( ^ω^)閉鎖から一年経った俺達……
- 870: 第九章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/14(日) 17:47:27.17 ID:kQnSYTCX0
( ^ω^) 「…………………」
翌日。早朝。
僕は何事にも怪しまれぬよう、普通に出社した。
ξ゚听)ξ 「あら内藤君。ここ数日休んでたけど……何かあったの?」
早めに出社したからか、今回もツンしか居なかった。
(;^ω^) 「別に何も無いですお」
ξ゚听)ξ 「そう……ドクオ君も休んでるし……それにお父さんも……」
そう言いかけた所でハッとツンは息を呑んだ。
しまった。という表情が、隠しきれていなかった。それを僕が逃す筈は無い。
( ^ω^) 「あ。そういえばこの間のタカテレビ。見ましたかお?」
ツンの表情が不穏に影る。
やはり何か思い当たる事があるのだろうか。
ξ;゚听)ξ 「え? ああ見たわよ。凄かったらしいわね」
( ^ω^) 「そうですかお。実はあの時、僕もアソコにいたんですお」
ξ;゚听)ξ 「えぇ!?」
- 871: 第九章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/14(日) 17:47:40.50 ID:kQnSYTCX0
その驚嘆の声は驚きでは無い。
どちらかといえば、若干の恐れを帯びていた。
己の秘密を暴かれるのでは無いかと恐れる。そんな恐れを。
ξ゚听)ξ 「じゃ…じゃあ内藤君は……2ちゃんねらーって奴なの?」
( ^ω^) 「恥ずかしながら。ドクオもそうですお」
ツンは深い溜息を付いた。
それにこめられている意味を、僕は推測するしかない。
( ^ω^) 「今日暇ですかお?」
塩沢によれば、スカルチノフこと新田がツンと接触するのは今日のはずである。
「どんな事があっても、ツンだけは助けてやってくれ」という塩沢の願いを聞き入れる事で
やっと手に入れた情報である。
ξ;゚听)ξ 「え? いや……今日はその……」
( ^ω^) 「急がしかったですかお? じゃあいいですお」
僕はツンに背を向けた。
ツンは何か言いたそうな顔をしていたが、始業時間が迫ったからか、続々と入ってくる社員達を前に結局何も言う事は無かった。
僕はツンの方を見ないようにしながら、髪を掻き揚げる素振りをしながら、涙を拭った。
- 872: 第九章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/14(日) 17:47:52.11 ID:kQnSYTCX0
これで確実だ。
ツンは塩沢の娘で新田とのパイプ。
確定してしまった真実に、僕は打ちのめされかけた。だけど。
( ´∀`) 『がんばっておいで』
そう言ってくれたモナーさんの為にも、僕はくじける訳には行かない。
( ^ω^) 「こうなったら……本当にスネークするしかないお」
心静かに決意した僕は、拳を握り締めた。
そして、自身のPCの電源をつけると、あの日と同じようにタイプした。
- 873: 第九章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/14(日) 17:48:02.77 ID:kQnSYTCX0
あの日と同じように。アッーと言う間に定時。
僕はゆっくりと荷物纏めながら、ツンの出方を伺った。
ξ゚听)ξ 「今日は用事があるので、これで帰宅します」
(=゚ω゚) 「そうか。いや。君は働きすぎだからな。たまには休みなさい」
ξ゚听)ξ 「ありがとうございます。おつかれさまでした」
ツンはペコリと頭を下げると、急ぎ足で会社を出て行った。
僕は何時もの理由を宣言すると、それに続いて出て行った。
- 874: 第九章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/14(日) 17:48:13.52 ID:kQnSYTCX0
何時もならツンは駅へ向かう筈だった。
会社から駅までは歩いて五分。決して遠くない距離である。
ξ゚听)ξ 「タクシー!!」
なのに彼女はタクシーに乗った。
この四番交差点。別名「タクシーランド」では、片手を上げるだけでタクシーを止める事が出来る。
ツンは軽く手を挙げると、手近に止まったタクシーに乗り込んだ。
( ^ω^) 「ヘイ、タクシー!!」
僕も負けじとタクシーに乗り込む。
運転手は厳つい男だったが、僕の言葉を聴くなりニヤリと笑った。
( ^ω^) 「あの車を追ってくれ!!」
ミ,,゚Д゚彡 「任せときな!!」
運転手が豪快にアクセルを踏み込む。
制限速度を超えた爆速でタクシーは走りだし、ツンのタクシーに並んだ。
- 875: 第九章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/14(日) 17:48:23.23 ID:kQnSYTCX0
タクシーは数十分走った後、人気の無い河川敷にたどり着いた。
タクシーから降りたツンは暫くそこをうろついた後、河原のほうへ歩いていった。
( ^ω^) 「ツン……誰かを待ってるのかお?」
ミ,,゚Д゚彡 「兄ちゃん。あの子の友達かい? それともストーカーかい?」
( ^ω^) 「同僚ですお」
ミ,,゚Д゚彡 「なるほど。ストーカーの部類か」
ニヤニヤする運転手に嫌気が指した僕は、車の外に出た。
( ^ω^) 「少しの間、待っていてくれますかお?」
ミ,,゚Д゚彡 「あいよ」
運転手はニヤリと笑うと僕に囁く。
ミ,,゚Д゚彡 「行っとくが危ない行為はやめろよ。俺の首も危ないんだから」
( ^ω^) 「だからそんな事しないお」
僕はうんざりした表情でそう言った。
運転手はポンと肩を叩くと、顎でツン方をしゃくった。
- 876: 第九章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/14(日) 17:48:33.06 ID:kQnSYTCX0
ξ゚听)ξ 「…………………」
ツンは静かに誰かを待っている。
だが暗闇の中、誰を待っているかまでは判断しかねる。
( ^ω^) (ここに……新田が来るのかお?)
