( ^ω^)ブーンが運命に喧嘩を売るようです

720: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/29(木) 14:30:10.93 ID:peTjNSpz0
  
第15話 「お嬢様のドライブ」

僕達は刑の執行に現場に到着した。
僕はツンの事を一度心の隅に追いやって、この場に来た。
辺りには人だかりができ、その中心には紛れもなくジョルジュの姿があった。

( ^ω^)「…ジョルジュ。」

ジョルジュは上半身裸の状態で、処刑台の上で座っていた。
そのしまった筋肉の上にある新旧様々な傷跡が痛々しい。
首の上下に鉄製の拘束具が嵌められており、その情報には大きな刃物が今か今かと鈍い光りを湛えている。
ジョルジュはギロチン処刑されるようだった。

「まだ、奴は現れていないようだ…。」

僕はまだアサピーの姿を見た事がないので断定する事はできないが、
確かに聞いていた特長に合う人物は見当たらない。
僕達は、ジョルジュが処刑を行われる直前に、まずアサピーを討伐する者達が兵を倒しながら道を作り、
その期に乗じて僕達ジョルジュ救出班がジョルジュを助け出す手筈になっている。

「……!!来たぞ!奴だ!」

あれが、アサピー…。確かに…貧弱そうな体に気難しそうな顔。聞いていた特長と符合する。
アサピーは、ジョルジュの隣立ち、何やらスピーチを始める。



721: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/29(木) 14:30:55.77 ID:peTjNSpz0
  
(-@∀@)「親愛なるラウンジ国民諸君!今日はよく集まってくれた!」
(-@∀@)「今日はこの国の国家転覆を謀り、無様にも捕まった邪悪に正義の刃を振りかざそうと思う。」
(-@∀@)「だがちょっと待って欲しいという声があるかもしれない。」
(-@∀@)「確かにこの国に対して不貞を働いたとはいえ、殺してしまうのは忍びないと言うかも知れない。」
(-@∀@)「私もその気持ちは痛いほど分かる。人の命というものは本来そんなに軽いものではない。」
(-@∀@)「しかし!私はだからこそ刑を執行する!」
(-@∀@)「この者を生かしておけば、必ず君達国民の生活を脅かす存在になろう!」
(-@∀@)「私には君達を守る義務がある!」
(-@∀@)「どんなに辛い立場に立とうとも!たとえ憎まれ役になろうとも!」
(-@∀@)「私は国民のため!この国のためにこの体を行使しよう!」
(-@∀@)「では!死刑執行だ!!」



722: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/29(木) 14:31:52.01 ID:peTjNSpz0
  
「よし!今だ!!行くぞ!!」

アサピーの演説が終わると同時に皆が飛び出して行った。
狙うは一直線にアサピーのみ。
今ここにいる兵の数から考えるに、この作戦はうまくいく!
そんな確信めいた物がよぎった直後だった。

「ぐわっ!」「何だ!?」「どこから!?」

なんだ!?何が起こった!?
先に飛び出た皆に向かって今いる兵達“以外”の所から撃たれていた。

(-@∀@)「よ〜こそ!薄汚いレジスタンス諸君!君達の処刑場へ!」
「俺達の…処刑場?」

僕は、周りを見て気が付いた。
処刑を見るために来ていた筈の野次馬達が、銃を構えていた。
しまった!!はめられた!!!

(-@∀@)「流石に君達のリーダーだけを殺すのは忍びないと思ったのでね。」
(-@∀@)「一工夫いれた演出をしてみたのだが気に入って頂けたかな?」

皆の口から怨嗟の声が漏れる。このままでは絶体絶命だ。
僕も奴らの仲間だとばれているのか、先程から背中に銃を突きつけられている。
くそっ!どうすればいいんだ!!



723: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/29(木) 14:33:01.93 ID:peTjNSpz0
  
何よ!何よ!何よ!!
何であんなこと言うのよ!!アタシはただブーンのことが心配だっただけなのに!

