俺は( ^ω^)のペットのようです

47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 17:04:22.88 ID:dtE6Oyd50
  
ドクオと呼ばれた華のない男は、そこではじめてしげしげと俺を見つめた。

俺「・・・・どーもー」

間が持たなかったので無表情にひらひらと手など振ってみる。
後から思い返すとちょっと壊れ気味だ。
しかし、俺はここでこいつがブーンの非常識さを戒め、警察に連絡してくれることを期待していた。

('A`)「・・・なあ、ブーン」

( ^ω^)「なんだお?」

('A`)「これ、俺には人間に見えるんだけど」


!!!


よし!!
そうだ!!それこそが俺の望んだまっとうな人間の反応だ!!
俺は救世主の登場に、涙を流して神に感謝の祈りを捧げたい気持ちになった。



49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 17:17:47.56 ID:dtE6Oyd50
  
( ^ω^)「ふっふっふ!その通り!実は突然ブーンの前に現れた魔法使いさんが
      ブーンにくれた奇跡のプレゼントだったりするのだお!」

('A`*)「マジ!?そうなんだ!へー、すげー!」


俺は血の涙を流して神に呪詛の言葉を吐き掛けたい気持ちになった。
こいつもキ○ガイだちくしょう。

('A`)「ちゃんと喋れて、トイレトレーニングもしつけもいらないペットなんて
    すげー貴重じゃね?」

( ^ω^)「そうなんだお!自慢のペットなんだお!もっと褒め称えるがいいおwwww」

('A`)「お前を褒めてるわけじゃねーよ。でもいいなあ、俺もこんなペットが欲しい。名前はつけたのか?」

( ^ω^)「うーん、実はまだいいのが思い浮かばないんだおー・・・」

俺「ちょっと待て」


じゃあ今までのは全部仮称かい。



55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 17:36:19.40 ID:dtE6Oyd50
  
その後、わらわらと他の友達も集まり、俺は数人のブーンの友達の
好奇の視線にさらされたが、俺というれっきとした人間が
ペットにされている事に疑問を抱く奴は、当たり前のように誰一人としていなかった。
もう滅んじゃえよお前ら。

そうこうしているうちに昼を過ぎ、友達とやらは三々五々家路に着いたり
これから遊びに行く計画を立てたりし始めた。

('A`)「俺はもう帰ろうかな。ブーン、お前は?」

( ^ω^)「ブーンもおなか空いたから帰るお!」

ブーンは楽しそうに俺のリードを握りしめて、ぶんぶんと手を振りながら公園を後にした。

( ^ω^)「イチ、今日の昼ご飯はホットケーキを焼くお!」

ああ、そうそう、俺の名前は「イチ」になったようだ。
一貫して横文字にこだわるこいつを友達がやんわりと押さえつけ(感謝している)、
十分間の話し合いの末決定した。
ちなみに命名理由は、俺の着ていたTシャツの胸に「1」とプリントされていたから、である。

俺「・・・はいはい」

カトリーヌよりはマシだと思い、俺はしかたなく返事をしてやった。



余談だが、帰る途中妙齢の婦人とすれ違う際、ものすごい目で二十秒以上ガン見された。
記憶から消すことは難しそうだった。
帰ってから軽く泣いた。



58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 17:53:41.89 ID:dtE6Oyd50
  
俺がブーンのペットになって四日目の夜。
思い切って、俺はずっと訊いてみたかった事を訊いてみる事にした。


俺「おい、ブーン」

( ^ω^)「なんだお?」

俺「大した事じゃないんだが、お前の国では、夕飯はインスタントラーメンにせよと
  戒律か何かで決まっているのか?」

( ^ω^)「何言ってるお、そんなわけないお」

俺「じゃあ、どうして俺はお前が夕食にラーメン以外のものを
  食べる処を見た事がないんだ?」

俺はずるずるとノンフライ生麺タイプのインスタントラーメンをすすりながら言った。
こいつは朝と昼は簡単にパンなどを食べ、そして夜は必ずと言っていいほどラーメンを食べている。
不本意ながらペットである俺も(プリンを除いて)、こいつが食べるものを一緒に食べるしかないので
ぶっちゃけ飽き飽きしているのだった。



62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 18:08:06.27 ID:dtE6Oyd50
  
(;^ω^)「む、むう・・・とうとうそこに気が付いたかお・・・」

気付いたっつーか、二日続けてラーメンだった時から既に
ちょっと飽きてたんだけどな。

( ^ω^)「しょうがないんだお、いまカーチャンが単身赴任中のトーチャンのとこに行ってるから」

俺「ああ、やっぱり両親いるのか、こんなんでも」

(;^ω^)「こんなんって・・・・。
      だからいつもはカーチャンが料理してくれてたから、ブーンは料理できないんだお」

俺「ふーん」

まあ、そういう理由なら納得がいく。
昨日のホットケーキもちょっとこげてたしな。



65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 18:16:54.08 ID:dtE6Oyd50
  
( ^ω^)「でも大丈夫だお!ブーンラーメンなら十年続いても飽きないお!」

俺はそれに付き合わなきゃいけないのか?

