内藤小説
- 144: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/02(月) 21:56:38.54 ID:S/AYdx4wO
- (´・ω・`)「どうやら一刻を争うようだね」
('A`)「…だな」
二人はショボンの店のカウンター席に並んで腰を下ろしていた。
捕まえた男を解放し、シャキーンの店を出て、その足でこの店に来た。
ドクオとしては頼りになるシャキーンにも協力してもらいたがったが、敵の狙いに入っていないシャキーンをわざわざ巻き込むわけにもいかなかった。
無論、情報収集という形での協力はしてもらうが。
- 145: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/02(月) 22:01:18.03 ID:S/AYdx4wO
- ('A`)「しかし…経緯は分かったが、いかんせん敵さんの手掛かりはないな」
(´・ω・`)「うん。でも全くないというわけでもないんじゃないかな」
('A`)「あ?」
(´・ω・`)「敵の連中にはもう僕らを捕まえるのに失敗したということは分かっているはず」
(´・ω・`)「こちらから何かアクションを起こさなくても、きっと向こうから仕掛けてくるはずだよ」
('A`)「そこを迎え撃つってわけか」
(´・ω・`)「上手くいけばね」
('A`)「上手くいくと思うか?」
(´・ω・`)「難しいだろうね。今度は多少強引でも来るだろうし」
- 146: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/02(月) 22:04:06.63 ID:S/AYdx4wO
- ('A`)「おい…じゃあどうするんだよ?」
(´・ω・`)「そうだね。まずドクオにはアメリカに飛んでもらおうか」
('A`)「ちょ…」
(´・ω・`)「僕は敵の出方をうかがいながら、こっちで何か様子を見るよ」
('A`)「だから…」
(´・ω・`)「彼女に会ってくるんだ。君と内藤に手紙を出すように依頼したのは、まず間違いなく彼女だ」
('A`)「いや…」
(´・ω・`)「君と内藤を会わせたのは何か理由があるんだ。おそらく、僕らを狙っている連中から守るために」
('A`)「俺の話しも…」
(´・ω・`)「あんな回りくどいやり方をしたのは彼女自身も誰からか見張られていたからかもしれない」
('A`)「だから俺の…」
(´・ω・`)「僕らが狙われるんだから彼女が狙われてもおかしくはないよ」
('A`)「…」
- 147: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/02(月) 22:09:05.43 ID:S/AYdx4wO
- (´・ω・`)「彼女は頭が切れる。そんなに簡単に奴らに捕まりはしないだろうね」
('A`)「お…」
(´・ω・`)「おそらくどこかに身を潜めているんだろう」
('A`)「…」
(´・ω・`)「はいコレ。アメリカに居る僕の友人の住所を書いたよ。彼は彼女とも連絡をとっていたようだから、何か知っているかもしれない」
('A`)「…」
(´・ω・`)「気をつけて行くんだよ。連中もすぐには君の行動には気付かないよ。はいコレ、明日の早朝便のチケット」
('A`)「ちょ…いつの間に…」
(´・ω・`)「それからホテルとっといたよ。家は張られてるかもしれないからね」
('A`)「だからいつの間に…」
(´・ω・`)「それからドル紙幣も渡しとくね。じゃあ行ってらっしゃい。頼んだよ」
バタンッ
('A`)「…俺の話しは聞いてくれないのな…」
ドクオはショボンから半ば無理矢理渡された航空券とドル紙幣を持って夜道を走っていった…。
- 150: ◆P.U/.TojTc :2006/10/02(月) 22:25:05.37 ID:S/AYdx4wO
- 時はさかのぼって、ドクオが日本を発つ三週間前
場所はアメリカ合衆国カリフォルニア州のシリコンバレーと呼ばれるところに彼女は居た
やわらかな陽気の中を脇目も振らず一人歩いていた。
横を見れば車が慌ただしく道路を駆け抜けていき、下のアスファルトは夏の照り返しを待ち侘びている。
上を見上げれば雲にも届きそうなビルが太陽の光りを目一杯浴びている。
くたびれる街だ、と彼女は思う。クラクションの音、オープンカフェで朝食をとる人々の声、そして自分のハイヒールの音、その全ての音を彼女は嫌っていた。
