俺は( ^ω^)のペットのようです
- 260:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 00:13:54.43 ID:Frw3qVRM0
- (;^ω^)「ぜえ、はあ・・・・ど、どうにか間に合ったお・・・」
俺「お・・・お花畑が見えた・・・・・
一瞬、綺麗な川とお花畑が・・・・・ッ」
俺が酸欠でくらくらした頭で
さっき死んだ筈のじいちゃんに会った気がするな・・・と考えていると、
ブーンはなにやらポケットをさぐり、紙のようなそうでないようなものを取り出した。
ハ○ポタの映画で見た、羊皮紙、というものに似ている。
ブーンはくるくると巻かれたそれのヒモをほどいて、ぶつぶつと中身を読み上げ始めた。
( ^ω^)「えーっと。ショボン魔法会社、魔法使い呼び出しの方法。
初めての方はこちら、そうでない方はこちらのページを・・・・・」
・・・魔法使い?
俺「なあ、ブーン、それって・・・?」
( ^ω^)「あーイチ、ちょっと黙っててだお。ややこしいから集中したいお」
俺「・・・。はい
- 267:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 00:22:56.47 ID:Frw3qVRM0
- 俺が何となく、少し離れた乾いた場所でちょこんと体育すわりをしている間、
ブーンはしばらく巻物を見てぶつぶつ言って、
それから「よし」と呟いて羊皮紙っぽいものを屋上の濡れた地面に置いてしまった。
( ^ω^)「確認おk!呼び出し準備完了!いざ!降ー臨ーしたまえーーだお!!」
俺「・・・・・」
んばっ、と両手を広げて、薄ぼんやりと明るくなりかけている
東の空に向かってブーンは叫んだ。
俺「・・・・・」
( ^ω^)「・・・・・」
俺「・・・・・」
( ^ω^)「・・・・・」
俺はバンザイをし続けているかわいそうな人を遠くに見つめる。
朝ご飯はフレンチトーストにしよう、と思った。
- 275:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 00:33:05.25 ID:Frw3qVRM0
- (´・ω・`)「はい毎度どーもー」
俺「ひいぃっ!?」
朝飯のメニューに気をとられて完全に気を抜いていたので、
突然なんの前触れもなく至近距離でそんな声がして
俺は腰を抜かさんばかりに驚いた。
俺「なっ、なっ、なっ・・・・・!?」
( ^ω^)「あ、魔法使いさん!いつの間にそんな処に!
人が悪いお、ブーンちょっぴり泣きそうだったお!」
(´・ω・`)「だっていくら二十四時間営業ったって、こんな早朝に呼び出しかけられても
すぐには対応できませんってー」
俺の座っていた場所(ちなみにひさしのある屋上の出入り口)の
すぐ真後ろに、いつの間にか見覚えのある八の字まゆが膝を抱えて座り込んでいたのだった。
俺「あっ――、お、お前!」
(´・ω・`)「どもー。心を込めてがモットーのショボン魔法会社です」
魔法使いは無表情にへにゃっとしたピースサインを俺に見せた。
- 285:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 00:43:40.67 ID:Frw3qVRM0
- (´・ω・`)「それで?今日はどういった御用向きで」
ブーンは雨の名残の飛沫を飛び散らしながら
俺と魔法使いの傍まで駆けて来て、
( ^ω^)「クーリングオフをお願いしたいんですお!」
と言った。
クーリングオフ。
ああ・・・・
そういやそんな事言ってた気もするな、
俺がアレに連れて来られた最初の日に。
動転しててすっかり記憶から抜き落ちてたけど。
クーリングオフ・・・・
俺「・・・・・え、クーリングオフ?」
- 304:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 00:57:38.26 ID:Frw3qVRM0
- (´・ω・`)「えー。それってキャンセルってこt・・」
俺「そっ・・・・・、それって、帰れるって事か!?
お、俺の元いた世界へ!?」
俺はどもりながら魔法使いの言葉をさえぎり、
身を乗り出してブーンに言った。
( ^ω^)「そうだおイチ!七日目の朝が期限ギリギリだったんだお。危なかったおwwww」
俺はその言葉を聞いた瞬間、
喜びに満ち溢れた天上の音楽が胸の中に響き渡った気がした。
戻れる!
首輪とか首輪とか首輪のない世界へ戻れる!
