( ^ω^)エアーがクオリティーを育てるようです
- 634: すずめ(dion軍) [BGM最後のものへ] :2007/04/11(水) 22:41:07.50 ID:JxlIAxi70
- 次の日、懸念していた槍が降ることは無く、鋭い太陽の光が木々をすり抜け地へと降り注いでいた。
朝から己が行動に精を出す。
ξ゚听)ξ「兄者ー、ちょっとこの柱ガタついてない?」
(;´_ゝ`)「はいはいはい!」
(´・ω・`)「だから前から言っていうだろう、その柱が安定しないのは組み方上仕方ないって……何を聞いていたんだ君は?」
ξ゚听)ξ「だからガタつきが強くなっていないかって言ってんのよ!」
(;´_ゝ`)「いや、変わって無いようだけど……」
(´・ω・`)「ほら見たことか、君は黙って食事を用意してくれ」
口喧嘩は相変わらず絶えないが、それでも結束は強まったように感じる。
そう、当初は共同作業など無理と思われていたにも拘らず、今ではこうしてそれぞれが役割に徹しているのだ。
とても大きな一歩をメンバーは跨いだ。
ξ#゚听)ξ「あー、ムカつくわねアンタには食事あげない」
(´・ω・`)「そんな事言っていると、飲み水がなくなるよ?」
ξ゚听)ξ「何言ってんのよ、アンタとモララーが行った時の目印が……」
そう言って周りを見渡したが、昨日木々につけた傷が綺麗サッパリなくなっていた。
勘違いかと思って見直すが、やはりどこにも無い。
正真正銘消えている。
- 637: すずめ(dion軍) :2007/04/11(水) 22:43:08.56 ID:JxlIAxi70
- (;´_ゝ`)「跡が……無い?」
(´・ω・`)「そうさ、変態が言っていただろう、この世界は常に進化しているんだ。
癒えない傷なんてこの世には無いからね、見てのとおりさ」
(;´_ゝ`)「目印が無いと、でも……」
(´・ω・`)「ちなみに僕は大体の場所なら記憶している。
さて、僕に食事は準備してもらえるのだろうか?」
ツンは大きく舌打ちをしながら、返事もせずに朝食の準備に取り掛かった。
食用の雑草を簡単に燻したり、生で食べる簡素なものだ。
油でもあれば幾分レパートリーは増えるたのだろうが。
( ・∀・)(……)
これは喧嘩しているのか?
いや違う、何だかんだ言いながらしっかりと協力できているのだ。
疎外感を感じながら、モララーは口を開く。
( ・∀・)「それじゃあショボン君、また案内してもらえるかい?
何とか覚えられるように務めるよ、もしくは目印にリボンを巻きつけようか、それなら消えない」
(´・ω・`)「好きにしてくれ、それじゃあ早い目に行く事にしようか?
ああツン、帰ってくるまでに美味いお茶を準備しておいてくれ」
ξ#゚听)ξ「知ったこっちゃ無いわよ!」
- 638: すずめ(dion軍) :2007/04/11(水) 22:45:07.95 ID:JxlIAxi70
- ( ・∀・)(……)
今のショボンの一言も、ただの揶揄だろうか?
その一言だけでこのメンバーが上手く回っているように感じたならそれは考え過ぎだろうか?
