( ^ω^)ブーンが運命に喧嘩を売るようです

125: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/01(土) 19:05:27.12 ID:d1r0AXAe0
  
第19話 「帰郷」


僕は、ツンと一緒にVIPまで向かった。
じっとしている事なんてできなかった。
カーチャンが…チビ達が…。

ショボンはいつもの通りに何時の間にか消えていた。
「僕もやらなければならない事がある」
そう言い残して。

僕は、車で向かった。
本当は一人で行くつもりだった。
今、VIPはロビーの兵で溢れているだろう。
そんな中をツンに歩かせるわけにはいかない。
何とか思い留まらせようと、言葉という言葉を行使して説得した。
ツンは折れなかった。
「アタシもあの国で育ったのよ、アタシにも確かめる権利があるわ!」
そう言って聴かず、車から降りようとしなかった。

ジョルジュ達はニューソクに向かった。
ロビーの勝手な行動を止めるためにニューソクの力を借りに行くと言っていた。
ジョルジュなら説得して、ニューソク軍を連れてこれるかもしれない。
彼ならきっとうまくやるだろう。

…だが、それで解決するのか?
今考えると、ロビーから銃が流れていたのは明らかだ。
しかも、あいつ等は今までにない、何発も連射できる銃も装備していた。
アサピーが急激に強くなったのも、もしかしたらロビーによるものなのかもしれない。
勝てるのか?勝てるのか?勝てるのか?



126: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/01(土) 19:06:11.53 ID:d1r0AXAe0
  

町は酷い有様だった。
かつての面影を一切残しておらず、
大袈裟でなく僕はここがどこだか分からなかった。
草は焼け、木は焼け、自然は焼け、家は焼け、町は焼け、国は焼け、人が焼け焦げていた。
命が感じられない。死んだ町。
僕は急いで孤児院へ、カーチャン達の下へ向かう。
向かって走る。走って転ぶ。起き上がってまた走る。

見つからない、見つからない、見つからない。
僕は結局孤児院を見つける事は出来なかった。
変わりに、孤児院だった場所と……

顔の半分ほどを真っ赤に濡らしたカーチャンを見つけた。



128: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/01(土) 19:06:57.10 ID:d1r0AXAe0
  
(;゚ω゚)「かー…ちゃ…。」
;ー`)し「…ブー、ン?ブーン、…の?」
ξ;;)ξ「そんな…こんなのって…!」

カーチャン…カーチャン…!
カーチャンの体は半分程が吹き飛んでおり、こうして喋っているのが不思議なほどだった。
傷口なんて生易しい言葉が似合わないほどの傷口。
無くなった部分がこんなにもカーチャンを形作っていたのかと思う程に奇妙で。
なんだか昔聞いたお化けを連想させる。
本当に…おかしい。何でカーチャンがこんなことになってるんだ?
これは現実か?現実か?現実ですか?夢ですか?
僕は現実逃避すら許されずに、悪夢へと引き込まれる。

;ー`)し「ブ、ン。生き…の、ね?」
( ;ω;)「かーちゃ…かー、ちゃん。」
;ー`)し「も…と、顔…見、せて。」
( ;ω;)「…カーチャン、カーチャン!カーチャン!!」

カーチャンカーチャンカーチャンカーチャンカーチャン!!
いつも優しかったカーチャン。皆に優しかったカーチャン。僕に優しかったカーチャン。
イタズラした時に危ないって怒ってくれたカーチャン。後でなぐさめてくれたカーチャン。
いつも元気だったカーチャン。いつも見守ってくれてたカーチャン。いつも信じてくれたカーチャン。
無条件に愛して愛して愛して……愛してくれたカーチャン。
カーチャンカーチャンカーチャンカーチャンカーチャン……。



129: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/01(土) 19:07:40.83 ID:d1r0AXAe0
  
カーチャンが残ったほうの腕を上げる。
握る。冷たい。死人の手。
どうして?カーチャンは生きてるよ?死人じゃないよ?おかしいじゃないか。

( ;ω;)「…カーチャン…ここにいるお!」
;ー`)し「ブ、ー…嬉…い……会え…、嬉…。」
( ;ω;)「しっかりするお!カーチャン!!カーチャン!!!」
 ー )し「……に…っ…も…守っ…る…。わ…し……ブーン………。」
ξ;;)ξ「おば、さまぁ…。」
( ;ω;)「………。」

カーチャンはそれきり動かなくなった。
最後の最後に言いたいことを言い終えて、満足そうな顔をして。
カーチャンカーチャンカーチャンカーチャンカーチャン……。
最後に、カーチャンは僕に伝えてくれた。
僕の事をどれだけ愛していてくれたのかを…。
他の誰にも聞こえなくても僕の心にはちゃんと響いた。

“おまえがどこに行っても見守ってるわ。私のかわいいブーン……”



130: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/01(土) 19:08:37.66 ID:d1r0AXAe0
  
「貴様ら!どこから入ってきた!!」
「動くな!!抵抗するようなら容赦なく撃つ!!」
ξ;;)ξ「…!ロビーの!」
(  ω )「………。」

…うるせぇよ。
カーチャンが眠りについたんだ、静かにしろよ。
ロビーの兵が僕達に銃を向ける。
それで脅しのつもりか?

