( ^ω^)ブーンが植物の世話をしているようです

261:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 01:17:07.77 ID:xtICE8uZ0
  
『社会人〜これから』


次の日、起きると当然そこはホテルだった。
朝の5時、随分な時間に起きたものだ。

(*ノωノ)

隣に寝る風羽さんを見て、激しい後悔に襲われた。


どうして、何故やってしまったのか?


バカみたいだった、一時の感情に任せて……何を考えているのか?

とりあえず起きてシャワーを浴びる事にした。



263:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 01:18:25.94 ID:xtICE8uZ0
  
シャワーから出ると、風羽さんも起きたようだった。
恥ずかしそうに布団に包まっている姿にドキッとした。

(*ノωノ)「あの……えと、私もシャワー浴びていいですか……?」

(;^ω^)「いえ、え……好きにすればいいと思うお」

(*ノωノ)「あぷー、じゃあ行くからその……見ないで欲しいです……」

(;^ω^)「あ、ゴメンだお!」

自分が反対方向を向いていると、その隙に風羽さんはトテトテとシャワールームに走って行った。
チラと見たら可愛いお尻が見えた。

そしてまた少し自己嫌悪、ため息をついた。

( ´ω`)「……ダメダメだお」

とりあえず風羽さんは実家から出社しているんだ、家に帰らなければいけない。
昨晩電話で女友達の家に泊まると連絡を入れておいてもらった事だし、もうちょっと経ったら家に送っていこうか。
朝帰りだが会社に行く前に寄らなければいけない手前、さすがに大丈夫だろう。



265:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 01:19:38.79 ID:xtICE8uZ0
  
二人とも無言でしばらく居て、7時になろうかという時にそのホテルを出た。
朝の太陽が眩しい中、快調に車をとばす。

(*ノωノ)「……」

(;^ω^)「……その、風羽さん」

とりあえず出社前に言っておかないといけないことがあった。
決して自分は軽い気持ちで昨晩過ごしたわけでない、彼女の心を弄んだ訳でもないと。
ただ……まだ考えさせて欲しいと。

(*ノωノ)「はい?」

(;^ω^)「……その、昨晩の事は……なんて言うかお、事後だけど、その……」

(*ノωノ)「あぷー、安心して下さいよ内藤先輩、分かってます。
   内藤先輩がどれだけツンさんを好きなのかはしっかりと分かっていますから。
   でも私、内藤先輩の事は本当に好きですから、ツンさんに負けないくらい」

(;^ω^)「……あ、おっおっ……おお」

卑怯とか最悪とか言われる事を覚悟していたのに……本当にこの子はいい子だ。
一緒に居るだけですごく幸せな気分になる。

きっと、自分はこの子の事が本当に好きなんだろうな。


彼女の家に着くと、名残惜しく別れた。
いつも通りコーヒーをもらって。



267:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 01:20:52.83 ID:xtICE8uZ0
  
コーヒーを飲みながら朝の会社に車を戻すと、ようやく一息ついた。

( ´ω`)「何やってんだお自分……」

あれだけ誰に何を言われても、絶対にツンを裏切らないと頑張って貫いてきたのに。
あんなに頑張ってきたのに……とうとう裏切ってしまったのだ。

まだ朝早く、出社する人影は無かった。

ゆっくりとポケットに入った携帯を見ると着信があった。
毒男だろうか?
そういえば昨晩のことばかりどうしようか悩んでいて、携帯自体放ったらかしだった。

昨晩は……携帯を放ったらかして性行為を行っていたのだ。
相手は処女だった、それでも……勝手な自分を許してくれた。

( ´ω`)「……はぁ」

改めてため息が出た。
そして携帯の着信履歴を見て驚いた。


それは、カーチャンのいる施設の人からだった。



268:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 01:22:02.55 ID:xtICE8uZ0
  
留守番メッセージの内容はこうだ。
カーチャンの容態があまりに悪化して息も絶え絶えだ、だからすぐに来て欲しい。
それが一番目のメッセージ。

二番目には、ただひたすらに早くしろと、電話をかけ返せと。

三番目は独断で、勝手だが母親を病院に送ったという事。
気付いたら夜中でもいいからこれから言う病院に来て欲しいという事。
そしてその後に病院名。

四番目にはただ力無く、「早く……」というメッセージが残されていた。


すぐに自分は病院に向かった。

バカだ、バカだ、大馬鹿者だ。
自分を裏切って、ツンを裏切って、カーチャンを裏切って……もう大馬鹿者だ。

(;゚ω゚)「ふおおおおおおッ!」

朝の少ない自動車の間を、狂ったように飛ばした。
何事も無かってくれ、無事でいてくれ……そればかりを願って。



273:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 01:23:22.24 ID:xtICE8uZ0
  
