内藤小説
- 9: ◆P.U/.TojTc :2006/10/10(火) 22:38:07.25 ID:XZEL/JNRO
('A`)「ふぅ…」
ため息と一緒に心配事も出ていけばいいのにな、と思う。
ツンに聞きたい事、確認したい事はまだ山ほどあったが自重した。
はた目から見ても彼女は疲労困憊といった様子だった。無理もないだろう。ここのところ色んな事が一気に起きすぎた。
身を隠し、仲間の事を心配し、更に一緒に行動している人間が味方ではないのかもしれないのだ。
('A`)「どう考えるべきか…」
ドクオは寝返りをうった。床の冷たさが気持ちいい。
- 11: ◆P.U/.TojTc :2006/10/10(火) 22:41:52.03 ID:XZEL/JNRO
ドクオは廊下で寝ていた。スペースの都合で仕方ない。それに万が一の事があってもこの場所からなら対応出来る。
もう一度しっかり頭でまとめてこれからの行動を決めなければならない。
自らがライブテンファンド本社に忍びこんだこととカーターという人物が遺してくれた資料で相手は段々と見えてきた。
本社に忍びこんだ夜、ツン達と合流出来たのは奇跡といっていいだろう。
彼女達も情報を探る為に侵入していたのだ。
- 12: ◆P.U/.TojTc :2006/10/10(火) 22:44:19.85 ID:XZEL/JNRO
しかし合流出来たのは良かったが、良い事ばかりではない。
1番の不安要素はジュディだ。もし彼女がCIAだとしたら危ない可能性も高い。
ライブテンファンド社は情報や軍事を扱う企業だ。そしておそらく官との癒着もあるだろう。
逆に分かる事もある。今までは相手の目的も分からなかったが、CIAが動いてると仮定するとそれも見えてくる。
おそらく重要機密情報の漏洩あたりだろう。だがこちら…少なくともドクオに心当たりはない。
十年前、掲示板で現役をやっていた頃まで遡るといささか自信はないが。
- 13: ◆P.U/.TojTc :2006/10/10(火) 22:46:33.29 ID:XZEL/JNRO
とにかくCIAまで動いてるとなると分が悪すぎる。この国に入って来る時は偽造パスポートだからそれほど心配はないが、ジュディがCIAだとすると意味はない。
むしろドクオとツンを同時に捕えるには都合がいいだろう。もしそうなったら対抗する術は無いに等しい。
ショボンに連絡をとりたい所だが、ショボンは場所を転々としているようだからとりあえずシャキーンに託けておいた。
('A`)「ふー。ややこしすぎて頭がパンクしそうだ」
まだまだ気になる事はあるが、ドクオはもう一度寝返りをうって眠る事にした。
- 14: ◆P.U/.TojTc :2006/10/10(火) 22:49:15.65 ID:XZEL/JNRO
(´・ω・`)「とりあえず安心か…」
先ほど武田に連絡した時にドクオたちとツンが合流出来た事を聞いた。ツンには連れがいるらしい。
ツンを守ってくれたのなら感謝しなければならないな、とショボンは心からそう思った。
ショボンはジュディがCIAかもしれないということはまだ聞いていない。
- 15: ◆P.U/.TojTc :2006/10/10(火) 22:54:55.79 ID:XZEL/JNRO
デニー・レインズはやはりエリートで現在は役員の地位に落ち着いていると武田から聞いた。
自分が指示したとはいえドクオたちは上手くやってくれた。社員名簿や他の情報を手に入れたのはお手柄だ。
(´・ω・`)「これからどうするかな」
依然として内藤の行方は分からないままだった。不安もないことはないが殺されてはいないだろう。
消す事が相手の目的なら自分やドクオなどとうに消されている筈だ。
- 16: ◆P.U/.TojTc :2006/10/10(火) 22:58:32.16 ID:XZEL/JNRO
しかしもう一つ新たな心配の種が出てきた。
(´・ω・`)「公安か…」
