内藤小説
- 127: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 16:35:56.63 ID:MnzLK27RO
/ ,' 3 「さっきも言ったように一度つけられたベルトを外すと爆発する仕掛けになっている」
(メ゚ω゚)「……」
レインズ「クックッ……既にタイマーは動き出している」
狂気に満ちた眼差しでレインズが言う。
(メ'A`)「早く止めやがれ!殺すぞ!!」
レインズ「動き出したら私にも止められん。これを作ったのは私ではなくモイヤーだ」
(メ´・ω・`)「……時間はどれくらいだ?」
レインズ「あと10分といった所だ」
(メ゚ω゚)「……」
- 128: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 16:39:26.05 ID:MnzLK27RO
(メ'A`)「糞野郎…。兄者!何とかならないか!?」
(;´_ゝ`)「今やっている所だ!」
兄者が慎重に爆弾部分の解体をしている。ふたの部分を外すと基盤と数本の配線が出てきた。
(´<_`;)「…これは…」
(;´_ゝ`)「…駄目だ。これ以上は迂闊に触れん!」
(;'A`)「何とかならないのかよ!?」
(;´_ゝ`)「今ここでは無理だ」
(メ´・ω・`)「…爆発の規模はどれくらいになりそうだい?」
(;´_ゝ`)「…半径10メートルから15メートルは危険な範囲だ」
/ ,' 3 「いやもっとだ。あの火薬には相当高濃度な新剤が使われている。…私への見返りとしてレインズが持って来た物だ…」
- 129: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 16:42:05.66 ID:MnzLK27RO
(;゚∀゚)「…物騒すぎるだろ。どうすりゃ止めれんだ?」
/ ,' 3 「…タイマーを止めるしか方法はない」
(;・∀・)「どうやって!?」
/ ,' 3 「基盤から送られる信号を遮断する。つまり特定の配線を切断するのだ。しかし、その配線以外の線を切断すると…」
(メ゚ω゚)「……爆発」
/ ,' 3 「……そうだ」
(メ'A`)「…ブーン、大丈夫か…?」
(メ゚ω゚)「…」
そのドクオの声にふと我にかえる。
(メ^ω^)「だ、大丈夫だお。心配ないお!」
(メ'A`)「心配ないってお前…」
- 130: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 16:45:46.40 ID:MnzLK27RO
レインズ「あと9分。…さぁどうする?」
そう言った瞬間、ドクオがレインズの顔面をぶん殴り、レインズの身体が吹っ飛ぶ。
(メ'A`)「……」
もうドクオはレインズを挑発する事も愚弄する事もなかった。何を言ってもこの状況は変わらない。
全員が口をつぐみ、やり切れない沈黙が場を支配する。何か安全な方法はないのか、それを頭の中で模索するも答えは出ない。
(メ^ω^)「…もういいお」
足の怪我で立つこともままならない内藤が床に座ったままの体勢で言う。
(メ´・ω・`)「…もういいって…何がだい?」
(メ^ω^)「皆はここから避難しろお」
足の怪我の痛さも爆弾の恐怖も感じさせない、いつもの顔だった。
- 131: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 16:49:20.74 ID:MnzLK27RO
(メ'A`)「自分一人が犠牲になればいいってか?…ふざけるな」
(メ^ω^)「ふざけてなんかないお」
(メ´・ω・`)「兄者、本当に解体は無理なのかい?」
(;´_ゝ`)「…これを見てみろ」
兄者は内藤の腹部の爆弾を指差して言う。
(;´_ゝ`)「この4本の線が見えるか?…簡単言えばこの4本の線の内の特定の1本以外の3本を切断すればタイマーは止まるはずだ」
(メ゚∀゚)「だったらその3本を切ればいい」
(;´_ゝ`)「だが、その特定の1本を判別するのが難しい。こればかりは作り手にしか分からん。もし間違えてその1本を切断したら…」
それから先は言わない。
- 132: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 16:54:03.98 ID:MnzLK27RO
(メ´・ω・`)「…モイヤーは一体何の為にこんなものを…」
レインズ「クックッ。あいつも研究熱心な奴でな。独自に兵器研究を続けていたらしい。それで、その新型の火薬爆弾を作った」
レインズ「そして、今回の事を画策していた俺に取引を求めてきた。計画の中止と引き換えにそれの作り方を教えるとな」
やけに饒舌なレインズが続ける。
レインズ「ウチの会社は知っての通り兵器も扱っているからな。巨額の利益が入る事は間違いなかった。しかし、俺は受け入れなかった」
/ ,' 3 「……」
レインズ「サンプルがあれば作り方など自ずと分かる。実際、モイヤーを始末した後に会社ではそれの生産を始めた。そのサンプルをこの荒巻にも見せてやりたくてな」
/ ,' 3 「……レインズ」
荒巻の目には憐れみにも似たものがあった。
- 134: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 17:28:27.39 ID:MnzLK27RO
