( ^ω^)ブーンが運命に喧嘩を売るようです

364: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/27(火) 02:54:10.73 ID:n7YS9dVE0
  
第10話 「ロビー」


( ><)「規則により、僕がお前の監視を行います!」
( ^ω^)「またアンタかお…。」

しぃを付き飛ばした事により、警戒レベルが1ランク上がり、監視が付く事になったのだが…。
コイツで本当にいいのか?もっと厳しそうな奴の方が適任だと思うが。

まぁ僕的にはありがたいけど。

( ><)「どうしたんです!?人の顔をジロジロみて!」
(;^ω^)「いや、なんでもないお。」
( ><)「そうですか?それなら別にいいですけど。」
( ><)「そういえばまだこの屋敷の中以外は見てなかったんですよね!?私が街の案内をしてあげます!」
( ^ω^)「…いや、別にいいお。…外出するような気分じゃないんだお……。」

しかし、ワカンナイデスは僕の言葉を聞き終わる前に歩き出し、あげくに

( ><)「何してるんです!!早くくるんです!!」

う〜ん、コイツはコイツで大変なのかもしれない。



365: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/27(火) 02:54:49.37 ID:n7YS9dVE0
  
(;^ω^)「これは……酷いお…。

町は至る所が崩壊していて、まともな家屋を探すほうが大変なくらいだった。所々風化してしまってさえいる。
何をしたらこんな事になるんだ?

( ><)「…酷いでしょう?これがこの国の現状で、お前がこれから…一生暮らし続ける所です。」
(;^ω^)「…一生…。」

…一生…。酷く堪える辛さだ。ましてやこんな所で人生を終えるなんて…。

( ><)「…ここも昔はここまで酷くはなかったんです。質素ではあったけど、活気があるいい町でした。…でも…。」
( ><)「戦争が始まり、ニューソクと同盟関係にあるこの国は、少ない人手のほとんどを戦争に回しました。」
( ^ω^)「…やっぱり、戦争のせいなのかお…。」

しかし、ワカンナイデスは静かに首を横に振る。

( ><)「確かに、戦争による責任は大きいです。でもそれより…。」
( ><)「…この国の中心には、まだまだ食料も資源もあるんです。」
(;^ω^)「なんでだお?ここまで酷い状態になる前にそれらを送れば、もう少しはマシになるはずだお!?」
(;><)「ブーン…。これから言う事は誰にも言わないで下さい。もし知られたら僕の首が文字通り飛びますから。」
(;^ω^)「飛ぶって…。分かったお。誰にも言わないから話して欲しいお。」

それから彼は、辺りを用心深く伺い、誰もいない事を確認してから話を切り出した。

(;><)「この国を治める人間がそれを禁止しているんです。」
(;^ω^)「はっ?何でだお?一番偉い人は国民のために頑張ってくれるんじゃないのかお?」
(;><)「…この国では全ての民はあの方のために生きているんです。彼の名は…。」
(;><)「………皇王シナー…!」



366: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/27(火) 02:56:05.32 ID:n7YS9dVE0
  
ワカンナイデスと色々と話をした後、僕はしぃに呼ばれ、彼女の部屋へ向かった。

(*゚ー゚)「それじゃ、あなたは廊下で待っててね。」
( ><)「はい!分かりました!!」

ワカンナイデスが部屋を出た後、僕はこの前の事を思い出し、少し身構えつつしぃと対峙した。

(*゚ー゚)「そんなに身構えなくても大丈夫よwこの前はちょっとムラムラしただけだから。」
( ^ω^)「そうですかお…。」

確かに、最初に会った時のように落ち着いた年上の女性然としている。
しかし、この前もこの状態から急に豹変したのだ。…気構えは解かない。

(*゚ー゚)「随分と警戒されちゃったみたいねwまっいいわ。それよりブーン君?」
( ^ω^)「何ですかお?」
(*゚ー゚)「運命…言い方を変えるなら世界に物語、流れのような物があるといったら信じる?」
(;゚ω゚)「………!!!」

それは…それはショボンが言っていた…!!



367: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/27(火) 02:56:48.13 ID:n7YS9dVE0
  
(*゚ー゚)「信じる信じないはどちらでもいいけどね。でもこれは確かにあるのよ?」
(;^ω^)「……。」
(*゚ー゚)「そこでブーン君、そんな運命があるとしてそれはどこで創られると思う?」
(;^ω^)「…見当もつかないお。」

本当に見当も付かない。…運命が作られているだって?