( ^ω^)「カーチャンが大好きなプリンをいっぱい作りだめしといてくれたし!」

だからおやつがいつもプリンだったのか。

( ^ω^)「それにホットケーキもだいぶうまく焼けるようになったお!」

いや、だから焦げてたって。

昨日のレベルにたどり着くまでにどれだけの失敗作を生み出してきたのだろうか、こいつは。
どんぶりを抱え込んでラーメンをかっくらっているブーンを眺めて、
俺はため息を吐いた。

俺「・・・しょうがねーなー」

( ^ω^)「何か言ったかお、イチ?」

俺「なんでもねーよ」



69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 18:34:38.93 ID:dtE6Oyd50
  
そして翌日、俺がブーンのペットになって五日目の昼。


(* ^ω^*)「ふおおおおお!ふおおおおお!!wwwwwwww」

俺「旧式の掃除機かお前は」

俺は憎まれ口を叩きながら、スプーンを握り締めてテーブルについているブーンの前に
でんと大きな皿を置いた。皿の上にはケチャップ特盛りのオムライスが乗っている。
ブーンはほこほこと湯気の上がる黄色い卵ごしに、心から感激したような顔を見せた。

( ^ω^)「すごいお!イチは天才だお!久しぶりのまともなごはんだお!!」

俺「大袈裟な・・・。具なんてほとんど入ってないぞ、あんまり材料なかったから。
  つーかこれぐらい自分で作れるようになれよ」

( ^ω^)「最高だおー!料理の出来るペットなんて世界中でイチだけだお!飼い主冥利に尽きるお!」

俺「人の話を聞け。それと、これは俺が食べたいから作った飯だ。
  お前の分はついで。くれぐれもペットとして作ったんじゃないからな」

( ^ω^)「ふおおおおー!!いっただっきまーす!!!」

全然聞いてねえこいつ。
ブーンはがつがつとオムライスをかっこんで、「ンマーイ!」と一言叫ぶやいなや
急いで口にケチャップを詰め込む作業に戻った。



77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 18:49:33.92 ID:dtE6Oyd50
  
( ^ω^)「あうー・・・おなかいっぱいで苦しいお・・・」

俺「俺も・・・ちょっと大盛りにしすぎたか・・・げふ」

( ^ω^)「でもしあわせだお・・・・」


大きなオムライスを長い時間をかけて食べ終わって、
俺とブーンはリビングのソファでまったりしていた。
いつもはブーンと一緒に部屋にこもり切りなので、広いスペースでゆったりと過ごすのは
なかなか心地よい。

・・・
・・・・・・

はっ!?

い、今一瞬「こういう生活も悪くないかもなー」とか思ってしまった!!
ちくしょう、俺のバカバカ!ほんの少しでも気を緩めてしまった自分が憎い!!


(;^ω^)「・・・イ、イチ。怖いから急に凄い顔して悶絶しないで欲しいお」



86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 19:04:16.55 ID:dtE6Oyd50
  
と、俺が頭をかかえて人生の落とし穴という名の闇を痛感していると、
プルルル・・・と家の電話が鳴った。

( ^ω^)「おっおっwww電話だおwww」

ブーンはソファから飛び降りて廊下まで行き、やけに嬉しそうに受話器をとった。

( ^ω^)「はーい、内藤ですお!――おっ!看護士さんですかお!」

・・・看護士?
俺は興味を引かれて何気なく耳をそばだてる。

( ^ω^)「はい!はい!ブーンはいつでも元気ですお!
      それで今日はどうですかお?」

そこまできて、弾んでいたブーンの声は急にトーンダウンした。

( ^ω^)「・・・・そうですかお。・・・・はい。容態が安定してない・・・はい。
     はい、判ったですお。大丈夫ですお、じゃあ、明日・・・はい。よろしくお願いしますお」


とても静かに、カチャ、と受話器を元に戻す音。
俺はきょとんとして、リビングに戻ってきたブーンを見つめた。



92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 19:19:13.68 ID:dtE6Oyd50
  
俺「・・・お前ん家、誰か入院してんのか?」

( ^ω^)「ん・・・イチ、聞いてたのかお?」

ブーンはちょっとしょげたみたいに肩を落としていたが、
それでも普段と変わらない明るい声で言う。

( ^ω^)「友達が入院してるんだお。今日、具合がよければお見舞いに行ける
      筈だったんだけど・・・ダメだったお」

俺「友達って?」

( ^ω^)「ブーンの幼馴染の女の子だお。ちょこっと素直じゃないとこもあるけど、
      とってもかわいい子だお。
      それが、ナントカっていう珍しい病気で、今一時的に目が見えない状態なんだお」

