('A`)が海へいくようです

59:◆L2jfNrixB. :2006/08/05(土) 23:49:07.55 ID:suMdAyJc0
  
('A`)(ここはあの時と変わらないな・・・)

ラウンコビーチ。

ここには来た事がある。親父が昔、一度だけ家族旅行といって連れてきてくれた。
まだ俺は小学生だったが、めったに親父と遊ぶ機会がなかったためとてもうれしかった。

そのころのラウンコビーチには高速はなかった。

午前二時に出て、昼過ぎに着く。それが当時だった。

親父、ラウンジに3時間でいけるようになったけど、ラウンコビーチは相変わらず綺麗だよ。

('A`)「次のパーキングで休んでくか。」

二人は景色に見とれながら「うん」とだけ言った。

ここからビーチまで30分ほど。

今は10時5分前。上々。

そこのパーキングエリアには展望鏡が付いていた。

車から降りるや否や、「展望鏡見に行くお!」といいブーンは両手を広げて駆けていった。

ξ゚听)ξ「まちなさいよ内藤!」といい、ツンもそれに続く。



63:◆L2jfNrixB. :2006/08/06(日) 00:11:10.22 ID:0Ka25irL0
  
俺は長い運転でたまった疲れを払うため、大きく伸びをし背骨を鳴らす。

そしてブラックコーヒーを自販で買い、ベンチに座った。

一口啜る。   まずい。

俺は一気にそのコーヒーを飲み干した。ひどい苦さだ。

展望鏡の方が騒がしい。あいつらが騒いでるんだろう。
俺はタバコを一歩咥え、火をつけ、煙を肺に流し込む。

そして吐き出す。

とんとんと指で灰を落とし、また咥える。

( ^ω^)「ドクオー!こっちくるおー!海が綺麗だお!」

俺は灰皿にタバコを押し付け、ブーンたちの元へと向かう。

('A`)「ほう、どれどれ?」

俺たちは十五分ほどパーキングエリアにいた

('A`)「さて、ビーチに行きますかね」
車に乗り込み、俺は二人に言った。

二人が歓声を上げる。
('A`;)「あ、ガソリン入れなきゃ」
二人はあからさまに肩を落とした。少し笑いそうになったが、押しこらえた



67:◆L2jfNrixB. :2006/08/06(日) 00:33:42.59 ID:0Ka25irL0
  
パーキングエリアのスタンドで給油をした。

ガソリンは満タンだが最近の値上がりのおかげで財布に結構響いた。畜生。


今度こそ車は車道へと出る。

そして10分後、高速を降りた。

・・・信号さん、こんにちは。

俺は信号が嫌いだ。あの赤いやつ。あいつは許せない。青と黄色は許せる。通れるから。
でも赤いのは許せない。通常の三倍許せない。

運がいいことに、すぐ信号は青に変わってくれた。

パーキングでテンションのあがった二人のおかげで車内は盛り上がっていた。

まもなく、ビーチに着く。ビーチの駐車場で降りる。これも高い。畜生。

('A`)「俺先に荷物ホテルに持ってとくから、水着とかだけ出してといてくれ」

( ^ω^)「すまんお」

ξ゚听)ξ「場所はわかる?」

('A`)「ああ、ホテルラウンジだろ?行ったことあるから。」

「そう、悪いわね・・・」と彼女は柄にも無く申し訳なさそうな顔をしていた。



68:◆L2jfNrixB. :2006/08/06(日) 00:40:39.61 ID:0Ka25irL0
  
('A`)「まあなるべく時間かけて来てやるから楽しめよ」

ξ゚听)ξ「ええ、ありがとう・・・ξ///)ξ「って!そんなことビーチでするわけ無いじゃない!ばかっ!」

(;'A`)(べつにそんなことしろとは言ってないが・・・)

