( ^ω^)ブーンが空も飛べるようです

353:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 00:33:06.78 ID:mea2ioom0
  
師は言った。
心を無にすれば、自ずと相手の切っ先が見えてくると。
そしてそれはやがて己の切っ先を見つめることに繋がると。
訳が分からん。
だから俺は言ってやった。
難しいことは好かん。

(´・ω・`)「破門」

こうして俺は師に復讐するため、剣の腕を磨く旅に出た。


( ^ω^)ブーンは剣豪のようです



355:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 00:38:28.94 ID:mea2ioom0
  
先日京都に入った。
京は花の都と言われるだけあって、どの侍も垢抜けている。
だがそれは褒め言葉ではない。
侍たるもの剣士であれ。剣士たるもの無骨であれ。
無骨。これもよく分からないが、言葉の響きが好きだ。
だから俺は無骨な剣士になりたい。

居酒屋のオヤジにそんなことを言ったら、

「無骨な剣士=孤高の剣士。孤高の剣士とは誰も手の届かない場所にいる侍のこと。
 つまりは剣豪のことじゃな」

と言った。
どうやら人間は歳をとると、無駄に難しい言い回しを好むようになるらしい。

しかし言葉の響きだけは俺の心に刻まれた。

剣豪。

( ^ω^)「剣豪か」

俺は何度も繰り返し呟いた。俺の夢がさらに大きくなったような気がした。



357:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 00:44:42.80 ID:mea2ioom0
  
京には、剣の道場と言うものが星の如く存在するという。

( ^ω^)「面白い」

剣の腕を磨くには、ただ浪人を斬るだけでは駄目だ。
それこそ自分と同じように剣の道に生き、剣の道に死ぬような覚悟を持った
男たちと魂のぶつけ合いをしなければならない。

手始めにブーンは

【( ^Д^)道場】

と書かれた看板を引っぺがすと、その道場に入った。
すると殺気を感じた。肌を通り抜けて心の臓に届くような、
五臓六腑を溶かすような気概。
今まで何人もの浪人を斬り捨ててきたブーンでもたじろぐ様な殺気。

(;^ω^)(これが魂を曝け出した者が発する殺気かお)

だがただ気おされているばかりのブーンではない。



359:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 00:50:53.53 ID:mea2ioom0
  
( ^ω^)「たのもー!」

腹の底から絞り出したような声。
ちょっと裏返ったが、そんなことは気にしない。
とにかくはじめが肝心だ。
舐めてかかられるような無様な真似はしない。
だからブーンは裏返った声に恥じることなく、
堂々と道場生たちを睨みつけた。

( ^ω^)(おっおっ)

ブーンに睨まれて目を逸らす者、はじめから目を合わせようとしない者
を瞬時に見分けて、もっとも強そうな男に近づいた。

( ^ω^)「あなたがこの道場の主、プギャー殿と心得る。
     願わくば真剣にて勝負を受けてくれませんかお」

( ^Д^)「ぷぎゃw真剣はなしだぷぎゃwここで勝負したければ、木刀で戦うぷぎゃ」

( ^ω^)「把握した。では一本借りることにするお」

ブーンは適当な木刀を一本取ると、軽く上段に振りかぶって袈裟斬りをする。
ひゅぅん。と風が鳴った。
それを聞き、何人かの道場生が感嘆の声を上げる。



360:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 00:55:02.32 ID:mea2ioom0
  
( ^Д^)「ふむ、ただの道場破りではないようだぷぎゃ」

( ^ω^)「当然だお。俺は復讐のために乱世を彷徨う剣豪だお」

( ^Д^)「ぷぎゃーwww」

ブーンの剣豪という言葉を聞いて、ぷぎゃが笑い出した。
それに釣られるようにして、道場生たちからも失笑が漏れる。

( ^ω^)「なにかおかしいかお?」

真面目な顔でそう返すブーンにさらなる嘲りの表情を向けながら、
ぷぎゃが口を開いた。

( ^Д^)「若造、お前は世間を知らなすぎる。
     この京一番の使い手ツン一家さえも剣豪とは呼ばれていない」

( ^ω^)「?」



361:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 00:59:38.70 ID:mea2ioom0
  
