしかして幽霊とか……」

('、`*川「ふふふ、怖がりなのね。心配ないわ」

彼女は怯えきった表情のブーンに対して微笑みかけると、躊躇することなく扉を開いた。

扉の先は暗く、よく見ることが出来なかった。
しかし、目を凝らすとそこには、いくつかの影のようなわだかまりが存在していた。
同時に、つんとした臭気が二人の鼻に飛び込んで来る。

(;^ω^)「ううっ……何か変な匂いが……誰かいるんですかお?」

「……」

ブーンは中に向かって問い掛けるも、返事はない。
しかし、誰かが居るのはかろうじて解った。
恐る恐るブーンは震える手を押さえ、懐中電灯で室内を照らした。

('、`;川(;゚ω゚)『……ッ……!?』

しかし、彼らは驚愕の光景を目の当たりにする。



329:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:03:41.08 ID:8EfekdEx0
  
室内には人影が三つあった。
一人は、血に染まって横たわる男の姿。
一人は、頭と、手足と、胴体が離れ離れになった女の姿。

そして、もう一人は、その二人に無心に齧り付く者の姿だ。

<ヽ:::。Д:::゚)「……う……ウ……」

異様な姿の男だった。

皮膚は腐りきっており、傷口からは脂肪の層が覗いている。
両足は不自然な方向に曲がっており、骨が不自然に突き出ている。
しかし、酷い損傷にも関わらず、その男は平然と動いていた。

(;゚ω゚)「うあああああああああああッ!!」

('Д`;川「きゃあああああああああッ!!」

――二人は直感した。
目の前に居る存在、それはまさしくショボンが言っていた『屍』である、と。

(;゚ω゚)「……に、逃げるお!!」

ブーンは尋常でない屍の姿に危険を察知すると、ペニサスの手を取り、急いで駆け出した。
はずみで懐中電灯を落としてしまったが、拾う余裕など無い。
ただ、ただ彼らは夢中で走り抜けた。



334:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:05:34.64 ID:8EfekdEx0
  
  _
(;-∀-)「……や……めろ」
  _
(;゚∀゚)「やめろおおおおおおおッ!!」

突然の叫びと共に、『J』は目を醒ました。
何か悪い夢でも見ていたせいか、彼の体は汗で湿っている。
  _
(;゚∀゚)「……ハアッ……ハアッ……?」

最初に彼の目に飛び込んできたのは、白いコンクリートの天井だ。
しかし、所々ひび割れており、老朽が進んだ建物の中のようであった。
  _
(;゚∀゚)「ん? ……ここは?」

「気がつかれましたか? 随分とうなされていたようですね」

夢と現実の境を彷徨っていた彼の横から、不意に声が掛けられた。
女性の高い声だった。
  _
(;゚∀゚)「俺は……一体?」

(*゚ー゚)「ここは『筋肉教』本部ですよ。
    と言っても、放置されていた建物を勝手に借りただけですけどね」

傍らには、黒髪を首元程まで伸ばした二十代前半ほどの女性が居た。
どこか表情にあどけなさを残しつつも、清楚な雰囲気を持ったような、
可愛らしさと美しさを兼ね備えた印象の女性だ。
彼女は、天使のような笑顔でにこやかに語り掛けてきた。



336:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:07:04.97 ID:8EfekdEx0
  
  _
(;゚∀゚)「あんたは確か……あの廃工場で」

彼には、彼女の顔に見覚えがあった。
廃工場でドクオと共に現れた三人の中にいた女性である。

(*゚ー゚)「ええ。大怪我を負った貴方を保護したのは私達ですよ。
     どうやらプロテインが効いているようですね」
  _
(;゚∀゚)「あ、そういえば、口の中が苦い……って、そうだ!! クーは!? クーはどうしたッ!?」

