( ^ω^)ブーンが運命に喧嘩を売るようです

53: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/25(日) 06:28:28.91 ID:YCXfwVd30
  
第3話 「大統領」


( ゚д゚ )「以後は勝手な行動は慎んでくれたまえ。」
ξ゚听)ξ「…はい。申し訳ありませんでした。」
( ゚д゚ )「君の年頃で外に出るなというのが酷なのは分かる。だが今は特に危険な状況なのだ。分かってくれるな?」
ξ゚听)ξ「はい。分かります。」
( ゚д゚ )「君の“力”が悪用されればこの戦争はもっと長引くだろう。
     彼奴らに対して我々の“正義”を示さなければならんのだ。分かるね?」

先程からずっとこの調子だ。嫌になる。
ブーンが言っていた事を思い出す。…確かにこの人は馬鹿なのかもしれない。
ブーン…。アタシが唯一視ることが出来なかった人。



54: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/25(日) 06:29:16.49 ID:YCXfwVd30
  
( ゚д゚ )「…。聞いているかね?ツン。」
ξ゚听)ξ「あの…コッチミルナ大統領、私もお話があるんですが。」
( ゚д゚ )「…何かね?何か視えたのかね?」
ξ゚听)ξ「いえ、そうではなくて……。」

どう言ったらいいのだろう?町で出会った?一緒にパーティをした?

( ゚д゚ )「喋ってくれない分からないよ?ツン」
ξ゚‐゚)ξ「………。」
ξ゚听)ξ「えと、…町に出たときのこt
( ゚д゚ )「ああ、もういい。関係ない話は止してくれたまえ!」
ξ゚听)ξ「いえ!!そうじゃなくって!」

この人はこうやって自分に関係の無い話はすぐ終えようとする。

ξ゚听)ξ「えっと、ですね。視る事が出来なかったひとがいるんです。」
( ゚д゚ )「ほう?それは少し興味深い。話してくれたまえ。」



55: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/25(日) 06:31:22.68 ID:YCXfwVd30
  
ξ゚听)ξ「いえ、詳しく言うことも無いのですが…。」
( ゚д゚ )「聞く聞かないは私が決める。さぁ。」

本当に強引な人だ。この人がトップだというのに一抹の不安を覚える。

ξ゚听)ξ「昨日町で出会った青年なんですが名前をブーンといって、特に…特に際立って特別なところの無い方でしたが。」

そう、普通の、ごく一般的な青年だった。…アタシに無い者をたくさん持っている人だった。

ξ゚听)ξ「彼に誘われてパーティに招かれたんですが。」

彼には自由があった。友達がいた。慕ってくれる子供達もいた。…やさしい母親もいた。



56: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/25(日) 06:32:06.96 ID:YCXfwVd30
  
ξ゚听)ξ「いろいろな出し物を一緒に見て、私も何かやる事になりました。」

なんでだろう?アタシがほしいモノを彼は全部持っている気がする。…いらない“モノ”だけ持っているアタシ。

ξ゚听)ξ「それで、私皆を視てあげることになって。」
( ゚д゚ )「…使ったのか。“運命”を読む力を。」
ξ゚听)ξ「…はい。」
( ゚д゚ )「まあいい。続けてくれ。」

こんな“力”いらなかった。この“力”のせいでアタシは家族を失った。自由を、友達を。

ξ゚听)ξ「そこで、ブーンさんを視ようとしたのですが…。」
( ゚д゚ )「視えなかった、と言うわけ、か。なにか他に気付いた事はあるかい?」
ξ゚听)ξ「いえ、特には…。ただ、彼は今日出兵すると言っていましたが。」
( ゚д゚ )「今日?今日というとあの“無勝将軍”との戦闘だな?ならば大丈夫だろう。帰って来次第彼に会わせてもらおう。」
( ゚д゚ )「うむ。報告ご苦労だったもう下がっても良い。」
ξ゚听)ξ「…分かりました。失礼します。」

部屋を出て、扉をパタンと閉める。
思考を先程の状態に戻す。
きっと…きっともう一度彼に会えば、答えに近づけるはず。
もう一度

ξ゚听)ξ「もう一度、会ってみたいな。」



58: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/25(日) 06:33:40.19 ID:YCXfwVd30
  
息…が!苦しい!

