( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです

589:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 04:47:35.47 ID:8EfekdEx0
  
最終話 「鋼の愚神、降臨す」


( ^ω^)「!? 来たおっ!!」

ブーンは空を仰ぐと、ある気配を感じ取った。

('、`;川「これが…」

ペニサスも同時に天を見上げる。

空を覆っていた暗雲は、渦を巻くように巨大な口を空けた。
光の筋が世界を照らすように降り注ぐ。
その輝きは七つの色彩を複雑に交えていた。
そして、街に存在していた全てのものを七色に染め上げていく。

次に、渦の中から一体の影が降臨する。
それは、人の形をしていた。

二本の脚に、二本の腕。
ただ、その規模は巨大なものであった。
高さは五十メートルにも、重量は六千トンにも及んだ。
腕力は空を裂くほどの威力を、脚力は地を割るほどの速度を有していた。

やがて、金属の巨体は七色の虹のような光を携え、長剣を握り締めながらその脚で地上へと降り立った。
それは、この世界を救う最後の『希望』、鋼鉄の巨人――ダイヴィッパーの姿。



591:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 04:49:35.56 ID:8EfekdEx0
  
( ^ω^)「……」

ブーンは、鋼鉄の巨人を黙して見上げていた。

('、`;川「ブーン……ちゃん?」

ペニサスが、その横で彼に問い掛ける。
その眼差しには、何か複雑な思いが秘められているようだった。
しかし、彼は決意をしたかのように、真直ぐな視線で彼女を見据えこう言った。

( ^ω^)「行ってくるお。僕は……『自分ができること』をやってくるんだお」

('、`;川「……でも」

静かに答える彼に対して、彼女は不安げな表情を浮かべた。
これから激闘の場に赴く彼の身を案じると、身を裂かれるような思いに駆られ引き止めずにはいられなかった。

( ^ω^)「大丈夫だお!! かならず帰ってくるお!!」

だが、彼女の思いとは反対に、彼は自信に満ちた笑顔で明るくそう答えた。

彼は信じていた。
必ず勝つことを。
いや、勝たなければいけないことを。

この世界で命を賭して戦う者たちの姿を見ると、心の底から勇気が湧いてくる。
彼の貌には、先程までの怯えや恐れは見られなかった。
それは、成熟していない子供のものではなく、戦地に赴く一人の男のものだ。



594:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 04:51:23.56 ID:8EfekdEx0
  
('、`;川「!?」

その言葉が発せられた瞬間だった。
突然、巨人と同様に、彼の身体も七色に包まれゆっくりと宙に浮かんだ。
しかし、彼は動揺することもなく、穏やかにこう言った。

( ^ω^)「だから、行ってくるお…」














「ペニサスおばあちゃん」






595:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 04:53:10.67 ID:8EfekdEx0
  
そして、彼の身体は巨人の胸元へと引き寄せられた。
彼は光速で、一陣の流星の如く街並みをすり抜けていく。
その光景をペニサスは呆然と見つめる。

('、`;川「……」

「大丈夫だよ」

不意に、背後から声が掛かった。

('、`;川「ショボン…さん」

(´・ω・`)「彼は貴方の孫じゃないんだ。
       彼も彼なりに自分の世界で戦ってきたんだからね。
       確かに彼を支えるのも大事だが、彼は彼自身の意思で向かっていったんだ。
       ……それも汲み取ってやらないと可愛そうだよ」

('、`;川「……わかってはいるんです。でも」

(´・ω・`)「だったら、彼を信じてあげるといい。それが彼にとって一番嬉しいことなんだから」

('、`;川「……ええ」

彼女は、彼の言葉を飲み込むかのように頷いた。
そして、鋼鉄の巨人を静かに見上げた。



598:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 04:54:54.14 ID:8EfekdEx0
  
( ^ω^)「……」

彼は一瞬の内に、ダイヴィッパーの胸部へとたどり着き、
乗降口横のレバーにゆっくりと手を掛ける。

( ^ω^)「……随分と待たせたんだお」

彼の手には、ひやりとした冷たい感覚が伝った。
まるで何年もそれを触ってなかったかのような、そんな懐かしい感触だった。

そして、彼は一気にレバーを引いた。

( ^ω^)「……ダイヴィッパー」

コクピット内部の機器は、彼を出迎えるように音を立てて稼動していた。
その息吹を身体で感じるように彼は一歩一歩足を進め、搭乗席に腰を下ろし静かに目を閉じる。

( ^ω^)「僕に力を貸してくれお……」

彼は小さく呟いた。
それに応えるかのように、機体の熱が彼の身体に伝わってくる。
彼はそれを全身で感じ取り、大きく息を吸い込んだ。

そして、目を開き、腕のVIPライザーに向かって高らかに叫んだ。

( ^ω^)「『VIP……START』ッ!!」



602:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 04:56:48.20 ID:8EfekdEx0
  
その言葉と共に、鋼鉄の巨人は目覚めた。

回路には電流が走り、金属の一つ一つに鼓動が響き渡る。
そして、完全に起動活動を終えると、彼の視界は外部へと開いていく。
次に、彼はイメージコンバージョナー(感覚変換装置)に腕を通した。
彼の全神経には、次々とダイヴィッパーの存在が入り込んでくる。

( ^ω^)「ダイヴィッパー……行くおッ!!」

彼は脳内のイメージを鋼鉄の巨人に流し込んだ。
呼応するかのように、腕が、脚が、胴体が、次々と動き出す。
そして、ダイヴィッパーは街を見上げるように大きく顔を上げた。

( ^ω^)「目標は……あそこかお」

彼は前方を見て小さく呟いた。
そこには、貪るように街を食い尽くす腐獣の姿がある。

『ガウッツ!!』

腐獣はダイヴィッパーの存在に気づいていないようであった。
もはや知能と呼べるものを持っていないため、
街に立ち並ぶ建物と、巨人の姿との区別が付いていないのだ。

( ゚ω゚)「うおおおおおおッ!!!」

標的の姿を確認すると、彼は叫んだ。
腹の底から叫んだ。
その叫吼は、眼前の敵に向けられたものであった。



604:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 04:58:29.57 ID:8EfekdEx0
  
