内藤小説

2: ◆P.U/.TojTc :2006/11/11(土) 23:27:10.90 ID:5CeJjVBGO
  

( ^ω^)「あそこがB部屋かお」

('A`)「だな」


この荒巻邸は典型的な日本家屋だ。しかし、日本家屋というのは防犯という意味ではひどく無防備な建物でもある。

それを警戒してか、荒巻邸には何箇所か日本家屋には相応しくないような造りになっている場所がある。

このB部屋もそのようだった。ドアは何らかの金属で造られたものに見えた。


( ´_ゝ`)「少し様子が違うな。怪しい…」

( ^ω^)「怪し過ぎるお…。これはビンゴかもわからんね」



4: ◆P.U/.TojTc :2006/11/11(土) 23:29:48.41 ID:5CeJjVBGO
  

('A`)「一人で行くのは危険かもな。つーか、アレ絶対鍵がかかってるだろ…」

(;^ω^)「どうするお?」

( ´_ゝ`)「爆破するか?」

(;'A`)「しねーよ!なるべく騒ぎ起こさないようにするんだよ」

( ´_ゝ`)「じゃあ、ピッキングで行くか…」

('A`)「出来るのか?」

( ´_ゝ`)b「アイムオーケー」

('A`)「だったら最初に言えよ…。優先順位おかしいだろ、常識的に考えて…」

( ^ω^)「流石だお!早速ちゃっちゃとやってきてくれお!」



6: ◆P.U/.TojTc :2006/11/11(土) 23:31:49.57 ID:5CeJjVBGO
  

( ´_ゝ`)b「だが道具がない!」

(#'A`(#^ω^)「ただの自慢厨か(お)!」

( ´_ゝ`)「あ、針金あるわ」

('A`)「……ウゼェ」

( ^ω^)「何で針金あるのかお?」

( ´_ゝ`)「フフフ、爆弾の部品を取れば大丈夫だ。……ほれ」

( ^ω^)「おー」

('A`)「さっさと行ってきやがれ」


ドクオにそう言われると兄者は素早くドアの前まで行き、ものの数秒でドアの鍵も開けてみせた。

その早さに少し驚いたが、内藤とドクオもすぐに移動しドアを開ける。



9: ◆P.U/.TojTc :2006/11/11(土) 23:33:59.27 ID:5CeJjVBGO
  

そこには地下へと続く階段があった。


( ^ω^)「ここだお!」

('A`)「しっ!誰が居るかわからん。気をつけて進むぞ」


ドクオを先頭に三人は階段を降りていく。少し暗いが、所々備えられているランプでなんとか足元は見えた。


('A`)「ん?」


意外に階段は短く、木製のドアの前に着いた。さっきとは違い鍵はないようだ。

入るぞ、とドクオが二人に声をかけドアを勢い良く開ける。三人の手には既に拳銃が握られている。



10: ◆P.U/.TojTc :2006/11/11(土) 23:36:55.44 ID:5CeJjVBGO
  

('A`)「ここは…」

( ^ω^)「ワインの貯蔵庫…かお」

そこにはたくさんの棚にたくさんのワインが寝かされていた。ほこりを被ったものや中にはカビの生えたものまである。

( ´_ゝ`)「どうやらここでもないみたいだな」


('A`)「クソッ…。早く戻ろう」

三人が踵を返して木製のドア開けようした時だった。

('A`)「ちょっと待て…」

( ^ω^)「お?」

( ´_ゝ`)「…足音…か?」

('A`)「降りてくる…。隠れろ!」

(;^ω^)「か、隠れる所なんてないお」

('A`)「……ないな。よし、やっちまおう」



12: ◆P.U/.TojTc :2006/11/11(土) 23:39:24.13 ID:5CeJjVBGO
  

( ´_ゝ`)「おぉ、殺っちまうとは流石極悪非道だ」

('A`)「馬鹿、ちょっと寝ててもらうだけだ」


足音はどんどん階段を降りてくる。三人はドアの脇に隠れて人が来るのを待つ。

ギィッとドアが開く。

人が入ってきた瞬間、ドクオが腹に一発、兄者が顎に一発、そして内藤はそれを生温かく見守る。 一発、というのはもちろん銃ではなく拳でだ。

何の音も発っせず、人が倒れる。よく見ると正装している男だった。


('A`)「ワインを取りに来たんだな」

( ^ω^)「不幸な奴だおwww」

( ´_ゝ`)「…火葬してやろう…」



13: ◆P.U/.TojTc :2006/11/11(土) 23:41:24.74 ID:5CeJjVBGO
  


兄者を無視してドクオが言う。


('A`)「荒巻に言われて取りに来たのならまずいな…」

( ^ω^)「荒巻さんも夜更かしが過ぎるお」

('A`)「まぁいい、後はC部屋だけだ。さくさく行こう」

( ^ω^)「確かに急いだ方がいいお。ショボンが待ってるお」

( ´_ゝ`)「そうと決まればすたこらさっさだ」