自分が引っ張るよりもこのショボンという男が動いた方がよっぽど協力が上手くいく。
安心してしまった自分がいると同時、激しい虚無感があった。
自分がどれだけ右往左往した苦労も、結局は報われなかったのだから。
ツンと兄者に火の番と食事を任せ、モララーとショボンは供に水を求めに森を進む。
水というのは、小さな湖から掬い出したものだった。
二人でそこまでの道を歩くが、会話らしい会話は無い。
モララーは、僻み、妬んでいたのだろう、ショボンという男を。
(´・ω・`)「それで、一体どうしたんだい? カリカリしている様子だね」
( ・∀・)「そんな事も無いよ」
(´・ω・`)「君は実に嘘をつくのが下手だね、お茶の時もそうだけど。
嘘も方便というしね、もう少し上手に嘘をつく練習をした方が良い。
おそらく君が、まだクオリティを見出せ無い一人なんだろう?」
自分の気持ちもお見通しか、それが気に入らなかった。
どれだけ躍起に頑張っても手に入れることの出来なかった『信頼』を、この男は一瞬にしてモララー自身から奪っていったのだ。
- 644: すずめ(dion軍) :2007/04/11(水) 22:47:07.63 ID:JxlIAxi70
- (´・ω・`)「世間の風当たりの強さは重々感じて生きてきたが、心当たりの無いやっかみは嫌でね」
( ・∀・)「……やっかみって、そこまで分かってるじゃないですか」
(´・ω・`)「おやおや、失言したよ……クックック」
自分が絶対に口を割らない事を見越して、この男は先に結論を言ったのだろう。
ああ、恥ずかしいほどに随分とこの男を信頼してしまったものだ自分は。
( ・∀・)「今まで気にしないようにしていたけれど、才能のある人間に会うと辛いね本当。
自分がどれだけ無力かをまざまざと見せ付けられると、まったく嫌んなっちゃうよ」
(´・ω・`)「君は、どうして公安になったんだい?」
( ・∀・)「……僕は奇麗事といわれるかもしれないけれど、誰かにために何かがしたかった。
誰かは身近な人間や大勢な方が良い、それなら公安になったのは必然とも言えるのでは?
初めはヒーローに憧れる子供みたいな感情ですよ、それがいつか自分の礎になってしまっていただけで」
(´・ω・`)「なぜ公安を辞めたんだい?
本当に自ら辞職を願ったんだろう、それはどうしてなんだい?」
( ・∀・)「言わずもがな、公安なんて言っても結局は自益を優先する人間ばかりさ。
楽して安定した給与を貰いたい、本当に民間の事を思っている人間がどれだけいると思って。
日本の心臓部を司るジジィが腐っていたので、これ見よがしに反抗したまでですよ」
公安時代からそうだった、熱意だけでどれだけ躍起になったところで力ある人間には勝てないのだ。
自分以外にも何人と熱意ある人間が沈んでいく様を見てきた。
そう、必要無い熱意など捨ててしまわねば重荷になると、そう思い知らされる。
- 646: すずめ(dion軍) :2007/04/11(水) 22:49:05.89 ID:JxlIAxi70
- (´・ω・`)「だったらどうして辞める? 公安そのものを君から変えていけば良いだろう?
(;・∀・)「え……」
ショボンが口にした出し抜けの言葉に、思わず声が出た。
予想だにしない言葉だった、それでいて大切な人からの言葉にダブって耳へと届いた。
『そうか、それじゃあオマエが熱意だけで上へ登りつめる第一人者になればいいじゃないか。
そうすれば熱意ある人間から鑑みられるだろう、そして皆熱意が必要だって気付くんじゃ無いか?
熱意の無い人間ばかりで腐っていると思うなら、オマエが変えろ』
こんな自分の愚痴を聞いてくれたのは他でも無い、公安時代の先輩であり内調での同僚でもあるジョルジュだ。
あの人はそして自分にそう言ってくれたんだ。
そう、奇麗事だけのつまらない自分の話を真面目に聞いてくれ、賛同してくれたあの人。
( ・∀・)(ジョルジュさん……)
後に知ったことだが、ジョルジュも元々はほとんど仕事は出来ない人間だったと。
それにも拘らず、自分の上に立ち、信頼や羨望を集めていたのだ。
まったく、自分の手本がそこにいた。
熱意だけで登りつめた男がそこにいたんだ。
- 650: すずめ(dion軍) :2007/04/11(水) 22:51:09.28 ID:JxlIAxi70
- ( ・∀・)「自分が、変えるか……」
考えもしなかったといえば嘘になるだろうか。
それでも自分のような何も出来ない人間が公安を根から変えるなど、非現実的な話この上ない。
奇麗事だけを述べてとバカにされるに決まっているさ、勝手に自身へそう言い聞かせていた。
( ・∀・)「無理さ、ただの一個人がどう足掻いたって何が出来る訳も無い、無力だよ。
