内藤小説

30: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 15:08:56.41 ID:jknrd+eCO
  

ξ゚听)ξ「…え………」

ガシャン、とコップが手から滑り落ちる。床に当たって割れたコップの破片が足元にたくさん散らばったが気にもならなかった。


『無職男性が自殺か』



『警察の発表によると、男性は多量の睡眠薬を摂取し、宿泊していたビジネスホテルで自殺を図ったとみられている』

『その後、チェックアウトの時間を過ぎても男性が現れなかった為、ホテルの従業員が部屋に入った所倒れていた男性を発見、救急車を呼ぶも手遅れだった』

『男性が所持していた身分証明書によると男性の身元は本名、内藤ホライゾンだとみられている』

『またこの男性は、某巨大掲示板の元マスコット的存在でもあり現在は無職であった』

『その他にも……………』

ξ゚听)ξ「ぁ……ぁ………」


ツンは言葉を忘れる程、頭が真っ白になっていくのが自分でもわかった。



31: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 15:10:50.96 ID:jknrd+eCO
  

(´<_` )「いつまで寝ているつもりだ、兄者」

( ´_ゝ`)「いつまでも寝ているつもりだ、弟者」

(´<_` )「仕事が入ったんだよ、兄者」

( ´_ゝ`)「またつまらん仕事じゃないだろうな、弟者」

(´<_` )「レインズ氏の仕事だ」

( ´_ゝ`)「ほぅ、それは少しは期待できる」

兄者、弟者と呼び合う二人の男は自分達のアジトにいた。



32: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 15:13:36.33 ID:jknrd+eCO
  

アジトと言えば、うす暗くて目立たない地下室ような場所を想像するだろう。しかし、ここはある高層マンションの最上階にあるとびきり大きな、そして洒落た部屋だった。

詰まるところ、二人が住んでいる家なのだ。だが、殺し屋としてのプライドなのかアジトと呼ぶ事で統一している。

(´<_` )「だが兄者、今回は殺しはなしだ」

(#´_ゝ`)「馬鹿にしているのか、弟者!」

(´<_` )「その代わり報酬はいつもの三倍だ」

(#´_ゝ`)「三倍がなんだ!人の命は金で買えないんだぞ!!」

(´<_` )「普通それは命を奪われる人が言う台詞で奪う人が言う台詞じゃないぞ、兄者」



33: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 15:17:25.78 ID:jknrd+eCO
  

( ´_ゝ`)「ふん。まあいいだろう。で、俺達の餌食になる標的は?」

(´<_` )「三人の男と一人の女」

( ´_ゝ`)「裏の奴らか?」

(´<_` )「微妙な所だな。男の中の二人は……まぁ…やるらしい」

( ´_ゝ`)「微妙というのはどういう事だ、弟者」

(´<_` )「日本の某巨大掲示板の奴らだ」

( ´_ゝ`)「なんと!ショボンとドクオか!?」



34: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 15:18:23.59 ID:jknrd+eCO
  

(´<_` )「知っているのか、兄者?後は内藤とツンだ」

( ´_ゝ`)「あぁ。ショボンとドクオの名は聞いた事がある。中々のやり手だと」

(´<_` )「だが所詮は表の人間。我らの敵ではないだろう」

( ´_ゝ`)「それは勿論だ」

(´<_` )「どうやらやる気が出てきたようだな、兄者」

( ´_ゝ`)「殺しが駄目なら半殺しにしてやるまで。はっはっはっはっはっ!!!」

(´<_` )「それにしてもこの兄者ノリノリである」



37: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 15:37:21.94 ID:jknrd+eCO
  

どれくらいの間、泣き続けていただろうか。

涙は枯れ、鼻をかみすぎた為鼻が真っ赤になり感覚がない事から相当な時間泣いていたことが分かる。

心底思い知った。

アイツがどれだけ自分にとって大切な存在だったのか。愛おしい存在だったのか。

長い間会っていなくてもアイツは確かに自分の心の中に居た。それを拒絶していた時期もあった。忘れようとした事だって一度や二度じゃない。



38: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 15:39:27.32 ID:jknrd+eCO
  

例えば、笑っている顔とか

例えば、泣いている顔とか

例えば、カッコつけてるつもりでも全然様になっていない顔とか


例えば、自分を本気で怒ってくれている顔とか


まるでメールの保護がかかってるように忘れられなかった。


それはとても自分を苦しめる時もあれば、救ってくれる時もある。

そして今が苦しめる時なんだ。


いや


多分これからずっと



40: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 15:42:37.48 ID:jknrd+eCO
  

