('A`)が海へいくようです

52:◆L2jfNrixB. :2006/08/11(金) 00:27:28.63 ID:7LSwdT5v0
  
楽しいときが過ぎるのはあっという間だ。もう2:50を回った。そろそろ帰宅を考えなければならない。

パラソルとテーブルを片付け、車に積む。

ξ゚听)ξ「名残惜しいわね、なんか」

( ^ω^)「だお・・・悲しいけど海ともお別れだお・・・」

('A`)「たのしかったな・・」

しばらく三人で並んで水平線を眺めた。

('A`)「まだいたいのはやまやまだが、混み合う前にいかないと今日中に帰れないかもしれないからな。もう、行こう」

( ^ω^)「だお・・・また来たいお、このメンバーで」

ξ゚听)ξ「そうね・・・」

海に後ろ髪を引かれつつも、俺たちはビーチを後にした。

二日前来た道をたどり、ラウンジICから高速に乗る。

ブーンが車の窓から遠ざかる海を眺めていた。車内はとても静かだ。

ツンも窓から海を見つめていた。トンネルにさえぎられるそのときまで。この長いトンネルを抜ければそこからもう海は見えない。

俺もそのことに胸を締め付けられた。

やっぱ、海はいいもんだよ、親父。



59:◆L2jfNrixB. :2006/08/11(金) 00:55:43.63 ID:7LSwdT5v0
  
後部座席の二人はすやすやと眠っていた。

車内はしんと静まり返っている。響くのはエンジン音。そのほかの振動はほとんど無い。

俺は少し寂しくなる。寂しい・・・中学のころ、そんな感情は無かった。孤独を愛し、孤独に生きた。

自分で入り込んで言った道だ。まったく後悔は無かった。きっと俺は一生その世界にいるのだと思っていた。


−−−内藤ホライゾンだお!ブーンって呼んでお!


