( ^ω^)ブーンが空も飛べるようです

443:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 11:59:00.15 ID:mea2ioom0
  
(´・ω・`)「ドクオ、彼がブーン君だ。君の下につくからね」

と言った。

( ^ω^)「よろしくだおー」

('A`)「おう。ま、俺らは大げさじゃなく人類の希望だからな。
    マジで発狂する人間ばっかだが、頑張ってくれ」

普通のプログラマーでさえ発狂する世界。
ブーンも何度も発狂しそうになり、タバスコを飲みながら何度も徹夜をしながら
懸命に働いてきた。
しかしここは、それ以上に厳しい仕事環境だろう。

( ^ω^)「がんばりますお」

ブーンは早速ショボンとドクオから手ほどきを受け、仕事に取り掛かった。



444:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 12:05:37.99 ID:mea2ioom0
  
朝も夜もない生活。
他の国から次々と運び込まれる機械。
特別製の大きなPCの前に座り、不眠不休の生活が続いた。
ここには巨大な食堂もあり、時間厳守で調理師の資格を持った
人が栄養を考えて作られた飯を運んでくる。
その飯時が唯一の休憩と言っても過言ではない。

全フロア禁煙だったのも以前までだ。
現在ではタバコも普及され、部屋は紫煙で空気の色が変わるほど
の有様になっている。

だがそれに文句を言う者はいない。
誰も彼もがキーボードを一心不乱にたたき続ける、異様な光景が広がっていた。

「ああああああああああ」

遠くの席から奇声が聞こえてくる。
発狂するものも少なくない。いや、みな多かれ少なかれ発狂している。



445:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 12:10:06.76 ID:mea2ioom0
  
(´・ω・`)「よし、最後のプログラムが送られてきたぞ。
      みんな、これのバグ取りに取り掛かってくれ」

ショボンが大声を上げる。
彼は冷静に見えるかもしれないが、狭い通路で寝ているブーンの頭を
平気で蹴飛ばして起こす様など、一般人からすれば異様に映るかもしれない。
しかしここではそれに文句を言う者はいない。
ブーンも頭を振りながらPCの前に座った。

PCのモニターはスクリーンセイバーが起動している。

「人類の命は俺たちの手にかかっている」

大きな白い文字が、ゆっくりと画面の端から端まで流れている。
ブーンは頬を思いっきり叩くと、気合を入れなおした。



446:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 12:14:29.65 ID:mea2ioom0
  
かくして5月の頭には宇宙船が完成した。
NASUセンターの周りを平らにして、そこに巨大な宇宙船を何隻も並べる。
しかし喜びの声を上げる者はいない。
みな作業室の狭い通路に重なるようにして、貪るように睡眠をとっている。

これからさらに騒がしくなるだろう。
世界中の拠点に宇宙船が運ばれ、その拠点に世界中のありとあらゆる人種が集結する。
ブーンはツンを思い浮かべた。
笑顔で送り出してくれたツン。
宇宙船の作業に携わった者の家族は、センターの近くに建てられたホテルに泊まっている。
しかしその中にツンはいない。
ツンはブーンが家を出てすぐに行方をくらませた。



447:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 12:18:21.61 ID:mea2ioom0
  
なぜ行方をくらませたのか、ブーンには分からない。
と言うよりも、考えることさえしなかった。
ツン一人より人類のことを考えて、ツンが行方不明になったことは
ブーンには知らされていなかった。

ブーンがそれを知らされたのは、作業が完了した次の日だった。
ブーンはすぐに日本に飛んだ。

空港。893に凹まされたフェラレディの鍵を開けて乗り込む。
マンション。着く。鍵を開ける。靴はない。
人の気配もない。埃が舞い上がる。床にブーンの足跡がつく。
何年も人が使用していない部屋のような無機質な感じ。
ブーンは次々と部屋のドアを開けていったが、
どこにもツンの姿はなかった。



449:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 12:22:37.94 ID:mea2ioom0
  
ブーンは全ての窓を開けて、タバコに火をつけた。
空港からすぐそばにあり、いつもは騒がしいくらい人の気配が
あったこの町も、今では猫一匹歩いていない。
日本には宇宙船は何機配置されたんだっけ。

そんなことを止め処なく考えながら、ブーンは空を見上げた。
厚い雲に覆われた空。世界の終わりを告げるような雰囲気。
だが不思議とブーンはなにも感じなかった。
ツンがいない。
それすらもどうでもいい。
世界が終わるなら、人間も滅びればいい。

ブーンはゆっくりと立ち上がり、タバコを左目に押し付けた。



452:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 12:29:37.93 ID:mea2ioom0
  