引退して一線から退いた馴染みの情報屋が教えてくれた。
どうやら公安に動きがあるらしい。
現段階では一連の事件と関わりがあるとは思えない。
それでも不安にさせるのは昔の名残だろう。あの頃は相当無茶をやったものだ。
(´・ω・`)「もう無茶はするまいと決めたはずなのにね…」
疲れが溜まっている。もう自分も若くはないのだ。
同じ様に内藤も若くはない。これ以上長びかせるわけにはいかないのだ。
ショボンは自分にそう言い聞かせて立ち上がった。
- 17: ◆P.U/.TojTc :2006/10/10(火) 23:01:05.13 ID:XZEL/JNRO
( ^ω^)「…お?」
頭がぼんやりする。見えてきた景色は暗くて殺風景な部屋だった。そこのベッドに寝ているようだ。
「目覚めたかね?内藤ホライゾン君」
( ^ω^)「はいだお!」
フルネームで呼ばれ、学生時代の癖でつい良い返事をしてしまう。
- 21: ◆P.U/.TojTc :2006/10/10(火) 23:18:48.89 ID:XZEL/JNRO
「いい返事だ。具合はどうかね?」
( ^ω^)「頭がぼんやりしてますお…お!」
思い出した。監禁されていた所に男たちが表れて変な注射を打たれてそれから…
「そうか。安心しなさい。あと少ししたら楽になる」
( ^ω^)「お前は何者だお?」
「私達は君を助けた者だよ。君は監禁されていただろう?」
- 22: ◆P.U/.TojTc :2006/10/10(火) 23:20:53.58 ID:XZEL/JNRO
( ^ω^)「お?警察かお?」
相手の顔は暗くてはっきりと見えない。
「あぁ、そうだ。もう安心していい」
( ^ω^)「そりゃ助かりましたお。早いとこ帰らしてくれお」
「それは無理だ。もう少しここに居てもらう」
( ^ω^)「お?なんでかお?」
「身体も弱っているし、君を監禁した犯人も捕まえなきゃならんだろう?少しばかり協力して欲しい」
( ^ω^)「それじゃ仕方ないお」
「助かるよ。ありがとう」
( ^ω^)「お礼を言うのはこっちだお。助かりましたお」
「それじゃあ私は捜査があるから失礼させてもらうよ。ここでゆっくりするといい」
( ^ω^)「おK」
男は出ていくのを見届けると内藤はもう一眠りするために瞼を閉じた。
- 23: ◆P.U/.TojTc :2006/10/10(火) 23:22:42.83 ID:XZEL/JNRO
武田「あ、うん。はいはい。わかった。じゃあね」
武田が受話器を置くと同時にドクオが眠い目をこすりながら起きてきた。
('A`)「ん?電話誰からだ?」
武田「あぁショボン君だよ」
('A`)「え?…もう切れてるよな?」
武田「うん?話したかったの?」
('A`)「あぁ、いやまぁいい。またかけてくるだろ。で、なんて?」
ドクオは他の人が起きていない事を確認して聞いた。
- 24: ◆P.U/.TojTc :2006/10/10(火) 23:29:06.01 ID:XZEL/JNRO
武田「来るって」
('A`)「あ?」
武田「だから来るって」
('A`)「ここに?」
武田「That's Right!」
('A`)「いつ?」
武田「もうすぐじゃない?こっちの空港からかけてきたみたいだし」
('A`)「なんで?」
武田「さぁ…。なんか調べたい事があるかどうか」
('A`)「そうか。あいつが来るのか」
- 25: ◆P.U/.TojTc :2006/10/10(火) 23:32:38.33 ID:XZEL/JNRO
('A`)「…空港の電話番号わかるか?」
武田「ん?わかるけどどうして?」
('A`)「迎えに行ってやろうかと思ってな。じゃあ俺は準備しとくから空港に電話かけて呼び出して待たせとけ」
武田「わかったよ」
ドクオは手早く準備して、空港へ向けて車を走らせた。
- 26: ◆P.U/.TojTc :2006/10/10(火) 23:35:50.96 ID:XZEL/JNRO