彼は、唐突に何かを思い出したように大声を出し、乱暴に彼女の肩を掴むと問い詰めるように訊いた。

(;*゚ー゚)「え? いや、落ち着いてください。 あの逃げていった……女性の屍のことですか?」
  _
(;゚∀゚)「逃げた……だと?」

それを聞くと、彼の表情は一瞬にして凍りつく。

(*゚ー゚)「……はい。残念ながら取り逃がしてしまいまして」
  _
(;゚∀゚)「そうか……くっ!!」

すぐさま彼は立ち上がろうとするが、その瞬間、彼の腹部に圧し掛かるような激痛が走る。

(*゚ー゚)「あっ、だめです!! まだ傷が塞がってないんですから」

彼女は慌てて、彼を押さえつけようとする。



340:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:08:42.63 ID:8EfekdEx0
  
  _
(;゚∀゚)「……へっ……ふがいねえな」

彼は自分の腹を見つめながら呟く。
傷口には、痛々しく包帯が巻かれていた。

('A`)「おう、気が付いたかよ」

低い声と共に、二人の居た部屋の扉が開き、一人の男が入ってきた。
彼は、男の顔にも見覚えがあった。
それは、かつて敵同士として戦っていた元『悪の組織』首領、ドクオである。
  _
(;゚∀゚)「ドクオ……お前が……」

('A`*)「べっ、別に、ゴッド・オブ・マッスル、
    もとい筋肉神さまの命令だから助けてやっただけだからねっ!!」

ドクオは、もはやブームが過ぎ去ったツンデレ風に言葉を返した。

だが、次に『J』の口から出てきた言葉は意外なものであった。
  _
(;゚∀゚)「……なぜ助けたんだ」

('A`)「……は?」

ドクオは耳を疑った。
彼が『J』を助けた理由は、決してシャキンの命令だけではない。
かつての好敵手に対する、友情にも似た想いがそうさせたからである。



343:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:10:16.76 ID:8EfekdEx0
  
  _
(♯゚∀゚)「何で助けたんだよ!! 誰も助けを呼んだ覚えはねえぞ!!」

しかし『J』は礼を言うどころか、声を荒げてこう言い放った。

('A`♯)「……てめえ、何を言うかと思えば」

彼の言葉にドクオは激昂する。
声は押し殺していたが、その単語一つ一つに迫力が込もっている。
  _
(♯゚∀゚)「……どうして……あのまま死なせてくれなかったんだ!!」

('A`♯)「おい!! ふざけたこと言ってんじゃねえぞコラ!!」

ドクオは感情を爆発させるように叫び、
『J』の着ていた革のジャンバーの襟元を掴んだ。
そして、右手を大きく振り上げ、拳を『J』へと向ける。
  _
(♯゚∀゚)「どうした? 殴れよ?
     ……やれよ。『英雄』様をぶん殴れる機会なんてこの先ねえぞ!!」

