( ^ω^)ブーンが運命に喧嘩を売るようです

245: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 14:30:00.23 ID:Z0HwJbSa0
  
第23話 「通常日常戦場」


( ゚∀゚)「ゥォォオオオオリャアアアアアア!!!!!」

力任せに十人程周りの敵を吹き飛ばす。当然のようにそいつ等が別の奴に当たって被害拡大。
『原子分解』が来たおかげで俺は雑魚を散らす事にのみ意識を向けることができ、
一片の余力も残さないほどに全力を出し、敵を殲滅する事だけに力を注ぐ。

( ゚∀゚)「グゥゥゥウウウラアアアアアア!!!!!」

敵が固まっている所に飛び込み、力の限りに斬り飛ばす。
向かってくるなら一切の容赦なく切り払う。
後ろから襲い掛かってくるなら顔面に裏拳を叩き込む。
殴って斬って飛ばして倒す。

( ゚∀゚)「ふぅぅぅぅっ。」



246: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 14:30:50.29 ID:Z0HwJbSa0
  
大分倒したか…。それでも減ってんのかどうかも分からない位に
まだまだうじゃうじゃと沸いてくる。

( ゚∀゚)「……おもしれぇ…おもしれぇじゃねぇか…!」

あの二人程ではないにしろ、やはりどこかで戦場を求めている所がある。
戦闘狂団レギオン。結局は俺もただの戦闘狂なのかもな。
…本物の戦闘狂の方を見る。
俺がさっき助けてもらってから、派手に殺り合っている。
なんとまぁ楽しそうな…。本当に世界だの何だのあの人達には関係ない。
ただ全力を出して戦いたいだけなんだろう。
そして…それはあの戦車乗り達もそうらしかった。
狂ったように楽しげな笑いをあげている男の顔を思い出す。
冷静にしようとしながら楽しさを堪えきれない様子の男の顔を思い出す。



247: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 14:31:33.42 ID:Z0HwJbSa0
  
(* ´_ゝ`)「うぇwwうひゃwほっほwほひひwwプギャーww」
(´<_` )「通訳すると“会えてうれしいぜ!『原子分解』”らしい。それと兄者、プギャーは違うぞ。」
( ,_ノ` )「丁寧にすまないな。俺の名は渋沢。なぜか『原子分解』のほうが有名だな。」
(*゚∋゚)「………。」

戦場の真っ只中で、狂ったように笑う男。冷静に間違いを指摘する男。
奇妙に落ち着いている男。押し黙ったままの男。
四人の男達が対峙する。
血飛沫と硝煙舞う戦場において異質でありながら、
不思議と違和感なく風景に溶け込んでいた。まるでそれが自然であるかのように。
…恐らく、この四人は戦場にいる時が日常なのだろう。だから歪まない。だから恐れない。

(* ´_ゝ`)「ぷぱぁwwふひひwうはwwぽっーーwww」
(´<_`;)「“この間は有耶無耶で終わっちまったからなwwやっと決着がつけられる!しかも今回は二人だ!!”
       と言っている。…OK兄者。時に落ち着け。ぽっーーって何だぽっーーって!ムーンウォークでもするつもりか?」
(*゚∋゚)「………。」
( ,_ノ` )「くっくっww人気者じゃないか。クックル君ww」



248: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 14:32:04.95 ID:Z0HwJbSa0
  
流石兄弟は先程からハッチを開け、そこから顔を出している。
『原子分解』の二人とは違い、彼らは身体的には他の兵と変わらない。流れ弾で死ぬ危険性もある。
…だが、彼らはそんな事などまるで気にしないで話し続ける。
自分達がそんな“流石”でないことで死ぬはずはない。そう考えているのだろう。

(*゚∋゚)「……御託はいい。さっさと始めるぞ。」
( ,_ノ` )「何だ?無口は卒業か?」
(* ´_ゝ`)「いっひっひwwいいねぇいいねぇwさっさと殺ろうぜぇww」
(´<_` )「だから落ち着けと…まぁいい。俺も早いとこ始めたい。」