彼の叫びに呼応するかのように、ダイヴィッパーも唸りを上げて脚を前に踏み出す。
目標は、数百メートル先の巨大な獣。
鋼鉄の巨人は地を揺らしながら一直線に腐獣の元へと駆け出し、両手に握られた大真剣を大きく振りかぶった。

『ギ……』

腐獣は街の破壊に気を取られ、向かってくる巨人に気づかなかった。
尻を向け、一心不乱に赤い鉄塔に齧り付いている。

( ゚ω゚)「くらえええええッ!!!」

彼はその隙を逃さなかった。
大真剣の巨刃を真直ぐに振り下ろす。

『ギ……?』

銀の閃光が、腐獣の正中線に沿って疾った。
感覚が無いせいであるのか、獣は叫びを上げることなくその巨躯を二つに分ける。

( ^ω^)「……」

中心から裂かれた腐獣の身体は力なく横たわり、周りの建物を崩す。
その様子を彼は剣を構えたままの機体から、冷静に見つめていた。

( ^ω^)「……案外あっけなかったお」

小さく呟きながら、彼は安堵の溜息をつく。
そして、倒れた獣の身体が動かないことを確認すると鋼鉄の巨人に剣を引かせ、そこから立ち去ろうとした。



606:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:00:11.02 ID:8EfekdEx0
  
( ^ω^)「ッ!!」

だが、その行動が敵に隙を与えることになる。

彼は自分の眼を疑った。
突如、腐獣の切口から無数の触手が伸びたのである。
波のように押し寄せたそれが、一瞬にしてダイヴィッパーの巨体を包み込んだのだ。

(;^ω^)「なッ!?」

彼はそれから逃れようと機体の四肢を動かし必死にもがいた。
しかし、触手は蟲のように絡みつき彼を放そうとはしない。

( ^ω^)「それなら……ZIPミサイルッ!!」

彼は投擲のイメージを瞬時に頭に浮かべる。
すると、機体の背中から巨大なミサイルがその姿を現す。
ミサイルは噴出の勢いで触手を次々と引き千切り、中から無数の小形ミサイルを拡散させて獣の本体を襲った。

『グギャアアアアアア!!』

腐獣の細胞の一つ一つは金切り声を上げる。
ダイヴィッパーはミサイルの爆風に巻き込まれないように、急いで右方向に転がり、間合いを取った。

(;^ω^)「ハアッ……ハアッ……」

眼前では、激しく砂埃が舞い上がっており敵の姿は見えなかった。
それでもダイヴィッパーは再び大真剣を握り締め、切先を前方に伸ばした正眼の構えのまま警戒を解かない。



609:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:01:54.71 ID:8EfekdEx0
  
『グアアアアッツ!!!』

突然、甲高い叫びが轟いた。
砂煙を裂く様に腐獣の腕がぬうっと伸び、巨人に掴みかかるように飛んできたのだ。

( ^ω^)「甘いおッ!!」

ダイヴィッパーはそれを予期していたかのように、真っ向から腐獣の腕を切り落とす。

『グオオオオッツ!!!』

しかし、敵は怯むことなく攻撃を止めない。
さらに砂煙を裂き、もう一本の腕を機体の方へと伸ばした。

( ^ω^)「まだまだッ!!」

それに対して、彼の反応も早かった。
ダイヴィッパーは素早く身体を引くと、下げた剣の切先を上に振り上げるように、残った方の腕を切断する――

(;^ω^)「……え?」

――はずであった。

刃の動きは、寸前の所で止まっていた。
大真剣の切っ先が、さらなる二つの腕で掴まれていたからだ。

(;^ω^)「こ……これは?」

そして、砂煙が収まった後に彼は驚くべき光景を見た。



611:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:03:38.13 ID:8EfekdEx0
  
目の前にはあれだけの猛攻にも関わらず、腐獣が立っていた。
だが、それはもはや四本脚の獣の姿ではなくなっている。

『グアアアア……』

それは植物のような形状であった。

脚は根のように突き刺さって地面に埋まっている。
腕は花弁のように頭の先から無数に裂いている。
それは、今までに彼が想像したことも無いような禍々しさを醸しだしていた。

(;^ω^)「!?」

彼は両手が引っ張られるような感覚を覚えた。
機体の持っている剣が、無数の手によって絡め取られたのだ。
そして、それらはダイヴィッパー本体にまで迫って来る。

(;゚ω゚)「うわっ!!」

巨人は急いで剣を握る手を開くと、バックステップで後方に跳んでそれを回避。
そのまま敵の腕が届かない距離まで後退する。

(;^ω^)「コイツは一体何なんだお……」

呆然と彼が見つめる目の前で、植物のような姿を持ったそれは、花の中心から大きな口のような大穴を開く。
そうして、大真剣を一気に飲み込んでしまった。

(;゚ω゚)「しまった!! 大真剣――」



616:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:05:29.43 ID:8EfekdEx0
  
『グアアアアアアアッ!!』

しかし、彼の言葉は腐花の叫びに遮られる。
突然、目の前の巨大な腕の花が襲い掛かってきたのだ。

本体が走って来たのではない。
茎に相当する部分が伸び、腕を竜巻の如く回転させながら、
蛇のように大口を開けて巨人を飲み込もうと飛び込んできたのである。

(;^ω^)「……ッ……これならどうだおッ!!」

ダイヴィッパーは右拳を力強く握り、腕ごと後方に大きく引いた。
全身の力を溜めるように、身体を強くしならせる。
そして、彼は大きく息を吸い込んで高らかに叫んだ。

(;^ω^)「クリティカルブロオオオオオオッツ!!」

その言葉と共に、ダイヴィッパーの右腕は大きく振り抜かれた。
同時に腕を接続する間接部分のロックが音を立てて外れる。
勢いの付いた右拳は、爆風を吐き出しながら標的に向かって発射された。