<;`∀´>「何してるニダ、お母さんが……!」

病院に着いて言われたとおりの病室に飛び込むと、そこには施設管理者の丹田(にだ)さんがいた。
一日中着いていてくれたのだろう、自分がいなかった代わりに……ずっとカーチャンを励ましてくれたのだろう。

その間何をしていたんだ自分は。

<;`∀´>「内藤さん、息子さんが来てくれましたよ! 内藤さん、息子さんですよ内藤さん!」

必死に声をかける丹田さん、でもカーチャンはずっと動かない。
隣にいる医者の話だと日付けが変わるくらいまで意識はあったようだが、それ以来はずっとこんな感じらしい。

( ;ω;)「カーチャン、朝だお! 起きるお、僕だお!」

何故突然ここまで?
いきなりじゃないか、まるでこれでカーチャンが死んでしまうみたいじゃないか。

ずっと声をかけ続けると、心拍系に少し変化がおきる。

J( 'ー`)し「う……うん……」

( ;ω;)「カーチャン!!」



277:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 01:24:38.11 ID:xtICE8uZ0
  
J( 'ー`)し「ああ……良かった、最期に顔が見られて……」

( ;ω;)「突然何言い出すんだお、最期じゃないお!」

J( 'ー`)し「何泣いてるのよ……男の子でしょ……?」

( ;ω;)「泣いてなんていないお!」

目に溜まる涙を拭ったが、すぐに涙が出てきた。
電話を聞いたときは思わなかった、大変な事態だという事しか分からなかったから。

死ぬのか?
もう二度と会えないのか?
何の親孝行も出来ていないのに、もうずっと一緒の屋根で暮らしていないのに。

将来はツンとカーチャンと子供と一緒に暮らすんだ、だから……!

( ;ω;)「カーチャン、カーチャンッ!!」

J( 'ー`)し「……動物園、一緒に行きたかったわ……」

動物園、家の近くで新しく出来たときにカーチャンが行きたいって言ったんだ。
当時反抗期だった僕は一人で行けって跳ね除けてしまった……動物園。
行こう、今から行こう。今すぐに行こう。
どこにでも連れて行ってやる、だから……死なないでくれ。

J( 'ー`)し「後ね……言いたいことがあったの……」

( ;ω;)「何でも言ってくれお、何でもいう事聞くお!」



278:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 01:25:44.09 ID:xtICE8uZ0
  
J( 'ー`)し「ツンちゃんをね……諦めて、自分の道を歩んで欲しい……。
   アナタは幸せになる権利があるんだから……だから、ツンちゃんの代わりに……」

何でだ、何で最期にそんな事を言うんだ?

死ぬ気なのか?

分かっているのか、自分は死ぬんだぞ?

最期なのに、もう会えないかも知れないんだぞ?

なのに最後の言葉はそれなのか?

( ;ω;)「安心してくれお、新しい恋人出来たんだお!
   風羽さんっていう子で、とても可愛くて優しいんだお、一回連れて来るから待っててお!
   きっとカーチャンも気に入ってくれるはずだお!」

J( 'ー`)し「そう……良かった……」

なんで、どうしてそこで笑顔を見せるんだ?
そんなに嬉しいのか?
そんなに……最期の笑顔を出すほどまでに嬉しいのか?

J( 'ー`)し「でもカーチャン待てそうに無いや……ゴメンね、幸せにね……」

( ;ω;)「ダメだお、見て欲しいお! とってもいい子なんだお、見てくれお、見て欲しいんだお!!」

J( 'ー`)し「ゴメンね……ゴメンね……」



281:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 01:28:27.34 ID:xtICE8uZ0
  
その日は大泣きした。
カーチャンの最後の願いは『ツンと別れる事』、最後の言葉は『ゴメンね』。


全然親孝行が出来ないままに終わったんだ。


そんなに自分はツンと別れるべきなのか?


そんなに悪いことをしているのか?


聞いた話だと、元々カーチャンは食事もろくにとらずに仕事を続けていて危険だと何度も注意されていたそうだ。
そして仕事帰りや自分が学校にいる時に、通院していた事もあったそうだ。
丹田さんの施設に預けられる際も、相当な忠告を受けたらしい。

そして本人の意思で、息子である自分には全て秘密にさせられていたと。


ボロボロの体だったんだ、突然死んだように思えたが、周りからすれば来る時が来たという所なのだろう。



283:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 01:30:07.81 ID:xtICE8uZ0
  
今自分はツンの病室にいた。
少しの風が気持ちいい、そんな夏の朝だった。

( ´ω`)「……」

会社は有給でかれこれ三日休んでいる、きっと今回も使い切るまで休むのだろう。
上司になったからそんな事にならないように自分に責任感を植え付けていたつもりだったが……無駄だった。


自分がひどい顔をしているのは自分自身でも分かった。
それと同様、ツンも相変わらずひどい顔をしている。

ξ - )ξ

痩せ細った手足、きっと目が覚めてもリハビリがしばらく必要なんだろうな。

そう考えてすぐに寒気がした。


今、ツンに目覚めてほしくないとそう思っている自分がいた。



285:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 01:31:44.15 ID:xtICE8uZ0
  