ふとあいつとの出会いを思い出す。荒巻先生と美術部にいたおかげで別に苦無く返事はできたが、正直ほうっておいてほしかった。

しかし、こいつは妙に絡んでくる。鬱陶しかった。

高校で部活は弓道を選んだ。あれなら一人の世界に浸れる、と思ったから。


−−−やあ、同じクラスのドクオくんだよね?同じ部活だね。よろしく。


ショボンも俺によく話しかけてきた。同じ部活だし、険悪にならないような対応をしていたが、やはり鬱陶しく感じた。


しかしある日、二人が同時に休む日があった。不思議な感情が沸くのを感じた。心に穴が開いたような。

親父を亡くしたときと似たような感情。『寂しさ』。滾々と湧き出るその感情を、前ほどうまく押さえつけることができなかった。



66:◆L2jfNrixB. :2006/08/11(金) 01:27:27.72 ID:7LSwdT5v0
  
その日を境に、俺は徐々に二人に心を開くようになっていった。

ちゃんと会話したのは荒巻先生を最後に相当久しぶりだが、二人になら自然に話すことができた。

それから、少しづつクラスにも部活にも馴染んでいった。

−友達。

心からそういえる人物が現れるとは、思いもよらなかった。



本当に、中学のころの自分からは考えられない今の自分。それを支えてくれる「友人達」。

俺は両方大切にしていこう。そう思った。


('A`)「チッ・・・渋滞か。」

どうやら一時間の渋滞らしい。しかし、運転なしでその時間をつぶすには何も無さすぎた。

ちょうどパーキングエリアが近くにあり、そこにはいることにした。時刻は5:34分。もうだいぶVIPに近い。

('A`)「パーキング入るぞ。」

と後ろに呼びかける。ほとんど聞き取れなかったが「うん」みたいな発音をしたので了承の意と取らせてもらった。

起こすのもあれなので、俺は一人売店へと向かった。



181:◆L2jfNrixB. :2006/08/11(金) 13:45:25.73 ID:7LSwdT5v0
  
コーヒー二本と適当な菓子を持ちレジへと向かう。その途中、土産品のキーホルダーが目に付いた。

いつだったか、クーとドライブに行ったとき。その途中でクーがなにやらよくわからないデザインのキーホルダーを買っていた。



川 ゚ -゚)「む・・・うまくつけられん」

クーはバッグにつけようと悪戦苦闘していた。

('A`)「・・・貸してみ」

俺はクーのバッグにキーホルダーをつけてやった。

キーホルダーをまじまじと見つめる。うーん、やっぱりクーの趣味は理解不能。

川 ゚ -゚)「ドクオ、お前は器用なのだな」

「んなことねぇよ」と俺は後ろ髪を掻き揚げた。



そんなことを思い出し、キーホルダーを一つ手に取り苦笑する。

−買うか。

俺はあらためてレジに向かった。



187:◆L2jfNrixB. :2006/08/11(金) 14:15:00.93 ID:7LSwdT5v0
  
それから2時間ほど渋滞と戦い、ようやく高速から降りれた。

ちょうど降りたとき、二人が目を覚ました。いい気なもんだ。

ξ゚听)ξ「ここは?」

ツンが聞く。

('A`)「もうVIPだよ。なんか飯食ってく?」

( ^ω^)「おっおっ。そういえば腹減ったお」

ξ゚听)ξ「ちょうどファミレスがあるわね。よっていきましょう」


俺たちはファミレスに入りこの三日間のことを話し、笑いあった。

メインの料理を食べた後もドリンクバーで粘った。


ξ゚听)ξ「またドクオはコーヒーばっか飲んで・・・寝れなくなるよ?」

俺は「いいんだよ」といってコーヒーを口に含んだ。

結局23時までファミレスにいた。



188:◆L2jfNrixB. :2006/08/11(金) 14:28:17.38 ID:7LSwdT5v0
  
( ^ω^)「おっおっ、ここでいいお」

ブーンのアパートに入る道の前でブーンが言った。

( ^ω^)「ドクオ・・・ほんとに楽しかったお!ありがとうだお!」

('∀`)「こちらこそ」

ξ゚听)ξ「気をつけて帰りなさいよ!」

( ;^ω^)「気をつけろっていってもこっから50mもないお・・・ツンは心配性だお」

ξ///)ξ「べ、べつに心配してるわけじゃないんだからね!うちに帰るまでが旅行なんだからね!」

('A`)( ^ω^)「はいはい」

ブーンはトランクから自分の荷物を取り出し、帰っていった。バックミラーで見ると、車が曲がるまでずっと手を振っていたようだ。


ξ゚听)ξ「・・・この旅行も終わるのね」

ふいにツンが口を開いた。

ξ゚听)ξ「ごめんね、なんかつき合わせちゃって。」

('∀`)「馬鹿言え、こっちがお礼がいいたいくらいだよ。」


ξ゚ー゚)ξ「・・・ありがとう、ドクオ」
今日はやけに素直だな。まったく調子狂う。俺は後ろ髪を掻き揚げた。



196:◆L2jfNrixB. :2006/08/11(金) 14:37:11.87 ID:7LSwdT5v0
  
ξ゚听)ξ「あ、このへんでいいよ」

俺は車を止める。

ツンは自分の荷物をトランクから取り出し、俺はそれを手伝った。

('A`)「あ、そだ。これ頼める?」

俺はつんにカメラのフィルムを渡した。

ξ゚听)ξ「別にいけど・・・」

('A`)「じゃ、たのんだぞ」



ξ゚听)ξ「また頼むわね、運転手さん」

俺は微笑み「またのご利用をお待ちしております」といった。ツンもくすっと笑った。



こうして俺たちの二泊三日の旅行は幕を閉じた。



202:◆L2jfNrixB. :2006/08/11(金) 14:45:02.21 ID:7LSwdT5v0
  
俺は玄関の戸を開ける。

('A`)「ただいま。」

習慣となったこの言葉をがらんとした部屋に投げかける。

俺の声は誰もいない空間にしんと溶けて行った。

俺は荷物をどさっと置き、しばらく旅行の余韻に浸る。


さて、やるか。


俺は押入れからまだ使ってないキャンパスを引っ張り出し、キャンパスたてに立てる。

荷物の中から「荒巻スカルチノフ」と銀字で彫られた黒いかばんを取りだし、開ける。

高級そうな道具が顔をのぞかせる。

コーヒーが効いて眠くはない。パレットに絵の具を取る。

そして一気に描き始めた。下書きもせずにいきなり描く。これが俺スタイルだ。



218:◆L2jfNrixB. :2006/08/11(金) 15:17:32.21 ID:7LSwdT5v0
  
まずキャンパスの中心に月を描く

ふとよぎるクーの顔。一日目に見た月がクーの顔と重なる。


次は海を描いた。思い出。海はいつも思い出を俺にくれた。

ふとよぎるブーン、ツン、ショボンの顔。俺と「思い出」共有した友人たち。


そしてその海の水平線の向こうへ伸びる道を描いた。まるでそれは月に向かう道のように。


一心不乱に絵を描き続けた。俺は絵を描きおわるまで休まない。そうしないと描きたいことが薄れてしまうのでないか、と思うからだ。

一筆一筆にこの旅行の思い出をこめて。

どれくらい時間がたったろうか。

俺は筆を置いた。体を伸ばす。ぽきぽきと背骨が答える。

ふと窓を見る。カーテンの隙間からやわらかな日差しが差し込んでくる。携帯を覗く。8:52。



俺はソファに倒れこみ、意識を眠気に預けた



232:◆L2jfNrixB. :2006/08/11(金) 15:35:42.29 ID:7LSwdT5v0
  
ピリリリリリ・・・

電話だ・・・。

ピリリリリリ・・・

出ないと。

ピリリリリリ・・・

あーわかったわかった。

俺は眠い目をこすり電話を取る。

('A`)「はいもしもし。」


『・・・・・・ドクオか?』


・・・え?