『グアアアアアアアッ!!』

拳ごと巨人を飲み込もうと、腐花はさらに口を大きく開く。
それに対し、ダイヴィッパーの身体は硬直して動かない。

そして、拳と花弁は猛スピードで交錯した。
衝突点を中心にして、街に衝撃波が拡がった。
乗り捨てられた車も、倒壊したビルも、無数に転がる瓦礫も一瞬にして吹き飛ばされる。



619:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:07:16.40 ID:8EfekdEx0
  
『ギ――』

腐花はクリティカルブローの衝撃に耐えられず、先端から次々とその花弁のように広がった腕を散らしていく。
放たれた右腕はそれに収まらず、さらに花の体内へと沈む。
徐々に肉片は四散して、腐花はその輪郭を失っていった。

(;^ω^)「……」

吐き出された大真剣は宙を描き、ダイヴィッパーの足元へと突き刺さる。
それを横に、巨人は拳を振りぬいた姿勢のままで動かない。
全てを破壊し終えた右腕は、元々繋がっていた場所に戻っていく。

(;^ω^)「……やったお」

そして、地面の揺れが収まった時、目の前の敵は完全に原形を留めていなかった。
それはもはや、屍達の身体の一部が積み重なる巨大な山々と化している。

(;゚ω゚)「……え?」

しかし突然、彼は呆けた声を上げた。
目を凝らしてよく見れば、その山々が静かに震え出したからだ。

『グ……グ……』

同時に地の底から震えるような音が響いた。
そして、目の前の山々は波を打つように再び動き始めた。

『グアアアアアアアアッ!!!』



622:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:09:18.10 ID:8EfekdEx0
  
耳を裂くような声とも音とも呼べないものが、街全体を包み込む。
その瞬間、散り散りになった山々同士がアメーバ状に折り重なっていく。

(;゚ω゚)「ああ……あああああ……」

彼は、間近で巻き起こるその状況を、声を上げながら刮目することしか出来なかった。

やがて、それは彼の目の前で一つの球体へと変化を遂げた。

(;^ω^)「うわああああああッ!!」

ダイヴィッパーは傍らの地面に刺さった大真剣を引き抜き、目の前の球体に向かって乱暴に振り回した。
もはや、剣術の型とは反した粗雑なものであったが、それでも球体に傷を付けることはできた。

『ウ……ウウ……ウ』

しかし、球体の傷は斬ったそばから次々と再生していった。
多く傷を付けようとも、二つに切り落としても、無数に切り刻んでも、球体は元の形に戻り続けた。

(;^ω^)「このッ!! このッ!!」

巨人はそれでも剣を振り続けた。
だが、それを上回る速度で球体は元へ戻っていく。

『ギッ!!!!』

そして、球体の表面から無数の棘が突き出された。
それは、一斉にダイヴィッパーの身体に降りかかる。
不意に攻撃をうけたダイヴィッパーは、一瞬にして後方に吹き飛ばされた。



624:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:11:01.66 ID:8EfekdEx0
  
('、`;川「ブーンちゃん!!」

その様子を眺めていたペニサスは悲痛な声を上げた。

(´・ω・`)「まずいね。破壊しても次々に形を変え再生してしまう、か……厄介だな」

ショボンも困り果てたように呟いた。
脳の全てを活動させ色々と考え尽くすも、良い策は浮かばない。
  _
( ゚∀゚)「くそっ!! 早く思いつけよショボンッ!!」

('A`)「万事窮す、か……畜生ッ」

周りの者達も、焦りを隠すことができずにいた。
その間にも、ダイヴィッパーは次々と敵の攻撃を受け続けている。

('、`;川「一体どうしたら……」

だがその時、困り果てていた彼等の背後から何者かの声が掛けられた。

(`・ω・´)「彼の動きが甘いね。筋肉を使いこなせていない」

それはシャキンだった。
彼は腕を組みながら、冷静にダイヴィッパーの姿を見つめながらそう呟く。
  _
( ゚∀゚)「なんだよ……お前かよ。っていうかありゃ筋肉じゃねえぞ……」

(´・ω・`)「うほっ、いい筋肉……ではなくて、その口振りから、何かいい考えでもあるのかい?」



629:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:12:42.15 ID:8EfekdEx0
  
(`・ω・´)「あの巨人が私なら、あの腐ってしまった筋肉の塊を倒す手はそれなりにあるのだが
      ……なんせサイズが大きすぎる」

(´・ω・`)「確かにあの大きさだと骨が折れるよね。でも、シャキンさんがもし巨大化すれば……ウヒヒヒヒ」

ショボンは涎を垂らしながら何かを妄想した。
  _
(;゚∀゚)「いや、出来たとしてもそれは却下だ。キモ過ぎる。
    それにショボンが悦ぶだけだ。せめてボウスに体術の心得があればな……」

(´・ω・`)「体術ねえ、彼は素人だからね。今更……ん、いや待てよ……」

ショボンは『J』の言葉に眉をぴくりと反応させた。

(´・ω・`)「ペニサスさん、確かあの巨人は彼のイメージで動いてるって言ってたよね?」

('、`;川「えっ!? ええ。たしかそんな事言っていたかしら」

(´・ω・`)「そうか……それなら、これをああして……ふむふむ」
  _
( ゚∀゚)「おい!! 何かいい考えが浮かんだのか!? 早く教えやがれ!!」

(´・ω・`)「まあまあ、落ち着いてくれ。ところでペニサスさん、一つ頼まれて欲しいんだが」

ショボンは、ペニサスに一つの案を持ちかけた。



632:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:14:23.67 ID:8EfekdEx0
  
(;^ω^)「くっ……」

ブーンは、次々と襲い掛かる球体の攻撃を堪えていた。
しかし、もはや球体から飛び出てくる突打の数は限界を知らず、
ダイヴィッパーでもそれを防御することで精一杯であった。

(;^ω^)「どうすれば……」

彼は全ての攻撃手段をとったものの、それらは一切敵には通用しなかった。
最強の技である『G.T.キャノン』ならば相手の細胞ごと焼き尽くせると考えたが、
今はその必殺技に必要不可欠のアクセルフォックスが存在しない。

そのように彼が考えあぐねていた時だった。

('、`;川(ブーンちゃん!! 無事なの!?)