これから殺し合いを始めるというのに四人が四人ともどこか楽しげだ。
馬鹿と馬鹿と馬鹿と馬鹿は臨戦体勢に入る。

(* ´_ゝ`)「それじゃ
(´<_` )「一丁
( ´_ゝ`)(´<_` )「痺れるような“流石”を感じさせてくれ!」
( ,_ノ` )「…おもしろい
(*゚∋゚)「…『原子分解』の力
(*゚∋゚)( ,_ノ` )「とくと見てから“分解”されな!」



249: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 14:32:57.61 ID:Z0HwJbSa0
  
クックルが兄者の戦車に向かって、渋沢が弟者の戦車に向かって、
大きく空を舞い、上空から攻撃を仕掛けようとする。
双方が上空の死角へと辿り着き、そのまま地面へと一気に加速する。

( ,_ノ` )「……!」
(*゚∋゚)「……!」

兄者の砲弾が渋沢へ、弟者の砲弾がクックルへと正確に飛んでくる。
渋沢は爆発の勢いを利用して空中で方向転換、起用に地面に着地。
クックルは砲弾の爆発をまともに受けながら、ノーダメージで難なく着地。

( ,_ノ` )「なるほど。互いに互いを補い合うことで死角を無くし、
      かつ攻撃の手も緩めずに済むという訳か。兄弟の阿吽の呼吸がなければこうは行くまい。」
(*゚∋゚)「………。」
( ,_ノ` )「何だ。また無口病の再発か?お前も大変だな。」
(*゚∋゚)「……ならば我々も力を合わせて戦うか?」
( ,_ノ` )「くっくっww冗談はよしてくれw何時からそんな面白い事言えるようになったんだ?」



250: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 14:33:19.95 ID:Z0HwJbSa0
  
話し合う二人目掛けて砲弾が二つ飛んでくる。
一人は殴って“分解”、一人はナイフで“分解”する。二人とも見る事すらしない。

( ,_ノ` )「くっくっwwそれなら姑息な手でも使おうかww」
(*゚∋゚)「……心にもない事を言うのは関心せんな。」
( ,_ノ` )「よく言うwさっきのはなんだw」

二人が笑い合う。その間にも次々と砲弾は撃たれるが、二人は軽くいなす。

( ,_ノ` )「…確かに近づいた状態で連発されたら厳しいモノがある、か。…だが。」
(*゚∋゚)「我等の戦いはただ勝つためのものではない。」
( ,_ノ` )「正面から全力で“分解”する。それが俺達の“スタイル”だからな。」
(*゚∋゚)「………。」
( ,_ノ` )「まただんまりかwまっ、確かにそろそろ行かないと悪い…か!」



251: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 14:34:07.28 ID:Z0HwJbSa0
  
渋沢の言葉を継起に駆け出す二人。明らかに人間が出す限界速度を軽く超えている。
しかし、それに対応するように全速で後退しながら砲弾を打ち続ける流石兄弟達。
走る速度はクックル、渋沢の方が速いが、砲弾を処理しながら駆けるのでその距離は縮まらない。

( ,_ノ` )「…長期戦をご所望か…そう上手くいくかな?」

渋沢は更に加速し、弟者の戦車との距離をぐんぐんと縮める。
その時、後ろから飛んでくる兄者の砲弾により、その足は止められる。
当然のように、飛んでくる砲弾を“分解”するが弟者との距離は離れてしまった。

( ,_ノ` )「弟を助けるのは素敵だが、俺にかまけていていいのかい?」
(*゚∋゚)「………。」

兄者の砲弾がクックルを向かなくなったその一瞬!クックルが一気に距離を詰め、
兄者の鼻先まで来る。

(*゚∋゚)「………!」

先程までの砲弾ではなく、横に備え付けられている機銃掃射にクックルは足止めされる。
威力は砲弾の方が確実に上だが、狭い距離を広範囲にばら撒く機銃は足止めには最適だった。



252: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 14:34:49.49 ID:Z0HwJbSa0
  
