( ^ω^)ブーンが植物の世話をしているようです
- 152:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 23:33:27.69 ID:aOvnGawE0
- 『社会人〜これまで2』
その日ツンに呼ばれたところは、町にあるしがないバーだった。
(`・ω・´)「やぁ、バーボンハウスへようこそ」
なんだか見たことあるような人がいたけどさておいて。
ツンはカウンターの一番端に座っていた。
いい雰囲気のお店だ。
薄暗く、人はいるが静かでとても落ち着いている。
(;^ω^)「待たせたお」
そう言って隣に座った。
空気は重かった、こちらに目を向ける事無くツンはひたすらに水色の液体を飲んだ。
(`・ω・´)「じゃあ、注文を聞こうか」
(;^ω^)「あ、アルコールは苦手なんで水と、軽く食べれるものが欲しいお」
(`・ω・´)「アルコール無しかい? まぁいいよ、ゆっくりしていってくれ」
そしてバーの店員さん(バーテンダー?)が消えると、再び二人を思い空気が包んだ。
こんな所は初めてで、緊張した。
ただでさえビクビクしていたというのに。
- 153:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 23:34:52.97 ID:aOvnGawE0
- ξ゚听)ξ「……」
ツンは相変わらず無言でグラスの液体をちょびちょびと口に運んでいた。
しぶしぶ自分から切り出す。
( ^ω^)「……用っていうのは何だお?」
ξ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「……」
(`・ω・´)「ほいよ、ちょっとサービスしといたからそっちの綺麗な姉ちゃんと一緒に食べな」
(;^ω^)「あ、ありがとうですお」
その人が再びどこかへ行くと、出された塩豆のカリッという音だけが響いた。
ξ--)ξ「……あんたさ」
(;^ω^)「おっ、何かお?」
ξ--)ξ「何で私を避けるの?」
(;^ω^)「……」
- 155:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 23:36:47.09 ID:aOvnGawE0
- 突然本題を突きつけられてドキッとした。
この時は何でそれに気付いたのだろうって不思議に思うばかりで。
ただ無言で時が経つのを待つしかなかった。
ξ--)ξ「……」
それでも相手は話しかけてこない。
(;^ω^)「……ゴメンお」
ξ--)ξ「何で私を避けるかってきいてるの」
(;^ω^)「……」
まさか本当の事を言うしかないのだろうか?
でもこの時に初めて気付いた、相手は自分の過去を周りに言いふらすつもりなんてないという事に。
謝らないといけない、そのためには本当の事を話すしかない。
意を決して話そうとする。
(;^ω^)「それは……大きな理由があって……。別に信用してないとかじゃなくて、その……」
ああ情けない、全然言えないじゃないか。
でも言うまでこの話は終わらないんだ、頑張らなくては。
そして謝らなくては。
(;^ω^)「ちょっとだけ、頭の中を整理させて欲しいお」
ξ--)ξ「うん……」
- 156:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 23:38:00.87 ID:aOvnGawE0
- それからしばらくは互いに無言だった。
自分はどう話しようかばかり考えて、合図もせずに少しづつ語り出した。
(;^ω^)「……僕はツンが怖かったお」
ξ--)ξ「……! ……続けて」
(;^ω^)「僕はツンが知っての通り、小中と虐められてきたお。
でも高校ではいい友達とめぐり合えて、この会社に入って昔と違う自分を作れたお。
正直明るくなれたと自分でも思うし、楽しかったお」
ξ--)ξ「……」
(;^ω^)「……でも、ツンが現れて……正直言うと、皆に昔の事を言うんじゃないかってビクビクしてたお。
だから、出来る限りツンの気を立てないように振舞ったし……なによりツンと一緒にいると怖かったお」
なんだか話したら思ったよりも簡潔になってしまった。
こんな説明で自分がどれだけ怖かったかなんて伝わらないんじゃないか?
逆に怒らせて昔の事を言いふらされるんじゃないか?
(;^ω^)「だ、だからその事を謝りた――」
ξ--)ξ「……もういいわよ」
ツンは静かにそう言った。
- 157:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 23:39:09.14 ID:aOvnGawE0
- ξ--)ξ「もういいわ、本気ムカついた」
(;^ω^)「いや、だからそれを謝りたいんだお!」
ξ#--)ξ「だからそうじゃ無いって言うのよ! バカにしないで!」
ツンは大声で言って、バー全体を黙らせた。
飲みかけの青い液体を自分に向かってかけた、当然の制裁だ。
薬品のようなツンとした臭いが鼻を突いた。
ドラマのような光景だ、実際はドラマよりもよっぽど惨めな状態だった。
他の客も唖然としている。
ξ#--)ξ「アンタが色々と私に気を使ってくれて嬉しく思ったり、楽しく思ったり……
すごく私は感謝したのに、アンタは私にただ脅えてご機嫌取りしていただけなのね。
よーく分かったわ、バカにしないで!」
(;^ω^)「おっ、それは……その」
ツンは嬉しがってくれていたんだ、楽しがっていたんだ。
そして自分に感謝してくれていたんだ。
最悪な裏切り方をしたんだ、自分は。
だからツンはこんなに怒っているんだ。
ツンが昔の事を言いふらすと思っていたから、その事を謝る?
バカな、もっと謝るべき事がここにあったのに。
それを謝っているようでは挑発にしかならない。
- 158:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 23:41:36.68 ID:aOvnGawE0
- ξ#--)ξ「私嬉しかったのに、すっごく嬉しかったのにさ!