しかし、感涙の涙が頬を伝う前に、俺はふとブーンに向き直った。
俺「でも、何で帰してくれる気になったんだ?だってお前俺のこと、世界一のペットだって・・・・」
・・・いや念の為に言っておくが、これは俺がこいつのペットとして傷ついたとか
そんな事では決してなく。
純然たる好奇心であり、真実を見極めたい気持ちの表れであり、うん。
- 330:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 01:13:26.59 ID:Frw3qVRM0
- ( ^ω^)「・・・うん。もちろん今でもそう思ってるお」
ブーンはにっこりと、けれど少しだけ淋しそうに笑って言った。
( ^ω^)「料理はうまいし、ゲームは強いし、優しいし、髪はさらさらでかわいいし、
イチよりいいペットなんてどこにもいないお。
間違いなく、ブーンの一生ぶんの自慢のペットだったお」
過去形で話すブーンに何故かちくりと胸が痛んだ。
俺は立ち上がってブーンと向き合う。
( ^ω^)「イチ、ブーンは、一週間前のあの日、突然やってきた魔法使いさんに
こう言われたんだお」
- 340:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 01:17:34.25 ID:Frw3qVRM0
- -------
はい毎度ー。ショボン魔法会社です。
突然ですがこちらではただいまお願いを承っておりまして。
どうですか、どんな願いでも叶えて差し上げますけども。
あ、訂正します、どんな願いと言っても2,3禁止事項がございましてですね、
えーその1、他人の心に関する魔法は御法度。
えーその2、他人の身体に関する願いは御法度。
えーその3・・・・
はい?
病気ですか?・・・君のじゃなくて。・・・友達の?
あー、そういうのはちょっとね、ダメなんだね。
そういう命のやり取りっぽいのはホラ、うちの管轄じゃないからさ。
悪魔さんとことか、死神さんとこの取扱いになっちゃうんだねー。
君自身の病気なら治せたんだけどね。
はいはい、ええ、そうなんですよ。
だからもうちょっと別の願いをね・・・・。
・・・はあ。
・・・・・・ペット?
- 355:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 01:27:39.44 ID:Frw3qVRM0
- ---------
(´・ω・`)「判り易く回想シーン入れときました」
俺( ^ω^)『・・・どうも』
一応礼を言ってから、あらためてブーンと俺は向き直る。
( ^ω^)「それで、ブーンは言ったんだお。
病気の友達を勇気付ける為のペットが欲しいって。
ツンの病気は手術すれば治るのに、治療に一番必要な「気持ち」を
ツンは忘れてしまっていたお。
それでブーンはツンが昔飼ってたナナを思い出したんだお。
「私にあたたかいものを教えてくれたのはナナだ」って、ツンは昔から言ってたお。
だから、ナナよりももっともっと素晴らしい、世界中のどんなペットにも負けない、
ツンにあたたかい気持ちをくれるようなペットが欲しいって」
俺「・・・・・・・・」
- 382:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 01:42:10.71 ID:Frw3qVRM0
- 俺「そうだったのか・・・」
こいつは本当にずっとずっと、ツンを一途に想っていたんだろう。
なんでも願いを叶えると言われて、
とっさにツンの事しか思い浮かばなかったぐらいに。
俺は不覚にも涙ぐみそうになってしまった。
俺「なんだよお前・・・ちょっとカッコイイじゃん」
( ^ω^)「うはwww照れるおwwwwっていうか、実は昔からナナを飼ってたツンがうらやましくて
自分のペットが欲しかったのも本当なんだおwwwww」
俺「そんなこったろうと思ったよw」
( ^ω^)「でも・・・実はナナも、ツンのお家には一週間しかいなかったんだお」
俺「え・・・・えぇっ!?」
( ^ω^)「今回のことがあって、もしかしてと思ったんだけど、まさか・・・・・」
ブーンと俺は揃って魔法使いを見た。
八の字まゆは首をすくめて、
(´・ω・`)「うちは創業二百年の老舗ですからねー。
帳簿見ないと何ともいえないですけど、まあ、可能性はありますね」
- 409:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 01:56:35.70 ID:Frw3qVRM0
- 俺「・・・・」
( ^ω^)「・・・・・うふふだおwww」
俺「・・・・ははは」
なんだか可笑しくなって、俺とブーンはケラケラ笑いあった。
そんな俺たちをしばらく眺めて、魔法使いはやれやれといったふうに立ち上がり、
(´・ω・`)「で?今ならキャンセルとクーリングオフ、どちらも受け付けておりますが?」