「そのまま手を上方で組み、向こうを向け!!」
「…VIPの兵ではないようだが…大事を取って貴様らの身柄は我々で預からせてもらう!!」
ξ゚听)ξ「…ブーン?」

うるせえんだよ。少しは静かに出来ないのかよ。

「貴様!さっさとしろ!!」
(  ω )「…うるせえお。」
「なにぃ!?」
(  ω )「うるせえつってんだお。」

うるさいうるさいうるさい…。
僕は立ち上がり、兵の下に歩いていく。



131: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/01(土) 19:09:03.34 ID:d1r0AXAe0
  
ξ゚听)ξ「ブーン!」
「貴様!!抵抗する気か!?」
(  ω )「………。」
「ぐっ、悪く思うな!!」

連続で発射される弾丸。轟く銃声。
僕にはあたらない。

ξ゚听)ξ「ぶ、ブーン?」
「な、なんだぁ!?何であたらない!?」
(  ω )「………。」

さらに近づいていく僕。銃声は止まない。
もちろん僕にはあたらない。

「き、貴様!何者だ!?寄、寄るな!!こっちに来るなぁ!!!」
(  ω )「………。」

僕は亡霊。死なない亡霊。
強引に兵の銃を奪い取り、こいつの頭に照準を合わせる。

「や、やめ…。」
ξ゚听)ξ「ブーン!!」
(  ω )「………。」

引き金を引いた。



132: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/01(土) 19:09:51.98 ID:d1r0AXAe0
  
(# ゚∀゚)「だから!今このままロビーをほおって置けば、世界はまた混乱に包まれるんだぞ!!」
/ ,' 3 「…君の言いたい事は分かる。このまま奴らを野放しにすれば後々我等に対しても牙を向くだろう。」
/ ,' 3 「だが、我らは既に相当疲弊している。今動こうとも勝算はないだろう。違うか?」
(;゚∀゚)「…ぐっ!」

俺は、ブーン達がVIPに向かったすぐ後に、ニューソクの地へ赴いた。
ニューソクに助力してもらうために、ここの国王に会わなければならない。
そのために俺は、ラウンジの王と偽り(半分以上本当のようなものだが)、
見事会うところまで漕ぎ着ける事ができた。しかし…。
ニューソクの状態は予想以上に酷いものだった。
市街地での戦争はなかったため、直接の被害は出ていないが、
あきらかに町から活気という物が消え失せていた。

/ ,' 3 「私は民の生活を守る義務がある。これ以上の迷惑はかけられん。」
(;゚∀゚)「だがっ…今ここで奴らを討たないと、どの道戦争になるのは目に見えている!」
/ ,' 3 「力を貸そうにも、我らが今保有している戦力でまともに戦えるのは、この三月ウサギの部隊しかないのが現状なのだよ。」
(メ._,)「………。」

三月ウサギ。『騎士』の称号を持つ現在唯一の武人。モナーの知り合い。
なんとか、コイツの力だけでも借りる事はできないか?
コイツの力があればなんとか突破する事ができるんじゃないか?

(;゚∀゚)「荒巻王。もしできるなr
/ ,' 3 「三月ウサギの部隊は貸せんよ。奴はこの国の最後の砦だ、簡単に明け渡す訳にはいかない。」
(;゚∀゚)「………。」

くそっ!八方塞じゃねぇか!これじゃあどうしようもねぇ!!



133: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/01(土) 19:10:46.01 ID:d1r0AXAe0
  
(メ._,)「…陛下。意見する無礼をお許し下さい。私はこの者の言う通り、
      今攻めなければ取り返しがつかなくなると考えます。」
( ゚∀゚)「!?」
/ ,' 3 「……何?」

おお!意外な加勢!!まさかコイツの方から言い出してくれるとは。
三月ウサギの奴は、更に言葉を続けてくれる。

(メ._,)「確かに、今我々の戦力は絶望的なまでに落ち込んでいるのが現状です。」
(メ._,)「この状況からすぐに回復する事など不可能でしょう。」
(メ._,)「しかし、今ならば我らにも勝算はあります。」
/ ,' 3 「…話してみよ。」
(メ._,)「はっ!今、ロビーの支配者である皇王シナーは自らVIPの地に赴いているとの情報があります。」
(メ._,)「当然、奴の周りにも多くの兵がいるでしょう。」
(メ._,)「そこで、こちらの部隊を三つに分け、一つを囮に、一つを本部隊に、
      残りを…シナーの暗殺のみに焦点を絞り込みます。」

成る程、俺達がやった作戦の更に上位版ってとこか。
最初の囮と次の本部隊に敵の目を向けさせ、その隙に敵の頭を…狩る。
…確かにいい作戦だ…が、敵の目を引き付けるだけの戦力が残っているかどうかが問題か。



134: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/01(土) 19:11:21.14 ID:d1r0AXAe0
  
(メ._,)「今、我等の戦力はラウンジと総合してもあまり多いとは言えません。」
(メ._,)「そこで、我らニューソクの兵を囮に、一人一人の質が高いラウンジの兵の全てを本部隊に配置させます。」
( ゚∀゚)「ちょっと待てよ。それじゃあシナー暗殺は誰がやるんだ?」
(メ._,)「…私がやる。囮の指揮ならばタカラにもできるだろう。」
( ゚∀゚)「私がやるって…。お前戦えんのか?指揮官なんだろ?」
(メ._,)「馬鹿にしないでもらいたい。剣術の出来ない騎士がどこにいるか。」
( ゚∀゚)「まぁ、そうか…。うん、それなら文句ねぇよ。後は荒巻王。アンタの決断だけだ。」
/ ,' 3 「………。」
(メ._,)「陛下。ご決断を!」

荒巻は沈黙する。ここまで…ここまで言ってダメなら後がない。

/ ,' 3 「……必ず。」
/ ,' 3 「必ず勝利させて来い。負けて帰還する事はまかりならん!」

風が吹く。戦場へと流れる希望の風が…!



r第19話 「帰郷」  終



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