(*゚ー゚)「ふふw創られるより物語を綴ってるって言ったほうが聞こえがいいかしら?ともかく。」
(*゚ー゚)「私はその“作家さん”に会ってみたい。ううん、あわなきゃいけないいんだわ!」

熱っぽく喋る姿が外見と不釣合いにヒドク幼い印象を植え付ける。
…どれがこの人の本当の姿なのだろう?



368: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/27(火) 02:58:01.91 ID:n7YS9dVE0
  
(*゚ー゚)「…ねぇ、ブーン君。」
(;^ω^)「今度は何ですお?」
(*゚ー゚)「無能って皆死ねばいいって思わない?」
(;^ω^)「なっ!!」

何を言い出すんだこの人は!?
どの話も突拍子も無く上、急に話が変わり、さらにはまるで別のベクトルを指しているからまるで理解できない。
冗談ではなくこの人は僕を混乱させようとしているだけなんじゃないかと疑ってしまう。
そんな僕の考えなんかお構い無しに、彼女は話を続ける。

(*゚ー゚)「あなたは違うわよ?あなたは飛び切りの有能。生粋の“人間”だもの。」
(*゚ー゚)「でもね…例えば今そこの廊下に立ってる筈の看守。あいつなんて飛び切りの無能だわ。」
(*゚ー゚)「世界に対して何の影響も与えず終わる人間。あいつらは“人間”じゃない、ただの“獣”よ!」

ヒートアップして、もはや僕の反応すら見ようとしない。それでも彼女は喋り続ける。

(*゚ー゚)「“獣”は私達“人間”が統治してあげなきゃいけないのよ!例えどんな目に遭わせようとも!!」

(*゚ー゚)「…少し、私の事を話してあげるわね。」

また急に話が変わる。だが、今回は割りとまともな題材だ。



369: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/27(火) 02:58:37.60 ID:n7YS9dVE0
  
(*゚ー゚)「私が物思い付いた頃には既に母の姿はなかったわ。死んでしまったのか、それともただ蒸発しただけなのかは結局分からずじまいだけど。」
(*゚ー゚)「でも、私には父様がいたわ…。私の歴史は父様との歴史…。」
(*゚ー゚)「父様は高名な科学者でね?機械を作ったり、人体の治癒力を格段に飛躍させる薬を作ったり、とにかくなんでもできる人だった。」
(*゚ー゚)「私も幼い頃から父様と一緒に研究に没頭したりしたわ。」
(*゚ー゚)「楽しかったナ…。あのころが一番幸せだった……。」

そういうしぃの顔は今まで一番穏やかで、まるで初恋を思い出す普通の少女のようだった。

(*゚ー゚)「でも楽しい事は永遠には続かない物でね…。父様はある事件がきっかけで命を落としたわ。」
(*゚ー゚)「最後の別れ際にさん私のことを“希望”だって言ってね…。」

(*゚ー゚)「それから私は、父様と一緒に培った知恵でここまで上り詰めたわ。」

少し寂しげな顔をしてこれで話はおしまいと目で合図する。

(*゚ー゚)「…呼び出しておきながら申し訳ないのだけれど、私はこれから行かなきゃならない所があるの。御免なさい。」

そういうと彼女は部屋を出て行った。
ここにいても意味が無いので、僕もワカンナイデスの所へ行った。



370: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/27(火) 02:59:40.31 ID:n7YS9dVE0
  
僕は与えられた部屋のベッドに横たわっている。
なかなか豪華な部屋で、広さもかなりある。ただし、
窓がかなり小さく、体を出す事は出来ないし、部屋を出る唯一の扉は外側から施錠されている。

( ><)「釈放されたとはいえ、まだまだ逃亡の危険性があると上が判断したので、申し訳ないけどこれで我慢して下さい。」

確かワカンナイデスがそう言ってたっけ。 まぁ当然だよな。
僕はそう呟いてベッドの中でこれまでの事と…これからの事を考える。

( ^ω^)「意味わかんねえお…。」

色々ありすぎてまるで思考がまとまらない。考える事が多すぎる。
ジョルジュ達はどうなったのだろうか?皆は何処に連れて行かれたのだろうか?
僕はここに一生住み続けなければならないのだろうか?

( ^ω^)「…何もわかんねえお…。」
「それじゃあ教えてあげようか?」
(;゚ω゚)「………!!!」



371: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/27(火) 03:00:39.24 ID:n7YS9dVE0
  
聞き覚えのある声!心の中の恐怖を目覚めさせる器用に指を交差させるその姿!

(´・ω・`)「…教えてあげようか、と言ったんだよ?ブーン。」

ショボン!!!何でここに!どうやってこの部屋に入ったんだ!?