突如、脳内にペニサスの声が響いてきた。

(;゚ω゚)「おばあちゃんッ!? 今は大丈夫だけど……もう持たないおっ!!」

攻撃を受けるたびに、機体は大きく揺さぶられる。
今のところ大きな損傷は無かったが、装甲を破られるのは時間の問題である。

('、`;川(良かった……よく聞いてちょうだい。急な話だけど、今からシャキンさんと貴方の精神を繋げるわ)

(;^ω^)「えっ!?」

その言葉を聞いて、ブーンの背筋には寒いものが走った。
正直な話、丁寧にお断りしたい程の提案である。



634:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:16:05.99 ID:8EfekdEx0
  
('、`;川(お願い!! このままだと危険だわ!! とにかく早く!!)

(;^ω^)「えっ……あっ? はいだお」

彼女の只ならぬ剣幕に彼はおののき、つい返事をしてしまった。
そして、次に別の声が響いてきた。

(`・ω・´)(グッド・モーニング、ミスター・ブーン。いきなりですまないが、君の精神を借りるよ)

(;^ω^)「えっ!? ちょっwww……あっ……アッー!!!!」

その瞬間、彼は身体全体に違和感を覚えた。
まるで自分以外の存在が入り込んでくるような、そんな濃密な圧力を一身に受けるようであった。



(`・ω・´)「マッスルヴィッパー!! メイクアップ!!」

(;^ω^)(えっ!? ……なんだおそれ?)

突如、シャキンの妙な掛け声が頭の中に響いてきた。
それと同時にダイヴィッパーの身体が自分の意志に反して勝手に動き出す。

(;^ω^)(えっ!? ……どういうことだお?)

(`・ω・´)「いくぞ!! 悪の筋肉め!! この筋肉神である私が成敗してくれよう!!」

次に、巨人は正拳一閃で、目の前の球体を弾き飛ばした。
球体は倒壊した瓦礫の山を突き抜けながら、一瞬にして遠ざかっていく。



636:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:17:58.13 ID:8EfekdEx0
  
(`・ω・´)「フンッ!! ……うむ……いまいち筋肉が盛り上がらないな」

そして、巨人は唐突にラットスプレット・バックのポージングを取った。
(参考:ttp://club.pep.ne.jp/~mikami1/pose_rat-spread-back.jpg
どうやら、その出来に彼は納得していないようであった。

『グ……ガガ……』

そんな最中に、球体は地を揺らしながら猛スピードで巨人に向かって転がって来る。
どうやら、先ほどの攻撃も通用していないようだ。

(`・ω・´)「甘いッ!! 私の僧帽筋のようにとろけるほど甘いッ!!」

対して、シャキンが意味不明な言葉を叫ぶと、ダイヴィッパーは上空に浮かぶように跳び上がる。
空中で三回転を決めたその跳躍は、生身の人間のように鮮やかであった。

(`・ω・´)「フフフ……掛かって来たまえ」

そして、地上に着地すると巨人は妙な構えを取った。
両手を横に大きく突き出し、腰から上を前傾させるような型。
それは所謂、鳳凰の構えと呼ばれるものであった。(別名どどんまい)

『ギッ!!!』

球体は砂埃を上げながら旋回し、再び巨人に向かって転がってくる。
しかし、今度は巨人はその構えのまま動こうとはしなかった。

(`・ω・´)「いまだッ!!」



638:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:19:40.10 ID:8EfekdEx0
  
衝突の瞬間、彼は大きく目を見開いた。
次に、巨人の右拳を中指だけ突き出した形で握らせ、相手の勢いを利用するようにそれを球体に突き刺させた。
球体の中心に大きな風穴が開く。

(`・ω・´)「アタタタタタタッ!!」

彼はそれに満足することなく、さらに打撃を加える。
拳(けん)による攻撃だけではなく、一撃加えるたびに掌の形を変え、その表面を突き刺してゆく。
蟷螂手、鷹爪手、水火手、散手、掛手など、拳法の流派の、指先による手(しゅ)の攻撃を浴びせ掛けた。

『ギャッ!! ギッ!! ギュッ!!』

一突きされる度に、球体は悲鳴を上げ、その腐った肉体は砕けていく。
そして彼の猛攻が終った時には、既に細切れとなっていた。

(`・ω・´)「……ふう、他愛も無い。私の筋肉から繰り出される攻撃に耐えられる者は居ない」

彼は目の前に積み重なる肉片の山に向かって小さく呟いた。

(;^ω^)(すごいですおっ!! そんな技何処で覚えたんですかお!?)

明らかに自分が操縦するよりも素早いダイヴィッパーの体捌きに、彼は驚きを隠すことができなかった。

(`・ω・´)「別に大したことはないさ。修学旅行で中国に行ったときにある老人から学んだものだ」

(;^ω^)(修学旅行の短い間にそこまで……ありえないお)

筆者自身も気付いたのだが、シャキンはブーンと同じ高校生である。



644:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:22:05.38 ID:8EfekdEx0
  
(`・ω・´)「むっ!?」

しかし、目の前の屍の山は再び動き出した。
そして、みるみるうちに一つに集り、球体の形を取り戻してしまった。

『……グ……ギギ……』

(`・ω・´)「やはりか。『外家拳』は通用しないようだ」

彼の言う『外家拳』とは、鍛え抜いた肉体から生み出される筋力で技を打ち出す拳法である。
つまり、彼の今までの攻撃は彼の筋肉のエネルギーを利用した外部破壊の為の技であった。