出る杭は打たれるのさ、社会とはそういうところだろう」
(´・ω・`)「だったら僕の考えはどうして変わったんだい?」
ショボンの思わぬ一言に、胸から熱い何かが沸いてくるのを感じた。
大切な事を忘れる所だった。
自分の持つ唯一の武器を放棄するところだった。
( ・∀・)「僕は……何もできていない」
(´・ω・`)「何もできていないヤツに僕はこんな事をいう程度の人間だと思われているのかい、心外だね。
君は僕が犯罪者である以前に、僕という人間を見てかかわってくれた。
こんな人間に会えるなんて実に久しぶりだ、だから僕だって協力してもいいかなんて思ったのだがね」
( ・∀・)「……」
駄目だ、何を言ったって口では勝ち目が無い。
こんな中途半端な自分の気持ちでは論議にすらなりゃしない。
- 653: すずめ(dion軍) :2007/04/11(水) 22:53:16.66 ID:JxlIAxi70
- ( ・∀・)「ヤレヤレまったく……悪人にまさか道を示されるとはね」
(´・ω・`)「安心してくれ、僕は無理だろうヤツには言わないさ……ククク」
その一言一言に大きな感銘を受け、そしてその後押しが嬉しかった。
まぁいいか、世を揺るがす犯罪者にこうも言ってもらえるなど大変光栄な話だ。
( ・∀・)「現実に戻ったなら、公安に再び戻ってみるかな……公安自体を変えていくことはもちろん、
ショボン君みたいな才能を無駄にした、尊敬できる犯罪者の誕生を防いでみせるよ」
(´・ω・`)「期待せずに待っているよ。
ほら、何だかんだで湖に到着したよ、道は覚えたのかい?」
( ・∀・)「大丈夫だよ、僕が覚えなくてもショボン君がいるからね」
(;´・ω・`)「随分な信頼だな、まったく公安志望が聞いて呆れるよ……」
二人は袋に水を掬い取ると、改めて来た道を引き返していった。
帰りは互いに無言だったが、互いを信頼した、気持ちの良いものだった。
- 665: すずめ(dion軍) :2007/04/11(水) 22:57:25.62 ID:JxlIAxi70
- ξ;゚听)ξ「あ、お帰り……」
(´・ω・`)「これは随分血生臭い状況だね、説明は要らないよ」
(;・∀・)「喜ぶべきシーンなんだろうけどね」
その場では兄者が変態と血みどろの死闘を演じていた。
二人ともあえて拳を避けようとせず、ひたすらに殴り合っていた。
ξ;゚听)ξ「二人とも笑ってる……楽しそう」
(´・ω・`)「男には拳同士でしか話し合えない、そんな時もあるものさ。
そしてより二人の仲は親密になるのさ、ククク」
(;-∀-)(公安に戻ろうとした手前、喧嘩は止めるべきかな……でも正直係わりたくないな)
三人が見守る中、兄者と変態の懇親の一撃が互いの顔面にクリーンヒットした。
同時に地面へと倒れる二人。
(;'A`)「くッ……兄者、やるようになったな……」
(;´_ゝ`)「会長こそ、まだ届かないとは……遠い……」
二人とも体を痙攣させ、辛うじて動く首と目で互いを見合った。
(´・ω・`)「これは先に立ち上がったほうが勝つ、手出しは無用だ」
ξ;゚听)ξ「そんな気毛頭無いわよ、汚い!」
(;-∀-)(言われたから仕方ない、手出しは無用だよな手出しは無用……)
- 667: すずめ(dion軍) :2007/04/11(水) 22:59:32.02 ID:JxlIAxi70
- (;'A`)「兄者、悪いが俺はまだ……負けれねぇ!!」
変態はグッと体に力を入れると、ボロボロの体を立ち上げた。
虹色マントが風に靡く。
(;´_ゝ`)「バカな、まだどこにそんな力が……!」
('A`)「これが俺、会長と一不審者との実力差だ」
ごつ然とした態度で、威風堂々と言い放った。
勝てない……自分にはまだ不審者協会会長の座は早かった、そう直に感じさせられた。
ξ#--)ξ「……で、二人とも満足した?」
(※)'A`)「あ、はいホンマすんません一脇役が調子に乗って。
これでも本編ではサブ主人公張るくらい頑張っていたんですが」
(※)´_ゝ`)「本当反省してます、ちょっと悪乗りが過ぎました」
(´・ω・`)「とりあえず変態が来たと言う事は、皆のクオリティが出揃ったという事でいいのかい?」
('A`)「そうらしい、さっき神様からデコメール来たんで。
重要な事はちゃんと電話で伝えようね皆!」
( ・∀・)「と言う事は、ようやく帰れるのかい……皆、ゴメン。
やっぱり自分が最後の一人だったみたいだ」
- 671: すずめ(dion軍) :2007/04/11(水) 23:01:35.18 ID:JxlIAxi70
- ξ゚听)ξ「なーに言ってんのよそんな清々しい顔しながらさ!