と言った。
俺「どう違うの?」
(´・ω・`)「願い事のキャンセルをすると、願い事自体が「無かった事」になる。
つまり君はこんな世界へは来なかった。飼い主の彼とも会わなかったし、
病気の友達の記憶からも消える」
魔法使いは人差し指をついと立てて説明し、
次いで、もう一本指を出して続ける。
(´・ω・`)「品物のみのクーリングオフって事であれば、誰の記憶も消えない。
君が元いた処に戻るだけ。
ああ、もう気付いているかもしれないけど、君にとってここはいわゆるパラレルワールドだからね。
元の世界に戻った時に少し記憶が曖昧になるかもしれないけど、まあその辺はご容赦を」
俺「え・・・俺の記憶、消えるのか?」
(´・ω・`)「んー、だからその辺は君の運次第なんだねー。運がよければ消えない。悪いと消える」
- 431:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 02:06:18.53 ID:Frw3qVRM0
- 俺「そっか・・・・」
俺はブーンを見た。ブーンも俺を見ていた。
俺「お前、だから俺とツンを早く会わせようとしてたんだな。
七日過ぎてからじゃ、せっかくツンを勇気付けても記憶消えちゃうもんな。
はじめから俺を帰そうと思っててくれたんだな・・・・・」
( ^ω^)「・・・イチ。これで帰れるお。
イチは、もしかしたらブーンたちのこと忘れちゃうかもしれないけど・・・・
ブーンは・・・ブーンはイチのこと、絶対に絶対に忘れないお!
本当に・・・・・・ありがとうだお・・・・・」
くしゃくしゃとブーンの笑い顔がつぶれる。
涙を堪えて。
それでも涙は、堪えきれずに後から後からこぼれていく。
俺「・・・・ばあか。俺だって、絶対忘れないよ」
たぶん、俺も顔がぐしゃぐしゃだったろうけど、必死にかっこつけてそう言った。
- 449:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 02:15:15.54 ID:Frw3qVRM0
- (´・ω・`)「青春・・・・」
魔法使いが朝日の昇り始めた空を見上げて
馬鹿な事を言っているが、そんな事で雰囲気を壊すのもシャクだったのでシカトした。
( ^ω^)「グスッ・・・じゃ、じゃあ魔法使いさん、クーリングオフでお願いしますお!」
(´・ω・`)「ああはいはい。じゃ行きましょうか」
そう魔法使いが言うが早いか、
魔法使いと俺の身体は淡い薔薇色の光に包まれ、
しかもふわりと風に乗るように浮き上がった。
俺「う、うわっ・・・・」
自力で空に浮かんだことのない俺はかなり面食らってじたばたしたが、
「動くと落っこちますよ」と言われた瞬間ぴたりと身体の動きを止めた。
俺「ブーン!」
ふわふわと落ち着かない体勢で、俺は首だけを必死に動かして
ひとり朝の屋上に佇むブーンを目にしようとした。
- 474:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 02:24:35.19 ID:Frw3qVRM0
- ブーンは涙でべしょべしょの顔で、それでも馬鹿みたいに笑っていた。
この一週間ずっとそうだったように
おひさまみたいな笑顔をいっぱいに浮かべていた。
( ^ω^)「イチー!楽しかったおー!」
俺「お・・・俺も・・・俺もそれなりに退屈しなかったぞーっ!」
( ^ω^)「きっと帰っても覚えてるおー!」
俺「こんな馬鹿馬鹿しい体験、意地でも覚えててやるよー!」
だんだんお互いの声が届きにくくなっていく。
俺とブーンは精一杯声を張り上げて
別れの挨拶をした。
( ^ω^)「あっ・・そ・・・そうだお・・・・イチ!
イチの本当の名前は!?元の世界の本当の名前はなんていうんだおー!」
そうして、光がどんどん強くなり、もう消えてしまうという処で、
ブ−ンは最後の声を振り絞って俺にこう問いかけてきた。
- 511:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 02:33:08.59 ID:Frw3qVRM0
- あのバカ、こんな最後の最後で・・・
勝手に変な名前ばっかりつけてたくせに。
俺もつられて笑ってしまった。
涙と大声で、笑い声はすっかりかすれていた。
俺はもう光の向こうにかすかにしか見えないブーンに向かって
最後の、本当に最後の言葉を叫んだ。
俺「はるかだよブーン!
俺の名前! 市ノ瀬春香!
なあ、覚えててくれよ!
俺が忘れちゃってもいいようにさあ!
・・・今度はペットのイチじゃなくてさあ・・・・!
友達になりに行くからさあ・・・・!!
ブーン――・・・・・・・・・・・・・・・!!!」
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