(`・ω・´)「ならば『内家拳』ならばどうかな?」

そう言うとダイヴィッパーは再び構える。
しかし、次に構えたのは違う型であった。
右手と右足を前に出し、掌を真直ぐ伸ばしたような構えだ。

『ギイイイッ!!』

今度は、球体は全身から突起を伸ばして巨人に襲い掛かる。
例えるなら槍の壁。
その棘の一つ一つが、意志を持ったように機体を貫かんと迫る。

(`・ω・´)「円(えん)ッ!!」

シャキンの叫びとともに、巨人は両掌を前に出し、8の字を描くかの如く回転させる。
掌の回転は飛び込んでくる棘の猛襲を払うかのように受け流した。



649:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:23:50.55 ID:8EfekdEx0
  
(`・ω・´)「防御の真髄は受け流すことッ!!私のマッスルヴィッパーに傷をつけさせるわけにはいかないよ」

円を描く速度は次第に速くなっていく。
そして、突起が全て外側に弾き返された瞬間――

(`・ω・´)「今だッ!! 『寸剄』ッ!!」

巨人は防御によってがら空きになった球体の中心に、右手の指を真直ぐに伸ばした、掌底――つまり、掌(しょう)の技を打ち付けた。

『ギ……ギ……?』

しかし、その衝撃は球体を貫くまでには至らなかった。
敵自身も何が起こったのか解らないと言った具合に、間の伸びた音を発する。

(`・ω・´)「君は既に死んでいる……」

それにも関わらず、シャキンは口角を上げ不気味に笑みを浮かべた。
同時に、球体に変化が起こった。

『ギアッ?……ギギギギギ……』

突如、球体はその丸みを崩すかのように蠢きだす。
まるで蟲が体内で暴れ回っているかの如く、ぼこぼこと起伏を浮かび上がらせる。

『ギ――』

球体は風船のように体を膨らませ、悲痛の叫びを上げながら渇いた音と共に破裂する。
肉片は元々それが何だったか解らなくなるほどに粉々になった。



653:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:25:33.66 ID:8EfekdEx0
  
(`・ω・´)「これが、私のとっておきの奥義だ」

――『寸剄』

それは、二十ヶ所余りの関節を駆動させる正拳突きの型から、三ヶ所の動きだけ差し引いて零距離から放つ掌撃である。
具体的には、二十ヶ所の動きから、肩・肘・手首の三ヶ所の動きを引く。
この技は、内部破壊を目的とした中国拳法の奥義の一つと言われている。
                                                民明書房『中国武術大覧』より
  _
(;゚∀゚)「……すげえ……ってかでたらめだな。ロボットに中国拳法やらせるか普通?」

(´・ω・`)「作戦は成功かな。ペニサスさん、大丈夫かい?」

('、`;川「ええ……なんとか」

ペニサスの額にはうっすらと汗が浮かんでいた。
その首元では、ペンダントが穏やかに光を放っている。

彼の言う作戦。
それはシャキンとブーンの精神を共有させることで、シャキンにダイヴィッパーを操らせようというものであった。
その結果、適合者でないシャキンでも、自分の体のように巨人を動かすことが出来るようになったのだ。

( ^ω^)(すごいおっ!! シャキンさん)

ブーンは歓喜の声を上げた。
目の前には、先程自分が攻撃した以上に散り散りになった、屍の欠片に成り下がったものが積み重なっている。

(;`・ω・)「……ッ……残念ながらまだみたいだ」

しかし、それに反してシャキンは構えを解くことは無かった。



658:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:27:19.94 ID:8EfekdEx0
  
(;^ω^)(へ……?)

ブーンは自分の目を疑った。
もはや原型を留めてすら居ない、血が、肉が、骨が、再び一つになろうとしていたからである。

(;`・ω・)「『内家拳』も通用しないとはね。万策尽きた……か」

シャキンは目の前の屍たちが不気味に形を作っていく様子を見て、力なく呟いた。

(;^ω^)(そっ……そんなッ!!)

(;`・ω・)「どうやら完全に細胞ごと破壊しないと再生し続けるようだ。『寸剄』では破壊力が足りないか……」

そして、絶望的な結論を彼は発した。
今まで余裕の表情であった彼の筋肉からは止め処無く汗が溢れる。

(;^ω^)( シャキンさん、他に奥義とか無いんですかお!?)

(;`・ω・)「……いや、あるにはあるのだが、それは唯一、私の筋肉で体得できなかった技だ」

(;^ω^)(それってどんな技ですかお?)

(;`・ω・)「それは……単純な理論なのだが……『外家拳』と『内家拳』を同時に放つ技。
      つまり内部破壊と外部破壊を同時に行う技だ」

(;^ω^)(……なんだかわかんないけど難しそうですお)

(;`・ω・)「しかし、二つの正反対のことを同時にする、なんて事は達人でも難しい。
      二人の人間が同時に行うというならば容易くなるが……」



661:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:29:03.89 ID:8EfekdEx0
  
シャキンは釣りあがった眉を小さくひそめた。
そして、自身の筋肉の無力さに怒りすら覚えていた。

(;^ω^)(同時に……ですかお。同時に……、ッ!?)

彼は体を小さく震わせる。
それは、自分でも驚くほどの閃きであった。
天から何かが舞い降りたかのように、突然の天啓のように彼は一つの妙案を閃いたのだ。

(;^ω^)(シャキンさん……僕に考えがあるですお。無茶苦茶かもしれないけど……)

彼はシャキンに彼の閃きの内容を手短に説明した。

(;`・ω・)「なるほど……ならばチャンスは一瞬だ。敵が合体したその瞬間、あの球体は無防備になる」

(;^ω^)(ええ、わかっていますお……おばあちゃん、聴こえるかお? 僕だお。
      少し協力してほしいことがあるんだお)

('、`;川(……一体どうするんだい?)

ブーンはペニサスにも、彼の案を説明した。

('、`;川(なるほどねえ……でもタイミングを合わせるのが難しいわ)

(;^ω^)(でも、やるしかないんだお!! 僕達がそれをしないと、この世界を救えないんだお!!)