一方で、『J』は真直ぐにドクオを見据えたまま挑発する。
火花を散らすかのように、二人の視線が交わる。

(;*゚ー゚)「ちょっ、ちょっと? ドクオさん? 落ち着いて!!」

それを見てしぃは慌てて間に割って入り、二人を止めようとした。
だが、彼らは睨み合うのを止めない。
緊迫した空気が室内を包む。



345:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:11:56.51 ID:8EfekdEx0
  
しかし、それは短い間だった。
ドクオが『J』の襟首をあっさりと放したのだ。

('A`♯)「ちっ。もう俺の好敵手だった……『英雄』だった男は死んだ。
     目の前にいる奴は只の腰抜け野郎だ。そんな奴を殴ったとなれば、俺の名が廃る」

そして、皮肉を込めた言葉を吐き捨てた。
彼の表情は苦虫を噛みつぶしたように渋っている。

次に彼は、『J』から視線を放した後、二人の間にいた彼女に視線を向け、声を掛ける。

('A`)「しぃちゃん行くぞ。そんな奴に手当ては必要ない」

(;*゚ー゚)「え? でも……」

目の前の展開に戸惑うしぃを横目に、
ドクオはドアを乱暴に開け、部屋から飛び出していった。

(;*゚ー゚)「……ごめんなさいね『J』さん」

彼の代わりに、しぃは慌てて『J』に謝罪すると、ドクオを追いかけるように部屋から出て行ってしまった。
  _
(♯゚∀゚)「けっ」

一人取り残された『J』は、ドアが閉じられるのを確認すると、小さく舌打ちをした。



347:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:13:55.29 ID:8EfekdEx0
  
――ところで、あまり本筋と関係ないが、ここで読者の皆さんに思い出して欲しい。

それは、しぃはマッチョだということです。
顔は美人でかわいいですが、首から下は戸愚呂(弟)のように マ ッ チ ョ です。

ついでにドクオもフンドシ一丁の マ ッ チ ョ です。
そして『J』もいい体をしています。

以上を頭に入れつつもう一度上のシーンを読み直すと、また違った楽しみ方ができると思います。



353:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:15:52.22 ID:8EfekdEx0
  
  _
( ゚∀゚)「……」

彼は、再び横になり、ぼんやりと天井を眺めた。
暫くの間、その姿勢のまま動かなかった。

だが、それも長くは続かなかった。
  _
(;゚∀゚)「イテテ……」

じっとしているのが性に合わないのか、彼は痛みを堪えながら無理矢理身体を起こし、立ち上がった。
そして、壁に沿って手をつきながらゆっくりと歩いた。
一歩一歩進むたびに、腹の底から激痛が走る。
しかし、それでも彼は歩くのを止めなかった。
  _
(;゚∀゚)「くそったれ……」

彼はそっとドアを開けた。
外を見渡すと細い廊下が続いていたが、それほど長いものではなかった。
そのまま、壁に寄りかかる形で彼は足を進める。
  _
(;゚∀゚)「暗いな……夜か」

途中、窓から外の景色が覗いた。
外は暗く、その様子ははっきりとわからなかったが、
辛うじて周りの建物の高さから自分が居る階が二階であることがわかった。

彼は、廊下の端にある下り階段を目指した。



356:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:20:25.29 ID:8EfekdEx0
  
  _
(;゚∀゚)「……」

階下に降り立つと、すぐに彼の目に異様な光景が飛び込んできた。

(`・ω・´)「ダブルバイセップス・フロントッ!!」

『オッス!!』

そこは、マッチョの楽園であった。
老若男女問わず、筋肉の鎧を纏った数百もの人間が、
ダブルバイセップス・フロントの掛け声と共にポージングをしていたのだ。
(参考:ttp://club.pep.ne.jp/~mikami1/pose_double-biceps-front.jpg)

(`・ω・´)「甘いぞッ!! 大腿直筋で『悲しみ』の表現が出来ていないッ!!」

『オッス!!』

部屋は全面鏡張りになっており、実際にそこに居る以上のマッチョの肉体が、上下左右に映し出されていた。
そして、鏡に映る者たちの表情は皆、恍惚としているようにも見えた。
  _
(;゚∀゚)「なんじゃ…こりゃ…」

そんな光景を初めて見た彼にとって、そこは異世界であった。

(`・ω・´)「…ん? 気がついたのかい? そこのナイス・マッスルな君。
      どうやら、私特製のプロテインが効いたみたいだね」

シャキンは『J』の姿を見ると、おもむろに近づき声を掛けてきた。



357:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:22:13.82 ID:8EfekdEx0
  
  _
(;゚∀゚)(俺にプロテイン飲ませたのコイツかよッ!!)