夕方からは何故か武田が部屋に居た。

いつ入ってきたのかなんて知らない。

意識は何処かへ行ったまま戻ってくる事はなかった。このまま戻ってこなかったら苦しむ事もないのだろうか。

だったらそれでいい。


なんて。


だとしたら今こんな事を考えれる筈ない。意識とか感情とか、それはきっと永遠に私から離れてくれないのだろう。



41: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 15:45:18.29 ID:jknrd+eCO
  

そもそも私って何なんだろ。

あぁ…

イライラする。こんな事を考えてウジウジするのは内藤の役目なのに。

ムカつくなぁ。

思いっきりひっぱたいて、すっきりするまで文句言ってやりたいのに

もう言えないなんてね

ムカつくなぁ

武田「なに泣いてんの?キモい顔になってるよ?」


……は?



42: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 15:48:00.85 ID:jknrd+eCO
  

うん。これはカチンときた。


バッチーン!!!


武田「ゴバァハッ」

ξ゚听)ξ「破裂して死ねっ!」

武田「……。どうやら元気出たみたいだね」

ξ゚听)ξ「…え…?じゃあわざとあんな事を…?」

武田「フッ。なんか君があまりにも元気gっ!ゴバァハッ!!!」

ξ゚听)ξ「分をわきまえろ、キモピザ」


武田の眼鏡が破壊されるのはハマーに続いてこれで二度目だった。



43: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 15:51:59.65 ID:jknrd+eCO
  

武田「ハァハァ。まぁ冗談はさておき、その記事は信憑性は薄いと思うけどね」

武田は新たな境地に目覚めつつある自分を片隅に感じながらそう言った。

ξ゚听)ξ「………気休めならいらないわ」

武田「そんなんじゃないよ。うん。もっと怒らせたいぐらいだもの。性的な意味で」

ξ゚听)ξ「……」

武田「まぁとりあえずそれは置いといて。内藤君だっけ?ビジネスホテルで発見されたんだよね?」

ξ゚听)ξ「それが?」



45: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 15:54:09.24 ID:jknrd+eCO
  

武田「もし敵が殺したとして、なんでわざわざ見つかるような所で殺すのさ?」

ツンはずきんと胸が痛むのを感じるが、ここは武田に付き合ってみようと思った。

ξ゚听)ξ「きっと見せしめよ。私達に警告してるんだわ」

武田「敵は君達の身柄が欲しいんだよ?もし恐れをなして逃げ回ったら敵にとったら逆効果だ」

ξ゚听)ξ「じゃあ私達が報復をしに来る事を狙っているのよ!」

武田「落ち着きなよ。そんな賭けの為に内藤君を殺すとは思えない。もっといいおびき寄せ方があるさ」



46: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 15:57:18.00 ID:jknrd+eCO
  

ξ゚听)ξ「もう!回りくどいわね!」

武田「推測ってのは回りくどいものだよ。どうも僕には内藤君が殺されたとは思えないんだ。かと言って、君らから聞いた話だと本当に自殺したとも思えない」

ξ゚听)ξ「…いい加減な事言ったら承知しないわよ」

武田「…確かに憶測の域を出ないけどね。まぁいいよ。違う事を考えようか」

ξ゚听)ξ「なによ?」

武田「ジュディさんは何者なんだい?」

ツンは唐突な質問に少したじろいだ。この武田という男は案外凄い人なのかもしれない。



48: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 16:00:59.37 ID:jknrd+eCO
  

ξ゚听)ξ「ドクオはあなたに言わなかったのね。彼女は…ジュディは…おそらくCIAよ」

武田「やっぱりか」

二枚目ぶっている台詞に殺意を覚える。だが、我慢しよう。

ξ#゚听)ξ「で!?」

武田「OK。彼女がCIAで、ライブテンファンド社と繋がりがあるとして…なぜ僕らはまだここに居る事が出来るんだろう?」

ξ#゚听)ξ「もうすぐ連れて行かれるんじゃないの!?」

武田「そうかな。ライブテンファンド社にとってみたら僕はともかく君には早く会いたい筈だよ」



49: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 16:04:04.14 ID:jknrd+eCO
  