( ^Д^)「ツン一家は京で一番古く、一番由緒正しい剣の名家だぷぎゃ。
     しかしそんな名家にも勝てない相手がいた。それがショボンという男だぷぎゃ」

( ^ω^)「ショボン……」

その名を聞いて、ブーンが表情を変えた。
俺を破門にした男。奴が剣豪。

( ^Д^)「この世で最も強い男しか剣豪は名乗れないぷぎゃ。
     そしていま最も強い男とはショボンだぷぎゃ」

ブーンの体から得体の知れぬ気が放たれた。
道場の空気が凍りつき、ぷぎゃの顔も引き締まった。

( ^ω^)「そうかお。なら、さっそくはじめようかお」

ブーンが木刀を上段に構えた。
ぷぎゃも上段に構える。
道場内が水を打ったように静まり返る。
浪人とは明らかに異なる空気。
それはブーンから放たれるだけの空気ではなく、
ぷぎゃからも放たれているようだ。

ブーンはさらに気を引き締めた。



362:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 01:03:13.90 ID:mea2ioom0
  
( ^ω^)「ふん」

ブーンの木刀が振り下ろされる。
それをぷぎゃが受け止める。
勝負は一瞬だった。
すでにブーンの殺気にわずかながら呑まれていたぷぎゃの体は硬くなり、
反射神経が鈍っていた。
ぷぎゃの脳天を狙ったブーンの一撃に、遅れながらも木刀を振り上げたぷぎゃ。
しかしその遅れが命取りとなった。

( ^Д^)「ぶはっ」

木刀が飛び、ぷぎゃが奇声を上げながら床に倒れた。

( ^ω^)「これが俺の力だお」

ブーンは気を失ったままのぷぎゃに一礼すると、黙って道場を出た。



363:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 01:07:10.17 ID:mea2ioom0
  
真剣勝負をしたばかりのブーンには、京の町は別の印象を持っているように感じた。
底知れぬ獣の雰囲気。濁って底の見えない沼のような不気味な空気。
垢抜けた侍や、きれいな身なりをした芸者たちが歩いている通りの様子は
まったく変わっていない。
なのにブーンは表情を崩さなかった。

( ^ω^)(ツン家。それが今の俺の目標だお)

ちょうど芸者の一人が向こうから歩いてきた。
ブーンは軽く手を上げ、芸者を止めた。

( ^ω^)「ツン家はどこにあるのかお?」

芸者はブーンの顔を見ると気持ち悪そうな表情になり、
そそくさと逃げるように立ち去ってしまった。
ブーンは泣いた。



364:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 01:10:46.38 ID:mea2ioom0
  
町が灯りでつつまれる頃、ブーンはやっとこさツン家の道場に着いた。
こんな時間ではすでに門下生たちも帰宅していると思っていたが、
道場の中からは、激しい合いの声と、木刀のぶつかり合う音が聞こえてくる。

( ^ω^)「ふむ、こんな時間まで稽古をしているとは」

ブーンは気を静めた。心が静かな水面のように静まる。
そしてそのままゆっくりと戸を開いて道場内に足を踏み入れた。

そこには若い女と禿げたおっさんがいた。



366:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 01:14:33.38 ID:mea2ioom0
  
ξ(゚、゚ξ「ん?あなた誰?」

( ^ω^)「俺はブーンと申す者だお。夜分遅くに申し訳ないが、
     稽古をつけてもらいたくて来たんだお」

゚听)「稽古とな。申し訳ないが、門下生でもない者に稽古をつけるわけにはいかんのでな」

( ^ω^)「俺は死ぬことは怖くない。もし稽古中に死んだからといって、なんの問題もないお」

ξ゚听)ξ「ふーん、ずいぶん腕に自信があるみたいね?」

゚听)「ツン、止しなさい」

( ^ω^)「いやいや、ぜんぜん構わないお」

おっさんにそう言い、ブーンは女のほうを見ながら続けた。

( ^ω^)「お手並み拝見といこうかお」



368:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 01:19:16.23 ID:mea2ioom0
  