( ^ω^)「ツンにはよくあること」

さすがブーン、なれてらっしゃる。急にブーンが頼もしく思えた。

そんな二人を後にして、俺はホテルラウンジへと向かった。

11年前、家族旅行で宿泊したあのホテルへ。



98:◆L2jfNrixB. :2006/08/06(日) 07:18:44.37 ID:0Ka25irL0
  
自慢じゃないが俺は道を覚えるのが病的に得意だ。

たとえそれが10年以上前の道だとしても正確に覚えていられる。

道は増えることはあるがなくなることは少ない。だから11年前の記憶だって十分役に立つ。

どんなに道が多くなっていてもその中に一つは記憶の道があるはずなのだから。

幸い、道は大きくなっていたものの記憶と大差は無かった。

車のラジオをつける。スピーカーから流れるヒットソングが車内を満たす。

とんとんと指でハンドルをたたきリズムを取る。

アコギの和音が綺麗な、静かなラブソング。



100:◆L2jfNrixB. :2006/08/06(日) 07:21:12.02 ID:0Ka25irL0
  
−−−最後にお前のギターが聞きたい。弾いてくれ。

−−−しょうがねえな。それに最後なんていうな。帰ってきたらいくらでも聞かせてやる。

−−−・・・・そうだな。いい音だ。ありがとう、ドクオ。


ふとあいつのことを思い出す。
父親の都合で外国へ渡ったあいつのことを。

クーとは大学に入ってから知り合った。

髪は黒く長く、端正な顔をした女性。

空条 静。通称クー。突然目の前に現れた彼女は、

川゚-゚)「ドクオ君。君が好きだ。是非付き合ってほしい。」

さすがの俺もあいた口がふさがらなかった。ほんとに。

サークルの部室でのことだった。



101:◆L2jfNrixB. :2006/08/06(日) 07:22:25.30 ID:0Ka25irL0
  
('A`)「俺もじいさんだな、昔を思い出すなんて・・・」

ハッ、と自嘲的な笑いを漏らす。



しばらくしてホテルラウンジに到着した。
フロントで受付をすませ荷物を部屋に降ろし、再び車内に戻る。

だが車が向かう場所はビーチではない。

途中のコンビニでコーヒーを買い、一服。やっぱ缶コーヒーは裏切らない。それなりにうまい。

そして再び車を走らせる。やがて車は町のはずれのひっそりとした小屋に着いた。

('A`)「・・・ここ、だよな。」

インターホンを鳴らす。 奥から「どうぞ」としわがれ声が答えた。

遠慮なくあがらせてもらう。



103:◆L2jfNrixB. :2006/08/06(日) 07:22:46.78 ID:0Ka25irL0
  
,' 3 「誰かね?」

しわがれ声の持ち主の彼はほとんど目が見えていないようだった

('∀`)「俺です。ドクオです。」


/ ,' 3 「おお・・・!元気だったかね?」

「ええ、それなりに」と俺は朗らかに答える。

荒巻先生。中学の時の美術の先生で、絵の好きな俺に目をかけてくれたおじいちゃん先生だ。

退職してラウンジで隠居しているのは知っていたが、訪れるのは初めてだ。



104:◆L2jfNrixB. :2006/08/06(日) 07:23:27.97 ID:0Ka25irL0
  
('A`)「コーヒー入れます?」

/ ,' 3 「ああ、頼む。豆は戸棚にあるから」


手際よくコーヒーを入れる。いい香りが漂う。毎朝豆から淹れてる俺はこれくらい文字通り朝飯前だ。

二人でコーヒーを啜る。 うん、うまい。 いい香りだ。


/ ,' 3 「いい顔をしてるね、・・・いい絵でも描けたのかい?」

('∀`)「・・・そうですね。今なら、かける気がします。」

先生は「そうか」とだけいって微笑んだ。


帰ったら絵を描こう。海の絵を。「良い絵」が描ける。そんな気がする。



112:◆L2jfNrixB. :2006/08/06(日) 07:56:26.62 ID:0Ka25irL0
  
/ ,' 3 「このコーヒー・・・うまいな。ドクオ君はコーヒーを淹れるのがうまいらしい。
     こんなにコーヒーがおいしいと思うのは何年ぶりか。」

「いや、」とおれは後ろ髪を掻き揚げた。そんなほめないでくれ、照れくさい。

/ ,' 3 「・・・一つ残念なのは、君が絵を完成させてもこの目は君の絵を見る手助けをしてくれなさそうだということだよ。」

俺は黙って聞きく。

/ ,' 3 「だが・・・私の画材たちはきっと君の絵を描くのを手助けしてくれると思う。」


先生は手探りでベッドの脇の引き出しをあけ、黒い箱を出した。ふちには銀の字で「荒巻スカルチノフ」と書かれていた。

/ ,' 3 「受けとってくれるね?」

先生は上体を起こし、そのもうほとんど見えない”目”で俺をまっすぐ見つめた。
強い意志を感じる。 これを断るのは野暮ってもんだ。

('A`)「ありがたく、いただきます。先生」

/ ,' 3 「目の見えないわしが持っていても仕方がないものだからね、君が存分に使ってやってくれ。
     そのほうがきっとそいつたちも喜ぶ。」

最後に先生と握手をし、「ありがとうございます、先生。また来ます」といい、俺は先生宅を後にした。



113:◆L2jfNrixB. :2006/08/06(日) 08:15:26.30 ID:0Ka25irL0
  
いったんホテルに戻り、先生にもらった画材をしまう。
この陽気に車の中に放置しておくのはやばいと思ったからだ。

再び車を走らせる。

今度はビーチに向かう。
時間は11時48分。よし、ちょうどいい。
つくころには昼飯時だ。

すごい日差しだ。日焼け止めはあったかな。


12時ぴったりに到着する。また駐車代か。高いわ、畜生。

( ^ω^)「おーい!ドクオー!ここだおー!」

駐車場から100mほど離れたところでブーンが手を振っていた。
('∀`)「よぉ」

( ^ω^)「お?ドクオ何かいいことでもあったのかお?」

俺は「まぁな」とだけ答えた。ブーンはそれで満足のようだった。

( ^ω^)「ツンは焼きそばを買いに行ってるお。」
俺がツンの姿を探していると、ブーンが言った。

「じゃんけんで勝ったんだお」と誇らしげにブーンは胸を張った。



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