ξ;;)ξ「…うく…ひっく……ばかぁ…。」

ブーンなんて大っ嫌い!
…ううん、あんなに言われたのに嫌いになれない。嫌いになんてなれない。
ブーンが厳しくアタシに接する事で、アタシを危険から遠ざけようとしてくれたのだろう。
それは紛れもないブーンの優しさだって頭では解っている。解ってはいるが…。
気持ちが理解してくれない。どうしても傷つきたがりのアタシの心は前へ進むのを良しとしない。

ξ;;)ξ「…ブーンの…ばかぁ…。」

ブーンを悪者にしたて上げることで心の平穏を保とうとしている自分がいる。
そんな自分がいるという事実に気付いて更に自己嫌悪に陥っていく。
さっきからこんなことの繰り返しだ。

ξ;;)ξ「…ばっかみたい…。」
老人「いやいや、そうやって悩むのは若者の特権じゃて。」
ξ;;)ξ「……!」

やだ!いつからそこに!
泣き顔を見られたかもしれないという焦りで一杯になったアタシは、
しどろもどろになってうまく対応することができなかった。



724: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/29(木) 14:33:48.79 ID:peTjNSpz0
  
老人「ふぇっふぇっふぇっwwそんな慌てんでも結構じゃよw女子の涙は若い時に星の数程見てきたわい。」
ξ////)ξ「そ、そうですか…。」

そんな事言われても恥ずかしいモノは恥ずかしい。
恥ずかしさで俯いているアタシに対して、お爺さんはまだ話し続ける。

老人「それにしてもブーンも酷い男じゃのぉ?こんなかわいい“れでぃー”に向かって何もあんな言い方しなくとものう。」
ξ////)ξ「………。」

あの場面も見られてたのか!恥ずかしさで顔が真っ赤になる。
それにしてもこの人、何のようじがあってアタシの所に来たんだろう?

老人「まったく、まったく。あ奴は女心というモンを全く理解しておらんの。」
ξ////)ξ「…はぁ。」
老人「お主はブーンと一緒にいたいだけなんじゃろ?」
ξ////)ξ「…!」

心の中心を看破され、アタシの顔も尋常じゃないほどに熱を帯びてくる。
だけど、それとは別のアタシの弱いほうの気持ちが浮かんでくる。

ξ゚‐゚)ξ「でも…私本当に嫌われただけかもしれません…。」
老人「ほう?」
ξ゚‐゚)ξ「ただ、私に愛想を着かせただけで、本音はやっぱり私が邪魔なだけかも…。」



725: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/29(木) 14:34:21.07 ID:peTjNSpz0
  
そう言う自分の言葉に反応して、また目許が潤んでくるのが解る。

老人「何か心あたりがあるのかえ?」
ξ゚听)ξ「えっ?」
老人「ないんじゃろう?お主の中のブーンは意味もなく人を嫌いになるような男だったのかえ?」
ξ゚听)ξ「そんな…こと。」
老人「そうじゃろ?詳しい事はわしには分からんが、ブーンはお主が大切だから危険にさらしたくない。わしゃそう思うよ。」
ξ////)ξ「………。」

また顔が熱くなる。

老人「それで、お主はどうするんじゃ?」
ξ゚听)ξ「…えっ?」
老人「このまま待ってるだけでいいのかえ?本気だったら自分の思った通りに行動せんと後で後悔するぞ?」
ξ゚听)ξ「私は…。」
老人「ええ、ええ。いわんでええ。よく考えて自分のしたいように動けばええ。悩むのは若者の特権じゃからな。」
ξ゚听)ξ「……。」
老人「それじゃあの。悔いのないように動くんじゃぞ?」

そう言い残してお爺さんは去って行った。
変な人だとは思ったけど、おかげで自分の気持ちに整理がついた。
アタシが…アタシがやりたいことは…。



726: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/29(木) 14:36:06.51 ID:peTjNSpz0
  
先程から、引き続きピンチの状態が続いている。
このままでは、確実に全滅してしまう。
どうにかさないと、どうにかしにと!

(-@∀@)「いつまでもこのままなのも可哀相ですし、そろそろこの世とグッバイしてもらいましょうか。」

アサピーの声に反応し、兵達が一斉に狙いをつける。
もう…ダメだ!

僕が死を覚悟したその時だった。暴走した車がこの場に乱入してきた。
車はまるで勢いを止めず、人だかりに“突っ込んだ”!

阿鼻叫喚。ラウンジの兵達が何十人と空を舞う。
おお!人がまるでゴミのようだ!

