内藤小説
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/02(月) 12:45:11.30 ID:S/AYdx4wO
('A`)「…いつから、俺たちは不要になったんだ…。いつから俺たちは古い時代の遺産として扱われるようになったんだ!」
( ^ω^)「…時は流れるお…。あの当時、まだまだネットは若すぎたお…。成長するためには僕らが土台になるしかなかったんだお」
('A`)「…それで……納得しているのか……?」
( ^ω^)「…………」
そんな筈はなかった。内藤もドクオと同じ思いだった。
しかし新しく若い流れにはどうあがいても勝てなかった。自分の事を忘れ去られていく恐怖、不安、嫉妬、孤独…それら全てが頭上に降り掛かってきた。
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/02(月) 12:46:24.35 ID:S/AYdx4wO
だから内藤は仮面を被った。自分の顔の上に。笑顔の張りついた仮面を。仮面の内の笑顔など、とうに消え去っていた。
( ^ω^)「そろそろ帰るお。ドクオも帰るかお?」
('A`)「あぁ…。帰ろう。今日は飲み過ぎた…」
ホテルの入り口で二人は別れた。別れを惜しむ言葉はお互いになかった。昔のように。
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/02(月) 12:50:19.15 ID:S/AYdx4wO
内藤と別れた後、ドクオは足をふらつかせて自宅のあるアパートに向かっていた。
ドクオもまた内藤と同じように先の見えない生活を送っていた。あれほどあった金もギャンブルとデリヘルに消えていき、それほど金に余裕はなくなっていた。
歩きだして20分くらいだろうか。家賃節約のために住んでいる木造ボロアパートに着くころには夜風にあたって酔いも随分覚めていた。
('A`)「平山…か。なんのつもりだ…」
テーブルの上に置きっぱなしだった手紙を見てそう呟く。
- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/02(月) 12:52:13.95 ID:S/AYdx4wO
本当に悪戯だったら良かったのにな、とドクオは思う。
冷蔵庫のビールに手をかけたが、思い直してコーヒーを作りそれを飲みながら、この部屋には不釣り合いなソファーに腰を下ろす。
内藤から手紙の詳細を聞いたとき、ドクオは嫌な予感がした。内藤には咄嗟に悪戯だと言ったが、信じただろうか。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/02(月) 12:55:52.86 ID:S/AYdx4wO
煙草に火をつけ、今日あった事をまとめる。
まず、昨日届いた手紙。その内容は、内藤に届いた手紙といくつかの相違点があった。
内藤に届いた手紙には
『明日の晩7時にホテルUHOの1501号室でお待ちしています』
俺の方の手紙には
『明日の晩6時30分にホテルUHOの1501号室でお待ちになって下さい』
とあった。
一つ目は、鍵だ。自分の方に届いた手紙には1501号室の鍵が同封されていた。
二つ目は、文。内藤の方に届いた手紙には時間、場所その後に『お待ちしています』とあったらしい。しかしこっちの手紙には、時間、場所その後には『お待ちになって下さい』とあった。
三つ目は、時間。内藤の方には7時、こっちの方には6時30分とあった。
なぜこんなややこしい事をしたのだろう。本当に二人に会いたいのなら、当然同じ時刻に合わせた方がいいだろう。
何か自分と内藤を会わせたくない理由でもあるのだろうか。いや、だったら違う日なり違う場所なりにしたらいい筈だ。
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/02(月) 12:57:43.95 ID:S/AYdx4wO
第一、普通人を呼び出す時にホテルの鍵を送り付けて待っていろというのはあまりにも不自然だ。
それよりもあのような手紙が来ること自体が不自然すぎて、あまり気にしていなかったが。
つまり、平山という人物は最初から来るつもりはなかった。
なぜか?
俺と内藤と会わせる為だ。
そう考えると三つの相違点にも合点がいく。
一つ目の鍵は平山は来るつもりがなかったから、俺に鍵を持たせた。
二つ目の文意は、俺の方の『お待ちになって下さい』というのは、俺に内藤を待てと言うこと。内藤の方の『お待ちしています』というのは、俺が内藤を待っているということ。
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/02(月) 12:59:27.89 ID:S/AYdx4wO
三つ目の時間。これがいっそう心を重くした。なぜ30分もの差をつけたか。半分の15分でも問題なかったはずだ。
むしろそれ以上長いと、先に来ていた方が痺れを切らして帰ってしまう可能性だってある。
じゃあなぜ30分も差をつけたか。
俺が遅刻すると踏んでいたのだ。それも計算に入れていた。俺がどんな約束でもおよそ25分遅れることを。
人間の生活習慣というものは中々変わらないものだ。どんなに早く準備しようと結局家を出る時間はいつもと変わらなかったりするもの。
俺は見事に平山という人物の思い通りに動いてしまったというわけだ。
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/02(月) 13:01:38.91 ID:S/AYdx4wO
- しかし、これはもちろん誰にでも出来る芸当じゃない。もちろん平山というのは偽名だろう。ごく身近な者。それもここ数年はいなかったから、その前…
そして、なぜわざわざこんなまどろっこしい真似をしたのか。まるで、平山という人物が自分の存在を誇示しているような…
そこまで考えてドクオは考えるのをやめた。
内藤は今日の事をどう考えただろうか。ドクオとしては内藤に余計な心配をさせたくなかった。だから悪戯だろうと言った。
内藤はこっちの手紙に鍵がついてたことなどは知らない。だとしたら、俺がなぜ部屋に入っていたのかくらい疑問を持っていいはずだが…。
まぁ馬鹿だからな。と言って片付けてしまえればいいが、今日の内藤は何か違った。悪戯だと言っても信じようとしなかった。