いや。新田本人が現れるとは考えにくい。
何しろ警視総監の息子である。ある程度の束縛は否めないであろう。
ならば誰が来るのか。
( ^ω^) (新田の部下……?)
そう。それが適当な答えである。
だがそれにしては遅い。まるで……
( ^ω^) (ツンが誰かに見つかるのを……待っているみたいだお)
その瞬間。ツンの手を誰かが掴んだ。
- 877: 第九章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/14(日) 17:48:44.45 ID:kQnSYTCX0
ξ゚听)ξ (゚Д゚,,) 「wwヘ√レvv─wwヘ√レvv〜─ 」
何て言っているのかは聞えない。
ただ一つだけ分かるのは、その男の服装が青い事。
月光に照らされた彼の様相はまるで……
( ^ω^) (警察官かお……)
そう警察官。かつては町のお回りさんだった彼らだが、今や僕等の敵である。
僕はツンの動きを静かに見つめ、観察を続ける。
ξ 凵シ(゚Д゚,,) 「wwヘ√レvv─wwヘ√レvv〜─ !!」
口論の末に、ツンが殴られた。
観察を続けていた僕の胸に、一筋の怒りが差し込んだ。
- 878: 第九章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/14(日) 17:48:54.30 ID:kQnSYTCX0
(;^ω^) 「やめるお!!」
思わず大声を上げていた。
ツンも、ツンを殴った警察官も、驚いた表情で此方を見ている。
ξ゚听)ξ 「内藤……君………」
(,,゚Д゚) 「チッ……着けられてやがったのか……この雌豚が」
警察官はツンを警防で殴る。
居ても立っても居られなくなった僕は根限りの力で警察官に飛び掛ると、その顔を殴った。
(,,゚Д゚) 「ぐえっ!!」
(#^ω^) 「よくも……ツンを殴ったお!!」
顔に、腹に、急所に、至る場所に打ち込まれた拳は、その男を失神させた。
その様子を見つめていたツンは、喘ぐ僕に微笑んだ。
ξ゚ー゚)ξ 「助けに来て……くれたんだ……」
倒れこむツンを、僕はそっと抱き上げた。
- 880: 第九章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/14(日) 17:49:13.27 ID:kQnSYTCX0
ミ,,゚Д゚彡 「……おい。良からぬ関係じゃねぇだろうな」
( ^ω^) 「だからしつこいお。黙れお」
ξ゚ー゚)ξ 「内藤君は私を助けに来てくれたんですよ」
ミ,,゚Д゚彡 「はん。どうせチェリーの俺には分からんね」
運転手はうんざりしたように舌打ちすると、彼らを駅へと届けていった。
ツンと内藤はお金を払おうとした。しかし運転手がそれを止めた。
ミ,,゚Д゚彡 「あんた等の平和を祈って。この代金をサービスにするよ」
ニヤリと笑った運転主は、数キロ先の街頭へ消えていく。
それを見つめながら、僕はツンと向かい合った。
ξ゚ー゚)ξ 「もうアタシの事……知ってるんでしょ?」
( ^ω^) 「ツン先輩はツン先輩だお。他の誰でもないお」
ξ゚ー゚)ξ 「先輩なんてやめてよ。ツン、でいいわ」
(*^ω^) 「…………ツン」
ξ////)ξ 「………内藤」
照れていた二人は、暖かい風に包まれていた。
- 881: 第九章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/14(日) 17:49:27.30 ID:kQnSYTCX0
( ^ω^) 「とりあえず……話……聞かせてくれるかお?」
ξ゚听)ξ 「ええ。でもここじゃ駄目ね。見つかるかもしれない」
( ^ω^) 「じゃあ取っておきの場所があるお」
ξ゚听)ξ 「何処?」
( ^ω^) 「カーチャンの所だお」
僕はツンの手をしっかりと握った。
( ^ω^) 「どんな事があっても……ツンを護るお」
ξ////)ξ 「馬鹿……。新入社員のクセに……」
まるでカップルのように、二人は駅へ向かい、病院へ向かった。
- 882: 第九章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/14(日) 17:49:43.89 ID:kQnSYTCX0
