内藤小説

5: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 13:38:42.26 ID:jknrd+eCO
  

デニー・レインズは静かに憤慨していた。

レインズ「老いぼれ爺め…」

老いぼれ爺とはこの会社、ライブテンファンド社の社長である。

昔は尊敬もしていたし、今でも彼の功績は尊敬に値するものだ。しかし、歳を重ねるにつれて能力は衰えていった。

レインズは彼が社長になる前まで秘書をしていた。だからこそ今のていたらくぶりは目に余るものだった。

その社長から、警告を受けた。今回の件をしくじったらクビにするというサインだ。同時に命の危険も示唆している。



8: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 14:01:52.61 ID:jknrd+eCO
  
レインズは知りすぎている。本来ならばレインズのような立場の人間は情報の漏洩の観点からみても将来を約束されているのだが。

レインズ「俺に恥をかかせやがって…」

今回は周りに恵まれなかった。捕まえたターゲットは逃す上に、他のターゲットの行方もわからなくなった。

CIAも手を引き始めていた。例え、後ろめたい事が明るみに出ても隠蔽工作は奴らの十八番だ。

レインズ「…あいつらに任せるか…」

レインズはある所に連絡を入れた。



9: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 14:05:24.48 ID:jknrd+eCO
  


(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」

('A`)「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

(´・ω・`)「でも済んだ事は仕方ないよ」

('A`)(えぇぇ………)

ハマーは調べたい事があると言ってタクシーを呼んでどこかへ行った。



10: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 14:08:40.13 ID:jknrd+eCO
  

ドクオはショボンに電話し、ショボンが武田邸に来る事になった。ツンたちからここに連絡が来るかもしれないという事を想定しての事だ。

(´・ω・`)「で、ハマーさんは僕の事も僕が来てる事も知らないんだよね?」

('A`)「あぁ。言わない方がいいと判断したんだが?」

(´・ω・`)「…それでいいよ。うん。それでいい」

ショボンは何やら思案している顔だ。

('A`)「どうするよ?これから」

(´・ω・`)「うん…僕の方も進展はないしね…」



11: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 14:12:54.57 ID:jknrd+eCO
  

('A`)「そうだ。モイヤーさんの件は?」

(´・ω・`)「おそらく消されたんだと思う」

('A`)「…そうか。それは気の毒だったな…」

(´・ω・`)「うん」

('A`)「………」

(´・ω・`)「それより、ツンだけが連れていかれたってのが気になるね」

('A`)「武田もだがな」

(´・ω・`)「あぁ彼ね。…そうか彼もか」

('A`)「まぁ…不自然だな」

(´・ω・`)「連れて行くべきドクオを連れて行かなくて、連れて行かなくていい武田君を連れて行った…」



12: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 14:15:36.11 ID:jknrd+eCO
  

('A`)「ハマーと俺を相手にするのがきつかったのか」

(´・ω・`)「それならそれで応援を要請すればいいだけの話だよ」

('A`)「デスヨネ」

(´・ω・`)「何か……引っ掛かるね」

('A`)「俺もなんか引っ掛かるんだよなぁ…」

(´・ω・`)「………」

('A`)「…テレビでも見るか」


一気に人数が減ったこの部屋の空気を変える為にドクオはテレビのスイッチを入れた。



13: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 14:20:27.54 ID:jknrd+eCO
  

チリリリリーン

それとほぼ同時に電話が鳴る。ショボンとドクオが思わず目を合わせ、ショボンがドクオに目配せをする。ドクオが意味を理解し受話器をとる。

('A`)「もしもし」

(`・ω・´)『その声はド……お前か!?』

('A`)「なんだシャ……あんたか」

お互い名前を呼び合わないようにする。

(`・ω・´)『なんだとはなんだ!』

(´・ω・`)「いいよドクオ。僕が代わろう」

('A`)「そうしてくれ」

(´・ω・`)「もしもし兄さんかい?」

(`・ω・´)『弟か。実は話さなきゃならん事があってな』

(´・ω・`)「…なんだい?」

ショボンは何度目か分からない嫌な予感がした。



16: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 14:30:06.81 ID:jknrd+eCO
  

ξ゚听)ξ「ねぇ!内藤はどこに居るのよっ!」

ツンは声の限りそう叫んだ。だが返ってくるのはコンクリートにこだました自分の声だけだった。

ξ;;)ξ「お願い…内藤に逢わせて……」

この部屋に閉じ込められてから一気に不安が襲ってきた。

ついさっき運命を受け入れる覚悟をしたばかりなのに。

ツンは諦めてソファーに座った。

この建物についてからまず武田と別々にされ、この部屋に通された。



17: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 14:35:08.60 ID:jknrd+eCO
  

窓がない以外は普通の部屋となんら変わりのない部屋だった。冷蔵庫がありテレビがありオーディオがあった。

おそらくCIAの持ち物なのだろう。

ξ;;)ξ「うっ…うっ……しっかり…しなきゃ…」

なんとかして出られないだろうかと考え、試してみたがどうやら映画のようにはいかないらしい。

普通の部屋なのに何故これほど落ち着かないのだろう。頭がおかしくなりそうだ。

ξ;-)ξ「内藤は…今もこんな部屋に閉じ込められているんだもんね…」

実際はもっとひどい部屋だったのだが、ツンが知る由もない。

ξ゚听)ξ「よし!しっかりしなきゃ!」

振りだけでも気丈にすると気分も違うというものだ。

ツンはその勢いでテレビのスイッチを入れる事にした。



18: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 14:38:13.10 ID:jknrd+eCO
  