- 151: ◆P.U/.TojTc :2006/10/02(月) 22:28:38.45 ID:S/AYdx4wO
- いつも通りの時間に会社に入る。
「おはよう」と同僚たちに声を掛けいつも通り自分のデスクにつき、パソコンの電源を入れる。
そしていつも通り、クリスがコーヒーを持ってくる為に足を運んでくる。
クリス「おはよう、ツン。あら、なんか今日は顔色悪いわね?もしかして昨日は誰かと会って寝不足なのかしら?」
ξж゚听)ξ「そ、そんなんじゃないんだからねっ!なによ朝からそんな事言って…」
クリス「はいはい、コーヒー入れましたよ」
ξ*゚听)ξ「あ、ありがと…なんて思ってないんだからねっ!」
微笑みをツンに投げかけながらクリスは自分のデスクに戻って行った。
- 152: ◆P.U/.TojTc :2006/10/02(月) 22:30:28.50 ID:S/AYdx4wO
- クリスとはこの会社に入社した時の同期だった。日本人のツンに向こうから話し掛けてくれたのがキッカケで仲が良くなった。
ツンはクリスが入れてくれたコーヒーを飲みながら仕事を始めた。
最近は重要な役回りを命じられることが多くなった。英語力が買われ、日本向けの企画の立案なども任されるようになった。
シリコンバレーにはIT関係の会社も近頃多く創業され、ツンが居るこの会社もその一つであった。
ツンは黙々と仕事をこなした。これは入社当時から変わっておらず、数年立った今も仕事には情熱を注いでいる。
- 153: ◆P.U/.TojTc :2006/10/02(月) 22:34:30.04 ID:S/AYdx4wO
- この日も残業を終え、ツンはがらんとしたオフィスで仕事の後の一服をしていた。
ξ゚听)ξ「ふー疲れた」
ツンはパソコンの画面を切り替え、ある掲示板に入った。これはアメリカで最大規模の掲示板である。
そこには数多くの板があり、ツンはその中でも1番活気があり、人が多い板に入った。
そこには多くの糞スレがあり、立てては消え立てては消えの繰り返しだった。
ξ゚听)ξ「日本もアメリカも変わらないわね…」
くだらないと思いながらもツンは何度も更新した。
そこにツンの目を引くスレッドがあった。
- 154: ◆P.U/.TojTc :2006/10/02(月) 22:36:58.37 ID:S/AYdx4wO
『ライブテンファンド社、日本の某掲示板の元人気キャラクターらを買収?(2)』
ツンは素早くそのスレッドを開いた。しかし、1には詳しい事は書いていなかった。
更新する。
ξ゚听)ξ「……?」
そのスレッドはもう見当たらなかった。
ξ゚听)ξ「削除された………?」
もう一度更新する。
ない。しばらくすると、それどころか、他のスレッドも削除されているようだ。
- 156: ◆P.U/.TojTc :2006/10/02(月) 22:39:40.49 ID:S/AYdx4wO
ξ゚听)ξ「どういうこと…?」
ツンはしばらく成り行きを見守ることにした。
そうして今度は運営に行ってみる。
ξ゚听)ξ「…………」
思った通り、削除されたスレの住人が猛抗議をしていた。
その中には『削除人が乱心したか?』や『システムの故障か?』などの書き込みもあった。
あれだけ無作為に色んなスレッドが削除されれば、そう思うのも無理はない
ξ゚听)ξ「これはしばらく収拾がつかないわね…」
そう呟きながら、ツンは自分の胸の鼓動が高まっていくのを感じた。
釣りだろう。あそこの板では釣りは日常茶飯事だ。
- 161: ◆P.U/.TojTc :2006/10/02(月) 23:14:43.92 ID:S/AYdx4wO
- しかし、スレは削除された。もちろんあのスレだけ削除されたわけではないが。
ツンは何か腑に落ちないものを感じた。もしかしたら…と考えてしまう。
木の葉を隠すなら森に隠せというように、あのスレを消したことが目立たないように他のスレも消した…。
ξ゚听)ξ「…何考えてるんだろ、私は」
ツンは頭を振って、我に返ろうとした。
しかし会社を出て、自宅に帰るまでの間もそれは頭を離れなかった。
ライブテンファンド社…表向きはクリーンな会社ということを売りにしているが、裏では相当えげつない事をしているという噂だ。
その会社が、何故。
日本の某掲示板の元人気キャラクターというのは、間違いなく彼らのことだろう。
ξ゚听)ξ「内藤………」
その日ツンは一睡も出来なかった。