ブーンの静まっていた心が揺らめき、獣のように雄たけびを上げはじめた。
顔が見る見るうちに豹変していく。

ξ゚听)ξ「…………」

゚听)「ツン、下がりなさい。お前には相手が悪すぎる」

ξ゚听)ξ「なによ、この程度の相手、私でも大丈夫です」

気丈にそう言ったツンに向けて、おっさんがキツイ視線を送った。
その視線だけでツンの心は折れた。
ツンはおとなしく身を引いた。

゚听)「ふむ。してそちは何者かな?相当の使い手と心得るが」

( ^ω^)「ふはは、これまた面白いことをおっしゃるでおじゃるな」



369:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 01:24:45.62 ID:mea2ioom0
  
二人の中ではすでに戦いがはじまっていた。
心と心の削りあい。それは、肉体を削るよりも遥かに効果的な戦い方。
先のぷぎゃとの戦いでも、ブーンの殺気に呑まれたぷぎゃとの決着は、
剣を構えている段階ですでについていた。
ぷぎゃはブーンの剣に負けたのではない。
ブーンの殺気、心意気、そして心胆に負けたのだ。

心胆寒からしめるという言葉がある気がしたが、
よく覚えていないので読者も気にしないといい。
ただ、そんな言葉が延々と長い久月を経てまで伝えられるほど、
心胆というものは心の重要な役割を果たす気がする。

よくここまで読んだな。長かったでしょ?ごめんね。



370:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 01:27:08.38 ID:mea2ioom0
  
ブーンの嘲るような台詞は、それまでの静かな雰囲気を壊し、
相手に違和感を感じさせるのが目的だった。
しかしおっさんには効かなかったようだ。
たいていの人間ならば彼の突然の変容に気圧されていたはずである。
しかしそれは並みの人間ならの話し。
おっさんは並の人間ではない。

( ^ω^)(手ごわいお)

ブーンは改めてツン家の実力を思い知った。



372:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 01:32:49.34 ID:mea2ioom0
  
( ^ω^)「ファーブルスコ!」

突然ブーンが奇声を上げた。
おっさんの瞳孔が一瞬開く。
そのわずかな隙を突いて、ブーンがぷぎゃ道場からパクってきていた
木刀の切っ先をのど元に突きつけた。

゚听)「ふむ」

足をわざと滑らせて重心を落とし、おっさんはなんとかブーンの木刀を弾いた。
見事というしかない体さばき。
しかしブーンはそれに感心しながらも気は抜いていなかった。

( ^ω^)「まだ体勢は崩れたままだお!」

弾かれた勢いを使い、ブーンは弧を描くようにして
上段からおっさん目掛けて木刀を振り下ろした。

ξ゚听)ξ「あ、危ない!」



374:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 01:38:51.17 ID:mea2ioom0
  
゚听)「おおぅ」

感心したような声を上げるおっさん。
しかし感心するのはこちらの方だ。
倒れたまま体を滑らせてブーンの切っ先を紙一重でかわし、
なおかつブーンの木刀を自身の木刀で絡めとって
身動きを封じつつ立ち上がる。

鞍馬の天狗を彷彿とさせるような体さばきに、ブーンの口からは思わずため息が漏れた。

゚听)「お主、やはり只者ではないのぅ」

嬉しそうに木刀を小刻みに動かしながら、おっさんが言った。
ブーンも相手の力量に感謝しつつも、体中に歓喜が溢れるのを
抑えることは出来なかった。



412:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 10:05:14.91 ID:mea2ioom0
  