レインズ「そうこうしている内に残り8分だ」
(メ^ω^)「それだけあれば避難するには充分だお」
(メ'A`)「……クソッ」
(メ^ω^)「ショボン…早く皆を避難させてくれお」
(メ´・ω・`)「…ブーンは…?」
(メ^ω^)「…ここに残って皆が避難した後に一か八か賭けてみるお」
(メ'A`)「俺も残る」
(メ^ω^)「ふざけたこと言うなお」
(メ'A`)「ふざけてんのはお前だろう」
(メ^ω^)「ふざけてんのはお前だお、ドクオ」
- 135: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 17:31:40.34 ID:MnzLK27RO
(メ'A`)「…友達を見捨てて行けってのか」
(メ^ω^)「僕を信じろと言ってるんだお」
(メ'A`)「…もし逆の立場だったらどうなんだよ」
(メ^ω^)「すたこらさっさだお」
(メ'A`)「嘘つくな」
(メ^ω^)「嘘なんかついてないお」
内藤の決心は固かった。多分、もう誰が何を言おうと彼の決心は揺るがないだろう。
少なくとも内藤自身はそう思っていた。
誰が何を言おうと。
- 136: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 17:34:35.96 ID:MnzLK27RO
最初、それは幻聴だと内藤は思った。
有り得ない声が聞こえる程、自分は疲れているのだと。
そして次に見えたのは幻覚だと。
全員がその方向を向いたのを見ても尚、それは幻覚だと思った。
おそらくもう神経は疲れ切っているだろう。この極限状態だ。仕方ない。
幻覚がこっちに向かって来る。
幻聴の音が大きくなってくる。
そして自分の手に触れる。
幻蝕……?そんなものがあるのかは知らない。
だが、その手は温かった。
- 137: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 17:38:06.19 ID:MnzLK27RO
「ブーンッ!……ブーン……?」
(メ^ω^)「……本物……かお」
「……馬鹿。偽物ってなんなのよ!」
(メ^ω^)「…ツン……ツンだお!!」
ξ*゚听)ξ「気付くの遅いのよっ!」
(メ^ω^)「ツン…心配したお。怪我はないかお?何でここに居るのかお?…助けに行けなくてごめんお…」
ξ゚听)ξ「あーもうっ!一遍に言われたら分かんないわよっ!」
- 138: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 17:42:08.77 ID:MnzLK27RO
(メ^ω^)「おっ!ごめんお」
ξ゚听)ξ「……それより…コレ…何?」
ツンは内藤の前にひざまずいたままの姿勢で、内藤の下腹部を見て尋ねる。
(*^ω^)「おっ!そんな所凝視しないで欲しいお」
(メ'A`)「アホか。爆弾の事言ってんだよ」
(メ´ω`)「……忘れてたお」
ξ゚听)ξ「えっ……今なんて…?」
- 139: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 17:44:54.39 ID:MnzLK27RO
(メ´ω`)「…コレ爆弾なんだお。外せないんだお」
ξ゚听)ξ「……嘘…」
嘘ではない事はツンにもすぐ分かった。凶悪なそれはデジタルにタイマーを刻み、ある一瞬に向かって進んでいた。
レインズ「クックックッ、フハハハハハハハハハ!全員集合の上、CIAもお出ましか!」
(メ'A`)「…ジュディ」
ジュディ「…久しぶりね、と言いたい所だけど、そんな場合じゃないようね」
ツンを連れて来たのはジュディだった。それから武田もデジカメのようなものをを手にこっそりと室内に入っていた。
ジュディ「上にハマーが倒れていたけど」
(メ'A`)「あいつは敵だったんだ」
ジュディ「…知ってるわ」
- 140: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 17:48:06.78 ID:MnzLK27RO
(メ'A`)「…?まぁいい。そんな事より、内藤の身体に爆弾が…レインズが…」
ジュディ「爆弾!?」
(メ'A`)「解体出来ないんだ。なんとか出来ないか?」
レインズ「あと7分」
ジュディがレインズの方を向く。苦々しい顔をしてまたドクオを見る。
ジュディ「…爆弾処理班がいればなんとか出来るかもしれないけど…間に合わないわね」
(;´_ゝ`)「俺でも無理なのだから居ても変わらん」
兄者が口を挟む。
ジュディ「…あなたは流石兄弟の…」
ジュディが少し身構えるが、ドクオがそれを制する。
(メ'A`)「今は見逃してくれ。俺達に協力してくれたんだ」
ジュディ「…そう。分かったわ」
そんな状況ではない事をジュディも悟った。
- 141: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 17:51:51.43 ID:MnzLK27RO
よいしょっ、と内藤がツンの肩を借りて立ち上がる。
ξ゚听)ξ「……大丈夫?」
(メ^ω^)「おっ!ありがとお」
なぜこの状況でこんな顔をしていられるのだろうとツンは思った。だが、こう思うのは初めてではない。
(メ^ω^)「知らない人も居るけど、皆聞いてくれお」
その言葉に全員が内藤を見る。
(メ^ω^)「…もうすぐこの爆弾が爆発するお。…だから皆、ここから避難して欲しいお」