この瞬間、異世界編Bパートの突っ込み役は彼に決定したようであった。

(`・ω・´)「どうだい? 君の美しい筋肉に磨きをかける為に、一緒に筋トレしないか?」
  _
(;゚∀゚)「断るッ!! っていうか、なんなんだよここは?」

(`・ω・´)「ここは筋肉神こと、私シャキンが率いる『筋肉教』の本部さ。
      ちなみにこの部屋は、私の考案したものでね。
      合わせ鏡の要領で一定の角度にそれぞれ配置することで、
      我々の美しい肉体を無限に映すことができるんだ。どうだい? 素晴らしいだろ?
      因みにこの世界でも特許出願中だから、パクらないでくれよ」
  _
(;゚∀゚)「いや、そうじゃねえよ。っていうか、他でもそんなことやってるのかよ……」

シャキンは異世界でも、同じことをやっていた。

(`・ω・´)「で、腹筋はもういいのかい?」
  _
( ゚∀゚)「ああ。ところで出口はどこだ?」

(`・ω・´)「あそこだが……それがどうしたんだい?」

シャキンは鏡のうちの一つを指差した。
そこには取っ手がついており、扉と一体化した形になっている。



361:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:25:25.63 ID:8EfekdEx0
  
  _
(;゚∀゚)「……そこまでやるかよ」

(`・ω・´)「ああ。鏡が一個でも欠けると、美しい筋肉が一部見えなくなってしまうからね」
  _
(;゚∀゚)「ったく……付き合いきれねえよ……悪いが帰らせてもらうぜ」

『J』はそう言うと、身体をふらつかせながら出口へと向かっていく。

(`・ω・´)「待ちたまえ!! 君の腹筋はまだ悲鳴を上げているではないか!!」
  _
( ゚∀゚)「……フン、助けを頼んだ覚えはねえ。悪いが礼は言わないぜ」

彼は一言だけ言うと、シャキンが止めるのも聞かず、扉を開け、さっさと出て行ってしまった。

(`・ω・´)「やれやれ……つれないね。せっかく素晴らしい筋肉を持っているのに。
      で、ミスター・ドクオ。止めなくていいのかい? ユア・フレンズなんだろう?」

シャキンは階段の陰に隠れていたドクオに声を掛ける。

('A`)「……いいんです。元々友人ではないですし」

彼は鏡張りの部屋に足を踏み入れると、興味が無さそうな様子でそっけなく答えた。

(`・ω・´)「……全く、素直じゃないね」

シャキンは溜息を付きながら呟く。
彼だけは、ドクオの筋肉が悲しみに震えていることを知っていた。



362:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:26:53.92 ID:8EfekdEx0
  
(;゚ω゚)「……ハアッ……ハアッ」

('、`;川「……ハアッ……ハアッ」

二人は廃墟と化した街の中を走っていた。
互いの手を取りながら、何かから必死に逃れようと駆ける。
足元に転がるアスファルトの破片に躓きそうになりながらも、それでも懸命に足を前へと進めた。

<ヽ:::。Д:::゚)「ガアアアッ!!!!」

数百メートル後方には屍が迫っていた。
屍は、足を引きずるようにぎこちなく走っていたが、
それでも二人に追いつかんばかりの速度で追いかけて来る。

('、`;川「ハアッ……ハアッ……来たわ!!」

ペニサスは後方の屍の姿を確認すると、前を行くブーンに向かって叫ぶ。

(;゚ω゚)「うああああああッ!!!!」

声に反応するように、彼はさらに足の回転を速めた。

<ヽ:::。Д:::゚)「グアアアアッ!!」

しかし、屍も同時に速度を上げた。
足の骨が途中で折れているにも関わらず、痛みを感じていないかのように、地面を凄まじい力で蹴り上げる。
みるみる間に二人との間隔は縮まっていく。



365:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:29:30.47 ID:8EfekdEx0
  
('、`;川「もう限界よ!! ブーンちゃん私を置いて逃げてッ!!」

彼女自身もこれ以上早く走れないと悟ったのか、一人で逃げるよう促した。

(;゚ω゚)「そんなことできないおッ!!」

彼は彼女の言葉を強く否定すると、さらに強く彼女の手を握る。

(;゚ω゚)「……ッ!! あそこに逃げ込むおッ!!」

彼は目の前に何かを発見した。
細長い五角柱の、奇妙な形をしたビルであった。
それを確認すると、二人はすぐにビルの入口に向かって駆け出していく。

(;゚ω゚)「ここから入るおッ!!」

幸いなことに、入口の扉は破壊されていたため、彼らは簡単に中に入ることが出来た。

ビルの内部はエントランスホールのような、大きく上部まで開けた筒状の空間になっていた。
上を見上げると、中心から渦を巻くように螺旋状の階段が延々と続いている。
それに続くように、階段各階の区切りからは、外側に向かって橋のような渡し廊下が放射状に伸びていた。

