内藤小説

59: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 16:34:22.16 ID:jknrd+eCO
  

ドクオが日本へ戻った後、ショボンはハマーを待たずに武田邸を後にした。連れ去られたツンや武田から連絡があるかもしれないが、その可能性は低い。

そう判断して、ショボンはある場所へ向かった。

その家は中々、趣のある家で彼らしいな、と思った。
ふと脇を見るとお爺さんが家を覗くような感じで見ていた。ショボンに気付くとお爺さんは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにそこから立ち去った。

変な人だな、と思ったが気にしないことにした。



61: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 16:39:40.52 ID:jknrd+eCO
  

(´・ω・`)「こんにちは」

ショボンはその家のドアをノックして声をかけた。もちろん英語である。

「はいはい」

気品のある穏やかな女性の声が中から聞こえて来た。

「えーと、どちら様かしら?」

ドアが開くと、白髪のおばあさんが顔を覗かせた。

(´・ω・`)「こんにちは。突然すいません。私はショボンといって、生前モイヤーさんにお世話になった者です」

「あらまぁ、あなたがショボンさんね。主人からよく聞いてましたわ」



62: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 16:42:14.85 ID:jknrd+eCO
  

(´・ω・`)「そうでしたか。…ご主人の事は本当にお気の毒でした」

「…えぇ、本当に。…とにかくお上がりになって」

どうも、とショボンは言い上がる事にした。

リビングにはモイヤーの写真が沢山あった。そしていつも隣に写っているのは今、ショボンの為にお茶を用意してくれている人。モイヤーの奥さんだ。

Mrs.モイヤー「さっきも言ったけど、あなたの事は主人からよく聞かされたわ」

彼女は座っているショボンの前にお茶を出しながらそう言った。アメリカの家には不釣り合いな湯呑みから湯気が立っている。日本好きだったモイヤーが買いあさった品の一つだろう。



63: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 16:45:25.26 ID:jknrd+eCO
  

(´・ω・`)「そうなんですか。何と言ってたか興味ありますね」

Mrs.モイヤー「フフフ。凄く純粋な奴だって」

モイヤー夫人は口元を綻ばせて微笑んだ。顔には歳相応のしわもあったがショボンが見る限り、彼女の笑顔にはとても魅力があった。

(´・ω・`)「純粋…ですか。意外だなぁ」

Mrs.モイヤー「こうも言ってたわ。自称腹黒の潔癖人間」

(´・ω・`)「あれれ、見抜かれてますね。よく子供扱いされてましたよ」

実際、モイヤーから見たら子供なのだがショボンはあまり気分が良くなかった。

Mrs.モイヤー「フフフ。あなたの理想論は嫌いじゃなかったらしいわよ」

(´・ω・`)「理想論…ね」

ショボンは苦笑した。モイヤーはどこまで夫人に話しているのか気になって仕方ない。



64: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 16:48:32.13 ID:jknrd+eCO
  

実際、モイヤーとショボンは幾度か議論をぶつけ合った事がある。店じまいをした後に二人して度の強い酒を煽り合っては政治、軍事などについて議論した。

その度に、ショボンはモイヤーから理想論を吐くケツの青い餓鬼と言われた。

ショボンはモイヤーの事を親のように慕い、友達のように接した。モイヤーは良くも悪くもリアリストだった。ショボンからしてみればそれこそ稚拙で幼稚でご都合的な考えのように思えた。

大人が理想を語らなくて誰が語るのか。少なくとも子供ではない。子供には何の力もないのだから。

ショボンは昔モイヤーにそう言った事をふと思い出していた。



65: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 16:52:13.21 ID:jknrd+eCO
  

Mrs.モイヤー「何か…聞きたい事があって此処にいらしたんじゃないの?」

夫人が切り出すように言う。

(´・ω・`)「えぇ。ご主人の事で」

やっぱり、と夫人は小声で呟くように言った。

(´・ω・`)「ご主人が亡くなった事について何かご存知なんですか?」

Mrs.モイヤー「…残念ながら私は何も知らないわ。私が知ってるのは主人はドラッグなんてやるような人じゃないって事だけよ」

(´・ω・`)「…同感です」

一気に部屋の酸素濃度が薄くなったような気がする。こういう時にはいつも言葉の重さを思い知る。同時に人間の存在の重さも。



66: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 16:56:13.46 ID:jknrd+eCO
  

