( ^ω^)ブーンが植物の世話をしているようです
- 209:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 00:34:05.21 ID:xtICE8uZ0
- 『社会人〜これまで4』
それから僕は有給を使いきるまで仕事を休んだ。
誰とも会いたくなくて、広い新居に一人でいた。
コンコン
('A`) 「いるんだろ、内藤。入るぞ」
それでも毒男は2〜3日に一回の割合で自分のところに顔を出してくれた。
正直彼がいなければ自分はどうなっていたか保障はない。
そしてまた彼も責任を感じていたのだろう。
('A`) 「ほら、メシ買ってきてやったぞ」
( ´ω`)「……毒男」
('A`) 「ん?」
( ´ω`)「……ありがとうだお」
('A`) 「……ああ」
そして一緒にコンビニの弁当をがっついた。
- 210:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 00:35:03.81 ID:xtICE8uZ0
- あれからツンは植物状態となった。
一命は取り留めた、そして元に戻る可能性はほぼ0%だと告げられた。
ほぼだ、決して0ではないんだ。
それだけが自分の支えだった。
ツンのお父さんお母さんとも話した。
自分は悪くないと言ってくれた、嬉しくて涙した。
あとは自分に任せるとも言ってくれた。
そう、安楽死を選ぶかこのままずっと生かされ続けるか。
死んでいない彼女を自分が殺せるわけなかった。
- 211:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 00:36:29.37 ID:xtICE8uZ0
- カーチャンはとうとう施設送りになった。
ツンがいなくなったので当然だろう、自分がどれだけ反対しようと無駄だった。
せめてもの救いが、その施設の人がとてもいい人だったことだ。
もっともあの事件以来まだカーチャンと一度しか会っていないのだが。
J( 'ー`)し「……あのね、言いたいことは分かるわ。でも……それで幸せなの?」
ツンの事を話した。
そして自分はいつまででも待つと言ったらそう言われた。
そういう事か、つまり彼女を捨てろと言いたいのか。
カーチャンの信頼が一気になくなった。
毒男にもそれと同じ事を言われたんだ。
カーチャンにだけは分かって欲しかった……のに。
自分は間違っていないと言って欲しかったのに。
- 212:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 00:38:37.62 ID:xtICE8uZ0
- それから自分は体に鞭打って会社に出勤し始める。
しばらくは何も思い通りに出来なかった。
休んでいる内の自分の仕事は知らない間に片付いていたし、自分が不調でやりきれない仕事も皆が手伝ってくれた。
ツンと僕の穴を皆が埋めてくれたんだ。
お陰でその時受け持っていた某会社のPRイベントはいくつかの欠点を指摘されたものの、大きな滞りもなく終了した。
それから自分は少しずつ元気を出した、しょぼくれていても仕方がないと。
そして周りの皆が支えてくれた事が大きかった。
時間が解決してくれる事もある、ただ……それはツンへの思いが小さくなったんじゃないかと心配にもなったが。
違う、それは自分が自分にしか言い聞かせられない部分だ。
- 214名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日: 2006/07/23(日) 00:39:48.92 ID:xtICE8uZ0
- ただ、自分は周りの皆がツンの事を諦めろというのだけが分からなかった。
何故?
どうして?
生きているのに……それを殺せというほうが道徳的にもおかしいに決まっているじゃないか!