【5月24日】

日付が変わった。あと24時間もすれば、地球は終わる。
NASUが無駄と世間に叩かれながらも製造していた、月や火星の居住区。
それがこういう有事の時に役に立つ。
すでに人々は宇宙船の中に乗っている。
無機質に並べられた布団。その上が人間一人に与えられたスペース。
赤ん坊の泣き声、子供のはしゃぐ声。
嬉しそうな子供の顔、深刻な顔をして頭をたれる人。
さまざまな言語が飛び交う異様な空間。

しかも別の部屋からは動物の鳴き声が聞こえてくる。
爬虫類、両生類からはじまって、哺乳類まで。
ある程度の環境の変化にも対応できそうな、爬虫類が主に積み込まれている。
宇宙船が鼓動を開始する。



455:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 12:37:36.60 ID:mea2ioom0
  
(´・ω・`)「ブーン、ツンは見つかったかい?」

ブーンが首を振る。
国民総背番号によって、乗船した人間の全てはチェックされている。
そのチェックはNASUにあるコンピュータで閲覧できるが、
乗船リストの中にツンの番号はなかった。

('A`)「まあ記入漏れの可能性もあるわな」

ドクオが慰めにならない慰めを、慰めにならないと分かっていながらも慰めたから、
やはりブーンには何の慰めにもならなかった。

(´・ω・`)「ツンはどこへいったんだろうね」

ブーンたちの乗っている宇宙船はNASUから打ち上げられる特別製で、
NASUで働いた者やその親族が乗っている。
他の宇宙船に比べて乗客人数が少ないので、部屋はそれなりに広かった。



456:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 12:44:33.00 ID:mea2ioom0
  
そしてブーン、ショボン、ドクオの三人は八畳程度の部屋が与えられていた。
三人には家族がいない。
だからだろうか、二人はブーンのことを自分のことのように心配している。

('A`)「あっちで会えるといいな」

ドクオがブーンの肩に手を置きながらそう言った。
宇宙船が振動をはじめた。

(´・ω・`)「いよいよ打ち上げかな」

この宇宙船内は地球と同じ重力がかかるように設計されているので、
まるで普通に生活しているように過ごしていれば宇宙に行ける。

振動もわずかだし、飛行中も自由に移動できる。
非常に快適な空間だ。

(´・ω・`)「お、揺れが激しくなったね。そろそろか……」

三人が窓から外を見ると、ゆっくりと宇宙船が上昇していくにつれて、
NASU航空宇宙センターの巨大な建物が小さくなっていった。
三人が無言のままセンターを眺めていると、やがてそれが見えなくなり、
宇宙船は大気圏に突入した。



457:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 12:48:44.85 ID:mea2ioom0
  
部屋にノックの音が響いた。
すでに窓の外は黒一色に染められている。
地球が遥か彼方に見えた。

( ^ω□)(うわ)

ブーンの脳内に声が響く。

……は……ている。あ……るのを。
そして私を飲…………くれることを。
待っ……とあの人は気づいてくれ……う。
だ………………いる。

( ^ω□)(なんだお、なんか懐かしいような)

ショボンがドアを開けると、所長が入ってきた。
なにかショボンと話している。
だがブーンには聞こえない。
ブーンは必死に頭に響く声を聞き取ろうとした。



458:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 12:51:52.54 ID:mea2ioom0
  
ショボンが頷くのと同時に、宇宙船が大きく揺れた。

('A`)「なんだぁ?」

( ´┏_⊃┓`)「隕石をよけたのかもしれん。ほら」

所長が窓を指差すと、小さな塊が宇宙船の遥か遠くを横切っていくのが見えた。

('A`)「あんなに遠くを飛んでるじゃねーか」

(´・ω・`)「これでも近いくらいだよ。隕石のスピードは相当なものだ。
      素早い行動が求められているんだよ」

さらに宇宙船が大きく揺れる。

('A`)「おいおい、マジかよ……」



460:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 12:56:12.28 ID:mea2ioom0
  
後方が赤く染まっている。
避け損ねた宇宙船が隕石に貫かれて爆発したのだ。

('A`)「あれ、どこの国に送った宇宙船だ?」

(´・ω・`)「さあ……」

四人の顔が曇る。
どの国に送られたにせよ、あの宇宙船に乗っていた人は全員死んだだろう。
そしてそれは、一つの国が滅びたことを意味する。

(´・ω・`)「くそ!それで所長、先ほどの話は……」

私は待っている。……が来るのを。
そして……飲み干してくれ……を。
待っている。きっと……れるだろう。
…………は待っている。

( ^ω□)(待っている。もしかしてこの声は……)