(´・ω・`)「いい…家ですね。彼の匂いがします」

話題を変える。夫人の傷をえぐるような真似は出来るだけ避けたい。

Mrs.モイヤー「ありがとう。彼の夢だったのよ、この家」

許可を貰って、色んな部屋を見て歩く。歩いている内に子供の居ない夫人一人には広すぎるだろうなと思った。

そして彼の書斎に入る。そこには彼の昔の写真があった。写真の中の彼は若くてハンサムだったがショボンの気を引いたのは別の事だった。



68: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 16:59:30.86 ID:jknrd+eCO
  

彼は白衣のようなものを着て写真に写っている事が多かった。背景から想像するに医者ではないと思った。

Mrs.モイヤー「昔は研究員だったのよ」

不意に後ろから声を掛けられ驚いた。書斎のドアに夫人がもたれかかっていた。

(´・ω・`)「研究員…?」

Mrs.モイヤー「初耳みたいね。あの人はあまり言いたがらなかったから…」

(´・ω・`)「何の研究を?」

少し間が緊張感を漂わせる。



69: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 17:03:19.43 ID:jknrd+eCO
  

Mrs.モイヤー「軍事兵器よ」

(´・ω・`)「……」

軍事兵器。

背中がゾクッとした。

ライブテンファンド社は軍事の分野にも手を出している。この奇妙な接点は何だろう。考えすぎか。

(´・ω・`)「夫人、夫人は…デニー・レインズという男をご存知ですか?」

Mrs.モイヤー「聞いた事ないわ。その人がどうかしたの?」

(´・ω・`)「いえ、店の昔の常連さんでね。親交があるのかなと思いまして」

Mrs.モイヤー「そう…。あまり家に仕事の事を持ち込まなかった人だから」

(´・ω・`)「そうですか」



71: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 17:07:51.97 ID:jknrd+eCO
  

Mrs.モイヤー「あなたは…主人の事件どう思う?」

突然の質問に戸惑う。やはり自殺だとは思っていないのだ。

(´・ω・`)「…わかりません。ただ…………」

Mrs.モイヤー「いえ、ごめんなさい。あなたに分かる訳ないわよね。…本当にごめんなさい」

(´・ω・`)「…」

何も言えない。そんな自分に腹が立つ。

(´・ω・`)「正直に言います。僕はご主人が自殺だとは思っていません」

夫人が驚いた顔でショボンを見る。



72: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 17:13:06.85 ID:jknrd+eCO
  

(´・ω・`)「事情があって今は何も言えませんが、もしかしたら僕も僕の友人もこの事件に関わっているかもれません」

(´・ω・`)「実際に一人の友人の行方がわかりません。だから僕はこの事件を調べたいと思っています。もちろんご主人、モイヤーさんの為にも」

Mrs.モイヤー「……」

(´・ω・`)「今は何も言えませんが、全てが終わったら…必ずここへ来ます。そして全てをお話しします」

Mrs.モイヤー「…約束してくれるのね…?」

(´・ω・`)「はい。お約束します」

Mrs.モイヤー「もう一つ。…あなたは死んだら……駄目よ」

夫人の目から涙が溢れる。悔しいのだろう。悲しいのだろう。つらいのだろう。それを一人で背負うには彼女はあまりに歳を取りすぎている。

(´・ω・`)「…お約束します」

涙を拭って笑顔を作る彼女を見て、ショボンは必ずここへ戻って来ようと決心した。



73: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 17:16:02.33 ID:jknrd+eCO
  
その頃

日本、某巨大掲示板。

ここである一つのスレが立った。

『ちょwww面白いニュース見つけたwwwwwwwwwwwwwww』


そこの1にはある新聞社のソースが貼ってあった。


糞コテが馬鹿の一つ覚えのように2getをしているのは他のスレとなんら変わりがない。

3以降には色々な書き込みがあった。



75: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 17:17:57.29 ID:jknrd+eCO
  

「内藤って誰だよwwwwwwwwwwwwwww」

「また自殺wwwwwwwwwwwwwww」

「つまんねーよ。1氏ね」

「新参ばっか」

「古参うぜー」

「内藤ってアレだろ。昔のプーンとかいう奴だろ」

「あいつ死んだんだwwwwwwwwwwwwwww乙wwwwwwwwwwwwwww」



内藤の知名度など今はこれくらいのものだった。ドクオ達も同じだ。


結局レスが20くらいついてそのスレはdat落ちした。



77: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 17:21:05.44 ID:jknrd+eCO
  