(;゚ω゚)「……上だおッ!!」

彼は瞬時にこのビルの構造を把握すると、すぐに階段に向かって走った。

(;゚ω゚)「……ハアッ……ハアッ」

('、`;川「……ハアッ……ハアッ」



371:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:31:42.23 ID:8EfekdEx0
  
二人は無我夢中で階段を駆け上がる。
吐き出される息はさらに激しくなり、心臓の鼓動はさらに強く脈打つ。

ブーンは三十メートル程登った後、様子を見るために、ふと下に振り返った。

(;゚ω゚)「えっ!?」

だが、状況は先ほどよりも悪くなっていた。

『グオオオオオオオッ!!』

いつの間にか仲間を呼んだのであろうか、後を追う屍の数がさらに増えていたのだ。
その数は、優に二十を超えるまでに達している。
屍達は階段を這いずるように、猛スピードで彼等のすぐ下にまで近づいて来る。

(;゚ω゚)「くそおおおおッ!!!!」

彼は、足元に転がる瓦礫の破片を急いで手に取ると、屍達に向かって石つぶてを放つ。

『ギッ……ギ……』

屍達はそれに反応して嫌がるように声を上げるも、一向に足と手を止める様子は無い。

('、`;川「ブーンちゃん!! あそこッ!!」

彼の背後でペニサスはある方向を指差す。
視線を向けると、そこには金属で出来た扉があった。
階段から真横に伸びた渡し廊下の向こうに、それは存在していた。



372:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:33:34.70 ID:8EfekdEx0
  
(;゚ω゚)「わかったおッ!!」

このまま追いつかれるのは時間の問題であった。
その上、彼女の体力ももう限界に近い。
彼はそう判断すると、石を投擲するのを止め、素早く彼女の手を引き扉に向かって走った。

『グアアアアッ!!!!』

しかし、二人が扉の前に辿り着いた時には既に、屍達は渡し廊下の入口にまで迫っていた。
彼らは急いで中へと飛び込み、扉を閉める。

(;゚ω゚)「くそッ!!」

彼は急いでノブに付属していた鍵を回すと、室内を物色する。
それと同時に、外側から扉を叩く鈍い衝撃が響く。

(;゚ω゚)「……」

彼等が飛び込んだその先は、どうやらオフィスとして使われていたと思われる広めの部屋であった。

外側には、割れた窓が点々と連なっている。
床には様々な書類が散乱している。
大分荒れ果てていたものの、机や椅子や棚など、そこに存在しているものはそのままの形で残っていた。

(;゚ω゚)「早く扉を塞ぐおッ!!」

ブーンは急いで机や棚を引っ張り、次々と入口を塞いだ。
ペニサスもそれに続くかのように、必死で椅子や小さな机などを運んでいく。
そして部屋の中の家具が無くなった頃には、強固なバリケードが出来上がっていた。



376:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:35:26.66 ID:8EfekdEx0
  
(;゚ω゚)「ハアッ……ハアッ……これで少しは持つお」

('、`;川「お願い……神様……助けて……」

二人は机と椅子と棚で出来たバリケードを、不安げに見つめていた。
依然、扉を叩く音は鳴り止まない。
衝突音が室内に響く度に、部屋全体は軋むように揺れる。
頑丈に見えた扉は、徐々にその形を歪ませていった。