J( 'ー`)し 「………………」
喋る事もせず、起き上がる事もせず、その瞼が持ち上がる事もない。
およそ植物人間のようなカーチャンの脇で、僕達は座っていた。
ξ゚听)ξ 「まず最初に言うと、私は塩沢俊平の娘よ。そこは間違いないわ」
( ^ω^) 「じゃあ聞くけど……ツンはお父さんから何を預けられたんだお?」
ξ゚听)ξ 「預けられた? いえ。私は何も預かってないわよ?」
(;^ω^) 「え? じゃあ何で今日はアソコに?」
ξ゚听)ξ 「お父さんが待ってるって言ってたのよ。悪い「2ちゃんねらー」に追われてるから助けてって」
(;^ω^) 「なんだって…………」
話がすれ違う。
この話が事実だとすれば、塩沢は嘘を付いている事になる。
しかし、命を救われた恩人に対し、嘘とは付けるモノなのだろうか。
嘘を嘘と見抜けない人に、掲示板を使うのは難しい。
いつかの言葉が脳裏をよぎる。だとすれば、今まさに危ないのは……
( ^ω^) 「ツン。一緒に来てくれるかお?」
ξ゚ー゚)ξ 「どこへでも行くわよ。どこへ行くの?」
( ^ω^) 「僕達の家だお」
内藤達は駆け出した。
運命の歯車が修正される瞬間に。
- 883: 第九章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/14(日) 17:49:58.35 ID:kQnSYTCX0
アジトはガランとしていた。
人気も無く何時ものように光が点る事も無い。
僕はたまらなくなって、家族の名前を叫んだ。
(;^ω^) 「ショボンさーん!! ジョルジュー!! しぃさーん!!」
帰ってくる答えは無い。
風が頬をなで、まるで虚空を歩いているようだ。
(;^ω^) 「モナーさーん!! ドクオー!! みんなー!!」
答えは無い。
心配そうに見つめていたツンは、僕の肩に手をのせた。
僕の口からは嗚咽が漏れ、ツンは優しく抱きしめてくれた。
( ;ω;) 「皆……行ってしまったお……」
家族は僕を護る為に行ってしまった。
そんなの嫌だ。僕も家族だ。まだ戦える。
ξ゚听)ξ 「親って言うのはね。子供を護りたいモノなのよ」
ツンは優しく囁く。
ξ゚听)ξ 「親にとって見れば、子供だけには生き延びて欲しいものなのよ」
僕は泣いた。
ツンの胸に、顔を押し付けながら。
- 884: 第九章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/14(日) 17:50:17.53 ID:kQnSYTCX0
微笑みながら僕を撫でてくれたツンは、僕に囁いた。
ξ゚ー゚)ξ 「でもね。子供はいつか、大人になるわ」
僕は泣くのを堪えながら、その言葉を聴いた。
ツンはあの日と同じように頭を撫でながら、言葉を続ける。
ξ゚ー゚)ξ 「大人になった子供は、親に恩返しをしなくちゃいけないの」
ξ゚ー゚)ξ 「その伝え方は様々だけど……あなたは大人になったんじゃないかしら」
ξ゚ー゚)ξ 「いろんな人の喜びや、悲しみや、痛みを見てきたあなたなら」
僕は涙を拭って立ち上がった。
ツンは微笑みながら僕についてきてくれる。
僕等の前では、最後の戦いの火蓋が切られていた。
- 885: 第九章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/14(日) 17:50:32.76 ID:kQnSYTCX0
失った友の心を刃に込めて。
未だ祈る仲間の思いを柄に込めて。
対なす敵への憎しみを盾に構えて。
家族への思いを胸に込めて。
愛する彼女の言葉を僕の礎に。
また何時の日か語り合える未来を目指して。
- 887: 第九章 ◆PdFSeGF7kA :2007/01/14(日) 17:51:12.03 ID:kQnSYTCX0
( ) 「ん……あぁ……良く寝た」
内藤達がアジトを去った数分後。
仮眠室で一人の男が目を覚ました。
やせ細っていた体は元通り肥え、その目には覇気が宿る。
( ) 「全く……一年ぶりの大仕事だな……」
男はベットの脇にある数十個のトランクに目を向け、短い溜息をついた。
そして面倒そうに立ち上がると、PCを立ち上げた。
最終章へ……
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