(;`・ω・)「私も同意見だ。私はこの3人なら必ず成し遂げられると信じている」

('、`;川(……解ったわ。私はあなた達を信じている)



664:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:30:47.82 ID:8EfekdEx0
  
そして、鋼鉄の巨人と腐肉の球体は再び対峙する。

( ^ω^)「『終末』なんて、誰かに理不尽に押し付けられるものじゃないんだお」

ブーンは、ダイヴィッパーに自分の心を深く通わせた。
鋼鉄の巨人はそれに応えるかのように、その鼓動を響かれる。

(`・ω・´)「そうだ。筋肉に対する、生に対する『希望』が、筋肉を……そして未来を創って行くんだ」

シャキンは、体中の筋肉の繊維一本一本に力を注いだ。
彼という存在に凝縮された筋肉は、解き放たれたように膨らんでいく。

('、`*川「そして……この世界はこれからも、いつまでも、『慈愛』に包まれて育っていくの」

ペニサスは、心の奥底からこの世界の幸福を願った。
ペンダントは彼女の心を増幅し、その光を一層眩しく輝かせる。

「だから……」

そして、三人の勇者達は口をそろえて叫んだ。

('、`*川(`・ω・´)( ^ω^)『この世界を終わらせたりはしないッ!!』

『グ…グ……』

眼前では、屍達の血肉で構成された球体が完全に再生しようとしていた。
それらの細胞一つ一つは、その『絶望』を伝えるかのように悲鳴を上げているようであった。



669:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:32:37.28 ID:8EfekdEx0
  
( -ω-)「クリティカル……」

ブーンはイメージした。
それはこの世界に巣食う悲しみの元凶を、鋼の愚神、ダイヴィッパーの鉄拳が打ち砕く姿を。

彼は最高の集中力を以って、目の前の球体に狙いを定めた。
次に、巨人は標的を捉えるかのように大きく右腕を振り上げ、ギアやエンジン、モーター、全ての構成物のエネルギーを溜める。

そして、全てを解き放つように彼は吼えた。

( ゚ω゚)「ブロオオオオオオッツ!!!」

右腕は上腕部から開放され、その怒りの鉄槌は絶望に向かって発射された。
それと同時に、ペニサスは叫んだ。

('、`*川「今よ!! シャキンさん走って!!」

ペニサスはシャキンの精神を百パーセント、ブーンの元へと伝えた。
ペンダントは七色の光の渦を放出し、シャキンの筋肉に溶けてゆく。

(`・ω・´)「君達の……筋肉に対する情熱……確かに受け取ったよ!!」

シャキンもイメージをダイヴィッパーに投影する。
クリティカルブローの発射と同時に、巨人は駆け出していった。
鋼鉄の鉄槌を追い越さないように、追い抜かれないように、同じ速度で標的の元へと走り抜けていく。

(`・ω・´)「喰らいたまえッ!! わが筋肉拳奥義ッ!!『寸剄』……改め――」



673:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:34:32.16 ID:8EfekdEx0
  
そして、二者の間合いは互いの制空圏を超えた。
鋼鉄の巨人は左腕を前へと突き出し、その二本の脚を地にしっかりと据え付けて、掌底を標的に触れさせる。
波紋状の衝撃は球体の内部へと押し込まれていく。

(`・ω・´)「ショッキング・ビューティフル・マッスルッ!!」

衝突は同時だった。
ブーンの放った右腕とシャキンの差し出した左腕が、寸分違わぬタイミングで屍の球体に接触したのだ。

クリティカルブローは、球体の表面を容赦なく引き裂いた。
爆炎が全体を覆い、細胞の一つ一つを焼き尽くす。

寸剄は、球体の内部を構成する血と肉と骨を震わせた。
振動が全体を走り回り、細胞の一つ一つを破壊する。

『ギアアアアアアアアアアッツ!!』

凄まじい破壊力に耐えられず、屍達はもがき苦しみながら、死に際の獣が放つような断末魔の叫びを木霊させる。
ついには、次々と細胞が蒸発し、白い煙が上がっていく。
その姿は、まるで生を謳歌できなかった人間の怨念が、白煙に宿り天に昇っていくようにも見えた。
そして、浮かんでいく魂体の数と比例するように、球体は湿った音を立てて崩れ落ちていった。



677:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:36:15.98 ID:8EfekdEx0
  
次々と溶けてゆく屍の塊の傍らで、『J』は立ち尽くしていた。
彼の足元で、形をかろうじて保っていた最後の屍が地面を這う。
それを哀れむかのように、彼は眼差しを投げかけた。

<ヽ:::。Д:::゚)「グ……グ……」
  _
( ゚∀゚)「…お前も犠牲者のうちの一人だったんだよな」

最後の屍は、必死にこの世界にしがみ付いていた。
その様子を見ながら、彼は淡々と言葉を向ける。

<ヽ:::。Д:::゚)「ガ……? ……グ……ウウッ」
  _
( ゚∀゚)「泣いて……いるのか?」

屍の眼の下からは、透明な液体が流れ落ちていた。
それは流した涙なのか、それとも溶けた皮膚の一部なのかは解らない。
  _
( ゚∀゚)「……安心しろよ。遅かれ速かれ俺もお前の後を追う事になるだろうさ」

彼は最後にこう続けた。
  _
( ゚∀゚)「もう……この悲しみを『終わらせて』やるよ」

そして、彼は銀色の義手を灰色の空に向かって大きく振り上げた。



――こうして、『屍』という存在はこの世界から完全に消滅した。



681:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:38:08.34 ID:8EfekdEx0
  
(´・ω・`)「『終わった』……んだよね?」

ショボンは『断駒』の頂上に乗って、屍に食い尽くされた街を眺めていた。

『絶望』が包んでいた世界はもうそこには無い。
だが、平和を取り戻すためには犠牲が大き過ぎた。

('A`)「ああ。俺達全員が命がけで守ったんだ。ショボン、もっと胸を張っていいんだぜ……」

(´・ω・`)「……ああ」

彼は、ドクオの言葉に短く答えた。
普段饒舌な彼にとっては珍しいことであった。

(´・ω・`)「……おや? どうやら救世主たちが揃ったようだね」

彼は、自分の周りが騒がしくなっていることに気づいた。
彼は声のするほうを振り向くと、生き残った人々に囲まれた三人の人影と鋼鉄の巨人が目に入ってきた。

(´・ω・`)「……ちょっとごめんよ」

ショボンは通りすがりにいい男の尻を触りつつ、人波を掻き分け、騒ぎの中心へと向かっていく。
そして、人々の群の中ほどまで進むと、人々の賞賛の声を受けていた三人の勇者の姿を発見した。