三人は暗い階段を勘に頼って二段抜かしで跳び上がって行った。



15: ◆P.U/.TojTc :2006/11/11(土) 23:43:32.38 ID:5CeJjVBGO
  
――――――――――――


( ゚∀゚)「やー、順調順調」

( ・∀・)「案外楽なもんですね」

(´<_` )「油断は禁物だ」

( ゚∀゚)「弟者は固すぎるぞ。少しは兄者を見習え」

(´<_` )「我ら流石兄弟は二人で一人。絶妙なバランスなのだ」

( ・∀・)「そんなもんですかねぇ」


そんな会話をヒソヒソ声でしながら三人は中廊下の手前まで来ていた。



16: ◆P.U/.TojTc :2006/11/11(土) 23:45:44.32 ID:5CeJjVBGO
  


この中廊下は庭を渡るので外からまる見えなのだ。当然外にはたくさんの警備が居る。もし見つかったら命はない。


( ゚∀゚)「今、何分だ?」

(´<_` )「2時25分だ」

( ゚∀゚)「あと十分か…」

( ・∀・)「それまで待機ですね」


あと十分。これは一応の目安だ。早ければ早い方がいい。それが次の作戦の開始時間。



17: ◆P.U/.TojTc :2006/11/11(土) 23:47:36.22 ID:5CeJjVBGO
  


だが、その作戦をするにはには条件がある。

救出班がショボン救出に成功する事だ。もし救出が厳しいようならこのまま救出班とともに撤退する計画になっている。


( ・∀・)「やっぱり全員で救出した方が良かったんじゃないんですか?」

(´<_` )「隠密行動をするのに大人数で行く事ほど馬鹿な事はない」

(#・∀・)「へぇー」

( ゚∀゚)「何かあったら駆け付けれるしな。ま、とにかく体力を温存しとこう」


三人は調度いい物影に身を潜めて、救出班からの連絡を待つ事にした。



19: ◆P.U/.TojTc :2006/11/11(土) 23:49:48.64 ID:5CeJjVBGO
  
――――――――――――

段々と夏が近付いてくる。まさにその事を感じさせるような夜だ。この季節独特の肌にまとわりつく湿気を含んだ布団は寝苦しさを更に強制する。

最近はこういう事が多くなったから、当然眠る時間も遅くなる。それでも歳のせいか起きる時間は変わらず、睡眠時間も変わる事はなかった。

/ ,' 3 「……嫌な季節だ」

温度や匂いは記憶の無防備な所を刺激する。嫌でも昔の記憶を引きずり出して、胸を締め付ける。

それに抵抗するにはアルコールでも入れて、気分を良くするのが一番なのだ。医者から止められようが、この習慣を変えるわけにはいかない。

/ ,' 3 「……遅いの」

ワインを取りに行った執事の帰りが遅いのが少し気になった。



20: ◆P.U/.TojTc :2006/11/11(土) 23:52:06.94 ID:5CeJjVBGO
  

ここにもまた眠れずにしょぼくれている男が一人。


(´・ω・`)「こんな所で寝たら、腰が痛くてかなわないよ…」


誰か話し相手でも居たらまた違うのだろうが、生憎この地下牢には他に誰もいないようだ。


時折、様子を見に来る者が居るが、そいつはチラッとこちらを確認して厭味ったらしい笑みを浮かべて去って行くだけだ。監禁から逃れたらぶち殺してやろうと目論んでいる。


(´・ω・`)「せめてあいつらと会えたらなぁ」


あいつら、とは内藤そしてドクオの事だ。別に彼らに会ったからといって何がどうなるわけでもない。それでも、何とかなりそうな気がするから不思議だ。



22: ◆P.U/.TojTc :2006/11/11(土) 23:54:54.92 ID:5CeJjVBGO
  

本来、友情というのはそんなものかもしれない。友達といると心強いのは勿論、自分が強くなるような気がする。

だからといってDQNの糞みたいな集団を友情とは思わないが。

強くなるというのは何も暴力的なものではなく、優しさだったり、守る力だったり……人間の芯にあたるもののような気がする。


(´・ω・`)「…ツンも内藤もドクオも…武田君も…みんな捕まっちゃったんだね…」


自分がこんなミスを犯さなければ皆を助ける事が出来たかもしれない。おそらくドクオは捕まった時、自分を頼りにしただろう。そう考えると情けなくて仕方ない。

漫画や映画のように上手くはいかないものだ。最後にヒーローが出て来て助けてくれるわけもないのだ。



23: ◆P.U/.TojTc :2006/11/11(土) 23:57:40.31 ID:5CeJjVBGO
  


(´・ω・`)「…ヒーロー…か」


ヒーローで思い出した。内藤が無類のヒーロー好きだった事を。ファイブマンからその時やっている最新の流行ものまで、彼は良く知っていた。