- 6: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 12:30:06.71 ID:sjrkKl4IO
('A`)「やっと着いた…」
ドクオはカリフォルニア州の空港でそう小さく呟いた。もちろん日本語で。
ショボンに言われるがままとうとうここまで来てしまった。
('A`)「しかし…外人ばっかだな」
一般的にはドクオこそが外国人なのだが。
('A`)「さてと、こっからが問題だな」
ドクオは英語を話せない。目的地も定まっていない今、何をどうしていいのやら考えあぐねていた。
- 8: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 12:33:54.21 ID:sjrkKl4IO
('A`)「とりあえず、ショボンの友人とやらを訪ねてみるか」
ショボンからもらった住所が書かれている紙を手に案内所へ行き、道順を尋ねる。
カタコトとも言えない言語とジェスチャーでなんとか相手に伝え、行き方を教えてもらった。
('A`)「やれやれ大変な旅になりそうだな」
バスに乗り込むドクオの後ろ姿にはすでに疲れの色が見え隠れしていた。
- 9: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 12:35:32.53 ID:sjrkKl4IO
- ――――――――――――
そこにはひっそりと一軒の家が佇んでいた。
('A`)「すいませーん」
とドアをノックしながら言う。
返事はない。留守なのだろうか。もう一度声をかける。
やはり返事はない。
('A`)「おいおい…留守だからって帰るわけにはいかないぞ」
ドアの鍵は開いていた。ドクオはおそるおそる足を踏み入れた。
ガチャッ
ドアが閉まった音ではないことはすぐに分かった。後頭部には硬いものが当てられていた。
ドクオは瞬時に考えをめぐらせた。先回りされたのか?ここのことも調べられていたのか?
いや、今はそんなことを考えてる場合じゃない―――
- 10: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 12:37:30.89 ID:sjrkKl4IO
「もし…私が敵だったら、ドクオ、君は死んでいる」
('A`)「…敵…だったら?」
「だったら…ね。味方で良かった」
ドクオの後頭部から圧迫感が消える。振り向くと、そこにはいかにも冴えないヲタクのようなピザ日本人の音が立っていた。
「どうも。ショボン君から話は聞いてるよ」
('A`)「…どうも。あんたが武田さんかい?」
武田「まぁ、一応そう呼ばれてはいるね。とにかく中へ入りなよ」
ドクオは仲良くなれそうなタイプではないことは瞬時に理解した。
- 11: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 12:40:11.44 ID:sjrkKl4IO
- 三日続けて仕事を休むのは初めてのことだった。クリスが心配して電話をかけてきてくれたが、大丈夫だと伝えて早々に切った。
ξ゚听)ξ「遅いわね…」
彼女はもう2時間も電話の前でそわそわしていた。
ツンは掲示板であのスレを見てから、居ても立ってもいられず探偵業者に調査を依頼した。
その探偵業者とは長い付き合いで、昔キモヲタストーカーに悩まされていた時に依頼をして解決してもらったこともある。
個人探偵事務所で決して大きな所ではないが、カーターという男の腕は中々のものだ。ツンは彼が元闇の世界の住人ではないかと考えていた。
彼に依頼をした理由は腕が立つという事だけではなく、彼のプロ意識を信用していたからだった。
きな臭い事を調査するのは探偵だけでなく依頼した張本人にもリスクがあることだった。
相手によってはこっちの命を狙われる危険性だってある。
- 13: ◆P.U/.TojTc :2006/10/04(水) 12:43:27.15 ID:sjrkKl4IO
その点、カーターは信用出来た。彼はそんなヘマを犯さないだろう。彼は充分にこの仕事の危険性も理解している男だ。
もちろん、危険に対する代価は高いが。
ξ゚听)ξ「イライラ…テレビでも見ようかな…」
テレビのスイッチを入れてチャンネルを回す。
ξ゚听)ξ「あーもう!ニュースしかやってないじゃない!」
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