( ;ω;)「ヒッ…ウグ…ハッハ…ング…。」

何処をどう走ったのか、それすらも全く覚えていない。
息を、息をしなければ。息をしなきゃ死んでしまう。

( ;ω;)「ヒュー…ンック…ハッ…フッ…。」

ぜんぜん呼吸がままならない。自分の体が自分の物でない感覚。
アチコチ痛い。擦り傷やなんかよりも、足の関節が軒並みおかしくなっている。
それでも、考える事は

( ;ω;)「…フッ…ドク…ハッ……オォ…。」



59: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/25(日) 06:34:22.43 ID:YCXfwVd30
  
一緒に帰るって約束したのに。一人じゃ死なないって約束したのに。
畜生。畜生!
僕のせいだ!あの時僕が脇目も振らず逃げ続けていれば!
立ち止まったりしなければ!!
ドクオがいる所まで逃げたりしなければ!!!

( ;ω;)「…ドクオォ…。」

パフォーマーになるって言ってたドクオ。
チビ達に人気だったドクオ。
カーチャンに楽させてやるんだって息巻いてたドクオ。
ドクオ ドクオ ドクオ

( ;ω;)「死んだら何にも出来ないだろうがおぉ…。」

僕はドクオの事を考えているうちに今の自分の状況を忘れ、むせび泣き。
…やがて眠りに落ちた。
最後に、あいつ等さえ来なければと思って…。



60: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/25(日) 06:36:24.17 ID:YCXfwVd30
  
武器の残骸と死体で埋め尽くされた戦場を歩く二つの影があった。
黒焦げの死体の頭部を蹴りながら影の一つが言う。

( ´_ゝ`)「うーむ。…少しやりすぎたか?」
(´<_` )「やりすぎだ兄者。考え無しにバカスカ撃つからだ。
(# ´_ゝ`)「なにお!これでも少しは考えて撃っている!」
(´<_` )「それでこの有様か?」
( ´_ゝ`)「…テヘ☆」
(´<_` #)「かわいくねぇ!死ねこの馬鹿兄貴!」
(# ´_ゝ`)「お兄様に向かって馬鹿とはなんだ馬鹿とは!」
(´<_` #)「馬鹿に馬鹿と言ってなにが悪い!この大馬鹿!」
(# ´_ゝ`)「オマッ!言うに事欠いて大馬鹿だと!」

死体まみれの戦場で言い合いをする兄弟。…なかなかシュールな光景だ。
ましてやこの光景を引き起こしたのが本人達だというのが…。



61: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/25(日) 06:37:43.49 ID:YCXfwVd30
  
(´<_` )「とにかくだ!このままでは任務の方がままならんぞ。」
( ´_ゝ`)「…確かに。あの女は嫌いだが皇王様に迷惑が掛かるのはいただけない。」
(´<_` )「だろう?だからなんとか生存者を探し出すぞ兄者。」
( ´_ゝ`)「合点承知の助。」
(´<_` )「…真面目に探せよ。」

そう言う弟者の声を聞いてか聞かずか、兄者はそこらを楽しそうに走り回っていた。

(´<_` )「…やれやれ。」

こりゃ自分で探すしかないなと、歩き出した途端、兄者が大声で呼びかけてくる。

( ´_ゝ`)「おーい弟者!こいつ生きてるぞー!」
(´<_` )「なんと!」

慌てて駆け寄る弟者。しかしそこにいたのは生きているのか死んでいるのかも分からないような、上半身だけの男だった。



62: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/25(日) 06:38:14.71 ID:YCXfwVd30
  
(´<_` )「…おい。兄者。こいつか?」
( ´_ゝ`)「ああ。こいつだ。」
(´<_` )「もう虫の息ですよね?」
( ´_ゝ`)「まだ生きてる。」
(´<_` )「搬送中に死にそうですよね?」
( ´_ゝ`)「安全運転心がければきっと大丈夫。」
(´<_` )「さいですか。」
( ´_ゝ`)「さいですよ。」
(´<_` #)「大丈夫なわけ無いだろ!この馬鹿!」
(# ´_ゝ`)「だから馬鹿というなと!」
「…………ン………カ……。」