ツンの入院費とカーチャンの施設量を払いながら、自分は二人の所に通いながら仕事に精を出した。
いつ起き上がるか分からない彼女のために。
いつか行う彼女との結婚式のために。
そして、いつか生まれる子供の教育費のために。
カーチャンも毒男も、遂にはツンの両親まで……ツンを諦めろと言った。
そして自分はずっとそれを跳ね除けて、今まで生きて来たんだ。
- 216:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 00:40:38.86 ID:xtICE8uZ0
- 外はもうすっかり暗くなっていた。
風羽さんとカラオケをして、その後結局夕食も一緒にした。
少し遅れ気味の夕食、話しこんでいたら時間は21時を回っていた。
外は暗く、車通りも少なかった。
行きに通ってきた海沿いの道は、きらびやかなホテルばかりが目立っていた。
そんな道を走っていた。
(*ノωノ)「もう……真っ暗ですね」
( ^ω^)「ゴメンだお、帰り遅くなっちゃったお」
(*ノωノ)「気にしなくてもいいですよ、全然。
こちらこそこんな夜までお付き合いありがとうございます」
ラジオからは良く分からない漫才が流れていて、不快だったのでチャンネルを変えた。
クラシックが流れてきてそこで止めた。
うん、いい雰囲気だ。
- 218:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 00:41:31.56 ID:xtICE8uZ0
- 仕事での彼女は真面目で、自分とは上司と部下の関係だ。
可愛いとか思う事はあっても、今日はそれとはまた別の感情があった。
(*ノωノ)「……ふぅ」
( ^ω^)「疲れたのかお?」
(*ノωノ)「あはは、ちょっと眠いです」
( ^ω^)「寝ててもいいお」
「眠い」か……期待してしまうじゃないか。
そんなつもりで言ったのでないだろうし、自分もそんな事するつもりはない。
それでも……こんなホテルの並ぶ通りで言われては、期待してしまうじゃないか。
( ^ω^)(邪なのは自分だお、風羽さんはそんな人じゃないお)
隣を見ると、笑顔で前を見る彼女がいた。
こちらに気付いて顔を向けると、笑って恥ずかしそうにした。
(*ノωノ)「あぷー……なんだか照れます」
可愛かった。
- 221:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 00:43:19.39 ID:xtICE8uZ0
- ( ^ω^)「ちょっとコンビニ寄ってもいいかお?」
(*ノωノ)「あ、はい」
別に何が買いたかったわけでない、ただ……ただ、何となくだ。
……。
正直言うならこのまま風羽さんと別れたくなかったのだが。
仕事では一度も下心なんて見せた事ない。
そもそもそんな事考えない。
いままで彼女と何回か飲みにも行っている、それでもこんな想いを抱いたことはない。
どうしてしまったのだろう自分は。
毒男との約束も放り出して……こんな所で何やろうというんだろう?
コーヒーを買うと、駐車場に止めた車の中で二人で飲んだ。
(*ノωノ)「内藤先輩」
( ^ω^)「なんだお?」
(*ノωノ)「彼女の……ツンさんはまだ……ですか?」
( ^ω^)「残念ながらまだだお」
ツンと彼女に面識はない、ただ飲んだ時に話はした。
でも……こんな事を聞いてこられて少なからず驚いた。
- 223:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 00:44:26.48 ID:xtICE8uZ0
- ('A`) 『内藤、辛いと思うけど……認めろよ。
彼女はもうずっと植物状態なんだ、無理なんだ。
ツンが今のオマエを見て喜ぶと思うか?』
J( 'ー`)し『アナタがツンちゃんを愛している事は誰よりも私が良く知っているわ。
だから、私がちゃんと分かってあげられるから……もう縛り付けられてほしくないの。
子供には幸せになって欲しいと思うのが親よ』
ツンパパ『内藤さん、本当に……娘に優しくしてもらってありがとうございます。
小さい頃からあの子は虐められていて……離れてしまってからはもう私たちは何も出来ませんでした。
そんな中、アナタに支えてもらったのだと思います』
ツンママ『とても感謝していますし、あなたがいい人だというのは良く分かっています。
だから……これ以上私達の娘につながれなくてもいいです。
誰も責任なんて言いません、アナタには……幸せになってもらいたい、あの娘の代わりまで』
『あの子はもう植物なんだ』
『もう、これ以上お世話しなくてもいいよ』
- 224:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 00:45:33.42 ID:xtICE8uZ0
- 冷たいコーヒーは微糖、熱いコーヒーはブラックでが僕のこだわりだった。
そして風羽さんが毎日くれるコーヒーは、冷たい微糖だ。
今まで何となく飲んできた缶コーヒー、気付けば無意識に風羽さんがくれる物と同じ銘柄ばかり買っていた。
涼しくて夜は気持ちいい。
( ^ω^)(いやな事思い出したお……)
最近はよく昔の事を思い出す。
( ^ω^)「どうしたんだお、突然?」
(*ノωノ)「いえ、別にそんな深い意味は……ごめんなさい、余計なお世話でした」
( ^ω^)「全然気にしなくてもいいお」
別に嫌じゃない、ツンの話題を出されて……残念だったとか、そんな感情は無い。
ただ……このひと時が居心地良くて、楽しくて……。
……忘れたかったのだ。
……今だけでいいから。
- 225:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 00:46:16.43 ID:xtICE8uZ0
- ( ^ω^)「……ふぅ」
(*ノωノ)「あ、あの……本当ごめんなさいです!」
(;^ω^)「いや、いいおいいお全然気にしなくても」
ふいにでたため息を気にして、風羽さんは心配そうに自分に声をかける。
泣きそうな顔だった。
( ^ω^)「……風羽さん」
(*ノωノ)「……はい」
( ^ω^)「ツンが……僕の彼女が植物状態なのは知っているお?」
(*ノωノ)「……はい、知っています。
毎日私を送ってくれた後に行っている事も知っています」
( ^ω^)「……」
この時はもうちょっと苦いコーヒーが飲みたくなった。
心にまで効くほどの、ブラック以上に苦いコーヒーが。
何を考えているんだか。
- 227:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 00:47:06.76 ID:xtICE8uZ0
- ( ^ω^)「皆に否定されるお、もう止めておけって……」
自分は何を話し出すんだ?