ξ゚听)ξ「…ブーン」
(メ^ω^)「ホントにもう時間がないお。爆発の規模も分からないお。急いで避難して欲しいんだお」
- 142: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 17:54:59.14 ID:MnzLK27RO
(メ'A`)「……」
(メ´・ω・`)「……ブーンの言う通りだね」
(メ'A`)「ショボン!」
(メ´・ω・`)「とりあえず、ジョルジュとモララーと流石兄弟は荒巻とレインズを連れて行ってくれないか?」
(メ゚∀゚)「……」
(メ・∀・)「…僕たちだけ追い出そうと?」
(メ´・ω・`)「君達の計画は最後まで君達でやるべきだろう?」
(メ'A`)「……そうだな」
- 143: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 17:58:08.10 ID:MnzLK27RO
(メ・∀・)「最後まで付き合うっていったでしょう!」
(メ'A`)「あぁ。だから感謝してる。お前らが居なかったら到底無理な計画だった。…大丈夫だ。お前らの事を薄情な奴らだとなんか思わない。むしろ感謝してるんだ」
(メ・∀・)「…」
まだ何か言おうとするモララーの肩にジョルジュが手を置く。
(メ゚∀゚)「…俺達は俺達に出来る事をやろう」
(メ・∀・)「……」
(メ^ω^)「…ありがとうだお」
(メ・∀・)「…待ってますから…ね」
(メ^ω^)「おっ!」
- 144: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 18:02:01.62 ID:MnzLK27RO
(メ´・ω・`)「流石兄弟も…いいね?」
( ´_ゝ`)「…俺達は依頼人に従う」
(´<_`メ)「それが指示なら従うまでだ」
(メ^ω^)「…二人とも感謝してるお。流石だったお」
( ´_ゝ`)「当然だ」
(´<_`メ)「正に」
ショボンの言葉通り、四人は荒巻とレインズを連れて行く。もはや、荒巻もレインズも抵抗はしなかった。
そしてレインズが去り際に内藤に向かって言った。
レインズ「…お前はここで一人寂しく死ぬ。お前の友人達も最後にはお前を見捨てて逃げるだろう」
(メ^ω^)「…僕は自分の意思で避難させるんだお」
- 145: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 18:05:30.69 ID:MnzLK27RO
レインズ「それはお前がそう思いたいだけだ。お前がこいつら友人達に残って欲しいと懇願してもこいつらはお前を見捨てて逃げるさ」
(メ^ω^)「……」
レインズ「…クックックッ、あと6分。せいぜいくだらん友情ごっこを楽しむがいい」
(メ^ω^)「……哀れな奴だお」
レインズ「フン、何とでも言え。お前はもうすぐ死ぬ」
(メ^ω^)「……」
そう言い残して、ジョルジュ達四人と荒巻とレインズは部屋から出ていった。
これでこの部屋に残っているのは内藤、ツン、ドクオ、ショボン、ジュディ、武田の六人になった。
- 146: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 18:08:35.06 ID:MnzLK27RO
(メ^ω^)「…ドクオ達も急ぐお」
(メ'A`)「断る」
(メ^ω^)「そんな権利ないお」
(メ'A`)「ある」
(メ^ω^)「……ドクオ、頼むお」
(メ'A`)「断る」
(メ^ω^)「……」
ドクオは昔からこうだ。自分がこれと決めた事に関しては頑として譲らない。
(メ´・ω・`)「…武田君は何してるんだ…?」
武田はデジカメを手に撮影している。全く持って意味不明だ。
武田「いや、ちょっと記念撮影」
- 147: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 18:12:27.22 ID:MnzLK27RO
ドクオが溜め息をつく。
(メ'A`)「…何考えてんだ…」
(メ^ω^)「…あんたが武田さんかお。…そしてジュディさん。あんた達も早く避難してくれお」
武田「もうちょっとしたら避難するよ」
武田があっさりと言う。どうやら常人の感覚の持ち主ではないらしい。
ジュディ「……」
(メ'A`)「避難避難うるせーんだよ」
(メ^ω^)「ドクオもいい加減にしろお。…ショボン、この馬鹿を連れ出してくれお」
(メ´・ω・`)「……僕も外に出る気はないよ」
その一言に内藤の顔が険しくなる。
- 148: ◆P.U/.TojTc :2006/11/12(日) 18:15:04.77 ID:MnzLK27RO
-
(メ^ω^)「…そんなの友情でもなんでもないお。…ただの自己満足だお」
(メ'A`)「その言葉そのまま返すぜ」
デジタル仕掛けのタイマーが残りを5分を示す。
(メ^ω^)「違うお。…全然違うお。僕は皆が避難したからって裏切られたとは思わんお」
沈黙。しかし、タイマーの文字は確実に零に近付き、場に緊張感を与える。
(メ^ω^)「ただ皆に一秒でも長く生きて欲しいだけなんだお…」
まるで自分が死ぬ事を覚悟しているかのように内藤が言う。
その横ではツンがずっと俯いたままだ。
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