( ,_ノ` )「…やるじゃないか…これでこそ戦闘!これでこそ戦場!」

弟者との距離が離れてしまったというのに、相変わらず楽しそうに笑う渋沢。

(*゚∋゚)「…おもしろい…全力を出す、その価値がある!」

兄者との距離が離れてしまったというのに、歪んだ笑顔で吼えるクックル。

(´<_` )「こいつは中々…“流石”じゃないか…!」

渋沢の追撃をかわし、戦車の中で薄く笑う弟者。

(* ´_ゝ`)「うはwうはwおもしれぇぇぇww」

クックルの追撃をかわし、戦車の中で狂ったように笑う兄者。
誰も彼もが戦いを楽しみ、今を享受していた。

( ,_ノ` )「ずっと楽しんでいたい所だが、終わりがあるからこそ物事はおもしろい。
      そろそろ決着をつけさせて貰おうか。」
(*゚∋゚)「………。」



253: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 14:36:11.34 ID:Z0HwJbSa0
  
先程と同じように駆け出す二人。標的も先程と変わらない。
先程と同じように飛翔する二人。当然のように砲弾が向かってくる。
だが!ここからが違った!彼らはその爆発の勢いを使い更に“上昇”した!

(;´_ゝ`)「おおう!?」
(´<_`;)「見えな…!」

更に更に上昇していく『原子分解』。
既に戦車の射程からも大きく外れる程の位置まで達しているが、まだ止まらない。
ようやくその勢いが止まった時には、彼らの位置は雲にも手が届くまで飛んでいた。
彼らの位置からは戦車すら豆粒以下に見えていることだろう。
しかし、最高点に達し、若干の停止の後、彼らは戦車に向かって正確に“落下”していった。

(*゚∋゚)「………w」
( ,_ノ` )「くっくっww」



254: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 14:36:40.20 ID:Z0HwJbSa0
  
破壊的な速度で落下しながら楽しげに笑う男達。
あまりの高さ、あまりの速度、あまりの異様。流石兄弟達は反応する事すら出来なかった。
一瞬!正に一瞬の間に戦車の眼前にまで落下してきた二人。当然この先は…

            『原子分解』

一撃の下に戦車ごと兄者を“分解”するクックル!
一刀の下に戦車ごと弟者を“分解”する渋澤!
死の直前、流石兄弟は笑いながら考えていた…。

( ´_ゝ`)「これが『原子分解』…成る程、最高に“流石”だな。しかし…。」
(´<_` )「これが『原子分解』…成る程、最高に“流石”だな。しかし…。」
( ´_ゝ`)「こんな怪物と死闘を演じられた俺等…
(´<_` )「こんな怪物と死闘を演じられた俺等…
( ´_ゝ`)(´<_` )「“流石”だよな、俺等。」

(*゚∋゚)( ,_ノ` )「ああ、“流石”だったぜ?お前等。」



255: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 14:37:15.08 ID:Z0HwJbSa0
  
(;゚∀゚)「………。」

見入っていた。『原子分解』だけじゃない。あの兄弟にも…。
俺にはあんな一途に戦いだけを求める心があったか?
追いつけないのも無理はない。俺はまだまだ心が他所を向いていた。
追いつける…はずがない。

( ゚∀゚)「…本当…おもしれぇ…。」

こんなモン見せ付けられてただ黙ってる俺じゃねぇ。
…追いついてやる。形振り構わず戦いを求め、他の全てを手放して。
いつか…いや、すぐにでも!

( ゚∀゚)「俺が三人目の『原子分解』になってやる!!あんた等を超えてやる!!
     首を洗って待っていやがれ!!!クックル!!!渋澤!!!」



256: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 14:37:52.72 ID:Z0HwJbSa0
  
ξ )ξ「………。」

温かい、暖かい、暑い、熱い。
アタシの頬を伝っていく。粘性のある赤い、紅い液体。
……血だ……
べとべとして気持ち悪い。吐き気がする位に気持ち悪い。
気持ち悪い?おかしな感情。人の体の中にはこれが詰まってるのに…。
温かい、暖かい、暑い、熱い。
アタシの頬を伝っていく。粘性のある赤い、紅い液体。
ぽたぽた雫が落ちていく。ぽたぽた雫が落ちている。

冷たい…心が凍りつく。
撥ねた血が辺りに付着している。
痛みは無い。当たり前、痛いはずが無いもの。
痛い。締め付けられるように痛い。心がきりきりと痛い。
痛いよ。苦しいよ。辛いよ…。
おかしいよ。おかしいよ。おかしいよ。
冷たい…心が凍りつく。
だってだってだって
何で何で何で…



