( ^ω^)ブーンが植物の世話をしているようです

54:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 21:24:37.89 ID:aOvnGawE0
  
『中学校』


中学校はそのまま近所の中学校へ行った。
入試も何もない、田舎だから中学校で入試とか本当にあるのかとすら思っていた。

当然周りの面子は変わらなかった、結局自分は虐めの絶好の獲物のままだった。

この時ツンと始めて同じクラスになるが、話は全然しなかった。
彼女からみた自分はただの虐められっ子だったことだろう。
彼女は女子の間ではどうか知らないが、男子とも気さくに話しいていて人気者、互いに無縁の存在だった。

そして虐めは次第に酷くなっていく。

体育から帰ってくると机は大体落書きだらけだし、スリッパはペン跡とカッターで切り取られたりでボロボロだった。
掃除から帰ると机や鞄を漁られえた後があった。
トイレに閉じ込められて、放課後まで出てくるなと言われたこともある。
ムカつく教師にちょっかいをかけて怒られるのも全て自分の役目だ。



55:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 21:25:59.91 ID:aOvnGawE0
  
命令されて授業を何度と壊した。

教師からみれば自分は大問題児だった事だろう。
相手も自分が虐められていた事は気付いていただろうがそんなものムシだ。
僕が言わないのだから、僕だけ怒っていれば教師としての体裁は良いんだ。

教育者と言う立場上、何か問題があれば怒らなくてはならない。
その怒る相手は誰でもいいんだ。
自分が命令されている事を言えないのを知っていながら、彼らは自分を怒るのだ。

教師から目を付けられた事もあり、自分は歩いているだけで細菌扱いだった。
女子というのは時にひどい、聞こえるようにこちらを見ながら悪口を言うのだから。

掃除の時間、誰も自分の机を運ぼうとしない。
残った自分だけの机、誰かが運んでくれると教科書が落ちた。
誰も拾おうとしない。
そのままホウキで掃かれて、落し物として教室の後ろに汚れて置かれている。
筆箱は一回実際に捨てられた。

玄関ではいつも自分の靴だけが散らばっていた。
ちゃんと自分の場所に入れておいても、帰るときには外に投げられていた。



56:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 21:28:50.01 ID:aOvnGawE0
  
朝学校に来るとスリッパがクラスの女性のものと入れ替えられている。
そんな時は相手に非常に申し訳なくなる、自分なんかと入れ替えられて気持ち悪いだろうなって。
そして自己卑下に陥る。

教室に着くと机が反対向いている。
机の上に花瓶がある、黒板に意味もなく自分の悪口が書かれている。
自分の周りにゴミが溜まっている。

些細な事こそ、胸をえぐられるように辛かった。


中学に入り、一気に自分は根暗な人間になった。
虐められている時は出来るだけ笑おうと努めた。

他人が怖かった。

誰も信じられなかった。

だから笑って吹っ切れたかったんだ。
良く分からないと思う、自分だって良く分からないから。



57:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 21:29:30.02 ID:aOvnGawE0
  
(´∀`)「オマエさ、何が楽しくて学校来てんの?」

( ^ω^)「……」

(´∀`)「何か言えよ」

そう言ってすぐに殴られる。
ビンタがその時は流行っていた、すぐにビンタされた。

( ^ω^)「僕は――」

(´∀`)「キメェよwww」

またビンタを受けた。
人は諦めてしまうと心も精神的にも弱くなる。
この時期はすぐに泣いていた。
泣けば止めてくれるんじゃないかって期待していたんだ。
それに泣いていれば何も言わなくてもいいから。



58:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 21:30:24.62 ID:aOvnGawE0
  
(´∀`)「オマエさ、なんで生きてるの?」

(゚ε゚ )「臭せぇ」

( ;ω;)「……」

(´∀`)「何とか言えよボケ」

その後はビンタの連続だ。

(´∀`)「何か言うまで止めねーぞ?」

( ;ω;)「ぼk――」

(´∀`)「はいキモイー」

言葉を発すると同時に殴られた。
結局何をやっても殴られるんだ、このバカ野郎が。

きっと将来こいつたちは自分の思い通りにならず怒ってばかりで、一生下っ端だろう。
自分は耐える事を知っている、こいつらの上に立ってこき使ってやる。

ここで死んでやる、遺書を残して虐めが原因で死んでやる。
きっとこいつらの人生はグチャグチャになるだろう、いい気味だ。

虐められている時はこんな事ばかり考えていた。
同時に、いつか殺してやると。



59:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 21:31:37.83 ID:aOvnGawE0
  
お金も毎回取られていた。
おこずかいの日を言ってしまったときから、その日には決まって絡まれた。

そしてお金を取ると同時に殴られるんだ。
お金を渡すまで殴られて、渡してからも殴られて、渡さないともっと殴られて……
ホント自分はなんで生きてるんだろう?