そういうものに余り興味はなかったから、話にはついていけなかったが、話している時の内藤の幸せそうな顔は良く覚えている。

内藤は今もヒーローものが好きなのだろうか。10年経てば人は変わるが、彼はどうだろう。

もしかしたら、この今でもヒーローが助けに来てくれるのを待っているかもしれない。



24: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 00:00:05.79 ID:MnzLK27RO
  

(´・ω・`)「…本当に会いたくなってきちゃったよ…」

友情も時が経てば色あせる。それは自分達にも当て嵌まるのか。

この10年間はそれぞれ離ればなれだった。それぞれが傷付き、距離を置いた。

それは友情が壊れたからではなく、それが友情にとって必要だったからだ。壊れる前に距離を置いたのだ。少なくともショボンはそう思っている。

掲示板から逃げ出す前、皆で何度も話し合った。何故自分達は不要な存在になったのか。しかし、その議論になると必ず行き着くのは誰の責任なのかという事だった。

その時は皆誰もに余裕がなかった。暗に責任を押し付けあい、そして自己嫌悪。

本当は分かってた。どう議論しようと誰の責任だろうと、全てが無意味だって事を。



25: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 00:03:13.52 ID:MnzLK27RO
  

でも、議論をしていれば皆で一緒に居られた。まだ関わりがあると思えた。掲示板にも皆にも。

だが、そんなのが長く続く訳もない。

まず、内藤が皆の前から姿を消した。そうなると、連鎖反応のように次々と人が消えて行った。軽く十人以上居たメンバーが気付けば、ショボンとツンの二人になっていた。

ツンはただ内藤を待っていただけかもしれない。彼女を見捨てて、自分もはいさよならとはショボンには出来なかった。

しばらく二人で議論にもならない議論をしていた。だがある日、不意に彼女はアメリカに行くと言った。そしてネットの勉強をするのだと。

あの時の彼女の顔は多分一生忘れないだろう。


(´・ω・`)「……似てるな」



27: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 00:05:26.32 ID:MnzLK27RO
  

荒巻とレインズ、そしてモイヤー。彼らもまた親友だった。親友が故にお互いを憎み、このような事態になったのだ。

荒巻は言った。友情など損得勘定の上に成り立つものだと。

それは間違ってはいないだろう。相手の存在が自分にとっての幸せだからこその友情なのだから。

でも、と思う。レインズと荒巻が手を組んだのは軍事データなどの利害を考えての事だろうかと。本当は二人とも親友だった頃の二人に戻りたいだけなんじゃないかと。

しかし、レインズはモイヤーを殺してしまった。それはもう変えようのない事実。

これが友情の結果だとしたら………あまりに悲惨だ。


(´・ω・`)「……ヒーロー…ね…」


(´・ω・`)「…来てくれるかな……?…」


そう呟いて、灰色の天井を見上げる。

いつでも見れる空も星も本当に見たい時には見れないのだということをショボンは改めて知った。



28: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 00:07:50.72 ID:MnzLK27RO
  
――――――――――――


('A`)「…あそこだな」

( ^ω^)「お。いかにもって感じだお」

( ´_ゝ`)「間違いない。ここだ」


気が付けば、侵入してから既に20分と少し立っていた。警備が薄いおかげで割と楽に進む事が出来たが、どうも予想以上に屋敷が広い。微妙な時間になってきた。


('A`)「鍵がついてるな…。兄者、いけるか?」

( ´_ゝ`)「あぁ、待っていろ」


軽やかな足取りでドアの前に向かう兄者。



29: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 00:09:57.21 ID:MnzLK27RO
  


( ^ω^)「おっお。やっぱり頼りになるお」

('A`)「だな。連れて来て正解だ」

( ^ω^)「…そういえば流石兄弟に払う報酬はどうするんだお?」

('A`)「それはお前アレだろ。ショボンを助ける為にやってるんだからショボンもちだろ」

( ^ω^)「それはGOODIdeaだお」

('A`)「ぐへへ」

( ^ω^)「フヒヒ」


二人がそんな子悪魔よろしく的な会話している内に兄者は鍵を開けて、二人の方に合図を出した。



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