257: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 14:38:18.74 ID:Z0HwJbSa0
  

(;^ω^)「…大丈夫かお?…ツン…。」
ξ;;)ξ「何で…アンタがそこにいるのよぉ…。」

血はブーンの背中を伝ってアタシの顔に零れ落ちる。
アタシの盾になる為に背中を向けて
代わりに斬られた。アタシの代わりに…。

ξ;;)ξ「ば…かぁ!」
(;^ω^)「…大丈夫そうで…良かったお…。」

ドクドクと溢れ出るブーンの血液。その上に重なるドクオ君とワカンナイデスさんの剣。
撥ねた血は彼らの顔にも付着して、まるで涙を流すように滴り落ちる。
…血の涙…

(;'A`)「………。」



258: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 14:39:18.84 ID:Z0HwJbSa0
  
(;'A`)「………。」

ドクオ君の様子に異変が起きる。
小刻みに震えだし、悪いことをしてしまったと、
叱られるのを恐れる子供のように。
取り返しのつかない事を犯してしまったように。

(;^ω^)「……ドクオ…。」
(;'A`)「………!」
(;^ω^)「…僕は死なないお…。今のドクオなら僕を殺すことは出来ないお。」
ξ;;)ξ「………!」

薄ぼんやりと、不明瞭で何を形作っているか分からないけど、
今、ドクオ君が“視えた”。昔のドクオ君の気配で“視えた”。

( ><)「………。」
(;゚ω゚)「………!」
ξ;;)ξ「………!」

ワカンナイデスさんがブーンに向かって止めを刺そうと剣を振り上げ、降ろす。
もう、ダメ!!



259: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 14:39:45.69 ID:Z0HwJbSa0
  

剣と剣が重なり合い、澄んだ音色が響く。

( 'A`)「………。」
( ><)「………。」
(;゚ω゚)「ドク…。」
ξ;;)ξ「い、いやぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!」

二人の剣は互いに交差し、正確にその喉下を貫いた。
ブーンの時の比では無いほどの血飛沫が舞い、辺りを朱に染め上げる。

( '∀`)「………。」
( ;ω;)「ドクオォォォォォォ!!!!!!」

ドクオ君は笑っていた。
最後の仕事を成し遂げ、満足したような笑みで……。



260: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 14:40:57.42 ID:Z0HwJbSa0
  

ξ゚听)ξ「…本当に…大丈夫なの?」
( ^ω^)「大丈夫だお。ツンが手当てしてくれたからもう大丈夫だお。」

あの後、あたし達はおば様・ドクオ君・ワカンナイデスさんを埋葬した。
ブーンは何事も無かったかのような顔で淡々と作業を進めていた。
…辛くないはずなんて無いのに…お母さんと、一度失った親友をまた失ったってゆうのに。

( ^ω^)「…ツンには皆を見ていてほしいお。」
ξ゚听)ξ「それは…いいけど。」
( ^ω^)「…僕はちょっとだけ…出かけてくるお。」
ξ゚听)ξ「どこへ?」

いつもの笑顔で話を続けるブーン。
何でそんな顔が出来るの?不安はないの?怖くは無いの?

( ^ω^)「…元凶に…文句を言ってくるお。…もし、それでダメなら…。」
ξ゚听)ξ「ダメなら?」

アタシの正面を見つめ、静かに、強く喋りだす。



261: ◆y7/jBFQ5SY :2006/07/05(水) 14:41:18.58 ID:Z0HwJbSa0
  

( ^ω^)「
      運 命 に 喧 嘩 を 売 っ て く る お
                         」

強く、強くそう言い放ち、彼は行ってしまった。
運命に喧嘩を売る…運命に従って生きてきたアタシにも…そんな道があるのかしら?
…ブーンと一緒なら、きっといける。絶対に生きていける。
だからブーン。
絶対
絶対
絶対
生きて帰ってきて…。
アタシは神様でも運命でもない、愛するその人だけを思い、祈り続ける。

彼が帰ってくるその時まで………



第23話 「通常日常戦場」  終



戻る第24話