風羽さんとの行為、そしてカーチャンへの死に際への言葉。

幾度となく彼女を否定した。
今までは否定されている彼女を守ってきたというのに……そんな自分が一番ひどい形で彼女を否定した。
付き合うときは、もう二度と彼女を悲しませないと誓ったのに……。


今までは強気の自分がいたからこそ耐えれていたのだ。
絶対にツンを信じている自身がいたからこそ、こうやって耐えれていたのだ。


その自分が裏切ったのだ。


何を信じればいいのか?
もうダメなんじゃないか?

こういった時に限ってツンが目覚めそうな気がした。
そしてそれを拒否したくなった。


目の前にあるツンの点滴のチューブ、それを手に持って転がす。
これを押さえればツンは死ぬ。

この悩みから解放されるんだ。


そう思う自分が嫌になり、もう最悪なほど悪循環だった。



287:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 01:33:34.47 ID:xtICE8uZ0
  
( ´ω`)「もう……疲れたお」

あれから何度と風羽さんから連絡があった。
それを全て無視していた。

きっと風羽さんはカーチャンについて、すごく責任を感じてしまっているだろうから。
そういう娘だった、だから……。

もうこれ以上他の人の何かと拘わりたくなかった。
もうこれ以上重い物を背負いたくなかった。


そして今も連絡がきた。
鳴り響く携帯、相変わらず無視をした。


そんな中、今日は留守番メッセージに伝言を残したようだ。

  『えーと、先輩……聞いていますか?』

既に涙声だった。
止めてくれ、もらい泣きしそうになった。



289:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 01:35:19.97 ID:xtICE8uZ0
  
  『どうして……かけ返してくれないんですか?
   先輩と同じで、私だって……こんなの辛いです……』

何だろう、彼女らしくなかった。

彼女はもっと朗らかで、辛くたってそれを見せないような子だった。
一緒にいても疲れないし楽しい、そんな子だった。

  『先輩、聞いていますよね?
   電話……とって下さい』

それからしばらく無言だった。


何だろうこれは?
彼女の言葉はまるでナイフのような鋭さと冷たさを持っていた。


  『……分かりました、それが答えなんですね……。
   先輩、本当に私は先輩が好きでした……。
   今までありがとうございました、そして……さようなら……ごめんなさい……』


今までありがとうございました? さようなら? ごめんなさい?

何でそんな事を言うんだ、止めてくれ、止めてくれ。
そんな言葉もう聞きたくない、カーチャンからも言われた最後の言葉。

まるで……死ぬみたいじゃないか。



292:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 01:36:57.20 ID:xtICE8uZ0
  
  『ああああぁああぁあぁぁぁ!!!』

(;゚ω゚)「!!」

なんだ、なんだ、なんだ、なんだ、なんだ、なんだ。
電話からの叫び声、驚いてすぐ電話を手に取る。

  『ああっ、ああぁぁッ!!』

止まない叫び声、怖くなって通話ボタンを押した。

(;゚ω゚)「風羽さん、どうしたお、どうしたおッ!!」

  『せんぱぁい……やっぱり優しぃ……電話に出てくれた……』

泣いていた、そして……声から嬉しさなど微塵も感じられなかった。
自分に向けられた言葉で無い様に感じるほど、覇気が無かった。

  『せんぱい……痛いよ、痛い……血が流れ出てくの、こうね……。
   しんぞうの……音にあわせて、ほら……どくっ、どくって……。
   私……死んじゃうんだろうなって……』

(;゚ω゚)「バカ、何してんだおこのバカ!」

  『バカだよ、私はバカだよ……死にたくないよぉ……先輩ぃ……』

(;゚ω゚)「うわあぁっぁぁぁ!!」

怖くなって自分は携帯電話を窓から外に放り投げた。
怖くて怖くて……もう聞いていられなかった。



296:◆7at37OTfY6 :2006/07/23(日) 01:38:39.10 ID:xtICE8uZ0
  
ただひたすらに叫んだ、もう喉がどうにかしそうなほどに。

隣で誰かまだ囁いているような気がするんだ、それを聞きたくなかった。
耳に纏わりつくんだ、何かがずっと耳の横で……自分に纏わりつくんだ。

(;゚ω゚)「ああぁあぁぁぁあぁあぁぁッ!!!!」

その叫び声に反応して数人の看護婦さんが病室に入ってきた。

止めろ、来るな近寄るな。
誰も信じられないんだ、誰も自分に触れるな、触れるな。

(;゚ω゚)「触れるなああぁぁ、触れるなあぁぁぁぁ!!!」




逃げたい、ここから……この現実から逃げたい。




そして窓から飛び降りた。



戻る『エピローグ』