゚听)「せい!」

おっさんが声を上げながら接近し、下手に構えた木刀で体を薙ぐように振る。
ブーンが咄嗟に腕を下ろし、木刀と木刀がぶつかり合う。

( ^ω^)「せいお」

腕の力だけで木刀を弾き、ブーンが今度はおっさんの胴を狙うが、
易々とかわされてしまった。

( ^ω^)「うぬぬ」

腕っ節の強さを武器に、力任せで剣を振るブーンとしなやかな動きで
相手を魅了するように動くおっさん。
まさに柔と剛の戦い。

二人はお互いの息を探りあって小刻みに体を動かした。



413:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 10:11:29.15 ID:mea2ioom0
  
京の町では知らない者がいないほどの使い手であるおっさんを相手に、
ブーンは善戦しているといえる。
そばで見ているツンも、ブーンの無礼に腹を立てながらも、
その力は認めていた。

ξ゚听)ξ(私はこの二人の足元にも及ばないわ)

獣のようなブーン、畑で風に揺られるように動く草のようなおっさん。
ブーンは次第にあせりはじめていた。

( ^ω^)(こっちの剣が全て受け流されてしまっているお)

凄まじい力も、草に当てればたいしたダメージにはならない。
意味のないことを繰り返しているような
底知れぬ無力感を感じる。



414:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 10:15:30.64 ID:mea2ioom0
  
( ^ω^)「そい」

ブーンが放った突きも軽くいなされる。
おっさんは勝つ気をなくしたように攻撃をしてこなくなった。

゚听)「ふん」

ブーンの袈裟斬りがかわされる。
おっさんはその隙をついた。

( ^ω^)「あうあう」

無様に尻餅をつくブーン。そこを畳み掛けようとするおっさん。
ブーンは近づいてくるおっさんの足元を、乱暴に薙いだ。
それをいとも簡単に防ぐおっさん。
ブーンはなんとか起き上がったが、これ以上の戦いは無意味だと悟った。



415:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 10:21:25.88 ID:mea2ioom0
  
ブーンは木刀を投げ出すと、床に頭をついた。

( ^ω^)「なにとぞ、俺を門下生にしてくれお」

ξ゚听)ξ「え?」

土下座をしながら、ブーンが大声で叫ぶ。
声が広い道場に木霊した。

゚听)「ふむ」

おっさんが木刀を横に携え、ブーンに近づく。

゚听)「頭を上げなさい」

ブーンが恐る恐るといった感じで頭を上げる。

゚听)「その前にひとつだけよろしいかな。そちらの太刀筋、どこかで見たことがあるのだが」

ブーンはぷぎゃから聞いたことを思い出した。
京の町で最も強いツン家と、それを破った男のこと。
ブーンの師であるショボンは、すでにこの男と戦っているのだ。
そのショボンの弟子だったブーンの太刀筋に
おっさんが反応するのも無理はないことかもしれない。



416:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 10:25:34.67 ID:mea2ioom0
  
( ^ω^)「……師はショボン、剣豪と呼ばれる男ですお」

ツンとおっさんが息を呑んだ。
ショボン。ツン家の家名に泥を塗ったといっても過言ではない男。
ブーンは昔に思いを馳せた。

盗賊の頭をやっていたブーンがある日、町でじじぃと歩く美人を見つけた。
ブーンは当然のように女の腰に手を回した。
いや回そうとした。しかし出来なかった。
ブーンの伸ばした手が、じじぃの木刀によって叩き落とされたのだ。



420:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 10:36:20.22 ID:mea2ioom0
  
じじぃ。俺はそう怒鳴った。
しかしじじぃはどこ吹く風で、飄々と笑っているだけだった。
俺は真剣を抜いた。
本気かね。じじぃがボツリと呟いた一言。
俺はそれに気圧され、土下座をして弟子入りをした。
俺の土下座を見て、手下たちは俺を見限ったのだろう。
俺の盗賊団はその後、どこか遠く地で活動を続けているらしい。



421:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 10:40:10.14 ID:mea2ioom0
  