何かある。これは単なる悪戯じゃないと考えるだけの理由があった。
内藤は何か隠している。
ドクオはそう確信した。
('A`)「…アイツを頼ってみるか…」
ドクオは眠い眼を擦りながら、アイツが居る場所へ行くために部屋を出た。
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/02(月) 17:02:48.16 ID:S/AYdx4wO
帰ると言ったはいいものの、時刻はすでに深夜にさしかかるところだった。そこで、気はすすまなかったがビジネスホテルの部屋をとることにした。
( ^ω^)「ふぅ、ようやく落ち着けるお」
アルコールのせいで若干頭がぼうっとしていたが、それでも頭の中は一連の事でいっぱいだった。
悪戯、ドクオはそう言った。実際平山は来なかったのだから、ドクオにしてみれば悪戯以外の何物でもないだろう。
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/02(月) 17:04:31.79 ID:S/AYdx4wO
実際自分もそう思っただろう、今朝のメッセージがなければ。
「暗闇の中 光の中 あたしを連れ出して 」
これは一体何を意味しているのだろうか。一見すると助けを求めるように見えるが、本意は違う。その事は内藤自身が一番良く知っていた。
愛する者から言われた言葉。自分に愛を伝える言葉。この言葉を思い出す度に胸を鋭利な刃物で切り裂かれるような思いがした。
腑甲斐なかった自分への怒りかはたまたそうすることで、自分を保とうとする一種の防衛本能なのか。
いずれにせよ、記憶の奥底にしまった消したい過去を誰かが無理矢理引っ張りだしているような、そんな感覚がした。
- 55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/02(月) 17:06:03.49 ID:S/AYdx4wO
( ^ω^)「もちつくお。とりあえず…………………ペイチャンネルだお」
一旦部屋の外に出て、ペイチャンネルを見るためのカードを買いに行く。
まずは、カードの自販機の場所をチェキする。どうやら、ジュースの自販機の隣にあるようだ。
そして、辺りに人がいないか、エレベータが上がってくる気配はないかをチェキする。
- 56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/02(月) 17:08:06.22 ID:S/AYdx4wO
意を決して、素早くカード自販機の前に行く。今にも近くのドアが開いて人が出てきそうな錯覚を覚える。
あらかじめ用意しておいた千円札を手に、カード自販機に入れる。一発で入るかどうか、それはこの任務が成功するかどうかの大きな要素を占めていた
( ^ω^)「今だお!」
カード自販機「ウィー……ヴィー」
( ^ω^)「ちょwwwwwww戻すなおwwwwwww」
と、その時後ろに人の気配がした。
というか人がいた。
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/02(月) 17:10:25.09 ID:S/AYdx4wO
- しかも女性だ。ジュースでも買いに来たんだろう。どうしようか…
@そのまま平静を装ってカードを買う
Aハイクオリティで誤魔化す
B「アレ?壊れてるじゃんコレ壊れてるじゃんアレ?コレ壊れてるじゃん…」と小声で何度も繰り返す
内藤はAを選んだ
(;^ω^)「お?なっなななななんかかかか勝手にせせせせ千円札ががでで出てきたおおお。まままさかかか勝手に動くとはぶびびびっくりだおおお」
女「…………………」
(;^ω^)「ここ困ったおお、この千円札どどどうするかおお」
女「……………キメェ」
(;^ω^)「………」
そんなこんなで夜はふけていった。
- 58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/02(月) 17:12:06.30 ID:S/AYdx4wO
その店はまるで人目につくのを避けているかのように入りくんだ場所にあった。
('A`)「ここか…」
ドクオもこの店に来るのは初めてだった。何せ今から会おうとしている人物と顔を会わせるのも数年振りなのだ。
カランコロンと音がするドアを開けるとそこには懐かしい顔があった
(´・ω・`)「やあ。ようこそバーボンハウスへ。君ならきっと来ると思っていたよ」
('A`)「おいおい、久しぶりの挨拶がそれかい?」
(´・ω・`)「すまない。最初は必ずこれを言う決まりなんだ」
- 59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/02(月) 17:14:09.38 ID:S/AYdx4wO
('A`)「やれやれ。挨拶なのか、本当に俺が来ると思っていたのか、どっちなんだ?」
(´・ω・`)「君が来るなんて分かるわけないだろう。久しぶりだな」
('A`)「あぁ、10年振りくらいか。それにしても全然客いねぇじゃねーかw」
(´・ω・`)「黙れ、ぶち殺すぞ」
('A`)「…」
(´・ω・`)「そんなことより用件を話せ。再会を懐かしむために来たわけじゃないだろう?」
('A`)「…まぁな。お前のところには手紙が届かなかったか?」
(´・ω・`)「?手紙?何の手紙だ?」
('A`)「平山とかいう奴からの手紙さ」
(´・ω・`)「平山?聞いたことない名だな。いや、届いてないな」
- 60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/02(月) 17:15:43.05 ID:S/AYdx4wO
('A`)「そうか…。てっきりお前にも届いてると思ったんだかな」
(´・ω・`)「平山というのはお前の知り合いか?」
('A`)「いや、平山という名前に知り合いはいない。おそらく偽名だ」
(´・ω・`)「…偽名…?………どうやら穏やかじゃないようだね」
('A`)「あぁ。面倒な事にならなきゃいいが…とりあえずテキーラくれるか」
(´・ω・`)「サービスじゃないぞ」
ショボンが作ってくれたテキーラを飲みながら、ドクオは事のあらましを話した。
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