『グオオオオッ!!!!』

突然、巨大な唸り声が響くとともに、扉に大きな穴が空いた。
その中から、鋭い爪を持った屍の腕が伸びてくる。

(;゚ω゚)「……ッ!! そんな……」

次第に、扉の穴の数が増えていく。
その奥からは無数の赤い眼が覗いている。

そして、遂に扉は跡形も無く破られてしまった。

<ヽ:::。Д:::゚)「グアアアアアアッ!!!!」

屍達は、我先にと入口に雪崩れ込んでくる。
塞いでいたバリケードの山も、がらがらと音を立てて次々と破壊されてしまう。



379:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:37:14.09 ID:8EfekdEx0
  
(;゚ω゚)「ああああ……もう……だめだお……」

彼はそれを呆然と眺めることしか出来なかった。
バリケードを張ることで数時間は稼げると思っていたが、それも一瞬にして破られてしまった。

('、`;川「……せめてブーンちゃんだけでも…お願い……」

彼女は祈った。
心の底から祈った。

その瞬間、ペンダントは小さく暖かい七光を放った。
まるで蛍の光の如く点滅するような、そんな儚い輝きであった。
彼女はそれに気がつくと、何かに期待するかのように前方を見つめる。

<ヽ:::。Д:::゚)「グググ……」

しかし、辺りに特に変わった変化は見られなかった。
それどころか、彼女の望みも虚しく、バリケードを潜り抜けてきた屍の一匹がゆっくりと近づいて来る。
先頭の屍に続くかのように他の屍達も山の間を潜り抜けていく。

(;゚ω゚)「うあああああああああッ!!!!」

彼は手当たり次第に床に転がるものを屍に投げつけた。
しかし全く通用していないのか、屍は彼に険しく尖った牙を向ける。
その貌は、新鮮な肉を食い尽くせることを悦ぶかのように歪んでいた。

('、`;川「お願い……誰か助けてッ――」



382:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:39:37.16 ID:8EfekdEx0
  
「君達、伏せるんだ!!!!」

窓の外からであった。
突然、彼等の背後から叫び声が響いてくる。

(;゚ω゚)「……ッ!!」

('、`;川「きゃっ!!」

その声の主が誰かは解らなかったが、咄嗟に二人は何者かによって押し倒されるような格好で床に転がった。
そして、次に信じられないような光景を目の当たりにする。

熱と光だった。

生暖かい空気が膨らむとともに、白の筋が窓外から放たれ屍達に降り注がれたのだ。
閃光は屍達の体を貫き、室内の全てを巻き込んで蒸発させていく。
同時に、耳を裂くほどの高音と、目を開けられないほどの爆風が一帯を埋め尽くした。

<ヽ:::。Д:::゚)「ギ――」

('、`;川(;゚ω゚)『――ッ!!』

床は激しく揺さぶられ、辺りに熱風が吹きすさぶ。
二人は目を閉じて、地面にしがみ付くことしか出来なかった。
しかし、想像以上の激しさに二人の意識は遠のいていく――



387:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:41:15.50 ID:8EfekdEx0
  
(;-ω-)「……う…ん……イテテ」

――そして全てが収まった頃、ブーンはようやく目を覚ました。
横になりながら辺りを伺うと、爆発の余韻が残っているのか、辺りにはうっすらと砂埃が舞い上がっている。

「気がついたかい?」

そんな彼に再び何者かの声が掛けられた。
しかし、先程とは違って穏やかな声であった。
きいんという耳鳴りが響く中、彼は重い体をゆっくりと起こすと声のする方向へと振り向いた。