('A`)「クー・・・?」



239:◆L2jfNrixB. :2006/08/11(金) 15:48:35.06 ID:7LSwdT5v0
  
『ふふ、そうだ。久しぶりだな。』

(;'A`)「久しぶりって・・・ってかお前今どこにいんだよ」

『お前の部屋の前にいる。』

(;'A`)「はぁ!?」

俺は急いでドアへと向かう。まさか−。


鍵を開け、戸を開けると見覚えのある顔が3つ。

( ^ω^)「おいすー!」

ξ゚听)ξ「相変わらずだるそうな顔してるわね・・・。」

川 ゚ -゚)「私はそういうところもすきだぞドクオ。」

理解不能。何これ?どっきり?カメラどこ?

( ^ω^)「おっおっ、ドクオびっくりしすぎだおw」

ξ゚听)ξ「ほんとねー、写真の現像できたから渡しに来たんだけどここでクーさんにばったり会って。

      あんた驚かせようと思って電話してもらったのよ」

だんだん脳に感覚が戻ってくる。

でもなんでクーがここに?外国で父親の世話をしてるんじゃ・・・



246:◆L2jfNrixB. :2006/08/11(金) 16:02:48.30 ID:7LSwdT5v0
  
川 ゚ -゚)「私の父親の仕事が軌道に乗ってな、ヘルパーを雇う余裕ができたんだ。

     私は父親にそんなものは必要ない。私がいるといったんだが『お前はまだ若い。

     だから国に帰ってもっと勉強してきなさい』と言ってくれたんだ。だから帰ってきた」

俺はその話を聞いても現実味が沸かなかったが、クーが目の前にいる。それは事実だった。

俺はよっぽど間抜けな顔をしているらしく、ブーンとツンは笑いをこらえるので精一杯そうな顔をしていた。

あ、そうだ。

(;'A`)「く、クー。一つだけ確認しておきたいことがあるんだ」

川 ゚ -゚)「ん?何だ?何でも聞いていいぞ」


(;'A`)「いま・・・何時?」


ツンとブーンがこらえきれず大声で笑った。珍しいことにクーも笑っていた。俺もなんか恥ずかしくなって後ろ髪を掻き揚げた。



260:◆L2jfNrixB. :2006/08/11(金) 16:22:52.15 ID:7LSwdT5v0
  
俺は三人を招きいれ、描いた絵に布を掛けた。

俺は三人にとりあえずビールを出した

('A`)「これしかねーけど。」

( ^ω^)「おっおっ、お構いなくだお」

ξ゚听)ξ「あら、あんたにしては気が利くわね。」

川 ゚ -゚)「いただくぞ」


ツンのもって来た写真を見て旅行をおもいだし、笑った。その思い出話をクーも楽しそうに聞いていた。

ξ#゚听)ξ「ちょっと!誰?私の寝顔撮ったの!」

( ^ω^)「ククク。。。隙を見せるほうが悪いんだお」

いつものように盛り上がり、遅くまで騒いでいた。

( ^ω^)「お?これ、ドクオが描いたのかお?」

朝描きあげた絵を指してブーンが言った。俺はまあな、とだけ答えた。

ξ;゚听)ξ「あんた絵うまかったのね・・・」

川 ;゚ -゚)「おお・・・見事な絵だな。」

だからあんま褒めるな。照れくさい。後頭部だけ禿げるだろ・・・。と思いつつもまた俺の手は勝手に後ろ髪に伸びていた。



265:◆L2jfNrixB. :2006/08/11(金) 16:36:01.66 ID:7LSwdT5v0
  
(*^ω^)「おっおっお、ばいぶーだおー」

ξ*゚听)ξ「後は二人で楽しんでねー」

かなり酔っ払って二人は帰っていった。ちゃんと帰れるだろうか、心配だ。

川 ;゚ -゚)「あの二人・・・大丈夫なのか?」

('A`)「まぁ・・・ブーンああ見えて結構たくましいお方だから何とかなるだろ」

川 ゚ -゚)「そうか・・・なら安心だな。なぁ、ドクオ」

('A`)「ん?」



−−−ギターを聞かせてくれないか。あれを聞けないと帰ってきた、という実感がわかないんだよ。

−−−わかった、いくらでも聞かせてやるよ。

−−−・・・やはりいい音だ。やっと帰ってきた心地だ。ありがとう、ドクオ。

俺たちはそっと、静かに口付けを交わした。



('A`)が海へ行くようです   完



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