――――――――――――
(´・ω・`)「なるほどね。それでわざわざ迎えに来てくれたのか」
('A`)「な?ややこしいだろ?」
(´・ω・`)「確かにね」
二人はドクオが運転する車内でお互いのあった事を話していた。
('A`)「しかし急だったな。まさか直接そのデニー・レインズって奴に会いに行くんじゃないだろうな?」
(´・ω・`)「そんな危ない真似しないよ」
('A`)「危ない事は俺にさせればいいってかww」
(´・ω・`)「ドクオは頼りになるからね」
(*'A`)「ぽ…」
- 28: ◆P.U/.TojTc :2006/10/10(火) 23:39:10.77 ID:XZEL/JNRO
(´・ω・`)「とにかくそのジュディさんには一応警戒しとこう」
('A`)「あ、あぁ。しかし本当の所どう思う?」
(´・ω・`)「…有り得ない話じゃないね。でもそうなるとCIAが必ずしも敵だというわけでもない」
('A`)「?」
(´・ω・`)「確かにライブテンファンド社とCIAは繋がりがあるかもしれない。でもライブテンファンド社からCIAに情報の伝達があったとしても逆は考えにくい」
('A`)「…なるほど。情報漏洩があったとしても痛手を負うのはライブテンファンド社だってことか」
- 29: ◆P.U/.TojTc :2006/10/10(火) 23:41:47.92 ID:XZEL/JNRO
(´・ω・`)「CIAが恐れているのはむしろライブテンファンド社が無茶をやって過去のあらゆる癒着が明るみに出ることかもしれない」
('A`)「となるとジュディの目的はなんだ?」
(´・ω・`)「さぁ。大体まだ彼女がCIAだって決まったわけじゃないし。ただ…」
('A`)「ただ?」
(´・ω・`)「公安がね、動いてるらしいんだ。もちろんこの事件と関わりがあるかは分からない。でももしCIAが絡んでるとなると…」
('A`)「公安かよ…。ていうか複雑すぎてわかんねーよ」
- 30: ◆P.U/.TojTc :2006/10/10(火) 23:43:57.23 ID:XZEL/JNRO
(´・ω・`)「そうだね。とにかく内藤を助ける事だけ考えよう」
('A`)「あぁ、そんな奴いたなw」
(´・ω・`)「ところでドクオ、武田君にはちゃんと言っておいてくれたかい?」
('A`)「あぁ。ちゃんとお前がこっちに来てる事は口止めしておいたぜ」
(´・ω・`)「ありがとう。ジュディさんがCIAだったら迂闊に動けないからね」
- 31: ◆P.U/.TojTc :2006/10/10(火) 23:47:59.49 ID:XZEL/JNRO
('A`)「まぁそうだが、ツンにも言わなくていいのか?」
(´・ω・`)「彼女は嘘をつくのが下手だからね」
('A`)「確かにな」
そんな会話をしているうちにショボンが宿泊するホテルに着いた。
('A`)「じゃあな、何かあったらすぐ連絡してくれ。なるべく俺が電話に出るようにする」
(´・ω・`)「うん。でもこれからは電話でお互いの名前と内藤の名前を出さないようにしよう」
('A`)「…盗聴の心配をしてるのか?」
(´・ω・`)「まぁそんなものだよ。じゃあ気をつけてねお帰り」
('A`)「あぁ、お前も。無茶すんなよ」
ショボンを降ろした後、ドクオはツン達が目覚める前に帰り着きたかったので速度を上げて車を走らせた。
- 34: ◆P.U/.TojTc :2006/10/11(水) 00:01:04.29 ID:xbcHOmWmO
――――――――――――
( ^ω^)「…お?また寝起きシーンからかお…」
内藤は全く意味不明な寝言を呟いていた。
カーテンの隙間から差し込む光の量を見ると夜だろうか。電気のついていないこの部屋はとても暗かった。
( ^ω^)「そろそろ帰りたいお…」
- 35: ◆P.U/.TojTc :2006/10/11(水) 00:02:29.97 ID:xbcHOmWmO