何を話しているのか分かっているのか?
相手は困るだろう、それとも同情をかいたいのか?
( ^ω^)「やっぱり……馬鹿なのかお?」
何を聞いているんだ。
何を聞いたんだ。
何を考えているんだ。
(*ノωノ)「……私、家で花を育てているんですよ。
カトレアって言って、とても育てるのが難しい花なんですよ?
でもとても綺麗なんです、見ているだけで嬉しくなってくるんです」
( ^ω^)「……」
(*ノωノ)「なんていうか、水あげながら話しかけたりとかしているんです。
『綺麗な花咲かせてね』とか、『早く大きくなれよ〜』って。
傍から見たらおかしな事だと思うんですよ」
ツンは植物じゃない、そう口を挟もうとしたけどどこかで彼女を信じている自分がいた。
黙って耳を傾けた。
- 229:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 00:48:07.43 ID:xtICE8uZ0
- (*ノωノ)「でも私はその時が落ち着いて、すごく好きなんです。
私は羨ましいですね、内藤先輩にそれだけ愛してもらえるツンさんが」
( ^ω^)「……そうだお、すごく落ち着くんだお。
それで……楽しいお、いつかきっと起きてくれるんじゃないかって。
いつも話しているお、それだけで楽しいお」
そうだ、忘れるな。
自分は楽しんで、好き好んでしているんだ。
周りが何と言おうと関係ない、自分は好きでやっているんだから。
( ^ω^)「その日何があったか話するお!
ちょっと親父ギャグも言ったりするお、やっぱり笑ってくれないお!
楽しかった事苦しかった事何でも話するお、反応してくれなくても話し続けるお!」
(*ノωノ)「え……と、先輩……?」
( ;ω;)「好きだとか愛しているかとか何度もいうお、反応くれなくても言うお!
怒ってもらいたくて余計な事も言ったりするお、でもやっぱり無視されちゃうんだお!
それで、それで……」
(*ノωノ)「もういいですよ先輩ッ!」
風羽さんは慌てて、助手席から運転席にいる自分の口を蓋した。
そのまま抱きつくような形になった。
- 230:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 00:49:05.28 ID:xtICE8uZ0
- (*ノωノ)「ごめんなさい、もう止めて下さい先輩、分かりましたから、分かりましたからっ!」
( ;ω;)「うう……」
抱きついたような形でしばらく停止していた。
時間だけが経つ。
ダメだ自分から話し出さないとこの無言は続くだろう……でも高ぶった感情、人前で流した久しぶりの涙。
もう我慢できなかった。
( ;ω;)「本当は辛いお、誰かに助けて欲しいお、皆否定ばかりで……
自分のやってる事がもう何かわかんないお!」
(*ノωノ)「先輩……」
人前で流した久しぶりの涙。
ツンの前では何度と流した涙、辛かった悲しみの涙。
人前で流した久しぶりの涙。
(*ノωノ)「私が……ツンさんの代わりになれませんか?
なりたいです、内藤先輩を……支えたいです。
これ以上苦しまないで欲しいです……」
- 231:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 00:49:33.94 ID:xtICE8uZ0
- そのまま車は道路近くにあるホテルへと入って行った。
電話が鳴っていた、そんなもの無視した。
この日、内藤は生まれて初めての性行為となった。
『ツン、ゴメンだお。また明日も絶対に来るから、その時に沢山話したいお』
前日の約束は守られなかった。
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