アンタのこと好きだったのに、あんたは私を恐れていたんだね。
本当バカみたい、こんなにバカにされるなんて!」
(;^ω^)「ツン、その……」
ただの比喩表現かもしれないが、生まれて初めてされた告白は過去形だった。
……嬉しさよりも困惑しかなかった。
そう、今まで彼女を恐怖の対象としてしか見てなかったのだ。
女性として見ていない自分にとって、その告白はただ混乱を招いただけで嬉しいとかそういう物じゃなかった。
(;^ω^)「……ゴメンだお、本当に何回言っても足りないくらい……ゴメンだお。
ツンは昔から人気あったし、自分なんかはただのいじめられっ子だったし……」
何が言いたいんだ自分は。
しどろもどろしながら、言い訳にならない言葉ばかりを並べた。
(;^ω^)「演劇だって僕は植物、ツンは主役で動き回って……
植物と人間では済む所が違いすぎたんだお、そんな存在だったんだお……」
本当に自分は何が言いたいんだ?
相手の気でもおだてようとしているのだとうか?
ξ--)ξ「……あんたさ、私が虐められてたことなんて知らないでしょ?」
- 160:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 23:47:17.63 ID:aOvnGawE0
- (;^ω^)「……お? お、あ、ツンは主役してたし……おお?」
ツンが虐められていた?
そんなバカな、聞いた事もないし考えられない。
ξ--)ξ「女の虐めってのは男子みたいなわざとらしいのじゃないわよ。
無視とか、省きとか……演劇で主役やれたからって調子に乗るなってね。
主役を嫌々やっていたのが相当気に入らなかったみたい」
(;^ω^)「……。ツ――」
ξ--)ξ「だから私も初めてアンタに会った時は正直怖かったの。
私が昔いじめられていた事を言うんじゃ無いかって……」
ツンは落ち着いた様子でどんどんと語っていく。
自分はその事実に口を開く事しか出来なかった。
ξ--)ξ「虐められて、ブーンの辛さが分かったと同時、すごく憧れたわ。
私は虐めに対して暗く振舞う事しか出来なかったのに、ブーンは次には頑張って笑顔を作っているから……」
ξ;凵G)ξ「だからブーンは昔の自分をもう乗り越えていて、
虐められていた頃に見て見ぬ振りした私に復讐するんじゃないかって。
私がいじめられていた事言うんじゃ無いかって」
ξT儺)ξ「なのに……なのにブーンは私に気を使ってくれて、優しくしてくれて……
まるで心配しなくてもいいよって言ってくれているみたいで……」
ただ聞く事しか出来なかった。
自分がどれだけひどい事をしたかが明らかになって……頷く事さえできなかった。
- 161:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 23:48:09.88 ID:aOvnGawE0
- ξT儺)ξ「……ブーン」
(;^ω^)「……」
ξT儺)ξ「私が、私がアンタに無視されたとき……どんな気持ちになったか分かる?」
(;^ω^)「……!」
ずっと無視されて、虐め続けられて……
そんな過去を自分が知らず知らずの内に忘れさせてあげれていたんだ。
なのに、その自分が無視をした。
同じ事をした、彼女を虐めた。
自分が 彼女を 虐めた
ξT儺)ξ「バカァッ!!」
(;^ω^)「ツンッ!」
叫んで出て行くツンに声を出すも、足が動かない。
そんな自分の前に、バーのおじさんが姿を見せた。
(`・ω・´)「今日はサービスだ、彼女を追いなさい」
ドラマみたいなバカな台詞を吐く店員に感謝して、ツンを追いかけた。
- 162:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 23:49:17.71 ID:aOvnGawE0
- ここで見失ったら本当のバカだ、そう思いながらバーから出る。
(;^ω^)「どこ、どこっ……!」
気持ちばかりが焦る、ここで見失ったら絶対に終わりだ。
そんな自分の目に、遠ざかるツンの姿はしっかりと映った。
姿が見えるなら大丈夫だ、自分は全力で追いかけた。
見る見る近づく距離、そしてツンの手を取った。
(;^ω^)「ツン、待つお!」
ξ;凵G)ξ「いや、離して!」
(;^ω^)「聞いて欲しいお!」
ξ;凵G)ξ「ヤダ、もうヤダ!」
構うものか、自分は勝手に話し出した。
( ^ω^)「僕は……全然ツンのことを知らなかったお、それで本当にバカで失礼な事をしてしまったお。
それをちゃんと謝りたいお」
ξ;凵G)ξ「知らない、アンタのことなんて知らない!」
( ^ω^)「今日、ツンが実は自分と似ていた事を初めて知ったお。
すごく申し訳ないお、そして……もう二度とツンを苦しめたくないお。
だからツンをもっと知りたいお!」
- 163:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 23:49:52.58 ID:aOvnGawE0
- ξ;凵G)ξ「もう止めてよ、聞きたくないわよ!」
( ^ω^)「僕は植物でツンは人間だったお、でもそこに何も差なんて無かったんだお!」
そして声を張り上げて自分は言った。
( ^ω^)「ツン、好きだお!」
それが、僕とツンの始まりだった。
- 164:◆7at37OTfY6 :2006/07/22(土) 23:50:22.13 ID:aOvnGawE0
- 相変わらず映画館の画面には美男美女が映っていた。
あくびが出そうだった、しかしこの緊迫した状況ではとてもではないが……しぶしぶ噛み締めた。
( ^ω^)(自分たちだって負けないくらいドラマティックだお)
そんな皮肉な事を考えていたらツンとの事を思い出していた。
残念なのは美男美女でなく、美女と野獣の方がお似合いな点くらいか。
『僕は植物でツンは人間だったお、でもそこに何も差なんて無かったんだお!』
人間と植物の差か……。
隣を見た。
(*ノωノ)
風羽さんは泣いていた。
こんな映画で泣けるなんて……と思いつつ心が動いたのは内緒だ。
自分は画面でなく、そんな可愛い風羽さんを見ていた。
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