(;^ω^)「ショ……ショボンさん!?」

(´・ω・`)ノ「やあ」

それはショボンだった。
彼は何事も無かったかのような表情で、横で平然と立っていたのだ。

(;^ω^)「……もしかして、今のショボンさんが?」

顔を上げて辺りの様子を伺いながら、ブーンは聞いた。
彼らのいた一帯は壁と床だけ残し、まっさらな空間に変わっている。

(´・ω・`)「うん。ちょっとやりすぎちゃったかな? テヘッ(はあと」

ショボンはウインクして、小さく舌を出しながら可愛らしい仕草で答えた。
それは正直、三十代の男がするには気持ちの悪い仕草であった。

('、`;川「……う…ん? ……助かったの?」



390:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:42:51.13 ID:8EfekdEx0
  
そのやり取りの中、ペニサスの意識も戻った。
ブーンはそれに気がつくと、すぐさま彼女の元に詰め寄る。

(;^ω^)「ショボンさんが助けてくれたんですお。ペニサスさん、大丈夫かお?」

('、`;川「え……ええ。何とか。……でもこれは……すごいねえ」

彼女はブーンに背中を支えられながら体を起こした。
そして、すっかり変わり果てた部屋を見つめて呆然とする。

(´・ω・`)「二人とも無事で良かった。ギリギリ間に合ったみたいだね」

(;^ω^)「でもどうやって屍を倒したんだお?」

(´・ω・`)「ああ、『これ』さ」

ショボンはブーンの問いに、窓の外を目配せしながら答えた。

(;^ω^)「……? なんにもないお」

しかし、窓の外は荒れ果てた街が広がるばかりで、それ以外には何も見当たらない。

(´・ω・`)「あ、光学迷彩を解除するのを忘れていた。……入ってきていいよ」

('、`;川(;^ω^)「!!」

ショボンは一言だけ言うと、その瞬間、外壁の一部に亀裂が走った。
そして、ガラガラと音を立てて壁が崩れていく。
二人はそれに気付くと、急いで瓦礫の方に視線を向けた。



391:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:44:22.73 ID:8EfekdEx0
  
('、`;川(;^ω^)「???」

外壁の欠片の上では、陽炎のようにはっきりとしない透明な輪郭が宙に浮かんでいた。

(´・ω・`)「光学迷彩解除」

そして、ショボンの声とともに『それ』は姿を現した。

(;^ω^)「これは……」

巨大な機械であった。

直径十メートルはあろうかという巨体に、青く塗られた金属のボディ。
中心は五メートル程の真球形をしており、
横側からは脚のように、先に車輪が付いたアームが八本、伸びている。

(;^ω^)「……蜘蛛?」

それは彼の言うとおり、機械で造られた巨大な蜘蛛にも見えた。

胴体の中心では、円形の電灯が三つ眼のように赤光を放っていた。
そして内部からはエンジンが回転する低音と、ギアが絡み合うような高音が混ざった無機質な音が聞こえてくる。

('、`;川「……ハイカラだねえ」

見たこともないような構造のそれを目の当たりにした二人は、その奇抜な形状に驚きを隠すことができなかった。

(´・ω・`)「屍をやっつけたのはこいつさ。ああ、そういえば君達はこれを見るのが初めてだったね。
       これは僕が対屍用に開発した蜘蛛型多脚戦車で、
       正式名称『TK-009』、通称『断駒(たちこま)』っていうんだ」



394:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 02:46:15.86 ID:8EfekdEx0
  
(;^ω^)「どっかで聞いたことある名前ですお……」

そして、ショボンは目の前の戦車について説明を始めた。
それに対してブーンはすかさず突っ込みを入れる。

(;^ω^)「ともかく、助けてくれてありがとうございますお」

('、`;川「ショボンさん、ありがとうね」

とはいえ、この目の前の奇怪な機械に、二人は命を救われたのだ。
彼らはすかさずショボンに礼を言った。

(´・ω・`)「ちなみにこの『断駒』には、人工知能、いわゆるAIと、
      光学迷彩機能が付いていて……」

(;^ω^)「ちょっwwwそれ以上は著作権的に危ないですお」

しかし、ショボンはそれを無視して、自分の発明品について延々と語ろうとした。
見えない力を感じたのか、それを必死でブーンが止める。

(´・ω・`)「まあ、とりあえず怪我が無いようだし、無事で何よりだよ」

('、`;川「でも、ショボンさんがどうしてここに?」

(´・ω・`)「その前にこの辺りは危険だ。また屍が来るかもしれないからね。
       詳しい話は『バーボンハウス』でしようか」

こうして、彼らは『断駒』に乗って『バーボンハウス』へと戻ることになった。

第四話 完



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