('A`)「なるほど」

ドクオの声が遠くに聞こえる。
ブーンは悟った。ツンは地球で待っている。
確証はない。だがブーンは確信した。



463:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 13:01:58.28 ID:mea2ioom0
  
( ^ω□)「おい、戻ろうお!」

('A`)「あ?」

( ^ω□)「僕たちは地球人だお。だから死ぬなら地球がいいお!」

(´・ω・`)「ちょっと、所長の話を聞いていなかったのかい?」

ブーンが怪訝そうな顔をショボンに向ける。

('A`)「あのな、俺たちの船は地球に戻ることにしたんだ」

( ^ω□)「どういうことかお?」

( ´┏_⊃┓`)「実はこの部屋で最後でね。他の部屋からはすでに承認を得ている。
         この船の進路先を地球にしようとね」

( ^ω□)「そ、それは本当かお?」

(´・ω・`)「本当らしい。それに、俺とドクオはすでに承認した。
      ブーンも承認のようだな」

ブーンが大袈裟に首を上下に振る。
肯定。賛成。承認。

( ´┏_⊃┓`)「決まりのようだな。では早速……」



464:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 13:07:07.97 ID:mea2ioom0
  
所長が呟いた瞬間、横を無数の隕石が横切っていった。
そして赤く染まる後方。さらに何基かの宇宙船が爆発したようだ。

( ´┏_⊃┓`)「これはいかんな……すぐに操縦室に行ってこよう」

所長が素早く部屋を出て行く。

それをブーンは祈るように見つめていた。
ツンは地球にいる。
番号が出なかったのは、ツンが乗らなかったから。
そしてツンは、ブーンも乗らないだろうと思っていたからじゃないか。
ツンはブーンが自分の元に帰ってくると、
そして自分と一緒に地球の最期を見届けると
そう確信していたに違いない。

( ^ω□)「くそ!」

ブーンは壁を力いっぱい殴った。
ブーンは己を攻めた。なぜ宇宙船に乗ってしまったのか。
簡単にツンの行方を捜すのを諦めてしまったのか。

なぜなぜなぜなぜなぜなぜんzんzんzんzんzんzんzzんzn



465:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 13:09:56.80 ID:mea2ioom0
  
ブーンの腕から血が流れても、ショボンとドクオはなにも言わなかった。
宇宙船が激しく揺れる。目が回る。宇宙船も回る。
急激な方向転換。そして激しい振動。

すでにいくつかの隕石は地球に衝突しているだろう。
地球は死のうとしている。
豊かな自然に覆われた綺麗な地球。
青々とした生命の息吹を感じさせる丸い球体。

( ^ω□)「待ってろお、ツン」

宇宙船はもの凄いスピードで、地球に向かって進んでいった。



468:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 13:13:06.45 ID:mea2ioom0
  
【地球】

ξ゚听)ξ「綺麗だな」

明かりの消えた都会。
風の音と、波の音しか聞こえてこない。
純粋な自然の音。

ξ゚听)ξ「これが昔の地球なのかな」

ツンは目を閉じて自然の音を楽しんだ。
先ほど世界中から宇宙船が飛び立った。
無数の宇宙船がものすごい速さで雲に突入していく。

あれがブーンの作った宇宙船なのだ。
ツンは自然に微笑んでいた。

ξ゚听)ξ「あなたは人類を救ったのよね」



471:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 13:18:19.64 ID:mea2ioom0
  
ツンは木の上に登った。

ξ゚听)ξ「ブーンは木登りが得意だったっけ」

ブーンとの思い出が頭をよぎる。
ツンが途中で行方不明になったのは、ブーンを日本に呼び寄せたかったからだ。
ブーンがいなければ宇宙船は完成しない。
ツンはそう信じ込んでいた。
宇宙船が完成しなければ、人間が自然を壊すこともない。
月や火星に隠された資源を、人間は無駄に消費するだろう。
まるで使い捨てのように。

ξ゚听)ξ「地球は使い捨ての道具じゃないわ」

宇宙船が完成すれば、人間はさらに資源を無駄に使うだろう。
資源が底をつけば、また新しい惑星に移ればいい。
そんな考えしか出来ないのが人間だ。



474:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 13:22:15.63 ID:mea2ioom0
  
ツンはそんな人間を嫌っていた。
そしてそんな人間の一人である自分を嫌っていた。
地球が産みの親なら、親とともに死ぬのも悪くない。
だがブーンは違う。
彼も他の人間と同じ、愚かな生物だ。

ξ゚听)ξ「結局、私がフラれちゃったわけなんだけどねー」

空が赤く染まった。

ξ゚听)ξ「あ、来たみたい」

ツンは空を見上げた。
振動が響き、どこか遠くに隕石が落ちたらしい。
ツンは登っていた木から転がり落ちた。



475:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 13:28:02.62 ID:mea2ioom0
  