本当悪いって思ってるならもうちょっとすまなさそうな顔しなさいよ。
嘘つくの下手な人ね」
(;・∀・)「誰かにも同じ事言われたよ」
(´・ω・`)「気にしなさんなって事さ」
( ・∀・)「そうだね、皆ありがとう。そして、帰ろうか」
モララーが促すと、皆が首を縦に振った。
(;´_ゝ`)(アレ、流れ的に一人一言でオレの番じゃないの!?
おかしくない、押しなべて俺ってないがしろ!? 最後まで空気!?)
('A`)「それじゃあ神様の元へ案内しようか。
最後にやり残した事とか無いか?」
ξ゚听)ξ「あっ、ちょっと待って!」
ツンは叫ぶと、すぐに焚き火の近くに置いてあったカップを手に取ってくる。
そして皆に配った。
ξ゚听)ξ「お茶を準備しろって言ったでしょ?
最後に飲んでいきなさいよ」
- 676: すずめ(dion軍) :2007/04/11(水) 23:03:43.73 ID:JxlIAxi70
- (´・ω・`)「『美味しい』お茶といった筈だがね……やれやれ」
ξ゚听)ξ「飲んでいる時くらいは口数減らせないものかしら」
(;´_ゝ`)「え、オレの分が無いのですが……あれ?」
それぞれがそれぞれ、様々な思いを馳せて最後のお茶を飲んだ。
決して美味しくも無かったが、誰一人と残す事は無かった。
ξ゚听)ξ「お味はいかがでしたか?」
(;・∀・)「ああ、次はもうちょっと腕を上げてくれる事を期待するよ」
ξ#゚ー゚)ξ「言ってくれるじゃない、材料が悪いのよ材料が、言葉を選びなさい!」
(;-∀-)(本音を言ったのに、やっぱり女って難しいものだな……)
(;´_ゝ`)「いや、だからオレの分が……」
('A`)「私の分まで準備していただけて悪いね、どれどrこれはMAZUUUUUUUUUUUUU!!!!」
ξ#゚听)ξ「」
(;´_ゝ`)「オレの分は……」
- 682: すずめ(dion軍) :2007/04/11(水) 23:05:45.77 ID:JxlIAxi70
- (※)'A`)「それじゃ、今度こそ思い残す事は無いね?」
( ・∀・)「ああ」
(´・ω・`)「うん」
ξ゚听)ξ「ええ」
(※)'A`)「よし、それじゃあ、案内しようか」
(;´_ゝ`)(あれ、オレの台詞は!? 流れ的にマジおかしくない!?)
モララーが手を差し出した。
ショボンとツンも、無言で手を被せる。
( ・∀・)「兄者、何不貞腐れてるんだい」
(;´_ゝ`)「……ああ、悪い」
そして兄者も手を被せ、四人は最後にしてとうとう互いの手を取り合った。
全員がクオリティを見つけたと同時、遂にメンバーが一体化した。
今までの苦労もあったが、終わってみれば自然と名残惜しく感じるものだから不思議だ。
('A`)「それじゃあ、行くぜ?」
変態が合図すると同時、四人の姿はもうこの世界には無かった……。
( ^ω^)エアーがクオリティを育てたようです Aパート END
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