お金がなくなると、次は万引きをさせられた。
初めの頃はお菓子だったが、次第に本や玩具を万引きさせられるようになった。

店員に見つかって、カーチャンと一緒に担任に呼ばれた。
カーチャンはずっと謝っていた。
そんな自分の言い訳はこうだった。

「おこずかいが少なくて、皆と満足に遊べない」

担任は自分が虐められているからお金を恐喝されていることに気付いていただろう。
だからこそ、自分の言ったことを鵜呑みにするしかなかった。
カーチャンに向かって何か色々と言っていた。

次の月から、おこずかいが千円上がった。

それが嬉しくて、今度は自分からストレス発散のために万引きしてもう一回おこずかいをアップしてもらった。
言い訳は全部「おこずかいが足りない」で済ませた。



60:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 21:32:40.83 ID:aOvnGawE0
  
この頃から家の財政はかなり厳しかったのだろう。
家族でどこにも出かけなくなったし、カーチャンは買い物でしか外に出なくなって内職を始めた。
他の家の人達との関係は断たれて、カーチャンは常に家で一人内職ばかりをしていた。

服なんてずっと一緒だった、僕のためにしかお金を使っていなかったのだろう、今からでもそれを思いだせる。

そして……自分を高校に出すための貯金が必要だったのだろう。


カーチャンは母子家庭だけど、周りに負けないように自分には最大限お金を投資してくれた。
そして母子家庭だからと言われたくなかったらしく、僕を大学まで行かせる気でいた。

それが父親を失ったカーチャンの唯一の望だったのだ。

当然自分はそんな事を知る由もなく、家では内弁慶で振舞っていた。
カーチャンが何か文句言うたび気丈に振舞って相手を萎縮させていた。
恐怖政治にも似ていたかもしれない、それでもカーチャンは僕のためにだけお金を投資してくれた。



62:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 21:34:02.91 ID:aOvnGawE0
  
(*ノωノ)「あぷー、結局2件だけでしたね……」

( ^ω^)「いやいや、2件もらえたらいいほうだお」

風羽さんと20件程度回った結果、いい返事をもらえたのは2件だけだった。
だが、実際それでもいいほうだ。
ジョルジュさんに報告とこれから帰る知らせのため電話をする。

( ゚∀゚)『内藤、どうだった?』

( ^ω^)「とりあえず全部回りまして、2件取れましたお。
   考えさせてくれっていうのが10件ありましたので、また帰ったら知らせますお」

( ゚∀゚)『おー2件取れたか、了解。気をつけて帰って来いよ』

( ^ω^)「はいですお」

ジョルジュさんに連絡を済ませると、風羽さんと一緒に帰りの電車に乗る。
丁度いい電車があった、来る時は乗換えが2度あったが今回は1度で済みそうだ。

あまり待つ事無く電車がきた。



63:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 21:34:54.04 ID:aOvnGawE0
  
帰りの電車に乗る頃には陽も落ちてきた。
残業代がちゃんと出るのだろうかと心配になりながらも電車に乗る。
風羽さんと隣同士座りながらも会話は無かった、互いに疲れたのだろう。

  『お出口は左側になります〜』

( ^ω^)「うるさいお」

寝ようと思っても車内放送が響いて目が覚まされた。
隣の風羽さんは寝ているが、車内放送の所為で寝苦しそうだ。

(*ノωノ)「……ぅん……」


(*ノωノ) ( ^ω^)


ミ(*ノωノ)(;^ω^)



64:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 21:35:41.16 ID:aOvnGawE0
  
相当疲れているのだろう、自分にもたれかかって来た。
やましい気持ちどころか恥ずかしい気持ちでいっぱいだ、
肩を動かしてみるが相手が起きる様子はない。

……いいか。

疲れた相手を起こすのは酷なことか。
普通なら喜べる場面だというのに、まったくチキンな人間だ。

むしろ相手を起こさないように、揺れたりしないよう細心の注意を払った。


  ガタン...ガタン...


(*ノωノ)「……」

( ^ω^)「……」


こう動かずにいると自分は植物のようだ。
そんな事を考えたらまたあの中学時代が頭に過った。



66:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 21:37:24.80 ID:aOvnGawE0
  
中学時代、丁度ツンと同じクラスになれた中学二年生のとき、自分たちは文化祭で演劇をすることになった。

当時も例に漏れること無かった自分は勝手に木の役をさせられた。
実際木の役なんて必要ない、ただ自分を笑いものにしたく恥をかかせたかっただけなのだ。
当然断る勇気もなく進んで木の役をやったが。