【宇宙船】

(´・ω・`)「うわ!」

地球まであと少しというところで、宇宙船の近くを通った隕石による力によって
宇宙船が傾いた。ベッドが宙に浮き、ブーンたちも転がりながら壁にぶつかる。

('A`)「いてってて」

すると今度はさらに大きな振動。
小さな隕石が宇宙船の後部にぶつかった。
空気がそこから漏れ出す。

('A`)「なんだ?なんか体が勝手に……」

ドクオがドアに向かって引っ張られていく。
そしてそのままドアにぶつかり、ドアと一緒に飛んでいった。

(´・ω・`)「うわっ」

ドアがなくなり、空気の流れが速くなる。

( ^ω□)「あうあう、ツーン!」

ブーンは掴んでいたベッドとともに開いたドアに吸い寄せられるように飛んだ。



480:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 13:41:13.62 ID:mea2ioom0
  
ベッドが入り口にひっかかる。
ブーンは必死にベッドを掴んだ。

( ^ω□)「絶対生きて帰るお……俺は地球で死にたいお!」

だがむなしくブーンの手が離れた。
ブーンはものすごい勢いで飛ばされていく。
このまま宇宙のもずく(なぜか変換が(ryになってしまうのか。

( ^ω□)「つぅぅぅぅぅん!」



481:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 13:42:49.16 ID:mea2ioom0
  
隕石が次々と地球に降り注いだ。
絶え間なくおとずれる地震、津波、そして寝る。

ξ゚听)ξ「ブーン……」

それが生きているツンの最期の言葉になった。
ツンの体は熱によって溶けた。



486:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 13:47:50.67 ID:mea2ioom0
  
真っ暗な闇。視界を覆いつくす黒。
だが自然と息苦しくない。

( ^ω^)「アレはなんだお?」

闇に浮かんだ白い影。
それが次第に近づいてくる。

( ^ω^)「なんか体が温かいお。キモチヨス……」

手だ。白くて綺麗な手がブーンの近くまで伸びてくる。
ブーンはその手を必死に掴もうと手を動かした。
しかし目の前にある手に届かない。

( ゚ω゚)「ふぉぉぉぉ」

ブーンは必死に手を動かした。

あと少し、あと少し

懐かしい声が耳をくすぐる。

( ゚ω゚)「おおおおおおおおおおお」

指と指が触れ合う。絡み合う。
温かい手。それがブーンの体を引っ張る。
白い影に吸い込まれていく。

( ゚ω゚)「ツン!ツン!ごめんお!ツン、愛してるお!ツーン!!」



488:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 13:51:55.46 ID:mea2ioom0
  
白い溶液が体に染み込んでくる。
目から、鼻から、口から、耳から。
ありとあらゆる穴から白い液体がブーンの体に入り込む。

( ^ω□)「ツン……」

('A`)「くそ、寝ぼけてんじゃねーぞこのデブが……」

ブーンの手に繋がれたドクオの手。
ドクオのもう片方の手は必死に壁を押さえ、足で踏ん張る。

('A`)「くそ、こんなとこで死にたかねぇよ!」

ドクオが声のするほうに顔を上げると、ショボンが見えた。
ものすごいスピードで飛ばされている。

('A`)「げ、あいつもかよ、くそ」

(´・ω・`)「ドクオ、俺の体には紐が巻き付いている!もう少し耐えろ!」



490:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 13:58:44.10 ID:mea2ioom0
  
宇宙船が大気圏に突入した。
そしてそのまま雲を突き抜ける。
穴から見える地球は、すでに地球ではなかった。
真っ赤だ。
燃える地球。乱れる地球。地球は生きようともがくように、
死にかけの患者が懸命に叫ぶように、体全体揺すっている。

('A`)「地球か……」

宇宙船はそのまま荒れ狂う海に突っ込んだ。

( ^ω□)「ツン」

あれは夢だったのだろうか。それとも幻か。
しかしそんなことはどうでもよかった。
ツンは確かに僕の命を救ってくれた。
たとえその命がすぐに消えると分かっていても、
ツンは懸命に俺の体を繋ぎ止めてくれた。

( ^ω□)「ツン」

あの日、夏の暑い日、ツンと一緒に笑いながら飲んだカルピス。
体に入ってきたあの白い液体は、
そのカルピスに似ていた。
たとえそれがブーンの思い込みでも、勘違いでも、
そんなことどうでもよかった。ブーンとツンは一つになった。
そして地球人として地球の暖かい海に抱かれながら、やがて鼓動をやめた。


( ^ω^)ブーンがカルピスを飲むようです:完



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