(´・ω・`)「同じことを何度も言わせないで欲しいが…僕のことはどうでもいいんだよ。」
(´・ω・`)「それより…また、君のせいで大勢の人間が死んだね。」
(;゚ω゚)「何……言ってるお。」
(´・ω・`)「OPPAIの作戦は両方とも失敗に終わったよ。」
(;゚ω゚)「………!!!」
(´・ω・`)「君ももう理解し始めているはずだ。僕達は“違う”んだと。」
(;゚ω゚)「そんな…事。」
(´・ω・`)「しかし、“違う”ことが他人を寄せ付ける。そこにいるだけで他人に期待を誘発させる。」

ジョルジュは言った お前がいるとみんな上手くいく。そんな不思議な直感が働く と。

(´・ω・`)「だけどそれこそが最悪なんだ。全てを巻き込み、“修正”のために不要に死人を増やす。」
(´・ω・`)「自分では人一人殺せない程貧弱なくせに、自分以外の者に周囲の人間を殺させる。…それが僕らなんだよ。」
(´・ω・`)「だから僕は『傍観者』であることを自分に科した。世界に影響を与えないように。」
(;^ω^)「……“修正”って…なんだお…?」

少しだけ、ほんの少しだけ落ち着く事の出来た僕は質問を返す。



372: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/27(火) 03:01:13.43 ID:n7YS9dVE0
  
(´・ω・`)「…『アカシャ』によって定められた運命が捻じ曲がった時に働くプログラムの事だよ。」
(;^ω^)「それだお!しぃもそんな事を言っていたお!運命を書くとか何とか…それってなんのことなんだお!?」
(´・ω・`)「…『プロジェクト2CH』の中核をなす計画の心臓部、それが『アカシャ』。」
(;^ω^)「分け分かんないお!『アカシャ』って結局なんなんだお!『プロジェクト2CH』ってなんなんだお!!」
(´・ω・`)「すまないがその問いには答えられない。今日は本当は君に会いに来る予定じゃなかったんだが…。」
(´・ω・`)「彼女が予想より早く『アカシャ』に近づいてしまった。君にも知識を与えておく必要があると思ったんだ。」
(;^ω^)「だから分かんないお!ちゃんと質問に答えるお!」
(´・ω・`)「僕は本来の用事を済ませに行く。これで消えさせてもらうよ。…」
(;^ω^)「ショボン!!待つお!!!」
(´・ω・`)「…真実が知りたいならあの子と一緒に世界に出るといい。あの子なら君に殺されることもないかもしれない。」
(;^ω^)「ショボン!!!!」

最後の言葉を言うと同時に、ショボンは前の時のように闇に紛れて消えた。



373: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/27(火) 03:02:29.73 ID:n7YS9dVE0
  
ショボンが消えてから、僕はまた考えに耽っていた。
知らない言葉を色々聞かされた。
だけど…何だか……

( ^ω^)「……懐かしい感じがするお…。」

正直ショボンが言ってた事の半分も理解しちゃいない。
それでも僕は、この話を聞いているとき正体不明の安心感を得ることができた。
確かに、知りたい。この先が知りたくてしょうがない。

( ^ω^)「……でも。」

やっぱり僕が動くと人が死ぬのだろうか?ショボンはそれを“修正”と言っていた。
…怖い。本当に怖かったのはショボンなんかじゃない。
ただ存在するだけで人を殺してしまう、その現実が恐ろしかっただけだったのだ。

( ^ω^)「…あの子…。」

だれの事を言っていたのかはさっぱり分からない。
死なないかもしれない?それは死ぬかもしれないってことじゃないのか?
それじゃあ何も変わらないじゃないか。

とりあえず何だろうと、今のこの状況で脱出が難しい事だけは確かだ。
この問題をクリアしなければ、あの子もどの子も関係ない。



374: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/27(火) 03:03:02.95 ID:n7YS9dVE0
  
( ^ω^)「…さっきから外が騒がしいお。」

何なのだろうか?なんだか怒鳴り声にも叫び声にも聞こえるが。
只の喧嘩だろうとベッドにうずくまり寝ようとするが


ドオオオオオオオオオン!!!


耳元を劈く爆音によってそれは遮られた。

(;^ω^)「な、な、いったいなんだお!!」

僕の部屋の壁の一面から埃がモワモワと舞い上がっている。
埃が消え、ぽっかり空いたかつて壁だった場所に次第に現れるシルエット。
普通の成人男性より一回りも二回りも大きいその体躯。
何を考えているのかよく分からないその瞳。

(*゚∋゚)「………。」

筋肉がなぜかそこにいた。



第10話 「ロビー」  終



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