シャキーンからの電話は衝撃的なものだった。

内藤が死んだ。

いや、殺された。

しかし、冷静に考えてみればおかしな点もある。
シャキーンによると警察のガードが異様に固いらしい。探ってみても中々詳しい事は分からなかったみたいだ。

それはいくつかの憶測を考えさせる。しかし憶測は憶測にすぎない。


('A`)「…どう思う?」

ショボンは口を開かない。ショボンがこういう顔をする時は頭をものすごい早さで回転させている時だ。



20: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 14:41:47.44 ID:jknrd+eCO
  

ドクオが出たとこ勝負の機転がきくのに対して、ショボンは理詰め、論理的に物事を考えるタイプだ。

だからこういう時はショボンに任せておけばいい。それが長い間付き合ってきてわかった事だった。

(´・ω・`)「…調べてみる必要がある。ドクオ、日本へ戻ってくれるね?」

('A`)「言うと思ったぜ。まぁ言われなくてもそうするつもりだったが」

(´・ω・`)「助かるよ。僕はこっちでツンの行方を探ってみるから」

('A`)「時々でいいから武田の事も思いだしてあげて下さい」



21: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 14:44:28.89 ID:jknrd+eCO
  

(´・ω・`)「それから多分これからは連絡取るのも難しい。今のうちに話し合える事は話しとこうか」

('A`)「じゃあ一つ。さっきもそうだけど盗聴されてたら電話でお互いの名前を言わなくても意味なくね?」

(´・ω・`)「盗聴されてたらね。僕が心配してたのはエシュロンだよ」

('A`)「エシュロン?」

(´・ω・`)「元々はアメリカのNSA、国家安全保障局によって開発されたものだよ。簡単に言えば全世界の電話、メール、ネットワークその他の通信手段を全て記録しているんだよ」

('A`)「…おいおい」

(´・ω・`)「NSAやGCHQ、政府通信本部の処理能力はずば抜けているからね」



22: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 14:49:36.91 ID:jknrd+eCO
  

('A`)「って言ってもそんなの膨大な量になるだろう?」

(´・ω・`)「そうだよ。だから名前などで検索してそれから絞り込むのさ」

('A`)「なるほど」

(´・ω・`)「最近では声紋でも区別出来るという話もあるしね」

('A`)「なんか怖くなってきたぜ…」

(´・ω・`)「僕もCIAの話が出てきたから警戒したんだけどね。まぁ一応GCHQの管轄だからなんともいえないけどね」

('A`)「なんでお前はそんな事まで知ってんだよ…」

(´・ω・`)「聞くのかい?」

('A`)「い、いや、やめとく」



23: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 14:52:50.88 ID:jknrd+eCO
  

(´・ω・`)「他には何かないかい?ほら、さっき何か引っ掛かるとかなんとか」

('A`)「あぁあれね…。そうだ。何か…」

(´・ω・`)「うん?」

('A`)「あ!思い出した!ツンが言ってたんだ。この事件を調べるように探偵に依頼した理由」

(´・ω・`)「聞いてないな」

('A`)「あぁ。アメリカの掲示板にスレがたったらしいんだ」

(´・ω・`)「………」

('A`)「えーと、ライブテンファンド社が俺らを買収するみたいなスレタイでな。すぐ削除されたらしいんだが」

(´・ω・`)「買収?」



25: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 14:55:45.42 ID:jknrd+eCO
  

('A`)「らしいぜ」

(´・ω・`)「ふーむ。武田くんがいればなんとか調べれたかもしれないけど無理だね」

('A`)「買収ってのが引っ掛かるよな」

(´・ω・`)「ふむ。スレ立て人は内部の者か。でも買収ってほど穏やかじゃないし」

('A`)「なんなんだろうな」

(´・ω・`)「さぁ…。まぁでもすぐに削除されたってのはライブテンファンド社と掲示板の繋がりがあるからだろうけどね」

('A`)「あーあるある。俺らの時も大変だったもんな」



26: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 14:57:01.80 ID:jknrd+eCO
  
(´・ω・`)「多分、そんなに気にしなくていいんじゃない?まぁただの買収だったら御の字だし」

('A`)「デスヨネ」

(´・ω・`)「さて、と。そろそろいいかな」

('A`)「俺もチケットとらなきゃ。ハマーに一言言ってからじゃないとな」

(´・ω・`)「いや、ハマーさんには僕から言っておくよ」

('A`)「ん?会うのか?」

(´・ω・`)「うん。状況が変わったし、一緒にツンを捜してみるよ。彼は頼りになりそうだし」

('A`)「そうか。じゃあ早いとこ俺は出るぜ」

(´・ω・`)「頼むよ。内藤はきっと生きてる」

('A`)「当然だな。あいつが自殺なんてするわけがない」

(´・ω・`)「気をつけてね。事態は複雑になってきてる」

('A`)「お前こそツンを頼んだぞ」

ドクオはタクシーを呼んで荷造りを始めた。



28: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 15:02:09.45 ID:jknrd+eCO
  

朝の目覚めは最悪だった。神経がたかぶって眠れなかったせいもあるが、元々いつもと違う環境では寝付けないタイプなのだ。

それに加えてここの所の疲労が肌にも出てくるようになった。

ξ゚听)ξ「はぁ…。私も歳かな」

備え付けの冷蔵庫を覗いてみる。そういえば昨日から何も口にしていない。



29: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 15:04:41.16 ID:jknrd+eCO
  

ξ゚听)ξ「何か食べようかしら」

とりあえず牛乳とコップを手にして、テーブルへ向かう。

ξ゚听)ξ「アレ?」

テーブルの上には新聞が置かれていた。昨日はなかったと思ったが。

ξ゚听)ξ「日本の新聞のようね」

ツンはぱらぱらと新聞に目を通した。日本の新聞など久しぶりだったが、相も変わらずくだらない政治問題に殺人事件の記事が載っていた。

その中の一つの小さな記事にツンの目は奪われた。



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