('A`)「ったく…」

ドクオは広い公園のベンチに腰をかけて煙草を吸っていた。

昔馴染みの情報屋に当たってみたが、内藤の情報を出てこなかった。しかし、一つだけ確かな事が分かった。公安が内藤の情報を制限している事だ。

これでもうこの一連の事件に公安が関わっている事は間違いない。そして事態を複雑にしている事も。

内藤の身柄を拘束していたのはライブテンファンド社。内藤の自殺を偽装しているのは公安。



78: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 17:24:47.04 ID:jknrd+eCO
  

シャキーンの言葉が脳内再生される。シンプルに考えると、シャキーンの言う通りライブテンファンド社が不測の事態で内藤を殺害してしまい、公安が後始末をした。これで構わない。

しかし、そう考えるとおかしな点がある。

内藤の遺体は出ていないのだ。

内藤には家族は居ない。そういった場合、ある施設で火葬した後、遺骨はお寺に渡る。

ドクオはなんとか連絡をとろうとしたが無理だった。おそらく遺体など初めからない、というのがドクオの出した結論だ。



80: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 17:28:19.63 ID:jknrd+eCO
  

('A`)「だとしたら…」

ライブテンファンド社は殺してなどいない。しかし実際に公安は偽装、隠蔽した。ドクオ達をおびき寄せる罠の可能性もある。だが、尾行はおろか気配もない。

ショボンが言っていた事も気になる。CIAは敵か味方かわからないと。

CIAと日本の公安は繋がっている。そうなると公安も敵とは限らない。

ただ味方でもない事は確かだ。CIAらしいジュディはツンと武田を拉致した。公安は内藤の自殺を偽装した。

('A`)「クソッ…あと少しなんだ、あと少し…」

あと、一つか二つのピースがあれば全ての疑問が気持ち良く解けそうな気がした。



81: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 17:32:47.44 ID:jknrd+eCO
  

( ´_ゝ`)「あれは確かにドクオだ」

(´<_` )「流石兄者。記憶がいい」

二人は公園に生い茂っている木々の隙間からドクオをのぞき見していた。

( ´_ゝ`)「日本に来て正解だったな、弟者」

(´<_` )「全く、兄者の勘は凄いな」

( ´_ゝ`)「俺達の情報網の前にはプライバシーという言葉は存在せん」

(´<_` )「全くだ。レインズのような脆い情報網とは訳が違う」



82: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 17:35:52.11 ID:jknrd+eCO
  
流石兄弟と呼ばれる二人の男はアメリカからはるばる日本までやってきた。

ターゲットのドクオ達には独自の情報網がある。しかしそれも一流のプロである流石兄弟にはいとも簡単に見破られた。

後はその情報屋を張ってればいつかドクオ達が接触するはずである。そう考えた流石兄弟は実行して、今に至るという訳である。

この方法は言うは簡単だがやるのは危険だ。情報屋を張るなどリスクの高さは半端ではない。

( ´_ゝ`)「流石だよな俺達」

(´<_` )「これでこそ流石兄弟だよな」



84: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 17:40:14.15 ID:jknrd+eCO
  

二人は褒め合いながら、せっせと準備に取り掛かっていた。一流のプロは何かしら自分の得意とする武器を持っている。この流石兄弟の場合は兄者が爆弾、弟者が狙撃だ。

二人の本拠地はアメリカである。アメリカは銃を持つ事も認められているから仕事がやりやすい。本来はアメリカでの仕事をやりたかった。

日本ではもちろん銃などは禁止されているし、そういった意味では仕事はやりにくい場所だ。



85: ◆P.U/.TojTc :佐賀暦2006年,2006/10/23(佐賀県民) 17:42:45.25 ID:jknrd+eCO
  

特に弟者は狙撃が得意なので銃は欠かせない。しかし日本に銃を持ち込むのは中々難しい。調達は割と苦労せずに出来るのだが、弟者にはこだわりもある。

そこで今回は兄者の爆弾で仕事をやる事にしたのだ。爆弾なら日本でも十分作る事が出来る。もちろん、兄者の技術があってこその話だが。

(´<_` )「準備は出来たか、兄者?」

( ´_ゝ`)「あぁ、サポートを頼むぞ、弟者」

(´<_` )「ターゲットは隙だらけだな」

( ´_ゝ`)「わからんぞ、広くて見渡しのいい場所を陣取っているからな」

(´<_` )「フン、全くの素人ってわけでもないみたいだな」

( ´_ゝ`)「しかし我らが流石兄弟の敵ではない」

(´<_` )「勿論だ。そろそろ行こうか、兄者」

( ´_ゝ`)「ガッテン承知」

兄者は一見してそれとは分からない細工をされている小型の爆弾を手にし、ジリジリとドクオに近付いていった。



戻る次のページ