じじぃの扱きはハンパなかった。
朝から晩までじじぃの剣に打たれ、俺はそれが悔しくて
寝る間も惜しんで剣を振り続けた。
思えば、じじぃから型の手ほどきを受けたことなどない気がする。
俺はじじぃに打たれながらも、そのじじぃの構えを記憶した。
どこをどう打たれれば痛いのか、身をもって体験した。
そうして俺は強くなった。



422:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 10:43:06.51 ID:mea2ioom0
  
゚听)「申し訳ないが、家の道場はすでに手一杯でね。先代が亡くなられたもんで、
    人手が足りないんだよ」

人手。体のいい断り文句。
ブーンはそっと顔だけ持ち上げた。
おっさんは無表情のまま、淡々と言葉を続ける。

゚听)「だから、君が手伝いをしてくれるというのなら、暇なときに稽古をつけよう」

( ^ω^)「おっおっ、ホントかお。もちろん便所掃除でもなんでもするお」

おっさんがはじめて笑顔を見せた。



425:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 10:47:21.20 ID:mea2ioom0
  
道場の雑巾がけ、便所掃除。
ブーンはあらゆる雑用をこなしながら、門下生たちと
それに稽古をつけるおっさんの姿を目で追った。

( ^ω^)(やはりどの門下生も太刀筋や体捌きがそっくりだお。
     柔よく剛を制すの精神を大事にしてるんだおね)

神棚の横に掛け軸がかかっており、そこには達筆で「草」とだけ書かれている。
この一言がこの道場の全てを表しているといっても、過言ではないのかもしれない。



427:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 10:54:38.33 ID:mea2ioom0
  
それに比べて、ショボンの太刀筋は剛よく柔を制すの精神。
草でもなんでも力づくで根こそぎ薙ぎ払うような、文字通り豪胆な侍だった。
構えは上段。そこから息を止めて振り下ろす一撃は、楽々と鎖骨を粉砕する。
比べてツン流は構えが下段で、
相手の太刀筋を絡めとるような奇妙な動きが主だ。
待ちと攻め、剛と柔。どちらが優れているかなどブーンには分からないが、
破門されたとしてもブーンにはショボン流のほうがあっている気がした。
それをおっさんに言うと、

゚听)「ははは、それはそうさ。柔も剛も人それぞれだからね。
    その人の性分や心根に合ったほうを選択すればいい」

と言われた。
そんなものかとブーンは一人頷き、おっさんに稽古をつけてもらった。



428:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 11:01:06.18 ID:mea2ioom0
  
そしてその五年後。
ブーンはショボン流とツン流を足して三で割ったような微妙な感じの
京都浪速ブーン流を創立した。
後の新撰組局長である近藤勇が、この京都浪速ブーン流を微妙に変化させた
天然理心流の使い手だったことはご存知のとおりだ。
しかしなにも、創立したばかりのころから人気があったというわけではない。
ブーンはぷぎゃの道場前に立てかけてあった

【( ^Д^)道場】

と書かれた看板の裏に京都浪速ブーン流と下手糞な字で書き、
それを川原に立てかけて待ったが、何日経っても人は来ない。
そればかりか、糞餓鬼にも馬鹿にされる始末であった。



429:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/06/17(土) 11:05:15.32 ID:mea2ioom0
  
ブーンは仕方なくぷぎゃの道場に戻ると、ぷぎゃを脅して道場をパクった。
そしてぷぎゃを含めた門下生たちを全員ブーン流に入門させた。
こうしてブーンのはじめての道場が設立された。

( ^Д^)「まさかあのツン家のおっさんといい勝負をするとはぷぎゃ」

( ^ω^)「フヒヒ、俺の流派も出来たことだし、これで楽々暮らせるお」

そう、ブーンはすでにショボンのことなど忘れていた。
ブーンは京の町で、肺を患うまで熱心に京都浪速ブーン流を広めたという。

(´・ω・`)「なんでやねん」


  ( ^ω^)ブーンは剣豪のようです:完



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