「そうだろうな。だがもう少し我慢してくれ」
( ^ω^)「お!刑事さん居たのかお」
「あぁ今来た所だ」
( ^ω^)「電気つけてくれませんかお?暗すぎるお」
「すまない。私は光に弱い体質でね」
( ^ω^)「そうなんですかお。そりゃ無神経な事言いましたお」
なんでもかんでも信じるのも考えものだが、それが内藤の良さだから致し方ないだろう。
- 36: ◆P.U/.TojTc :2006/10/11(水) 00:04:25.41 ID:xbcHOmWmO
「それより、君について来て貰いたいところがあるんだが」
( ^ω^)「だが断る」
「それこそ断る」
( ^ω^)「やはり断る」
「それでも断る」
( ^ω^)「だが断る!」
「だが断らない!」
( ^ω^)「だが断る!!!!」
「じゃあ行こうか」
(;^ω^)「アレ…?」
内藤は頭を振りながら男の後をトコトコついていった。
- 37: ◆P.U/.TojTc :2006/10/11(水) 00:06:17.71 ID:xbcHOmWmO
ホテルの部屋に落ち着いた後、ショボンは一先ず寝床についた。
ツン、そしてジュディやハマーといった人の事も気になったがそれよりもショボンには気になっている事が一つあった。
こっちへ来る少し前から尾行がまったくなくなった事だ。そのおかげでたいした苦労もなくアメリカ入り出来たのだが。
これは何を意味しているんだろうか。
1番いいのは全てなかったことになるのがいいのだが、それは楽観的すぎるだろう。
(´・ω・`)「……ネムイ」
そこまで考えた所でショボンは瞼の重さに負けることにした。
- 38: ◆P.U/.TojTc :2006/10/11(水) 00:10:05.08 ID:xbcHOmWmO
ショボンが眠りについた頃ドクオはまずいコーヒーを義務感のに駆られて飲み干すのに手間取っていた。
ショボンが来た事は心強かったが不安な情報も持って来た。
しかもツン、ショボン、そしてドクオが揃っている今の状況は決して良いものではない。
もし敵が自分たちを捕えるなら今だがそのような気配もなくジュディにも何の行動もなかった。
ハマーとは一度話してみなければならないだろう。ジュディがCIAなのかどうかドクオも疑問に思い始めていた。
('A`)「しばらくは寝ずの番をすることになりそうだな…」
- 39: ◆P.U/.TojTc :2006/10/11(水) 00:12:39.96 ID:xbcHOmWmO
( ^ω^)「んー。久しぶりのお外だお」
と言っても外を歩いてるわけではなく、内藤は車の中に居た。
刑事ドラマにあるような黒塗りの車。大して車好きでもない内藤には車種までは分からなかった。
「乗り心地はどうだい?」
( ^ω^)「中々だお。刑事さんはいい車乗ってるお」
「そいつはよかった」
- 40: ◆P.U/.TojTc :2006/10/11(水) 00:15:25.17 ID:xbcHOmWmO
車のライトが夜道を照らす。しかし都会なのか街頭がたくさんついており、建物からこぼれてくる光もあるためライトはあまり役を為さない。
時々、対向車のライトが運転手と刑事という男の顔を照らすが後ろの座席に座っている内藤からは少ししか見えなかった。
( ^ω^)「そう言えば刑事さんの名前はなんていうのかお?」
「名前……か。ジョルジュとでも言っておこうか」
( ^ω^)「ジョルジュ…?どこかで聞いた事のある名前だお…」
「気のせいだろう」
( ^ω^)「あるあるお」
「よくある名前だ」
( ^ω^)「あるおあるお。ところでどこへ行くかまだ聞いてないお」
「行ってからのお楽しみだ」
( ^ω^)「じゃあ早く行くお」
車はいつの間にか道幅の狭い路地を走っていた。
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