ξ゚听)ξ「そういえば何であんたも来てるのよ?それと、この部屋にはどうやって来たの?」

武田「とばっちり。別の部屋に入れられたんだけど、さっきジュディがこの部屋に案内してくれた?」

ξ゚听)ξ「ジュディが?」

武田「うん。あ、まだ話し長くなりそうだし、とりあえずコーヒーでも入れようか?」

ξ゚听)ξ「え?あ、あぁそうね。私が作るわ」

武田「それはどうも」

ツンはなんだかんだ言いながらも武田の存在に少し感謝をし始めていた。

ξ゚听)ξ「内藤……」

武田の話は難しかったが、僅かながらも希望があるような気がした。

生きていて欲しい。

切にそう願った。



50: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 16:07:10.10 ID:jknrd+eCO
  

――――――――――――

('A`)「やっぱ日本ってのはいいなぁー」

同じ空気でもアメリカとはどこか違う。五臓六腑に染みるとはまさにこの事だろう。

('A`)「っと、そんなにのんびりしてらんないんだったな」

最近は禁煙が流行っているのか空港内で喫煙所を見つけるのも一苦労だ。

それに隔離されたような密室空間で吸うのは煙草をまずくさせる、と常々思っていたので外へ出て吸う事にした。



51: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 16:12:03.69 ID:jknrd+eCO
  

('A`)「嫌煙厨うぜぇw」


内藤の死の真相。

ドクオがこうして慌てずにいられるのも内藤は死んでいないと確信しているからだ。

憶測、推測はいくつか考えられるがそのどれもがありそうでなさそうなものだ。結局、真相に近付くにはある程度の事実がないと不可能なのだ。


('A`)「ヘイ、タクシー!」


とりあえずドクオはシャキーンの元へ行ってみる事にした。



52: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 16:15:29.58 ID:jknrd+eCO
  

(`・ω・´)「いらっしゃーい!!ってなんだドクオか」

('A`)「文句あんのか」

(`・ω・´)「さぁ!サクサクっと話したい事を話せ」

('A`)「声でかい…。内藤の事だが」

(`・ω・´)「おぅ!やっぱりな!だがそれほど話す事はないんだ」

('A`)「っていうと?」

(`・ω・´)「俺も調べてはみたんだが、どうも情報が出てこない」

('A`)「……やはり隠蔽工作か」

(`・ω・´)「可能性は高い…。が…」



53: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 16:20:00.51 ID:jknrd+eCO
  

('A`)「何の為にかが分からない?」

(`・ω・´)「その通り。ライブテンファンド社がやったとは考え難い。だが内藤の身柄を確保していたのはライブテンファンド社だ」

('A`)「それは間違いない」

(`・ω・´)「だとしたら、何か不測の事態が起きたに違いない。あぁそうだ。ここに来るまでに尾行は?」

('A`)「ないみたいだ。この店には?」

(`・ω・´)「ついこないだまでは居たんだがな。今は居ない」



54: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 16:23:41.14 ID:jknrd+eCO
  

('A`)「…何故だ」

(`・ω・´)「わからんが、やはり何かトラブルがあったのかもしれんな」

('A`)「あぁ。考えられる可能性はいくつかある。内藤が本当に自殺したという可能性は捨ててもいいだろう」

(`・ω・´)「ライブテンファンド社が内藤を殺したという可能性もないことはないぞ」

('A`)「さっきは考え難いって…」

(`・ω・´)「故意じゃなく、ということだ。例えば拷問中に…」



55: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 16:28:32.35 ID:jknrd+eCO
  

('A`)「やめてくれ」

(`・ω・´)「…例えばの話だ」

('A`)「やめろと言っている」

(`・ω・´)「…お前はそういう所が甘い。見たい物しか見ないのはお前の悪い癖だ」

('A`)「気持ちの問題だ」

(`・ω・´)「逃げてるだけだな」

('A`)「…お説教ならごめんだ」

(`・ω・´)「忠告だ」



57: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 16:29:19.19 ID:jknrd+eCO
  

('A`)「なら有り難く受け取る。だが内藤は死んでいないぜ。……単なる勘だけどな」

(`・ω・´)「いや、事実を見ても生きてるとは思う。だが、いい状況か悪い状況かはわからん」

('A`)「どっちにしろ助け出して見せるさ」

(`・ω・´)「助けが必要だったらすぐに連絡しろ。いつでも行ってやる」

('A`)「あぁ。頼む」


ドクオは椅子から立ち上がり、代金を払おうとしたが断られた。

良く似てる兄弟だと苦笑しながらドクオは店を後にした。



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