(;@∀@)「な、な、な、何ですか!?」

驚愕するアサピー。だが、僕も同じく目を疑った。

(;^ω^)「…ツン?」



727: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/29(木) 14:36:50.30 ID:peTjNSpz0
  
先程車の窓からチラリと見えた人影。それはツンのモノと酷似していた。
何でツンがここに?
僕の疑問を他所に、場の状況は一変していた。
OPPAIの仲間達が反撃を行い、次々と襲い掛かりアサピーを狙う。
肝心のアサピーは何人かの兵に守られながら必死に逃走しようとしている。
僕も自分の責務を思い出し、急いでジョルジュに駆け寄る。

( ^ω^)「ジョルジュ!助けに来たお!!」
( ゚∀゚)「ブーン!!おまっ、生きて!それよりどういう状況だこりゃ!!」
( ^ω^)「説明は後だお!今はアサピーが逃げる前に皆で倒すお!!」

僕はジョルジュに着けられた拘束具を急いで外しに掛かる。
どんな構造なのか、外し方が分からない。

(;^ω^)「これどうなってんだお!!ジョルジュ!なんか知らないかお!?」
(;゚∀゚)「俺だってワカンねぇよ!!」

僕がもたもたいている間に剣を持った兵達が何人もこちらに突進してくる。
なんだ!どうなってんだ!ここか!それともこれか!
ガキン!
何とか外す事に成功するが、兵達はもう目前まで近づいてきている。間に合わない……!!



728: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/29(木) 14:38:08.74 ID:peTjNSpz0
  

兵達が急に吹き飛んだ。

( ゚∀゚)「ブーン、よくやってくれた。後は…俺の仕事だ!」

一撃の下に近づいてきた兵を薙ぎ払い、ジョルジュは言った。
倒れている兵の剣を奪い、前線へと恐ろしいまでの速度で駆け出すジョルジュ。
そんなジョルジュを見届け、僕は別の場所へと意識を変える。
役目は終えたと言わんばかりに威風堂々と佇む車に近づく。
…あれは確かにツンだった。どうしてここにツンが…。あれだけ…嫌われてもいいって程いったのに。

(;^ω^)「ツン!!」
ξ#゚听)ξ「…何よ。」

うっ、怒ってる。いや、怒って当然の事を僕は言ったわけだが。
それより、僕はちゃんと彼女に聞かなければならない。

(;^ω^)「どうして来たんだお!ちゃんと危ないって言った筈だお!!」
ξ#゚听)ξ「何よ!アタシが来なきゃピンチだったクセに!!」
(;^ω^)「そ、それはその通りだけどお。」
ξ#゚听)ξ「アタシはアタシの思うままに動こうとしているだけよ!!ブーンにあれこれ言われる筋合いはないわ!!」
ξ#゚听)ξ「それに近くにいる人が死ぬですって!?馬鹿言わないでよ!アタシはこうしてちゃんと生きてるじゃない!!」
(;^ω^)「…そうだけどお…。」

ツンの勢いに押され、また何も言い返せなくなってしまう僕。



729: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/29(木) 14:38:57.60 ID:peTjNSpz0
  
ξ#゚听)ξ「そうだけども何もないの!アタシはこうして無事なんだから!」
ξ////)ξ「だから…だから一緒にいさせてよ…。」
( ^ω^)「…ツン。」
ξ////)ξ「か、勘違いしないでよね!?危なっかしくて目が離せないだけなんだから!!」
( ^ω^)「………。」
ξ////)ξ「な、何か言いなさいよ…。」

周りはジョルジュ達があらかた片付けたようで、大分静かになっていた。
僕の思い。僕の気持ち。
ツンは自分の思うように、自分の気持ちに従ってここまで来た。とても危険だというのに…。
だから…僕もいいのだろうか?僕も自分の気持ちを偽らず、思ったように行動して。

( ^ω^)「……ツン。」
ξ////)ξ「……何よ。」
( ^ω^)「…負けたお。好きにするといいお。」
( ^ω^)「そのかわり…絶対に僕から離れるなお。」
ξ////)ξ「……うん!」

これが本当に正解なのか僕にはまだ分からない。
…それでも、今はツンと一緒にいたい。
その気持ちに従おう…。



730: ◆y7/jBFQ5SY :2006/06/29(木) 14:39:54.21 ID:peTjNSpz0
  

はあっはあっはあっはあ。
許しません!許しませんよぉ!!

アサピーは全速である所へ向かった。
宗主国であるロビーから送られてきたある薬を取り出すために。

(#@д@)「絶対に、絶対に皆殺しにしてやる!あの便所の糞共をこの世から消し去ってやる!!」

送られてきた薬はサンプル品で安全性の保証はない。
しかし、怒りに狂ったアサピーにはこの方法しか思いつかなかった。

(#@д@)「殺して殺して殺して、全員殺してやる!!!」

狂った王者は破滅に向け駆け続けた…。



第15話 「お嬢様のドライブ」  終



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