(;^ω^)「ちょっwwwシャキンさんそんなところで脱がないでくださいお!!」

(/、//川(主……主人のよりも大きい)

(*`・ω・)「ああ……何千もの観衆が……私の美しい筋肉を舐めるように見つめている。
      さあ……もっとだ……もっと見てくれたまえ……」



687:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:40:05.35 ID:8EfekdEx0
  
その場は、シャキンによって混沌とした空気に包まれていた。
歓声に聴こえたものは、実は悲鳴であった。

(´・ω・`)「うほっ……いいマグナム……では無くて、君達ちょっといいかな?」

ショボンは、横目でシャキンのマグナムを眺めつつ、三人に声を掛けた。

(`・ω・´)「おや、ミスター・ショボンではないか? どうだい? 私のダビデ像よりも美しい筋肉は?」

(´・ω・`)「そうだね。涎が出るほど素晴らしいよ。ところで……や ら な い か ?」

('、`♯川「ショボンさん? せっかく命が助かったのに……残念ね」(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ)

(;´・ω・)「……OK。落ち着いてほしい。その物騒なオーラを仕舞うんだ」

(;^ω^)「ショボンさん? どうしたんですかお?」

殺伐とした空気の中で、ブーンはショボンに尋ねる。
しかし、ショボンは言葉の代わりに行動でそれを示した。

(;^ω^)「ちょっ、ショボンさん!? 頭を上げてくださいお!! ……どうしたんだおいきなり?」

ショボンが示した行為。
それは、三人に向かって深々と頭を下げることだった。

(´・ω・`)「君達には礼を言うよ。
       この世界に縁もゆかりもない君たちが、自分の身を投げ打ってこの世界を救ってくれたんだからね」

ショボンは、真顔で言った。



692:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:41:47.87 ID:8EfekdEx0
  
(;^ω^)「いや……別にいいんですお……僕達はそうしたくてやったんですお」

(´・ω・`)「それでは僕の気が済まないんだ。だから……や ら な い k」

('、`♯川「ショボンさん? 私がそういう冗談好きじゃないの知ってる?」

(注)ここで作者からのお知らせです。

                 -‐   ̄ ̄ `丶、
              /           ヽ
                / / /〃/{ { ヽ `ヽ. ∧
             l / /斗/ハ ィー‐ヽ  ∨ l
             { {  レテく  ヽ\{ヽ\ ヾ│ 
               乂l f r'ハ     __ 7ハ\リ l 
       (⌒⌒)    .八,}弋ソ    ''⌒ソノ ) 八    
          ヽ〃`ひ、 ノイ }ゝ" n  "" { {´  丶\
            / rz-、_ ,>‐r<_∧!>、   \丶
.           , -‐"  とノハ/  ヽ{>ロ<フ〈.  ヽ     \
         //  / / ヽ、__,/∨{   j><__〉\   丶.ヽ
.         {八 〃 ハ  { /{  / 大   , <   }ヽ  }  }
          )/ ヽ(. ヽ人{ >‐ヽ/ j \/  ∨} ノ  ヽjイノ
          "   ` ′ ヽ ヘ_,ん</__j_{_/ ((   ( "
                   /  /  |  l
                     /  /   .|  l
                  /` V   l  .,′
                  `ー'′   ├-/

只今物語内で大変お見苦しい点がございましたので、一部割愛させていただきます。



697:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:43:31.41 ID:8EfekdEx0
  
(※)ω(※)「とに……かく、僕の……命が消える前に……礼を言うよ……グハッ」

なぜか次の瞬間ショボンは傷だらけになっていた。
こうして彼の命の灯火が消えかけたその時、

「なんだか面白いことやってるな。俺も混ぜろや」

甲高い声と共に、二人の戦士が人波を掻き分けて現れた。
  _
(;゚∀゚)「って、なんでそこのマッチョは裸で、ショボンはボコボコになっているんだ?」

('A`*)「……筋肉神さま、今日も一段と筋肉が輝いていらっしゃるハアハア」

そこには『英雄』と『悪の組織』首領の姿があった。
ちなみに、『英雄』の方は若干引いている様子である。

( ^ω^)「おっおっ、ジョルジュさんにドクオさんも来たお」

('、`*川「おやおや、皆さん勢ぞろいだわね」

(;*゚ー゚)「あの……私もいます」

出オチ担当のしぃもひょっこりと顔を出したところで、この世界を救うために戦った一同は集った。
そして、共に喜びを分かち合おうと、互いに声を掛け合ったその時であった。

('、`;川「きゃっ!!」

突然、ペンダントが透き通るような高音を発して再び輝いたのである。
しかし、今回の変化はそれまでのものと全く違っていた。



700:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:45:26.63 ID:8EfekdEx0
  
ペンダントは、楕円形の宝石だけではなく、鎖全体から光を放った。
次に、彼女の首から外れるように、天に向かって浮かび上がる。
やがてそれは、七色の光が混ざる光の輪へと変わっていった。

('、`;川「こ……これって」

ペニサスはこれと同じ現象を思い出していた。
正確に言えば、これとはむしろ逆の現象である。

周りに居た者たちが固唾を飲んで見守る中、輪の体積は徐々に膨れ上がり、一つの形を帯びていった。
それは、徐々に別の輪郭を作り出していき、最終的に人の形へと変わっていった。