俺「・・・・」

世間話にするにはヘビーな話題だ。
聞かないほうが良かったか。



100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 19:37:26.85 ID:dtE6Oyd50
  
しかしブーンは仁王立ちしてあさっての方向を向くと、

( ^ω^)「でも、必ず治るってお医者さんが言ってたから大丈夫だお!
      ツンは長い入院生活で少しだけ気が弱くなってるんだお。
      だからブーンが励ましてあげるんだお!
      今日はちょっと間が悪かったけど、明日はきっと会いに行けるお!」

アメリカンコミックのヒーローみたいに、天高く人差し指を掲げて宣言した。
・・・うん、足は曲げない方が良かったな。それじゃトラボルタだろ。
しかし心優しい俺はあえて突っ込まず、うなずいて「そうか」とだけ言った。

俺「早く良くなるといいな」

( ^ω^)「うん!イチは優しいおwwwwwさすがはブーンのペットだおwwwww」

俺「・・・・うるせーな、普通だ普通」

( ^ω^)「晩ご飯はカレーがいいお」

俺「調子に乗るなピザでも食ってろデブ」

( ^ω^)「ピザでもいいお」

俺「スルーかよ」



108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 19:53:55.05 ID:dtE6Oyd50
  
そして――俺がブーンのペットになって六日目。

その日は朝から雨だった。
ブーンはいつものようにパソコンの前に座ったり、
俺を無理矢理トランプやレトロなボードゲームに誘ったりして過ごした。

そして昼過ぎ、プルルル・・・と電話が鳴り出した瞬間に
ブーンはドアを蹴飛ばして出て行ってダッシュして受話器に飛びついた。

けれど、部屋に戻ってきたブーンは昨日と同じようにうなだれていた。


俺「またダメだったんか」

俺が聞くと、ブーンは「またダメだったお」とうなずいて自分のベッドに腰掛けた。

( ^ω^)「うーん・・・想定の範囲外だお・・・」

俺「まあ、またその子の具合がいい時に改めて行けばいいじゃん」

( ^ω^)「うーん・・・」


ブーンはしきりに首をひねっていて、
俺はその煮え切らない姿を見て自分でも首をひねった。



114:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 20:05:15.74 ID:dtE6Oyd50
  
その夜、俺は夢を見た。
見たこともないツンとかいう子とブーンが結婚していて、
白い小さな庭付き一戸建てに住んでいて、
そして花が咲き乱れるその庭には従順なペットが一匹・・・・・・

( ^ω^)「はっはっは、イチー、とって来いだおー」

俺「わんわーん!」

ツン「うふふ、あなたったらwww」

子供「イっちゃん、とてこーい」

俺「わふわふwwwwwご主人さま、今日はカレーですわん!」




俺「う・・・・・ううーん・・・・・」

( ^ω^)「・・・イチ、イチ起きるお」

俺「う、うう・・・・犬小屋・・・・犬小屋はいやあ・・・・・」

( ^ω^)「何寝ぼけてるんだお、起きるお、イチ!」

俺「ふ、ふはっ!!?」

ビクッ、と痙攣して、俺はいつもの寝床から飛び起きた。



120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/27(木) 20:16:18.37 ID:dtE6Oyd50
  
(;^ω^)「・・・なんかイチ泣いてないかお?大丈夫かお?」

俺「う、うう・・・・人として最後の大切なものを失ってしまう夢を・・・・・わん」

(;^ω^)「わん?」

俺「うおっ!?い、いや、何でもない、何でもないぞ!!」

我に返った俺は慌てて両目から溢れる魂の涙をぬぐい、
しゃがみこんで俺の顔を覗き込んでいるブーンに向き直った。

俺「・・・って・・・どうしたんだ?外、まだ暗いじゃないか」

ブーンの部屋の窓の外はまだ真っ暗で、
朝どころか夜明けもまだのように見えた。

( ^ω^)「しー、だお。まだ夜中の三時だから静かにするお」

俺「三時ぃ!?何だよそんな時間に・・・」

俺がうんざりした声を出すと、反対にブーンはいたずら小僧の様に目を輝かせてこう言った。

( ^ω^)「今から夜のお散歩だおwww」

俺「・・・・は?」

( ^ω^)「ツンに会いに行くんだお!」



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