瀕死の男が呟く。

( ´_ゝ`)「なっ。ダイジョブだって。いつもと趣向が違うってあいつも喜ぶだろ。」
(´<_` )「そんなことは絶対無いと思うが…、仕方ないこいつにするか。」

そう言うと流石兄弟は男の上半身を持ち、戦車へと戻っていった。

「…………ン………カ……。」



63: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/25(日) 06:40:19.00 ID:YCXfwVd30
  
( ゚д゚ )「馬鹿な!!全滅だと!!」
<丶`∀´>「ハイ。全滅ニダ。動く鉄の塊にやられたらしいニダ。」

ここは先程までツンがいた部屋と同じ場所。そこでコッチミルナは今日の戦争の結果を聞いているところだった。

( ゚д゚ )「馬鹿な…。あの“無能将軍”との戦で負けるとは。」
( ゚д゚ )「動く鉄の塊と言っていたな?それは具体的にどのような物なのだ?」
<丶`∀´>「詳細は全くの不明ニダ。ただ恐ろしいスピードで動き回り、全てを爆発させる物体を射出するらしいニダ。」
( ゚д゚ )「…彼奴等の新兵器と見て間違いないな?」
<丶`∀´>「間違いないニダ。」
( ゚д゚ )「そうか…結局彼には会えずじまいか。」
<丶`∀´>「彼?」
( ゚д゚ )「いや、何でもない。こっちの話だ。」

コッチミルナは報告を受けてからずっと立ちっぱなしだったのを思い出し、深く腰を沈めた。



64: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/25(日) 06:41:14.22 ID:YCXfwVd30
  
( ゚д゚ )「…一度会ってみたかったのだがな。」

ニダーには聞こえないように独り言を言う。
しかし、会えないものはしょうがないと、彼は本来の気楽さで次の質問を続けた。

( ゚д゚ )「“あれ”の所在はまだ分からんのか?」
<丶`∀´>「“あれ”とは?」
( ゚д゚ )「『アカシャ』のことに決まっているだろうが。あれが見つかれば我々の正義を世界に知らしめる事が出来る!」
<丶`∀´>「…今のところ、全く不明ニダ。」
( ゚д゚ )「火急に探し出せ!現状はここに何時敵が攻め込んできてもおかしくない段階まで来ている。」
( ゚д゚ )「あの忌々しいニューソクの悪共を裁けるのは我々しかいないのだ!ニダー!貴様の働きに期待しているぞ!」
<丶`∀´>「御意ニダ。」

そう言うとニダーは部屋から出て行った。しかし、

( ゚д゚ )「本当に一刻の猶予も無いのだ。何とか…何とかせなば。」



65: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/25(日) 06:43:07.68 ID:YCXfwVd30
  
遠くから男が近づいてくる。
しかし、ブーンは今、完全に眠りに入っており気付く気配も無い。

「おりょ。こいつぁー…VIPの兵隊だな。間違いない!」

男は更に興味深かそうにブーンを見る。
心なしか嬉しそうな顔をしているが、これがこの男のデフォルト、別に楽しい訳じゃない。

「ニューソクとの戦争から逃げてきたのか?いや最近この辺りで大きな戦争があったって話は聞かないし。」

男が分からないのも無理はない。
ブーンは走りすぎてVIPの国境から出てしまったのだった。

「まっ、いいか。どんな奴でも敵じゃなければ助けるのが俺の主義。一応アジト間で連れて行きますかっと。」



67: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/25(日) 06:44:14.10 ID:YCXfwVd30
  
そう言うと男はブーンを背中に担ぎ上げ、歩き出した。

(  ω )「………ドクオ……。」
「ン、なんだ?起きたか?」

そう言ってブーンの方を確認する男。確かにブーンは眠っている。

「なんだ、寝言かよ。いや、それより寝言で男の名前を喋るってこたぁー…ホモか?」
「いけねぇーなー。全くだめな奴だ。男に生まれたんならよー…。」

そういって男は最高のスマイルを見せる。妙な輝かしさを放ちながら男は言葉を繋げた。

( ゚∀゚)「おっぱいに生きろよおっぱいに!俺様直々に講義してやんぜ、覚悟しな!」

そう言うと男、ジョルジュはまたまた最高にいい笑顔を周りに振り撒いて帰路についた。

第3話 「大統領」 終



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