木の役というのは実にまぬけだ。
手に本当の木の枝を持って、ただ立っているだけだ。
もっともそれを邪魔する者は存在したが。

( ^Д^)「オイコラ、そこは俺が歩くんだからデブがいると邪魔だって!」

(;^ω^)「ご、ごめんなさいお……」

蹴られながらその場所を退くと、今度は他の者がちょっかいを出したがる。

(、ン、)「木が動くなって言ってんだろ!」

殴られた。
それで動いたとまた殴られ蹴られ……その場に倒れた。
後は蹴られ放題だ、しばらく経つと飽きたのかようやく止める。

(、ン、)「おい、練習するんだから早く立てよデブ」

( ^Д^)「超とんまだなコイツ、プギャー」

言われながら立ったら、また意味もなく殴られた。
僕の所為で劇の練習は思うように進まないといわれた。

どうしろと言いたいんだ、バカかこいつらは。



67:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 21:38:50.16 ID:aOvnGawE0
  
演劇はかぐや姫だった。
木の役、厳密には竹の役だ。
竹と言っても切られるような意味のある竹じゃない、当然切られるマネをしてホウキで叩かれたりはしたが。

竹の役、まったく意味もなく常に劇の場面にいるため地味に全編出演だ。
その間に少しでも動けば殴られて劇の練習が中断した、そういう意味でも動けなかった。

そんな竹の役は、逆に言うと演劇を最も間近で見れるポジションでもあった。

ξ゚听)ξ「お爺様、月から明日、迎えが参ります」

そのかぐや姫役は可愛いと人気のあったツンだった。
その演劇は素晴らしかった。


自分は植物だ。
動いてはいけない、ただ眺めるだけなんだ。
何も喋ってはいけない、ただ眺めるだけなんだ。


遠い存在、人気者は手を伸ばしても届かない所にいる存在だ。

そこには人間と植物という天地の差が存在した。



68:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 21:40:07.68 ID:aOvnGawE0
  
( ^Д^)「おいブーン、とっとと片付けろよデブ」

(;^ω^)「すぐに片付けるお」

劇の練習が終わると使った道具の片付けは自分にまかされる。
着る物にシワがついていたら自分のせいだ、殴られる。

シワなんか気にしないくせに、何でもいいから殴る理由がつけたいだけなんだ。
バカで反吐が出るほど腐ったつまらない人間だ。

(;^ω^)「……」

そう思うだけ、実際はへこへこと衣服を畳んでいる自分がいる。
綺麗に畳もうと努力していると、その隣に偶然ツンが来たんだ。
彼女も自分の衣服を隣で畳んでいた。

ξ゚听)ξ「あー、疲れた。どれだけ練習するのかしらね」

自分は何も答えなかった、自分に話しかけてくれているわけないと思ったから。
実際それは独り言のような言い方だったし。

ξ゚听)ξ「アンタも大変ね、ずっと立ちっぱなしでしょ?」

(;^ω^)「あ……まぁ疲れるお」

今度は確かに自分に話しかけてくれていた。
驚きながらもこれくらい普通か、クラスの人気者だから自分に話しかけてくれているんだと思った。



69:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 21:41:16.12 ID:aOvnGawE0
  
ξ゚听)ξ「本当月からの使者役がいいわね、最後だけだし。
   ずっと出ているって大変よねー」

(;^ω^)「でも大切な役だお、誰かはやらなきゃいけないんだお。
   僕の役は必要ないけど……ツンさんの役は一番大切なんだお」

別に自分は必要のない役だ、それでも……ツンは必要な役なんだ。

ツンはそれを聞くと、黙り込んだ。
そして服を畳み終えると、カゴにそれを戻して帰り際にこう言った。

ξ゚听)ξ「ま、植物でも何でもいいわよ。
   長いけど……最後まで一緒に頑張りましょ」

(;^ω^)「……」

そんな嬉しい言葉を掛けてもらえると思ってもいなくて呆気にとられた。
そして呆然としているだけで、自分は何も返せなかった。
「うん」と言うだけでいいのに……情けない、
虐められた人間はそれだけを言うのにも勇気を必要としてしまうのだ。


結局同じクラスだというのにツンと話したのはこれだけだった。
だからこそその言葉はすごく胸に刻まれていたが。



70:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 21:42:08.52 ID:aOvnGawE0
  
( ^ω^)「風羽さん、次の駅ですお」

(*ノωノ)「……ぅん……。あ、すみません寝ていたみたいで……」

( ^ω^)「全然いいお、自分みたいな枕でよければ」

(*ノωノ)「そんな……あぷー……」

二人で会社に帰ると、ジョルジュさんに軽く挨拶してそのまま帰宅した。
いつも通り風羽さんを家に送ると、缶コーヒーをもらってツンのいる病院まで車を走らせる。

  〜〜♪ 〜〜♪

( ^ω^)「電話かお?」

運転しながらだが気にせずに携帯をとった。

( ^ω^)「もしもし?」

('A`) 「内藤、元気か? 久しぶりだな」

電話の相手は毒男(どくお)だった。
確かに久しぶりだ、ここ数週間会っていなかった。

高校時代の大切な、そして最も心を許しあえる親友だ。



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