俺は( ^ω^)のペットのようです

535:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 02:37:30.07 ID:Frw3qVRM0
  



俺「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うぁ」



目を覚ますと、目覚ましの鳴る前だった。
朝の柔らかな光。窓の外からは小鳥の声。
ごく当たり前の休日の朝だ。

俺「・・・・・」

はれぼったい目をごしごしこすって、俺は身体を起こした。



俺「なんだ・・・・夢か・・・」



559:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 02:42:36.86 ID:Frw3qVRM0
  
俺「・・・おはよ、お母さん」

母「おはようー」

なんだか目が覚めてしまったので
二階の自室から台所へ降りていく。
そこでは当たり前のように、お母さんがいつものように朝食を作っていた。
ジュウジュウいっているフライパンと甘い匂いからして、
今日のメニューはフレンチトーストだ。

母「どうしたのー、こんなに早起きするなんて珍しいじゃない」

母さんはフライ返しを持ってにこにこと楽しそうに言う。

俺「んー・・・」

俺はパジャマのままテーブルに座って目に付いた朝刊を手に取った。
でも、内容なんかちっとも頭に入ってこない。


なんか・・・
もっとだいじなこと、しなきゃいけないような気がするんだけど・・・



592:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 02:49:56.21 ID:Frw3qVRM0
  
俺「・・・・・あーダメだ、思い出せねえ。くそっ」

母「こら春香、その言葉遣い直しなさいよー?
  再来年はもう中学生なんだから。お姉さんでしょ、おねえさん!」

俺「あーい・・・」

生返事をして、俺は新聞にほっぺたをくっつける。
俺がダラダラしている間に
お母さんは手際よく出来上がった料理をテーブルに並べていく。

俺「・・・ねえ、お母さん?」

母「なあに?」

俺「昨日すごく変な夢見た気がするんだけど・・・・」

母「あら、どんな夢?」

お母さんは皿を並べ終えてテーブルに座り、サラダを俺の小皿に
取り分けてくれながら言う。



633:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 02:57:36.94 ID:Frw3qVRM0
  
俺「えっと・・・あー・・・たしか・・・」

霞がかかったようにぼやける記憶を、俺はなんとかかき集めようと努力しながら、

俺「・・・そうだ、たしか、ちょっと太った男の子がでてきた。
  それと胡散臭いしょぼーんとした奴と・・・
  金髪の綺麗な女の子がベッドで寝てた。
  でね、俺が男の子にオムライス作ってあげてた」

母「それはたしかに変な夢ねえ」

お母さんは俺の話を聞いて、楽しそうにころころ笑った。
俺はそれを見るともなく見てサラダをつつく。

俺「それで・・・・
  その夢をね、忘れないようにと思って起きたんだけど・・・・
  気が付いたらあんまり覚えてなくて・・・・

  それが・・・・

  それがなんだか哀しくて・・・・」

母「・・・春香?」


俺「・・・え?」


ぼんやりと喋りながらうつむいていた顔を上げる。
俺はいつの間にか泣いていた。



662:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 03:03:28.58 ID:Frw3qVRM0
  
俺「あ・・・あれ?お、おかしいな。な・・・なんで・・・・・っ」

壊れた水道みたいに
あとからあとから勝手に流れ出てくる涙。
さっぱり訳が判らなくて、俺はとても困ってしまった。

母「・・・・」

お母さんはもっと訳が判らなかっただろうに、
何も言わずにおっと席を立つと
正面から俺の隣に移動して、黙って俺を抱きしめてくれた。

俺はそれに素直に甘えることにして
しばらくお母さんの胸に顔をおしつけてしくしく泣いた。
小娘みたいでちょっと恥ずかしかった。
まあ・・・俺が小娘なのは事実なんだけど。


母「そういえばねえ。お母さんもそういう夢、何度か見たことがあるわ」

俺「・・・え・・・?」

だいぶたって、俺がしゃくりあげる声も小さくなった頃、
お母さんがふいにそう言った。



699:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 03:10:32.33 ID:Frw3qVRM0
  
母「お母さんが子供の頃の話なんだけどね。
  金髪の女の子と、その女の子の友達の男の子と仲良くなる夢を見たの。
  花のいっぱい咲いているお庭や公園で遊ぶ夢」

俺「・・・・・」

俺はぽかん、とおかあさんを見つめた。
何かが、心の奥で響いた気がした。
扉の開く音みたいなもの。

母「女の子と男の子、とっても仲が良さそうだったわ。
  そうねえ、男の子は少しふっくらしていたかもしれない」

俺「お・・・っ、おか、お母さん」

母「なあに?」

俺「お母さん、なんて呼ばれてた!?
  その女の子に!その男の子になんて呼ばれてたっ!!?」


するとお母さんはにっこり笑って、ナナよ、と優しく微笑んだ。

あたたかみというのが凝縮されたみたいな、お母さんのとびっきりの笑顔だった。

母「お母さんの名前、奈々花だから、ナナ。
  それで可笑しいのが、お母さんその金髪の子と遊ぶ時は
  いつも首輪をつけているのよ。きっとペットのつもりだったのね」



747:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 03:22:23.21 ID:Frw3qVRM0
  
俺「・・・・あは」

俺は止まった筈の涙を流しながら
お母さんの首に飛びついた。

ああ、そうか。
そうだったんだ。

俺「あはははっ!お母さんだった!お母さんだったんだ!」

母「あらあら、なあに?春香ったら」

俺「お母さんだった!お母さんがナナだったんだあっ!」

俺は木漏れ日みたいにあったかい、
しあわせな気持ちでいっぱいだった。

ブーン。
ツン。
ねえ、俺、お前たちの大好きなナナの娘だったよ。
こんなに嬉しいことってあるかな?



754:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/28(金) 03:23:50.71 ID:Frw3qVRM0
  
ねえ、びっくりだよ。
お母さんだったんだ。
ツンにあたたかい心を教えてあげたのは。

ブーン、お前、やっぱりすごいよ。
だって俺じゃあ、全然お母さんに敵わないもの。
俺はお母さんを超えるすごいペットなんかじゃなかったよ。
きっとお前の力だよ。
お前のあたたかい心がツンに力をあげたんだ。

ねえ、ブーン。
ツン、早くよくなるといいね。
早く家に帰れるといいね。

お母さんが帰って来れたみたいにさ。
俺が帰れたみたいにさ。


ねえ、ブーン。
二度あることは三度あるっていうしさ、
もしかしたら、今度は俺の娘がそっちに行くかもしれないよ?

その時は仲良くしてやってな。
オムライスぐらい、また作ってやるからさ。



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