( ∵)「……」

その表情は幼く、体格は細い。
見た目はブーンと変わらないほどの年頃の少年であった。

( ∵)「やあ、久しぶりだね……とは言ってもずっと傍にいたんだけどね」

少年は驚く人々の視線を横目にして、ペニサスに微笑みかけた。

('、`;川「貴方は……ビコーズ」

(;^ω^)「えっ、彼が……?」

(`・ω・´)「ふむ、筋肉がかなり足りないな。もっと筋トレが必要だ」

各々は、それぞれ心に思ったことを口にした。



704:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:47:21.52 ID:8EfekdEx0
  
('、`;川「で、どうして今になって姿を私達の前に? それに――」

( ∵)「まあ、質問はたくさんあるだろうけどまずは僕の話を先に聞いてくれないか?
    疑問はそれで大体晴れると思うんだ」

ビコーズはペニサスの言葉を途中で遮ると、次にこう続けた。

( ∵)「最初に、君達……といっても、そこの二人がこの世界に来たことは予想外だが、
    それが幸いして無事にこの世界を救うことができた。心から感謝するよ。ありがとう」

('、`;川「……」

( ∵)「ともかく、この世界は完全に救われたんだ。
    そして、それに伴って新たなる『sks』を生み出すことができた」

('、`;川「でも、『sks』って消えたんじゃ……」

( ∵)「そうだ。元々この世界に存在していた『sks』は完全に消滅した。
    でもその代わりに新しい『sks』が、この世界に出現したんだ。
    それはまさしく、君達三人がもたらしたと言っても過言ではない」

('、`;川「私達が?」

( ∵)「ああ。正確に言えば君達が住んでいた世界の『sks』を、この世界にもたらしたと言えばいいのかな?」

('、`;川「はあ……」

( ∵)「そして、この世界が辿るはずだった『終末』、つまり世界が消滅するはずだった運命を君達がねじ曲げ、
    違った形の『終末』に置き換えることで、この世界が辿ってきた歴史を半永久的なものにすることができた」



708:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:49:04.64 ID:8EfekdEx0
  
(;^ω^)「うーん……難しいお」

(*`・ω・)「美しい……(うっとり」

次々と飛び込んでくる事実に、ブーンは頭を抱えた。
その横で、シャキンはポージングを取っている。
そこに、ビコーズの言葉を遮る声が飛んできた。
  _
(♯゚∀゚)「おい……話をぶったぎるが一つ聞かせてくんねえか?
     てめえがこの世界の神なんだろ? だったらなんでもっと早く、屍共を消さなかったんだ?
     そのせいで、苦しんだ人間の数は増え続けたんだ」

声の主は『J』であった。
その言葉には、明らかな怒気が含まれている。
だが、それを受け流すようにビコーズは続ける。

( ∵)「僕は神の役割を与えられただけであって、
    正確には神ではない。本当の意味では『sks』がそれに当たるだろう。
    僕はその消滅した『sks』の、きちんとした『結末』を導きたいという意志に沿って行動していただけだ」
  _
(♯゚∀゚)「はあ? 意味分かんねえよ?
     とにかく、てめえが何にもしなかったせいで、ここまで酷い状態になったんだぞ!?」

そっけない態度が気に障ったのか、『J』は更に声を荒げた。
大切な者を浸食で失った彼にとってそれは当然のことであった。
それでもビコーズは続けた。

( ∵)「僕の力は絶対的なものではない。あくまで『sks』が作り出した枠の中でしか力を振るえないんだ。
    例え屍を消すことが出来ても、屍の発生そのものは止められなかった。
    それは、『sks』が作り出した枠の外の出来事が原因だからね」



711:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:50:45.92 ID:8EfekdEx0
  
  _
(♯゚∀゚)「はあ!? ふざけてんじゃn」

(´・ω・`)「まあ、落ち着いたらどうだい? 仮にも神の化身なんだよ。ああ、失礼した。とにかく続きを聞かせて欲しい」

ショボンは怒り狂う『J』を無理矢理羽交い絞めにすると、ビコーズに謝罪して、続けるように促した。

( ∵)「だから、僕は新しい『sks』を呼び込む必要があった。
    屍の発生を止める方法はそれしか無かったからね。
    つまり、君達三人がこの世界に来ることそのものが重要だったんだ。
    そういうわけで僕はペニサスさん、貴方に、『心の向くままに行動すればいい』と言ったんだ。
    この世界を救う過程は君たちが呼んだ『sks』が導いてくれるからね」

(;^ω^)「極端に言えば、僕達がこの世界に来るだけでよかった……ってことかお?ほかの事はよく解らないけど」

( ∵)「……まあ、そういうことだ」
  _
(♯゚∀゚)「……ふん、随分と虫がいい話だぜ。とにかく屍が出てくるのを止められたんだろ!?
      だったら、その埋め合わせをするってのが筋じゃねえか!!」

『J』はショボンの腕を強引に振り解くと、再びビコーズに詰め寄った。

( ∵)「勿論それはするつもりだ。僕ができる範囲だったらね。
    ペニサスさん……貴方にそれを決めてもらいたい。貴方が望む願いを一つだけ叶えてあげよう」

彼はそこで初めてすまなそうな表情を見せた。

('、`*川「……」

そして、彼女は沈黙でもってそれに答えた。



713:レースクイーン(アラバマ州) :2007/04/14(土) 05:52:29.39 ID:8EfekdEx0
  
唐突な提案に対して、彼女は再び困惑していた。
そして、周囲に居る者たちにむかって視線を向ける。

一緒に戦った同じ異世界の住人であるブーンやシャキン、この世界の勇者である『J』、ショボン、ドクオ、しぃを始めする住人達。
彼らの顔を見ると、短いようで長かった四日間のことをが鮮明に思い出された。

そうしている内に、彼女の中にはある感情が沸き起こっていた。
それは、胸が張り裂けそうなほど熱いもの。
その想いに流されるように、次に浮かんできたのは、この世界の住人達が楽しそうに笑っている光景であった。

彼女は、ふとブーンに視線を向けた。

( ^ω^)「……」

彼も何も言わず、微笑みを浮かべて、ゆっくりと頷く。

('、`*川「……」

それに後押しされたのか、
ついに、彼女は決心するように口を開いた。

('、`*川「それは、決まっているわ。それはみんなの願いであり、私の願いでもある。それは――」

そうして、彼女は願いを伝えた。

最終話 完



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